Diavolo Bianco   作:artisan

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ひとまず、区切りかな。


Episode.52 Diavolo Bianco(白鬼)

月日は、流れるのが本当に早い。

あの事件(UW事件)から、もう3ヶ月も過ぎちゃった。

見事200年という長い時間を過ごし、生き延びたキリト達は負担を消す為に記憶を消し、リハビリも終えて普段通りの生活に戻っていた。

.....いや、アートは違った。彼だけ、記憶を残したんだ。せめてもの覚えておくだけでも、と。

お陰で彼は2ヶ月もリハビリをする羽目になった。.....なんて事は無かったけど。

彼の持つ特殊体質により、彼等と同じ時間をかける結果になった。この体欲しいな(唐突な欲望)。

.....報告はこれぐらいかな。さて、今日も飽きずにやってきた日常だが.....今回ばかりは少し違うみたい。

今日は夜に、エギルのバーでパーティーをやるんだとか。さぁ、僕達も覗いてみようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...そろそろかな.....」

ある学校の正門前にて。其処には二人の少女が。

言わずもがな、藍子と木綿季だ。

彼女達は今、ある人()を待っていた。

その相手とは.....

 

「お待たせ~!」

「遅くなったな」

━━和人と明日奈だった。

どうやら、この四人でバーに行くらしい。

アートは、何やら『やる事がある』と言っていたそうな。

「大丈夫ですよ。ちょうどだったので」

「そうだな。...んじゃ、行くか」

「うん!早く行こー!」

皆して待ちきれない様子。

彼等も特別授業が終わった事で、早速向かって行った。

 

 

 

 

 

「.....ようやくいつもの日々が戻って来たな」

バーに向かう道中。

唐突に和人がそんな言葉を発した。

「確かに。違うのはアイちゃん(藍子の愛称)達が増えた事ぐらいかな」

「私たちが知り合ったのは最近ですからね」

思い返せば、偶然だらけである。

自分達の手助けをしてくれる人を探すためにデュエルを始め、アスナと知り合う。

更に、それの消し忘れでアートとも。何たる奇跡か。

「.....色んな事がありましたね」

「うん.....兄ちゃんが死んだ時はショックだったけどね」

そうだ。彼が死んでしまった──実際には死んでいなかったが──時も。

.....あの時はどれだけ泣いただろうか。少なくとも1週間は立ち直れなかった筈だ。

「でも、実際生きてたじゃない。あの時に抱き着いたアイちゃんは可愛いかったなぁ.....」

「うぅ.....その話は止めてください.....///」

明日奈の言葉で彼らが思い出したのは、UWの時の事。

あの時はダントツで感動の場面、そしてメチャクチャ可愛かったシーンと即座に認定された(解せぬbyアート)。

「.....そういや、アートは何処に居るんだ?確か、今日初めて会うんだろ?」

「ええ。『やる事がある』って言ってましたけど.....」

何気に今回の主役が何処に居るか、彼女に聞く。

が、どうやら彼女も知らないらしい。何処行ってんだあの真っ白白助(作者より)。

...そして、ふと前を見ると.....

「あ.....着いたよ!」

どうこうしている内に、バーはもう目の前だった。

.....中から聞こえる賑やかな声を聞くに、既に人は集まっているのだろう。

盛り上がり過ぎじゃないか、と苦笑しながら扉を開けると.....

 

「お!遅いぞ主役共!」

クライン──本名を、壷井(つぼい) 遼太郎(りょうたろう)が気付き、此方へと一斉に目を向けられる。

一瞬静寂が訪れるも、すぐに笑声が響き渡る。

「おっせーぞ!」

「ほら、早く早く!」

数人のALOプレイヤーに急かされ、何故か準備されていた表彰台のような物の上に立つ事に。

困惑しながらもマイクを渡されたので、取り敢えず話す事にした。

「えー.....今回は、集まってくれてありがとう。.....正直、俺には祝辞やら何やらは言えない。だから、代表してこれだけ言っておく。

 

