月日は、流れるのが本当に早い。
見事200年という長い時間を過ごし、生き延びたキリト達は負担を消す為に記憶を消し、リハビリも終えて普段通りの生活に戻っていた。
.....いや、アートは違った。彼だけ、記憶を残したんだ。せめてもの覚えておくだけでも、と。
お陰で彼は2ヶ月もリハビリをする羽目になった。.....なんて事は無かったけど。
彼の持つ特殊体質により、彼等と同じ時間をかける結果になった。この体欲しいな(唐突な欲望)。
.....報告はこれぐらいかな。さて、今日も飽きずにやってきた日常だが.....今回ばかりは少し違うみたい。
今日は夜に、エギルのバーでパーティーをやるんだとか。さぁ、僕達も覗いてみようか。
「...そろそろかな.....」
ある学校の正門前にて。其処には二人の少女が。
言わずもがな、藍子と木綿季だ。
彼女達は今、ある人
その相手とは.....
「お待たせ~!」
「遅くなったな」
━━和人と明日奈だった。
どうやら、この四人でバーに行くらしい。
アートは、何やら『やる事がある』と言っていたそうな。
「大丈夫ですよ。ちょうどだったので」
「そうだな。...んじゃ、行くか」
「うん!早く行こー!」
皆して待ちきれない様子。
彼等も特別授業が終わった事で、早速向かって行った。
「.....ようやくいつもの日々が戻って来たな」
バーに向かう道中。
唐突に和人がそんな言葉を発した。
「確かに。違うのはアイちゃん(藍子の愛称)達が増えた事ぐらいかな」
「私たちが知り合ったのは最近ですからね」
思い返せば、偶然だらけである。
自分達の手助けをしてくれる人を探すためにデュエルを始め、アスナと知り合う。
更に、それの消し忘れでアートとも。何たる奇跡か。
「.....色んな事がありましたね」
「うん.....兄ちゃんが死んだ時はショックだったけどね」
そうだ。彼が死んでしまった──実際には死んでいなかったが──時も。
.....あの時はどれだけ泣いただろうか。少なくとも1週間は立ち直れなかった筈だ。
「でも、実際生きてたじゃない。あの時に抱き着いたアイちゃんは可愛いかったなぁ.....」
「うぅ.....その話は止めてください.....///」
明日奈の言葉で彼らが思い出したのは、UWの時の事。
あの時はダントツで感動の場面、そしてメチャクチャ可愛かったシーンと即座に認定された(解せぬbyアート)。
「.....そういや、アートは何処に居るんだ?確か、今日初めて会うんだろ?」
「ええ。『やる事がある』って言ってましたけど.....」
何気に今回の主役が何処に居るか、彼女に聞く。
が、どうやら彼女も知らないらしい。何処行ってんだあの真っ白白助(作者より)。
...そして、ふと前を見ると.....
「あ.....着いたよ!」
どうこうしている内に、バーはもう目の前だった。
.....中から聞こえる賑やかな声を聞くに、既に人は集まっているのだろう。
盛り上がり過ぎじゃないか、と苦笑しながら扉を開けると.....
「お!遅いぞ主役共!」
クライン──本名を、
一瞬静寂が訪れるも、すぐに笑声が響き渡る。
「おっせーぞ!」
「ほら、早く早く!」
数人のALOプレイヤーに急かされ、何故か準備されていた表彰台のような物の上に立つ事に。
困惑しながらもマイクを渡されたので、取り敢えず話す事にした。
「えー.....今回は、集まってくれてありがとう。.....正直、俺には祝辞やら何やらは言えない。だから、代表してこれだけ言っておく。
俺達は、帰って来たぞ!!」
「「「ウォォォォォ!!」」」
「「此処の男性陣は馬鹿だ.....」
ご最もである。
しかし、藍子は呆れておらず、辺りをキョロキョロと見回していた。
「...?どうしたの?」
「あ、いえ.....アートさんは来ていないのかなって.....」
すると、近くで聞いていた女性が振り返り、答えを言った。
「いや、彼なら厨房で━━」
「呼んだか?」
━━ふと、後ろから.....いや、厨房の入口から聞き慣れた声がした。
振り返って見てみると、茶髪のボサボサ髪に、冷静さを醸し出す眼鏡。
言わずもがな、もう一人の主役━━アートが其処に居た。
「調子はどうだ?ちゃんと飯食ってるか?」
「ええ。元気いっぱいですよ」
ワイワイと盛り上がっているテーブルを横目に、二人はカウンターで話していた。
話によると、アートは一番早く来て、エギル──名前が長いのでエギルと呼んでいる──の手伝いをしていたらしい。
「そちらもどうですか?アートさ.....じゃなかった、えーと.....」
「ああ、そういや自己紹介してなかったな。
「剣匠さん.....じゃあ、ショウさんで。ショウさんは?その足がちゃんと治ってないと.....」
そう言って、彼の足を見る。
先程は普通に歩いていたが、大丈夫なのだろうか。
「大丈夫だよ。完治はしてないけど、一応歩けるぐらいには回復したから」
「そうですか.....無理はしないでくださいよ?」
だからこそ、彼に頼む。.....辛い思いはしてほしくないし、何よりも見るのが嫌だ。
しかし、彼は一瞬だけ目を丸くし、次の瞬間には笑っていた。
「勿論。つーか、今の方が丁度いいかな。.....でもな、アイ.....」
「キャッ!?」
ショウは突然藍子の頭を、しかし、優しく腕を回して抱き寄せた。
いきなりの事に驚くが、次の言葉でそれは無くなっていた。
「お前も無理はすんなよ?.....分かってるんだよ。ホントは俺に甘えたいってな」
「う.....///」
まさかの隠していた心情をカミングアウトされた事に、藍子は顔を紅潮させる。
と、咄嗟に周りを見渡し、誰にも聞かれていない事を知ると、ホッと胸を撫でおろした。
「.....分かってますよ。これからドンドン甘えるつもりですから」
「...そうか。それならいいや」
ハッキリとした答えにショウは満足そうな笑みを浮かべた。
.....まるで、縛られた呪いから解放されたような、満面の笑みを。
「.....」
そして時刻は進んで場面は移り変わり、ALOの夜空にて。
アートは一人、月に照らされている城を眺めていた。
「.....作り物だってのに.....やっぱ綺麗だな」
そう。これは作られた幻想。本物は空想に在り。
しかし、作り物であってもその姿は本物だ。
「さて、そろそろ時間だな.....って、アレ?」
そろそろ広場で二次会が始まるはず。
其処から飛び立とうとしたアートは、一人の少年を見つけた。
すると、あちらも気付いたのか、此方に近寄ってきたではないか。
「.....へぇ。まさか、お前も居るとはな」
「.....何?文句ある?」
まさかの知り合い。それも、挑発をされる程には。
全体的に黒く、如何にも無口そうな少年は欠伸をしながら返した。
「さて.....俺の出番はこれで終わりだな。後は任せたぜ、
「.....うっさい、
そう呼ばれた少年は、笑いながら差し出された手をパシッと叩いた。
.....ああ。今宵も月が、綺麗だな。
最後に出てきた彼。一体誰なんでしょうねぇ.....
.....ほぼ言ってるけどなぁ。
あ、一応最終回と言えば最終回です。
ここからはオリジナルですね。取り敢えず、有難うございました!