魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

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 大変申し訳ございません。
 これで、誘拐編が終わる予定だったんですが…(汗)。

 無理でした。
 もう一話で今度こそ終わります。


第7話 災いの華

              :美海

 

 屋上にいるにも拘らず、建物の中にいる人物と見詰め合ってしまった私です。

 

 今頃なんですが、私は今バリアジャケット初披露しております。この年齢なんで金属鎧風のバリアジャケットは似合わないから、調整した。結果こうなりました。大き目のフード付きの黒いコートに所々に鎧のような脚甲や手甲、肩の部分にもショルダーガードのような物が付いている。フードの中は口元まで覆った布で顔は窺えないようにしている。素顔晒すのもなんなんで。

 

 私は動く前に、念話を強制的にアリサちゃん、すずかちゃんに繋げる。

『反応しないでね』

 二人が思いっ切り挙動不審になっているが、サディスト吸血鬼はなのはちゃんに夢中のご様子。

『気付かれると、殺されるかもよ』

 二人はなんとか表面上は落ち着きを取り戻す。

『あとは、移動式の結界装甲…シールドを張るから、落ち着いて自分達が確実に逃げられるタイミングで逃げてね。隙は必ず出来るから』

 結界装甲はベルカ式と魔法科高校の劣等生の魔法を合わせた私のオリジナルである。物理・魔法攻撃を防げる優れものである。干渉装甲でも空気甲冑でもいいんだけどね。あれは、私が干渉力を強めてやったり、プラスアルファの技術が必要だったりするからね。私の手を離れると柔軟性がなくなるんだよ。その点、リリカルなのはの魔法は効果・作用が、いい意味で自由が利くからね。

 私は、拳銃型デバイスを二人に向けて二度引き金を絞った。

 二人の縄の結び目が解けるが、二人は気付かれないようにしっかり手で押さえている。流石。

 そして、不可視の結界装甲が展開されたのを確認し、今度はなのはちゃんの相手二人をなのはちゃんの棒を少し操って、黙らせる。何気にピンチだったんだね。なのはちゃん。

 なのはちゃんは、目を白黒させているが、時間がないので念話を強制的に繋ぐ。

『援護するよ。身体能力を一時的に制御が効く範囲で上げる。応援その1とその2も、もうすぐ、到着するから、それで粘って。あと上の二人もちゃんと護ってるから大丈夫」

『お、応援その1?その2!?えっ!?ええ!?』

『動揺は後、ほら、目の前の敵が持ち直すよ』

 二人同様、シールドでもいいんだけど、下手するとサディスト吸血鬼が騒ぎ出すかもしれないからね。健闘を祈る。

 

「リニス、今こっちに応援その1、その2が向かってるからさ、外の雑魚片付けといてよ」

「分かりました。その応援に見付かったら不味いですか?」

「不味いね」

 リニスは一つ頷き、屋上から飛び降り、雑魚を片付けに向かう。

 

 私は下の階に向かって動き出す。

 そしたらさ、件の人物?にエンカウントしたよ。

 貴女、今も下の階でチビデブのおっさんに付いてるよね。

 私は、下の階を視ると確かにまだいる。

「よう!透視能力かなんかの持ち主か」

 金髪美女は不敵に嗤う。

「アタシは、イレイン。記念すべき最初にぶっ殺す奴だからな。名乗ってやったよ!ガキってのが、気に入らないけどね」

 う~ん。相手見ていった方がよかったね。

 イレインさんとやらの腕からブレードが飛び出る。

 こっちじゃ、自動人形って言うんだっけ? 

 

 こっちに転生してから初実戦闘開始。

 

 

              :イレイン

 

 アタシと妙なガキとの戦いは、私の解析結果から導き出される予想から外れていた。

 アタシの解析結果が悉く裏切られる。いけ好かないが氷村の改造で性能が上がった筈なのに、どういう事だい!

 解析では、ただの瞬発力のあるガキなのに、動きは化け物じみている。透視を使った筈なのに、血の中からアイツは剣を一本出しやがった。普通は異能は複数持ちえない。HGSでもない。何だ!?こいつ!