俺達は、帰って来たぞ!!」

「「「ウォォォォォ!!」」」

「「此処の男性陣は馬鹿だ.....」

ご最もである。

しかし、藍子は呆れておらず、辺りをキョロキョロと見回していた。

「...?どうしたの?」

「あ、いえ.....アートさんは来ていないのかなって.....」

すると、近くで聞いていた女性が振り返り、答えを言った。

「いや、彼なら厨房で━━」

 

 

「呼んだか?」

━━ふと、後ろから.....いや、厨房の入口から聞き慣れた声がした。

振り返って見てみると、茶髪のボサボサ髪に、冷静さを醸し出す眼鏡。

言わずもがな、もう一人の主役━━アートが其処に居た。

 

 

 

 

 

「調子はどうだ?ちゃんと飯食ってるか?」

「ええ。元気いっぱいですよ」

ワイワイと盛り上がっているテーブルを横目に、二人はカウンターで話していた。

話によると、アートは一番早く来て、エギル──名前が長いのでエギルと呼んでいる──の手伝いをしていたらしい。

「そちらもどうですか?アートさ.....じゃなかった、えーと.....」

「ああ、そういや自己紹介してなかったな。琴葉(ことは) 剣匠(けんしょう)だ。ケンやらショウやら何でもいいぞ」

「剣匠さん.....じゃあ、ショウさんで。ショウさんは?その足がちゃんと治ってないと.....」

そう言って、彼の足を見る。

先程は普通に歩いていたが、大丈夫なのだろうか。

「大丈夫だよ。完治はしてないけど、一応歩けるぐらいには回復したから」

「そうですか.....無理はしないでくださいよ?」

だからこそ、彼に頼む。.....辛い思いはしてほしくないし、何よりも見るのが嫌だ。

しかし、彼は一瞬だけ目を丸くし、次の瞬間には笑っていた。

「勿論。つーか、今の方が丁度いいかな。.....でもな、アイ.....」

「キャッ!?」

ショウは突然藍子の頭を、しかし、優しく腕を回して抱き寄せた。

いきなりの事に驚くが、次の言葉でそれは無くなっていた。

「お前も無理はすんなよ?.....分かってるんだよ。ホントは俺に甘えたいってな」

「う.....///」

まさかの隠していた心情をカミングアウトされた事に、藍子は顔を紅潮させる。

と、咄嗟に周りを見渡し、誰にも聞かれていない事を知ると、ホッと胸を撫でおろした。

「.....分かってますよ。これからドンドン甘えるつもりですから」

「...そうか。それならいいや」

ハッキリとした答えにショウは満足そうな笑みを浮かべた。

.....まるで、縛られた呪いから解放されたような、満面の笑みを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....」

そして時刻は進んで場面は移り変わり、ALOの夜空にて。

アートは一人、月に照らされている城を眺めていた。

「.....作り物だってのに.....やっぱ綺麗だな」

そう。これは作られた幻想。本物は空想に在り。

しかし、作り物であってもその姿は本物だ。

「さて、そろそろ時間だな.....って、アレ?」

そろそろ広場で二次会が始まるはず。

其処から飛び立とうとしたアートは、一人の少年を見つけた。

すると、あちらも気付いたのか、此方に近寄ってきたではないか。

「.....へぇ。まさか、お前も居るとはな」

「.....何?文句ある?」

まさかの知り合い。それも、挑発をされる程には。

全体的に黒く、如何にも無口そうな少年は欠伸をしながら返した。

「さて.....俺の出番はこれで終わりだな。後は任せたぜ、()()()()()君?」

「.....うっさい、()()()()

そう呼ばれた少年は、笑いながら差し出された手をパシッと叩いた。

 

.....ああ。今宵も月が、綺麗だな。




最後に出てきた彼。一体誰なんでしょうねぇ.....

.....ほぼ言ってるけどなぁ。


あ、一応最終回と言えば最終回です。
ここからはオリジナルですね。取り敢えず、有難うございました!

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