魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

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 難産でしたよ。
 これで?っていう突っ込みはノーサンキューです。
 ようやく、この話の中間ですよ…。


第6話 芽吹く災い

              :飛鷹

 

 結局、今日までなのはちゃんと仲良くなれなかったよ…。

 

 俺は放課後、母さんに頼まれた買い物をすべく商店街へ向かった。

 商店街!俺の前世では近所から姿を消してしまったものだ。

 趣があってよろしい!

 俺は上機嫌で買い物を済ませていく。

 ラインナップからすると今日はカレーか。俺は見掛けより力があるので、重いものも結構引き受けたりするんだよ。父さんが仕事人間で買い物なんていかないからな。俺は三人分くらいの食材で音を上げるような鍛え方はしてないからな。

 

 幾らなんでも子供にそんな大荷物頼むか?と思った奴。一応言っとくけど、母さんはブラッキーな人じゃないからな。今日は母さんに用事があったからだぞ。

 

 買い物が終わり歩いていると、向こうからすずかちゃんが歩いてくるのが見えた。まあ、向こうはまだ認識してないだろうが。

 珍しく一人だな。

 

 ああ、今日は図書委員の活動か。

 

 なんて呑気に思ってた時だ。

 路地から急にライトバンが出てきて急停止。

 車が遮蔽物になっているが、俺には分かる。

 出てきた人数は三人。オイオイ、小学生攫うのに多いんじゃね?

 車の中に二人。運転席に一人、後部座席にさらに一人。

 気配でそれくらい分かるぜ!俺の力はこういう時の為!ってな!!

 買い物袋を地面に置き、魔法陣を展開させる。

 俺は走り寄ると同時に手で前輪のタイヤを薙ぐように振る。

「カット!!」

 魔法が発動し、タイヤが真っ二つに切れる。車が斜めに傾く。

 これは、俺が特典に選んだものの一つだ。ラノベのストレイト・ジャケットの魔法。簡単に言えば、不可視の魔法の剣を振るう魔法だ。原作だと呪詛が発生するが、特典は全てこの世界に適応するよう設定される。故に呪詛は出ないんだそうだ。俺の場合はミッド式の亜種みたいな位置付けになっている。

 運転手がドアを開け、身を乗り出すように銃を構えるが、俺は無視。

 身体強化で車を跳び越し、すずかちゃんを掴んでいる男の上へ落ちた。

 男の肩に着地と同時に脚を振り上げ、踵落としの要領で男の顔面を痛打する。

 後部座席にいる奴も銃を抜いているものの、仲間が邪魔で撃てない。

 後部座席に残ってる奴が間誤付いて(まごついて)いる間に、俺が蹴りを入れた奴が車の中に強制的に叩き込まれる。

 それを確認し、あと二人の鳩尾にワンパン入れてやる。

 体がくの字に曲がった奴らの陰にすずかちゃんの手を引いて盾にすると、叫んだ。

「幼女趣味の変態だぁぁぁ!!車に連れ込まれるぅぅ!!!」

 大声に反応したか、建物の窓が開かれる。

「ちっ!!」

 男達は路地に逃げ込んでいく。

 俺はすずかちゃんを連れ、壁を盾にそっと路地を覗くと、新たな車に連中が乗り込んでいった。

「ちっ!まだ仲間がいたのか」

 あの分だと車は複数用意しているだろう。簡単には捕まらないな。

「あなた達!大丈夫!?」

 慌てて出てきたのか裸足のおばあちゃんが駆け寄りながら訊いてきた。

「俺は大丈夫ですけど…」

 隣を見るとすずかちゃんが青白い顔で震えている。

「大変だったねぇ」

 おばあちゃんはすずかちゃんをしゃがみ込んで抱きしめてやった。

「あの、俺、警察通報しますね」

「あっ!ごめんなさい…通報まだだったわ」

「気にしないで下さい。彼女の傍に居て貰えますか?」

「分かったよ」

 俺は110番に通報する。

 

 

 数分後、警察が到着。

 父さんがいたよ。

「バカ野郎!!ガキがヒーローぶってんじゃねぇ!!!そういう時は、すぐに通報だろうが!!お前、下手したらどうなったか分からないんだぞ!!!」

 そして事情を説明したら、これである。しゃーねーか。

 ついでに頭に拳骨をくらった。スゲェ痛てぇ…。

 俺が誘拐犯と闘った事は暈して説明したが、父さんは俺が無茶したと、すぐに勘付いてしまった。プロなんだから、そりゃバレるわな。

 車を叩いて騒ぎまくったと説明したんだけど…。

「車の前輪が斬れてるのは、どういう事か知ってるか?」

「さぁ?」

 内心、冷や汗ダラダラである。

 ヤベェ。咄嗟に使い慣れてる魔法チョイスしちまったよ。しかも魔法使うのに結界張り忘れたよ。普段ならこんなミスしねぇのにな。いつもは自分一人だからな。

 

