君の名は。〜bound for happiness(改)〜   作:かいちゃんvb

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日本シリーズ、ソフトバンクがヤフオクドームでの二連戦を連勝で飾りましたね。DeNA頑張れよ………
では、本編スタートです!


第3章 瀧と三葉のGW
第13話 他人と家族


この年のゴールデンウィークは厄介である。4/29(金・祝)〜5/1(日)と5/3(火・祝)〜5/5(木・祝)と三連休が2つ続くのだ。そこで、瀧と三葉は初のお泊りをWで実行することにした。

出会って三週間あまり。初デートでキスは済ませたがお互い仕事が忙がしくなってミキたちを交えて食事をして以来、2回しか会っていなかった。しかも三葉が前の土日に両方仕事が入ったので会うのは10日ぶりである。後は電話やメールのみだ。

頑張って働いた甲斐があってか、2人とも5/5までは休日出勤する必要はなくなったので、前の三連休は三葉の家で、後の三連休は瀧の家で二泊三日のお泊りデートと相成った。2人ともベタベタし過ぎではないかとは思ったが、思ったよりロスがキツく、連休明けの仕事も忙しくなりそうだったのでここで充電しまくろうという魂胆もある。

迎えた4月29日であったが、瀧の仕事先でトラブルが発生し、午前中は仕事しなければならなくなったため、集合は北参道駅に16時となった。そして、三葉の待ちに待った16時が訪れた。改札に瀧が現れる。

 

「瀧く〜〜ん!!」

 

二泊三日分の泊まりの荷物を持った瀧に一直線に駆け込んでいく。瀧も三葉を抱きしめる。

 

「ごめん、遅くなって。」

 

「ええんよ、気にせんで。それより瀧くんを感じてたいんよ。」

 

そう言って三葉はまるでマーキングするように瀧の服に頬を擦り付ける。瀧も、三葉ロスが響いて初のお泊りデートに対する羞恥心など吹き飛んでいた。

 

「三葉、すごくすごく嬉しくて俺も抱き締めていたいんだけどさ、周りの視線が痛いから離れてくれない?」

 

三葉はバッと飛び退く。そして何事もなかったかのように2人で手を繋いで夕食の買い出しに向かう。

 

「今日は何にするんだ?」

 

「関西風すき焼き!」

 

「なんで関西風?」

 

「何かね、この前相談に乗ってくれた私の同僚の関西出身の人にね、今日はすき焼きでもてなそうと思ってるって言うたらね、それなら試しにやってみってレシピ教えてくれたんよ。」

 

関東のすき焼きは何で煮んのに焼きってつくねん!あんなん邪道や!俺が本物のすき焼きを教えたるからメモれ!と息巻いていた堀川の姿が思い浮かび、少しクスッとする。

 

「じゃあ作るのは……」

 

「初めてやよ。でもこれ見て!」

 

三葉は堀川が半分キレながらまくし立てていたレシピを丹念にメモした紙を見せる。しかも水分は野菜から出すので不要などのありがちな失敗例や、割り下なんてクソ喰らえ!など完全な悪口まで書いてある。

 

「う……この紙から三葉の同僚の溢れるパッションが感じられる……」

 

確か狩野も関西出身なはずだ。一回試しに聞いてみようか。どんな反応が返ってくるのか楽しみである……

 

 

2人は3人分のすき焼きの具材を持って宮水家に帰ってきた。

 

「四葉〜〜、お待たせ〜〜」

 

「お邪魔します。」

 

「いらっしゃい、瀧さん。ゆっくりしていってね。」

 

瀧と三葉は台所で具材を切り分ける。高3の四葉は自室で勉強しているようだ。

 

「四葉ちゃんも大変だなあ。」

 

「でもしっかりしとるから多分大丈夫やよ。私より賢いし。国公立大十分に狙えるねんて。」

 