 

 剣は、恐ろしい腕前だ。

 棒のように撓る(しなる)一撃が打ち込まれる。腕を滑り込ませて防御した筈なのに、気が付くと軌道が変化し、腕を飛び越え肩に打ち据えられる。そこから信じられない程に滑らかに、高速に突きが繰り出される。まるで砲弾のような剣先が腹に突き刺さり、吹き飛ばされ壁を突き破る。

「がぁ!!」

 アタシは腹に貯めていた空気を思わず、吐き出す。

 さっきからブレードによる攻撃と仕込みが可能になった重機関銃を使い戦っているが、掠りもしねぇ!ブレードは捉えたと思っても、幽霊みたいにあと一歩が届かない。空を切る。刃での打ち合いにすらならない。弾丸の嵐もまるで当たる気配がない。そこまで高速で避けているように見えねぇぞ。

 さっきから一方的にボコられてやがる。アタシが人間ならもう死んでるぞ。だが、この結果でさえ、奴が手加減しているからだ。()()()()()()()()使()()()()()()

 奴が剣として使っていれば、私は今頃細切れになってるからね。衝撃のみを伝える打ち方をしていやがるんだ。打ち込まれる度に、内部機関が悲鳴を上げてやがる。

 

【戦闘能力が50%を切りました】

 私の戦闘管理システムが無情にも危機的状況を告げる。

 ちっ!使いたくなかったんだがな。

 

「悪りぃな。正直、舐めてたわ。これで仕舞だ」

「そう」

 反応薄いな。精々、余裕コイてろ!

 

 アタシの最大火力だ。

 両腕が、巨大な砲身に変形すると同時に強烈な光が放たれる。

 氷村が傑作の一つと吹いていた荷電粒子砲

 轟音と共に光が収まると、アタシがいる階から上が消し飛んでいた。

 しかし、この威力でなんで光が出るんだろうね?

 くだらない事を考えていると、呆れた光景が姿を現した。

 

 そこには無傷のガキが立っていた。

 

 

              :美海

 

 おお!流石にちょっとビックリした。

 思わず、血の結界で防御しちゃったよ。魔法込みの剣技でも防げたと思うけど。

 

 血の結界は血界戦線の裸獣汁外衛賤厳(らじゅうじゅうげいしずよし)がやってたヤツだ。血で対象を中心に円で囲みドーム状の結界を造るヤツ。え?特典まだあったのかって?

 赤屍さんの能力って血液を武器化したりも出来るから、再現できると思って色々試したんだよ。それに血界戦線の特典選ばなかったけど、結構好きな作品です。現に斗流血法とか魔法絡めれば再現可能だったよ。

 

「化け物め」

 イレインさんは両腕の砲身を通常の腕に戻す。

 貴女の方は正真正銘人間じゃないけどね。

「しゃーねー」

 イレインさんが指を鳴らすと、イレインさんの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 何人もいるのはそういう事ですか。

「チッ!驚かねぇな。ロストテクノロジーを構造解析して、氷村が造ったアタシの複製さ。性能はアタシと大差ないレベルさ。あのクソ野郎はコイツ等をネットワークを通じて売る気さ。

 遂に人形が人を殺す時代になるって訳さ。大戦争の父やら母やらになる覚悟がありゃ、大儲け出来るだろうぜ!だが、コイツ等にはチョットしたイタズラが仕掛けてある。いざ戦争になりゃ、コイツ等は敵味方の区別なく、目に映る者全て殺すように出来てるのさ。事前にプログラムしてあって、バレないようになってるんだとよ!」

「なんで、そんな事教えるんです?」

「さてな。死ぬ人間に冥途の土産って奴だろうよ」

 イレインさんは再び指を鳴らすと、後ろのイレインさん軍団が私に殺到する。

『大丈夫ですか!?なんか建物吹き飛びましたけど!?』

 ここで、リニスの念話が飛び込む。空気読もうよ。

『片付けは終わった?』

『無事ですね!?雑魚はもう片付きましたよ。応援はもう既に突入済みです。あともう一組も、もうじきといったところです。…彼等って本当に人間ですか?』

 高町家の人達の事ですね。ベルカに住んでた人達を見ていた私には、珍しくないけどね。

『こっちはもう片付く。撤収準備』

『お友達はいいんですか!?』

『最後の応援も到着するでしょ?もう私はもう必要ないよ』

 某・入れ墨を入れたお奉行様だって、引き上げるタイミングだよ。

 まあ、飛鷹君にいいところは譲るからさ。頑張ってよ。

 