 やっぱり、()()()()()()()()()()と怖えな。

 

 頭を抱えて悶えているとすずかちゃんが近付いてきた。

「あの…助けてくれてありがとう」

 俺は涙目のまま、立ち上がる。

 締まんねー。

「いや、無事でよかったよ」

 すずかちゃんはまだ顔色が悪かった。

「あの、飛鷹君…さっきのって…」

 ヤベェ。彼女にも見られてたんだよね。黙ってて貰えませんかね?

「「すずか(ちゃん)!!!」」

 あれ?この声は。

 声の方を二人で見ると、そこにはなのはちゃんアリサちゃんがいた。

「すずかちゃん!どうしたの!?」

「すずか!大丈夫!?」

 規制線の向こうで二人が騒いでいる。

 

 騒ぎを聞きつけて父さんがやってくる。

「何の騒ぎだ」

「彼女の友達だよ」

「そうか」

 父さんは頷くとすずかちゃんに視線を合わせる為にしゃがむ。

「もうすぐ、少年課の刑事とウチの人間がくる。君のお姉さんにも知らせてあるが、今こちらには来れないそうだから、刑事さん達と家に戻ってくれ」

「分かりました。…飛鷹君、本当にありがとう。助けてくれて」

 すずかちゃんは俺に頭を下げると、父さんの許可を貰い、なのはちゃん達に事情を説明に行った。

「お前も帰れ。また話を聞くかもしれないからな。()()()()()()()()()

 俺にも、むさいおっさんが付くようですよ?

 YES!私は呼んでません!おっさんより俺強いよ?平気だよ?

 

 問答無用でした。

 ドナドナならぬズルズルと引き摺られていった。

 

 あの、私めも善良な市民なんですがね。扱いが乱暴じゃありませんこと!?

 

 

              :すずか

 

 少しして、私を送りってくれる刑事さん達が来た。

 なのはちゃん、アリサちゃんは凄く心配してくれて、一緒に帰ってくれるって。

 正直、心細かったから本当に嬉しかった。

 

 でも、ノエルはともかくファリンまで忙しかったのかな?なんか、お姉ちゃんらしくないような気がするけど…。

 覆面パトカーっていうの?に三人で乗って家に向かう。

 

「でも、飛鷹がねぇ。明日、私もお礼言うわよ」

「強いのは知ってたけど、大人相手にすずかちゃん護るなんて凄いな」

 二人はしきりと関心している。

 でも、あの身体能力。あの子人間なのかな?普通、子供は車を跳び越えたり出来ない。

 私も腕を掴まれたから分かるけど、あの人達随分鍛えていたみたいだし、子供の攻撃が効きそうには思えない。一人なんて吹き飛んでたし。

 一応、お姉ちゃんに相談するまで、飛鷹君の身体能力については二人には話さない事にした。飛鷹君がした説明と、誘拐犯の攻撃を引き付けて、時間稼ぎをしたとしか言ってない。なのはちゃんは、もしかしたら気付いてるかもしれないけど。

 

 三人でお話してたんだけど、まだ家に着かないので、外を見るとドンドン海鳴市から遠ざかっていってる。

「あの!こっち違いますよ!」

 アリサちゃんが運転してる刑事さんに声を掛けるけど、声に反応がない。

 

 私は見てしまった。運転席と助手席に座っている刑事さんのガラス玉みたいな目を。

 私はその目をよく知っていた。

 

 夜の一族の魔眼で強力な暗示に掛かった人の目だった。

 

 車は海鳴市を出て、山へ向かっているみたい。

 私達は誘拐されたと気付いた時に、携帯電話で助けを呼ぼうとしたけど、助手席の刑事さんに拳銃を突き付けられた。

「携帯…を渡…せ」

 袋をこっちに投げてくる。携帯電話を入れろという事らしい。

「そっちの…こ、子供。妙な…ま…ねは止せ。狭い…車内だ。弾は誰…かに当たる…ぞ」

 なのはちゃんは悔しそうに携帯電話を袋に入れる。私達も大人しく入れる

「貴方達、警察でしょ?こんな事していいの?」

 アリサちゃんは刑事さん達を睨み付ける。

「「……」」

 二人とも返事はせずに袋を受け取った。

 当然だ。この人達は操られているだけなんだから。

 

