魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

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 う~ん。
 やっぱり長くなりそうです。
 すみません。
 


第5話 災いの種

          :???

 

 ワシは運から見放されとる。

 親戚連中いや、ワシ以外の血縁は容姿に恵まれ、才能に恵まれ、カネも上手い具合に増やしとるのに、ワシ一人が凡才や。あるカネをなんとか遣り繰りしとった。

 残りカスみたいなワシにも才能が一つはあるかも知れへん、なんて阿保な夢見たわ。

 あんな阿保な事やらんかったら屋敷にも住んでられたんや。今や風呂なし便所共同のアパートに隠れ住んどる始末や。

 

 まあ、そんなワシが株に手を出したのが間違いの元や。偶々、情報が入って株を買うたら大当たり。順調に資産を増やしたんや。ワシがやで?ワシは思った。ワシには株の才能があったんや!っと。大間違いやったけどな。今やスジの悪いとこからの借金がうん億。

 見付かったら、殺されるわ。

 姪にカネを貸してくれと頼んだけど門前払いや。情のない女やで。

 

 遺産の分配もそうや。ワシにキチンとした取り分があれば、こないに苦労せんと挽回も出来たかもしれん。ワシに残されたのは、ガラクタ一つや。封印はワシにしか解けんもの、そんな文句に騙されたわ。封印なんぞ解けへんやないか。まあ、解けたとこで使えたかは、怪しいもんやけど。

 姪のとこのも直さな使えへんかったそうやし。

 

 アパートでしょうもない事考えとった時や。

 携帯が鳴り出しよった。

 今時、連絡先がないと働くのもキビシイ。

 仕事の電話やろ。出んとな。

「はい」

「やぁ~、探しましたよ。月村さん。覚えてますかね?東南金融の東田です」

 ワシは血の気が引いた。それは、ワシを追い回す借金取りやった。

 この携帯かて普通のルートで買うたヤツやない。どっからバレたんや。

「あぁ、外にウチのもんがいるんで、逃げないでくださいよ」

 ハッタリや。そうであってくれ!祈るように外を伺うと、おった。散々、外道な真似しくさった東田の手下が。手を振っとる。

 仕舞や。

「もう、分かっとるやろ。カネならないで。…殺すんか」

 もう自棄や。

「嫌だな~。自棄にならないで下さいよ」

「はよ、どうしたいか言えや」

「実は貴方にいい話があるんですよ」

 ハッ!ええ話やて?胡散臭さ。

「仕事を一つして頂ければ、借金は帳消し。更にあなたの遺産を売却する事で一千万支払いましょう」

「あんなガラクタに一千万とは剛毅やな。それにやな、ワシの借金、忘れた訳やないやろ。帳消しになんてなるかい!馬鹿にすんなや!」

 殺すならサッサとやれや。

「分かっているでしょうが、当然、非合法な仕事ですよ。それだけのリターンがあるんですよ」

「そんなら、アンタらだけでやればええやろ。ワシは役に立たんで」

「まぁ、確かにそうなんですがね。私はあなたを気の毒だと思っているんですよ」

 グッ!ハッキリ言いよるわ。気の毒なんぞ、どの口が言うんや。

「親族にも遺産を正当に渡されず。渡す遺産も使えないように嘘の封印解除法を教えられた」

「どういう事や!なんで封印の事を!」

 あれはウチの一族秘事やで。誰が一体!?

「私も親切な人から教わったんですよ。巨万の富を生む鵞鳥の事をね」

 東田はいくら訊いても情報元は言わんかった。

「月村 安二郎さん。悔しくないんですか?一族の他の方はいい暮らしをしているのに、貴方は今、生命の危機に陥っている。姪御さんにもお金を借りられなかったんでしょ?追い返されたそうじゃないですか」

 そないな事まで…。

 

 東田は具体的な内容を話しよった。…とんでもない事を企んどった。

 

「貴方が受け取る筈だった正当な遺産を、今貰うだけじゃないですか」

 

 どうせ、このままだとコイツらに殺されるんや。

 

 やったろうやないか!