 私は念話を切るとイレインさん軍団に向かって行く。

 私はイレインさん軍団の隙間を縫うように駆け、剣を振るう。

 首筋、胴、袈裟切り…私が通った後には動く者などない。最後の一人を切り倒し、本物のイレインさんの前に立つ。

「やっぱり、手加減してたかい」

 イレインさんはその場から少しも動いていないし、戦おうともしていなかった。

「もう、ネタ切れだ。殺んな」

「承知」

 

 私は目を閉じたイレインさんの頭部に剣を振り下ろした。

 

 

              :なのは

 

「それじゃ、始め」

 気の抜けたいい加減な開始合図と共に、私は鉄パイプを構える。

 男の人二人は余裕の様子。

 初手は譲ってくれるという事なんだろう。私が攻めに入っても、すぐに負ける事は目に見えている。リーチ・力・身体能力どれも劣っている。受け流すのも難しい。避けるかいなすか。

 

 男の人はニヤニヤ嗤いながら、挑発しているようだが、私が向かってこないので、ワザとらしくゆっくり近付いてくる。

 私は多対一にならないように、位置を相手の動きに応じて変える。

 男の人は最初はふざけて拳を出していたが、足捌きだけで避け続けた私に徐々に苛立ちだした。

 お兄ちゃんやお姉ちゃんの動きに比べれば、全然遅い。

 僅かな隙があっても、攻撃する訳にはいかない。

 

『なのははまだ小さいからね。大の男が相手の場合、確実に相手を一撃で戦闘不能にしなければダメだ。半端な攻撃は相手を本気にさせるだけだからね』

 

 お父さんに稽古の時に言われた言葉が頭の中に浮かぶ。

 

 相手には余裕を保って貰わないと。

 偶にワザと攻撃を受けて、派手に転がり距離をとり、立ち上がる。

 腕で柔らかく受けるだけではダメ。自分で後ろに跳ぶように転がる。

「「なのは(ちゃん)!!」」

 まだまだ、時間を稼がなきゃだね。

 

 拳を避け、いなし、一人の攻撃しか受けないよう立ち回り、もう一人の男の人は私の前に立つ男の人を盾にするように動きを妨害する。

 拳を鉄パイプでいなした時、今まで味方が盾になって攻撃出来なかった人の脚が私に飛んでくる。

「きゃあ!」

 私は大の大人の蹴りで吹き飛ばされる。一応、受け身はとれた。素早く立ち上がろうと片膝をついた時、男の人の追撃。

 ダメ!避けられない!

 

 アリサちゃん・すずかちゃんの悲鳴が聞こえる。

 

 衝撃を覚悟した私だけど、その時、()()()()()()()()()()()

 私は鉄パイプに引っ張られるように、男の人の攻撃を避け、カウンター気味に相手の弁慶の泣き所に鉄パイプが突き刺さる。

 鉄パイプが跳ね上がり、体勢を崩した男の人の脇を抜け、残った男の人の側頭部に鉄パイプが振られる。打たれた男の人は堪らず膝をついた。

 

『援護するよ。身体能力を一時的に制御が効く範囲で上げる。応援その1とその2も、もうすぐ、到着するから、それで粘って。あと上の二人もちゃんと護ってるから大丈夫」

(お、応援その1?その2!?えっ!?ええ!?)

『動揺は後、ほら、目の前の敵が持ち直すよ』

 

 次の瞬間、身体がポカポカして、力が湧くような感覚があった。

 

 男の人二人の目は怒りに染まっていた。手加減はもうないだろうな。

 二人同時に私に向かってくるが、今度は連携を意識している。

 嵐のようなラッシュ…なんだろうけど…。凄く遅く感じる。

 私は二人からの連携攻撃を、一転して余裕で躱し、攻撃を簡単に受け流す。

 集中力が増し、私の周囲で何が起きているか、全て分かる。

 

 頭上で建物の一部が消し飛んだみたい。でも小石程度の瓦礫が落ちてくるだけ、殆ど私にもアリサちゃん達にも当たらない。大丈夫。

 男の人二人は動揺してるけど、戦闘に支障はないみたい。

 

 攻撃が避けきれない時もあるけど、真面に殴られたりしない。インパクトの瞬間を外している。衝撃は大した事がないけど。やっぱり、腕に自信があるって言ってたのは嘘じゃないようで、唇を少し切ったりはある。

 血が少し流れても、気になんてならない。この男の人くらいなら、大体の攻撃がどう来るか分かる。これが、お兄ちゃん達が見てる世界なんだ。凄いな。

 

 互角以上に男の人二人と渡り合っていた時、突然轟音。

 男の人二人は痙攣して倒れてしまった。

「おい!何やった!?」

 氷村さんっていう人が上で喚いている。

 私にもサッパリ分からないよ?