 山道にドンドン入って行き、まるで豆腐みたいな形の白い建物の前で停車した。

 建物から人が出てきて車を取り囲む。

 一人が車のドアを開ける

「出ろ」

 私は恐る恐る降りる。なのはちゃんとアリサちゃんは見た感じは落ち着いている。

 

 私達を取り囲んでいる黒服の人達が道を開けると、三人の人間が現れる。

「安二郎叔父さん!?」

 叔父さんは目を逸らして、私達を見ようとしなかった。

 もう一人は金髪の女の人。叔父さんの後ろにピッタリくっついて歩いている。

 そして、最後の人を見た時、私は凍り付いた。

 

「氷村さん…」

 

 氷村さんは冷たい笑みを浮かべた。

 

 

 私達は建物の中に連れていかれた。

 そして、何故か分からないけど、牢屋があった。

 私達はそこに入れられた。

「何故、牢があるか不思議かい?ここは昔、法整備が済んでいない頃の精神病院でね。隔離用に未だに残っているのさ。人間のやる事は杜撰だよね」

 氷村さんは鉄格子を蹴ると、凄い音が鳴るもののビクともしない。

「きゃあ!」

 音にビックリしてアリサちゃんが思わず悲鳴を上げる。

「そこの茶色い子は災難だったね。運が悪かったと諦めてくれ」

 なのはちゃんは無言で睨み付けてる。

「どうしてですか?」

「どうして?こんな事したかって?つまらない質問だな。忍も面白味のない女だったから、むべなるかな…かな?」

「氷村さんは、なんでも出来るって、聞きました。お金だって…」

 氷村さんは私の言葉に指を鳴らした。

「そう!なんでも出来るよ。っと、これは僕でも言い過ぎだな。大抵の事は可能と言い直そう。だからだよ!!僕が出来ない事は誰であっても出来ない事。僕が出来る事が出来る奴は驚くほど少ない。つまらないんだよ。退屈だ。だから遊んでるんだ」

 そんな…遊んでる?

 それで私のお友達を巻き込んだの?巻き込んでしまったの?

「ああ、心配する必要はないよ。バニングス嬢は必要だから攫ったんだから。完全に巻き込まれたのは、そこの茶色い子だけだ」

 私は恐いのを我慢して氷村さんに一歩近づく。

「お願いします。私ならお付き合いします。だから…」

「駄目だね」

 取り付く島もありません。

「僕の目的は金じゃない。他の連中はそうだけど。例えば、君の屑叔父さんとかね。すずか、実は今回君には試験体として、とある研究機関に行って貰う。そこはある金持ちが所持している所でね。お約束の不老不死を求めてるのさ。バカだろ?しかも結構高値がついてさぁ!笑い堪えるの苦労したよ!僕らは老化は遅いし、再生能力は凄いからね。DNAでも調べれば可能かも、なんて思うかもね」

 私は背筋が凍る思いでした。

「やめてください!!」

 私は思わず叫んでいた。

「おや?もしかして、言ってないのかい?」

 氷村さんは楽しそうに私を覗き込んだ。一族では私たちの正体は知られてはならない決まりなのに。

「隠すことないじゃないか!」

「いや!」

「僕達は人間じゃない」

「やめて!!」

「吸血鬼なんだよ」

 氷村さんはなのはちゃん達に向かって、歯を見せて笑った。八重歯と言うには鋭すぎるそれが目立つ。更に氷村さんは持っていたナイフを取り出して、思いっきり腕の動脈を切った。血飛沫が私達に掛かる。血が流れる腕を私達によく見えるように、鉄格子に腕を突っ込む。傷がみるみる塞がっていく。

「これが証拠さ」

 作り物では有り得ない本物の血の匂いが、血そのものが証明している。

 私はなのはちゃんとアリサちゃんが、どんな顔をしているか見る事が出来なかった。

 