「それはなかなかだなあ。そういえば四葉ちゃんはこの三連休はずっと家にいるの?」

 

「ううん、明日から泊まりで友達の家やって。ほんまに勉強出来んのかね、私の経験上は無理やと思うけどなぁ。」

 

違うよ、三葉。それは俺たちに気を遣ってくれてるんだよ。

 

そう言いたい気持ちをぐっと堪える。そういえば、今日の四葉、三葉と雰囲気が似てるな。いや、似せてるのか? などと思いながら話題を変える。

 

「そうだ、俺の教育担当の先輩も関西出身なんだけどさ、結構関東と関西って文化違うらしいよ。」

 

「あー、堀川君もよく言ってる。あ、今日のレシピ教えてくれた同期のことね。」

 

「エスカレーターの立ち位置が逆とか。」

 

「中濃ソースがないとか。」

 

「カレーには牛肉入れるとか。」

 

「トイレットペーパーはシングルロールが当たり前とか。」

 

「いや〜日本ってまだまだ広いな〜。」

 

「そうやね。」

 

そして、夕食の時間を迎える。まずすき焼き鍋に牛脂を敷いてから肉を投下し、ザラメ糖と薄口醤油を上に大胆にぶっかけて焼く。焼けたら割った卵に潜らせて口へ放りこむ。

 

「うまい!」

 

「堀川君さすがやね!」

 

「ちょっと濃いのがええなぁ。」

 

肉を一通り食べたら野菜を鍋に敷き詰め、水分をだし、適宜ザラメ糖と薄口醤油で味を整えながらじっくり煮ていく。端っこでは肉も引き続き焼きながら。みんなでワイワイ喋りながらも3人の箸は止まらない。

 

気付けば締めのうどんまであっという間に完食していた。

 

「うまかった!四葉ちゃんはどうだった?」

 

「ここまで違うとは思わへんかった。おいしい!」

 

「四葉は結構濃いの好きやからね。おいしかったけど私はもうちょっとあっさりの方がええかな。」

 

感想は人それぞれである。瀧と三葉が食器を洗い、四葉は風呂に入った。

 

「明日はどこ行くか決めたん?」

 

「映画にしようかなって思ってる。」

 

「何観るの?」

 

「一本は今話題の奴。もう一本は昔の映画のリバイバル上映を観に行こうかなって。」

 

「2本観るんだ。」

 

「どこに行っても混んでそうだしさ。」

 

「それもそうやね。で、もう一本のリバイバル上映は何なん?」

 

「司が勧めてきたんだけどさ……」

 

そう言って瀧はまもなくシリーズ開始70年を迎える怪獣映画の第1作の名前を挙げた。

 

「へ、へぇー。」

 

「騙されたと思って観てこいだってさ。きっと三葉も気にいるって言ってたけど、大丈夫かなあ?別に嫌なら他のでもいいよ。」

 

「……ここは藤井君を信じて騙されよ、瀧くん。」

 

「三葉がそう言うのなら。」

 

そんな話をしていると四葉が上がってきた。

 

「三葉、先に入ってきなよ。もう終わるしさ。」

 

「じゃ、お言葉に甘えて。」

 

三葉が浴室へ消えていく。すると瀧は髪を拭いている四葉を呼び、ソファーに隣同士で座らせる。

 

「四葉ちゃん、気遣いありがとね。明日明後日空けてくれて。」

 

「そんなん、礼にも及ばんよ。」

 

「やっぱり四葉ちゃんは三葉のことが大好きなんだね。」

 

「えっ」

 

「私服、三葉を意識してるでしょ。」

 

「な、なぜバレた!?」

 

「イマドキの女子高生はそんなに落ち着いた服着ないと思うし、何より雰囲気が三葉に似てる。」

 

「……瀧さんって見た目の割に察しがええんやね。」

 

「…………。」

 

瀧は答えず、別の質問をする。

 

「やっぱり三葉に憧れてる?」

 