 

 そして突然、氷村さんの後ろのガラスが割れて、黒い塊が飛び込んできた。

 

 

               :飛鷹

 

 俺はサーチャーで見付けていた白い建物の二階の窓に向かって、身体強化した身体で跳躍する。

 サーチャーで三人の位置は確認済み。

 窓にグングン近付くと、なのはちゃんが野郎二人と戦っているのが直接見える。

「ライトニング!」

 俺は野郎共に向かって魔法をブチかます。感電して倒れた。

 俺は窓を突き破り、アリサちゃん・すずかちゃんの前に立つ。

 

 今の俺は、バリアジャケット姿だ。正体はまだ明かさないぜ!

 俺のバリアジャケットのデザインは黒の契約者の(ヘイ)の恰好まんまだ。剣を背をっているくらいの違いしかない。あの特徴的な仮面も付けてるぞ。文句あるか?趣味と実益だよ。

 

 三人に魔法が掛かってるぞ!?建物上部が吹き飛んだので、最悪俺が傷を治すか、最後の特典を使う事も想定していたが、無傷なのは誰かさんの魔法のお陰だったか。

 もしかして、俺以外に転生者いるの?

 なのはちゃんは魔法の効果で全然ピンチじゃなかったし、他の二人も防御魔法が掛けられて安全って、俺ダメじゃん。タイミング的には俺がアウトだぞ。

「なんだ。お前?」

 若干、呆れを含むサドイケメンの声が精神にモロにくる。

 チビデブのおっさんに貼り付いていたネエチャンが俺に向かってくる。ネエチャンの腕からブレードが展開される。アンタ攻殻機動隊の敵サイボーグか!?こんなもんまで混ざってるのかよ!

 俺は剣を抜き放つと、ネエチャンの攻撃を上に跳躍して躱し、大地斬を肩にお見舞いする。頭が無事なら死なないだろう。

 

 大地斬は言わずと知れたダイの大冒険のアバン流剣術の技である。俺の特典の一つで、ダイの大冒険の剣技・闘気の技全てと願った。

 

 強化された腕力での剣技は確実にネエチャンの肩を直撃する。心配するな。峰打ちならぬ非殺傷設定だ。

 かなり派手に地面にめり込んだ筈のネエチャンが、緩慢な動作で立ち上がる。俺は着地と同時に回避運動を開始していたから、紙一重でブレードを躱し、更に三度剣を旋回させる。流石にサイボーグでも、耐えられなかったみたいで、倒れて完全に動かなくなった。

 そして、呆けている黒服の残りを素早く昏倒させていく。

 

「なんだって?助けに来たのさ。三人ともな」

 三人ともピンチじゃなかったとしてもだ!俺の決意は…この程度では折れんぞ。

 サドイケメンの額は血管が浮き上がり、ヒクヒクしている。切れて倒れたら笑うぞ。

「あとはお前だけだな」

 チビデブのおっさんは腰を抜かしている。ないわー。

「いいだろう。劣等種の分際で調子に乗った罪。死で贖って貰おうかな」

 服の袖から刃が飛び出す。某・アサシン教団の人か?お前。しかも劣等種って英雄王も少し入ってね?雑種と似てるぞ用法が。お前がやっても痛いだけだ。

 サドイケメンは中々のスピードで向かってくる。俺も刃が届く寸前で少し横に飛び回し蹴りをかます。

 奴は鼻血吹きながら手摺に引っかかって止まった。

 これなら、サイボーグネエチャンの方が強いな。

「どうした?優良種。遊びたいんだろ?遊んでやるから来いよ」

 俺は手で来いと挑発してやる。

「ぶ、ぶっこおしてやりゅ」

 溢れる鼻血を押さえながら、血走った目で立ち上がる。

 お前程度じゃ、無理だよ。

 

 サドイケメンは携帯電話を取り出すと、素早くキー操作した。援軍でも呼んだかよ。

 すると、俺達の頭上が急に暗くなった。

 見上げてみると、巨大な鉄の塊が落ちてくるところだった。

 おぉぉぉい!!どこまで世界観無視してんだ!!!

