君の名は。〜bound for happiness(改)〜   作:かいちゃんvb

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どうも、かいちゃんです。
1月〜2月のオリジナル版読んでてくれた人、誠に申し訳ございませんでした。最初のうちは読みやすく表現変えただけのものが多いです。じんわりやんわり途中から軌道変更していく感じ行きます。
ゆっくりのっぺりやって行きます。どうぞよろしくお願いします。
原作ラスト数分の所からスタートです。


第1章 出会い
第1話 再会


こんな偶然、あるだろうか?

 

5年前のある出来事のあとから、ずっと何かを探していた。記憶には霞がかかっていて、思うように思い出せない。なぜあの時あんな事をしたのか。何を自分は探しているのか。その、すっかり思い出せなくなってしまった何かが、自分のすぐ目の前にあった。

春、四月。社会人になったばかりの俺ー立花瀧はその日通勤電車に揺られていた。

 

並走する電車のドア窓の向こうの一人の女性。俺の目はそこに釘付けになった。理性とか心じゃなく、本能が何か=彼女であると叫んでいる。彼女も目を見開いてこちらを見ていた。彼女も俺と同じなのだろうか、とても驚いたような表情をしている。初めて見たはずなのに、なぜか懐かしさを感じるその面影から目が離せなかった。

 

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こんな偶然、あるのだろうか。

 

八年前に東京に出てきてから、いや、正確には八年前の"あの出来事"の後からずっと何かを探していた。記憶には靄みたいなものがかかっているのか、ぼんやりとしか思い出せない。なぜあの時あんなに必死になれたのか。あの時"それ"が起こることをなぜ知っていたのか、今となっては全く思い出せない。だが、それを思い出す鍵になり得る1ピースが、確かに目の前にあった。

 

春、四月。社会人4年目になったからって、生活のリズムに変化などない。妹が今年受験を迎えるが、それだけだ。いつも通りに通勤電車に揺られていた。

 

並走する快速電車の窓の一人の青年。私の目はそこに釘付けになった。理性とか心がとかじゃなく、本能が何か=彼であると叫んでいる。彼も目を見開いてこちらを見ている。彼も私と同じなのだろうか、驚いたような表情でこちらを見ている。初めて見るはずなのに、無性に懐かしさを感じるその面影から目が離せなかった。

 

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並走する二本の列車のうち、彼女の乗る普通電車が千駄ヶ谷駅ホームに減速しながら滑り込む。彼女は今から開くドアににじり寄り、ドアが開いた瞬間、走り出した。俺の乗る快速も、次の新宿に滑り込む。俺もドアが開いた瞬間、彼女を求めて走り出した。

 

久々の運動に息を切らしながら、俺は須賀神社の石段の下にたどり着いた。見上げると、最上段に同じく息を切らした彼女がいる。彼女は階段を降り、俺は昇る。やはり何か気恥ずかしくなって、何事もなかったかのようにすれ違う。だが、本能が俺の後ろ髪を引く。それにつられるように振り向くと、同じく振り向いた彼女が涙を流しながら俺を見上げている。気づくと俺も涙を流していた。そして二人同時に、

 

「君の……名前は。」

 

そう呼びかけていた。まず俺が先に名乗った。

 

「立花……瀧。」

 

彼女は、何か無くし物を見つけ出したような、弾けるような笑顔で頷く。そして彼女も名乗る。

 

「三葉……宮水三葉。」

 

彼女の行動の理由がわかる。確かに無くし物を見つけ出したような気分になった。何故かは分からないが、妙にその名前がしっくりくる。まるでずっと前から知っていようだ。だか、それがいつ、どこでかは全く分からない。ただ漠然と、その名前を知っていたような気がした。

 

「私たち、どこかで会ったことありますか?あなたのことを…ずっと前から知っていた気がするんです。変かもしれないけど……」

 

「そうなんです。俺もそんな気がするんです!でも思い出せない!何か大切な、忘れちゃダメなものを忘れている。」

 

必死で思い出そうとする。だが、何も出てこない。それは彼女も同じらしく、右手を顎に当て、思索の海に飛び込んでいるようだ。すると、彼女が何かに気がついたように、左の掌に右の拳で作った槌を叩いた。

 

「何か、思い出しましたか?」

 

俺は急かすようにそう聞いた。

 

「会社」

 

「えっ」

 

「今日、平日だ。」

 

「…………あっ!」

 

慌てて腕時計をみる。時間に余裕を持たせて家を出たので今からでもギリギリ間に合いそうだが、それでもヤバいことには変わりない。俺は急いで名刺とペンを取り出し、名刺の裏に自分の携帯番号を書き殴って彼女に渡した。

 

「またお話ししましょう。とりあえず今はこの辺りで。」

 

「わかりました。必ず連絡します。あと、これを。」

 

彼女も裏に携帯の番号を書いた名刺を俺に渡す。それを仕舞いながら二人は元来た道を猛ダッシュで逆走した。入社したてホヤホヤの新人が四月から早々遅刻なんて、こんなにやばいことはは他にないはずなのに、何故か気分は高揚している。懐かしい何か、ずっと探していた何かにようやく出会えた。そのことが俺の高揚感に拍車をかける。どうやら今日はこの高揚感からくるニヤつきを抑えることに労力を割かねばならなくなりそうだ。




1月の時は瀧視点しか書いてませんでしたが、三葉視点追加しときました。楽しんで頂けると幸いです。
<次回予告>出社時間ギリギリに滑り込んだ三葉だったが、同僚の堀川に遅れてきた理由を詮索されてしまう。三葉は堀川の追及を逃れることは出来るのか?
次回 第2話「三葉と西のカウンセラー」
瀧と三葉の物語が、また1ページ。

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