「五月蠅いのよ!!」

 アリサちゃんの怒声が響くいた。

「すずかが何でも関係ないわよ!私達は友達なんだから!」

 氷村さんは鼻で嗤う。

「君は気味悪そうにしてたけど。言う事は立派だね」

「勿論、ビックリしたし、ビビったに決まってるじゃない!」

 アリサちゃんは震えてた。でも、胸を張っていた。

「すずかとアンタじゃ、全然違うわ!すずかは人を傷つけるなんて出来る子じゃない」

「アリサちゃん…」

 氷村さんは面白くなさそうだった。

 なのはちゃんが私達の前に庇うように立つ。

「私もすずかちゃんの友達です。私は二人を護ります」

 氷村さんは一転して大笑いしだした。

「アハハハ!いやぁ、傑作だね!いいね!君!護るって?じゃあ、君に友達を護るチャンスをあげよう」

 氷村さんは奥に一声かけると、男が入ってくる。

「君達の中で腕に自信のある奴…そうだな、二人でいいや。連れてきてよ」

 男は一礼して出ていく。

「君、武術を少し齧ってるみたいだね。今から来る二人相手に勝てたら、君達を解放してあげるよ。二度と関わらないと約束しよう。どうかな」

 大人二人相手なんて!いくら武術を習ってても無理だよ!飛鷹君なら兎も角。

「なのは!ダメよ!」

「なのはちゃん!お願い、やめて!」

 なのはちゃんは私達二人を抱き締めると囁く。

「大丈夫。無理はしない。きっと誰かが気付いてくれるから。それまで時間を稼ぐよ」

 音を立てて男が二人入ってくる。筋肉質の大男が二人。

「それとついでだから教えるけど、バニングス嬢の家に要求を出すよ。娘の命が惜しければ、バニングス家が持っている世界商取引ネットワークアクセス権をよこせってね。当然だけど、アクセス権を貰っても君達が家に無事で帰る事はない。勿論、君が勝てば、この話はなしだ。

 更に茶色い君、君が負けた場合、二人には変態の玩具になってもらう。死ぬ前に、実験動物になる前にね。変態に関しては、すずかとバニングス嬢の周りを、うろついていた奴等だよ。失敗した時の身代わりだったけど。面白い余興に役立ったね」

 あのストーカーは氷村さんが使ってた人だったんだ。

 それにしても、世界商取引ネットワーク。

 一度、お姉ちゃんに聞いたことがあったけど、ホントにあるんだ。

 世界の有名大企業がアクセス権を持ち、世界経済活動に多大な影響を与えるものなんだって言ってたけど。

 私達三人は牢から出されて、なのはちゃんとは別に連れていかれる。

「「なのは(ちゃん)!!」」

 私たちの声になのはちゃんは私達を安心させるように微笑んだ。

 

 

 私達は二階で縄で縛られている。

 一階の様子は見える。吹き抜けになっているからだ。

「茶色い君!武器は何がいい?ラインナップは豊かじゃないけどね」

「長い棒があれば」

「棒ね。鉄パイプかな」

 氷村さんは近くにあった長めの鉄パイプを、なのはちゃんに投げる。

 なのはちゃんは危なげなく受け取った。

 それを二人の大男はニヤニヤして見ている。

 

「それじゃ、始め」

 

 氷村さんのふざけた声が響く。

 

 

             :美海

 

 一応、ライトバンやスクーターを調べておいて正解だった訳だね。

 もう既に警察、高町家、バニングス家、月村家には通報済み。

 

 私は白い豆腐みたいな建物の()()()()()()()()()()()()()()()。勿論、魔法でね。

「美海、お友達が危険なんですよ!助けないと!」

 リニスが責めるように言う。

 私そんなに薄情に見える?

「当然、助けるよ。でも一人?変なのがいるね」

「変?」

 私の眼は、チビデブのおっさんに貼り付いている金髪女性に向いていた。

 

 そして、金髪女性の目もこちらに向いていた。

 魔法でハイディングしていないとはいっても、気配は完全に消してるんだけどね。

 

 

             :飛鷹

 

 こんな事もあろうかとってな!

 サーチャー付けといて正解だぜ!家まで安全に帰れるか確認する為だったけどな。

 そして、こんな事も以下略!セカンド!身代わりを作る魔法を根性で作っといて正解だったぜ。おっさんには便所に行きたいと公園の便所に入り、華麗に身代わりと入れ替わる。

 アメリカの超人も昔から変身はこうしたものだぜ!見たか伝統!本家は電話ボックスだったけどな。

 

 

「でも、まさか()()()()()だったとはな」

 考えてみれば、有り得る話だったんだよ。二次小説でも他の作品が混じってるなんて、よくある事だったしな。騒いじまった自分が恥ずかしいぜ。誰にも聞かれてないから迷惑はかけてないがな。

 となると、誘拐犯は別作品の悪役か!ネタ元が分かんねぇけど。負けねぇぜ!

 イケメンは俺にとっても敵だしな。顔面裁判で奴は執行猶予なし実刑判決だ。

 俺は、ツラにムカデを落とすぐらいじゃ済まさねぇぜ。

 

 なのはちゃんをキッチリ助けてこそのオリ主だ。

 

 

 間に合ってくれよな。…なのはちゃん!!

 




 氷村が喋る喋る。
 次回で、誘拐編完結です。
 頑張って、書くぞぉ。
 これ以上の難産が待っているだろうがね。
 氷村がどう遊ぶかも、次回かな?書けるかな…。
 応援お願いします。

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