 落下地点はなのはちゃんの居るあたりだ。俺は柵を飛び越え、なのはちゃんを抱え跳ぶ。途中、野郎共は蹴りで端までどけてやる。俺ってば、なんて優しいんだ。甘い男だぜ。

 落ちてきたのは、ロボットだった。おい、これって無印劇場版に出た、一番デカいロボットじゃねぇか!なんでここにあるんだよ!

「こんにゃめに、あわへた罪を!」

 カメラアイが赤く輝く。

「あがなへ!!」

 ロボットはサドイケメンの意を酌み、腕を振り上げる。そして、振り上げた先はアリサちゃん達がいる上層階に当たり、天井が崩落する。

「アリサちゃん!すずかちゃん!」

 なのはちゃんは俺に抱えられたまま、悲鳴のような声を出す。

「安二郎叔父さん!」

 上からすずかちゃんの声が聞こえてくる。無事みたいだな。それにしても、叔父さん!?

 すぐに俺は、ロボットの手を掻い潜り二階へ跳躍する。

 

 そこには、チビデブのおっさんが瓦礫に半分埋まっていた。

 二人は瓦礫の落下の影響がない通路にいた。二人はどうやらこのチビデブのおっさんに庇われたみたいだ。惜しむらくは、二人は瓦礫の落下くらいでは、どうにもならない防御魔法に護られたていた事だ。

 流石に哀れだぞ。

「早う、行けや」

「叔父さん。どうしてこんな事を…」

「アイツも言うとったやろ。カネや、カネ。それ以外ないわ」

 俺はおっさんを瓦礫から引き摺り出すと、三人に言った。

「この男を連れて逃げろ。あとは引き受ける」

 おっさんは痛みで気絶したようだ。

 二人ともおっさんを両脇から支えて歩き出す。防御魔法が三人を覆うように形を変える。魔法は指示があった訳じゃないのに、勝手に変化した。スゲェ魔法だな。

 あれ?なのはちゃんは?

「あの!私にも出来る事ありませんか?」

 おいおい、無茶振りすんなよ。

 二人は当然、付いてきてると思ったんだろうな。あとで怒られるぞ。

 俺は無言で首を横に振る。

 ロボットはサドイケメンの命令を、もう受けていないようだ。

 建物を壊しながら外へ出ようとしていた。

 サドイケメン携帯と格闘中。ダサ!

 

「このままじゃ、私達だって逃げられるか分からいの!アリサちゃん達を護ってるバリアー、きっと二人で使うより弱くなってる!私まで入ったら、もっと弱くなっちゃう!もし、あのロボットの攻撃があたりでもしたら、どうなるか分からない!

 だから、お願いします!アリサちゃん達が無事に逃げ切るまで、協力させてください!囮でもなんでもします!」

 確かに、あの魔法伸びたから多少防御力が落ちただろうけど、まだまだイケそうだったぞ?

 ん?()()()()?なんでバリアーって分かったんだ?まだ魔法に目覚めてない筈なのに。もしかして、未覚醒の状態で具体的に魔法を感じられるのか!?原作だって、漠然とした感じだったぞ。

「死ぬかもしれないんだぞ」

 ガチでな。

「覚悟…ですか?」

 そうだな。結局はそういう事なんだろう。だから俺は無言で頷いた。

「覚悟とか、私にはよく分かんない。でも、お友達を護りたい!!」

 ここで、意地張るところじゃないだろ、全く。

「君には魔法才能がある。それがあれば、護れるだろう。でも厄介な事も引き寄せる。君は今回は巻き込まれる側だった。だが、次は巻き込む側になるかもしれないぞ?」

 力って奴は厄介事を連れてくる。俺もそれで、多少実戦を経験したくらいだ。

「!!」

 なのはちゃんはハッとしたようだ。俯いてしまった。が…。

「でも、必要なのは今なの!」

 ポップか、君は。

「私に魔法の力が使えるなら、使わせて!あんなのを町に降ろしたら、危ないよ!」

 ロボットは鈍い動きで町に向かっているが、ロボットから金属音が響き出す。

「きっと、お父さん達だよ!」

 え!?あの人達ロボットとも戦えるの?ホントに飛天御剣流!?