四葉は首を縦に振る。

 

「どんなところ?」

 

「やっぱりちょっと抜けてるところがあってもこの家を支えてる所かな。泣き虫のくせに、私とかおばあちゃんの事になると無条件で気丈に味方してくれるところ。やからこそ彗星が落ちてからのねえちゃんは心配やった。何か、仮面を被ったみたいで……やっぱり昔みたいなねえちゃんが好きやったから。

でも瀧さんに会うてからねえちゃん元に戻ったんよ。いっぱい笑って、いっぱい泣くくせに一本の筋が通ってるねえちゃんに。だから瀧さんには感謝しとる。」

 

「こんな頼りない俺だけど、三葉を貰っていい?」

 

「当たり前やないの。もう私はそのつもりやよ。」

 

「ありがとう。四葉ちゃんも、受験頑張ってね。」

 

「一つだけ頼み聞いてくれる?」

 

「何だい?」

 

すると、四葉は瀧に抱きついてきた。

 

「な、な、何やってるんだ?」

 

「ねえちゃんのこと、ほんまに頼みます。そして、私の家族になってください。いつでも悩みを聞いてくれて、今みたいに私の気持ちに気づいてくれて、無条件で私を味方してくれる家族に………」

 

瀧は悟る。今まで四葉は甘えたくても甘えられなかったのだ。三葉は自分と妹のためにしっかり金を稼いで来なければならないし、何かあったら家を守らなければならない。だからいかなる時も気を抜けなかったのだ。四葉を心配させないために、あまり心を開かなかったのだ。逆にそれが四葉を心配させていたのは皮肉なことだが、気持ちはよくわかる。

そして、多分これからは四葉は1人で生きていかなければならない。そうなれば、今まで迷惑をかけてきた姉には頼りたくはない。目標としているからこそ、頼れないのだ。だから、自分と等身大で接してくれる存在として瀧を求めている。

 

「分かった。俺は四葉の家族だ。」

 

その返答を聞いて、四葉は離れる。

 

「やっぱり瀧さんは優しくて聡いんやね。」

 

「お褒めに預かり、この立花瀧、光栄の至り。」

 

その後色んな話をした。宮水と糸守の歴史。四葉の交友関係、そして三葉と父の微妙な関係まで。

 

「最近わかるようになってきたんやけど、ちょっとできた溝が深すぎたんやね。」

 

「おばあさんは年の功で折り合いをつけて今は一緒に暮らしてるんだろうけど、三葉は一番傷つきやすい時期に傷ついて、一番自分の心の整理がつかない時期にいがむ理由がなくなっちゃったからなあ。結局話し合う機会がなくて、あっても両方とも気まずいからズルズル続いちゃってるわけだ。」

 

「そうなんよ。難しいな〜。」

 

「ま、いずれはサシで話す時が来るよ。その時に仲直りできればいいんだ。」

 

「期待してますよ、お兄ちゃん。」

 

「まだお兄ちゃんは早いよ。」

 

すると、三葉が上がってきた。

 

「瀧くん、上がったよ〜」

 

「ほら、入っといで、お兄ちゃん。」

 

「よ、四葉、しれっと自然に何言うとるん!?」

 

何も知らない三葉は慌てふためいている。瀧は呆れながらも返事する。

 

「分かったよ、四葉。」

 

「瀧くん!?私が風呂入ってる間に何があったんよ!?」

 

「じゃ私勉強してくる〜〜」

 

「ま、待って!!私を1人にせんとって!!」

 

三葉の悲痛な叫びが宮水家に木霊するのであった。




<次回予告>瀧と三葉のゴールデンウィーク2日目は映画デートである。そこで瀧と三葉は意外な人物と遭遇することとなる。
次回 11月6日月曜日午後9時3分投稿 第14話「恋と映画とキューピッド」
瀧と三葉の物語が、また1ページ。

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