その名は『戦神 メルティア』。
ただ
「グッ.....」
振り落とされる包丁を、何とか【夜空の剣】で受け流す。
先程まで精神喪失状態だった彼━━キリトにとって、この状況は大分キツい。
アスナ達の努力によって勇者は覚醒した。
そして、その世界を混沌に陥れようとする者━━PoHを倒そうと尽力する。
しかし、目覚めたばかりの身体は充分に衰えている。
「ハッハッハッ!!やっぱキツいよなぁ!!」
「そういうお前も、お喋りしていて大丈夫なのかっ.....!?」
「戦ってる相手を気遣うたぁ、随分余裕なんだな!!」
そう言って、再度包丁を振り下ろす。
キリトが弱っているのもあるが、奴の武器が異常なのもある。
奴の武器━━
現在、包丁は何十人もの命を吸っている。
それが何を意味するのか。
「ハァ━━ッ!!」
「ガッ!?」
━━最凶である事を示す。
PoHはキリトを強引に吹き飛ばし、見事倒れさせることに成功した。
「オイオイ.....俺ん中には失望しかないぞ?
呆れ、笑い、怒り。
多種多様な表情で彼を精神的に追い詰めていく。
「キリト、君.....!!」
彼を助けようと、身体に鞭を入れるアスナ。
しかし限界はとうに来ており、それは叶わない。
「は、ぁぁぁぁ.....!」
同じ状態にあるランが動く。
立ち上がる事は出来た。だがそれだけだ。
「ク、ソ.....!!」
動かない。代わりに、両手にある二刀を悔しさから握り締める。
彼は思った。
━━これじゃ、
「ァァァァアアアア.....!」
“心意”を募らせる。
目は黄金色に変わり、緑色の粒子が身体中に纏わり付く。
「ハァッ!」
だが、遅かった。
魂を吸い取る包丁は、そのまま彼に━━
「でやぁぁぁぁ!!」
「!?...ガァッ!?」
━━振り下ろされる事は無かった。
突如として、彼方より現れた閃光にPoHは吹き飛ばされた。
光が止み、其処に立っていたのは.....
「.....やぁ。久し振りだね。」
「.....ユー、ジオ?」
亜麻色の髪に、黄緑色の目。
かつて、白亜の塔で死んだ筈の彼、ユージオだった。
「お前、なんで.....生きてるんだ.....?」
キリトは驚きを隠せない。
当たり前だ。彼は確かに目の前で死に、そのまま光の粒と成り果てた筈。
だが、今目の前に居る彼は紛れもなく本人だろう。
「
「痛ェなァ、オイ!」
怒声を上げながら起き上がるPoH。
それに反応するように、ユージオは顔を向けた。
「.....流石に倒せないか。」
「当たり前だろォ!つーか何邪魔してんだ!!お前はいらねェよ!!」
そんなPoHの言葉にユージオは.....
「.....そっか。じゃあ
ただ、笑った。
しかし、どこか恐怖を覚えるような笑み。
「貴方はすぐに.....
「あァ?何言ってやが.....」
PoHがその言葉の意味を知ろうとした、その時。
彼目掛けて、
「!?.....畜生ッ!」
咄嗟に横へ転がる。
そして、すぐさま射出元を見て、
彼につられて周りの者も見る。
其処には.....
「ったく.....一人で行くなっての。」
白い服に白い髪で。
「ゴメンゴメン。結構危なかったからね。」
「それでも、だ。ったく.....」
かつて、命を散らせようとしていたラン達を救い、その身を焼いた筈の。
「アート、さん?」
「.....よう。久し振りだな。」
もう会えないと思っていた、最強の男。アーティザンだった。
再会、完了.....!
じゃあ、次回はもう、分かってるよね?(ゲス顔)