 実を言うと、俺一人で片付けるには不安があった。

 俺の魔力はAAA。あのロボットはAAAランク二人の砲撃で沈んだのだ。特典で強力な魔法が使えると言っても、AAA二人の砲撃の威力を上回るのは流石に無茶だ。

 原作開始まで、結界は使う必要がないと高を括っていたから、俺は結界を張っていない。

 

 いや、綺麗事は止そう。俺は格好つけたかったんだ。踏み台転生者になりたくないとか言って、踏み台と変わらねぇじゃねぇか!

 今頃、結界を張ったとしても、なのはちゃんは結界に残ってしまう。

 

 とんだ勘違い野郎の俺だったが、今からでも腹を括るしかねぇ。

 

 俺は結界を展開する。

 案の定、なのはちゃんは取り残された。他の人間は見事避難成功だ。

 これで思いっ切りやれる。

 

「じゃあ、協力してくれ。俺が今から言う事を繰り返してくれ。

 自分の胸の中心に力の根源・球体があるイメージで、それに語り掛けるように」

「分かったよ」

 なのはちゃんは深呼吸すると、集中するように目を閉じた。

「風は天に…」

「風は天に…」

「星は空に…」

「星は空に…」

「不屈の心は子の胸に…」

「不屈の心は子の胸に…」

「我が手に魔法を!」

「我が手に魔法を!」

 

 瞬間、なのはちゃんからピンク色の光の柱が天に向かって伸びる。

「ホント、スゲェ…魔力」

 

 

               :美海

 

 結解が展開され、ピンク色の光の柱が天を衝く。

「まさか!素人に魔法を!?」

 あれは覚醒の光。

 リニスは信じられないものを見たような声を上げる。

『主よ。あの小僧に任せたのは、見込み違いではなかったか?』

 あんな玩具に手古摺るようには、感じなかったけどな。

「ねー」

「ねー、じゃありませんよ!」

 リニスは私に食って掛かる。

「助けに行きましょう!」

「ダメ」

 私はにべもなく却下した。

「何故です!?」

『思い違いをするな山猫。お前が分も弁えず、取引した事を忘れたか』

「どういう事です!?」

『お前は外道がこれ以上道を誤らぬうちに止め、フェイトとかいう小娘を助けたい。そう言ったであろう』

 リニスは頷く。

『主が結界を使わなかったのは、管理局とやらに察知されない為よ。管理外世界は次元犯罪の温床。干渉はせずとも監視はしておるのだ。奴等は多忙のようだが、マークされる恐れはある。あれだけのものを隔離する結界ともなれば、いくらなんでも気付かれるわ。そうなれば、時の庭園とやらの捜索も更に難航するぞ』

 リニスは黙り込んでしまった。

 私達は訓練の合間に、時の庭園探しをやっている。広大な次元の海を、常に移動し続けている時の庭園を補足するのは私の強化された精霊の眼(エレメンタルサイト)でも難しい。正直、難航している。

 因みに、訓練は特殊なあの場所だからこそだ。いざとなったら、姿を消せばいいしね。

 ロボットは予想外だったけど、倒す方は問題はない筈だ。

 なのはちゃんにしても、魔法を手にするのが早まっただけだ。寧ろ、なのはちゃんにとっては、原作の苦労が少しは減るんじゃないだろうか。

 

 責任もって、飛鷹君が面倒見るんだろうし。

 

「撤収するよ」

「美海…」

 

 それにね、リニス。誰にでも、いい顔は出来ないんだよ。

 全て助けると運命の赤毛さんは、理想に掲げてたけど、そんなの実際は寝言だと分かるだろう。

 私だって出来る限りはやるけどね。今はここまでだよ。

 全て助けたいと足掻いて、ベルカ時代散々痛い目にあったからね。

 

 今はフェイトちゃんを一番に考えてやりなよ。リニス。

 




 戦闘シーン上手く書くコツとかないんですかね?
 難し過ぎるよ。それでも頑張りますが。
 飛鷹はロボットに一人でも勝てるでしょう。ただ彼は、原作が頭にまだこびり付いていて柔軟性に欠けている為、このような事になりました。
 
 前書きでも書きましたが、次こそ終わりです。
 
 暫し、お付き合いをお願いします。

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