 

 

          :美海

 

 リニスが私のところに来て、半月。

 相変わらず、バルムンクとは仲が悪いようだが、まあ、馴染んでいる。馴染み過ぎている。

 主にウチの両親と。

 本日は、授業は半日で終了の為、リニスを入れての自主練となっている。

 

 私達は無人世界に転移し、訓練を行っている。

 砂と砂丘しかない世界で、生物もいない。

 管理局も次元犯罪者すら来ない。

 そういう場所こそ、次元犯罪者が居そうなものだが、ここは最近次元断層が起きた場所から、近い場所でまだ空間が安定していなかったりする。

 次元犯罪者はおろか管理局の監視機器すら置けない場所だ。

 空間が安定していなかろうが、私は多少の妨害をものともせず転移出来る。

 だからこそ、ここで訓練しているのだ。

 

 

 砂が私の剣風で大量に巻き上げられる。

 リニスはギリギリで砂ごと剣を回避。

 私は即座に追撃を選択。砂に突撃。第三者が私を見ていたなら、砂に溶けたように見えただろう。

 まだ、腕をクロスして防御したままのリニスにが音もなく砂から凄いスピードで出てきた私に目を丸くする。

 私は下から斬り上げる。

「くっ!!」

 リニスがまだ使用が不慣れなベルカ式魔法でシールド。ストライカーズでギンガが使っていたトライシールドに当たる魔法である。

 私は余裕をもって剣の軌道を変え、シールドを下から跳ね上げ、手首の返しだけで剣を振り下ろす。

 リニスは脚から魔力を渦上に放出。強制離脱。

 私は空中でワンステップで追い付き、すでに横薙ぎの体制に入っていた剣を振り抜いた。

 殆ど時間も稼げず、トライシールドを跳ね上げられ、魔力で強引に離脱したリニスは既に体勢を崩してしまっている。何とか一太刀は魔力で滑らせたものの、滑らかに鋭く幾度も繰り出される。剣閃が繰り出される度に尾を引く。リニスは遂に剣戟を捌ききれずに、連撃を受けて吹き飛んでいった。

 

 砂が巻き上げられる。

 私は残心の姿勢で剣を構えたままだ。

 砂埃が晴れ、大の字に倒れているリニスが見える。

 しかし、私は無言で剣を後ろに振り抜いた。

 流石に不意を突いたと思ったのだろう。碌な防御も出来ないまま砂を転がっていった。

 大の字になったリニスが消える。やっぱり、幻術か。

 精霊の眼(エレメンタルサイト)は使ってないからね。眼を使わなくても、このくらいは出来るよ。眼に頼りっきりになったら、それを逆利用されて死ぬからね。何度も言うけど。

 

 リニスは砂だらけで蹲っている。荒い息遣いが聞こえてくる。

「術式が違うと、やっぱり勝手が違う?」

 私は構えを解いて、剣を担いだままリニスに訊く。

「じゅ…つの違い……とか…そういう…問題では…ありません」

「と言うと?」

「貴女が強すぎるんです!」

 私、剣に関しては全盛期の四割ってところだよ。リーチとかの問題で同じようには振れないんだ。体も小さいし。魔法完全使用で五割くらいかな。

 因みに、今は鍛錬の為、振出と打ち込みの瞬間しか魔力を込めていない。それもごく少量。 魔法科高校の劣等生に出てくる柳大尉、千葉 エリカみたいに必要な部分を瞬間的に強化しているだけだ。ほぼ私の素の剣技と言っていい。

 一応言っておくと、空中を移動する際は、足場を作ったりするのに魔法を使ってるよ。それでも飛行魔法までは使わない。(特典は全てリリカルなのはの世界に適用するよう、特典の原作とは若干違うところがある。)

 

「どこが!剣なら、まだそれほどでも。ですか!現在で達人じゃないですか!全盛期ってどんな化け物だったんですか!」

「全盛期?十二本の剣を一度に操って戦えたね」

 勿論それで、動きが悪くなったりしない。そんな事になるなら、十二本使う意味がない。一本一本が達人級の剣でなくてはならない。ほら、まだまだでしょ?

 今は体の使い方を思い出させているところで、リニスの言う達人の動きをするなら二刀流が限度だ。他の剣を操る余裕がない。操れなくもないが、多分浮かせて操る剣に混乱が起きる。自分の体、味方の動きで。二本で四割、五割とは?と思うかもしれないが、私にとって残り五割で完成させられる技術だ。事実私はベルカ時代完成させている。一番習得に時間を掛けただろう。

 そして、これが私の特典その三である。複数の武器を浮かせて操る技術は、比較的似た技術を見掛ける為、浮かせた剣を飛ばすのではなく、剣技として操れるようにしてほしい、とお願いした。十二本操れるようになったのは、私自身の努力の賜物だ。

 ベルカでこれは()()()()と、ほぼまんまな名称で呼ばれ、私もそれを採用した。剣聖操技を完全に使えるようになった事が剣王の所以である。

「……」

 おっと、リニスが黙ってしまった。口からエクトプラズム出てますぞ、リニス殿。

 

 大体これで、私の特典は取り敢えず説明したと思う。後はメカニック技術やら武術マックスやらが三つの特典の付属に付けたくらいかな?やり過ぎだって?私もそう思うけど、これでベルカギリギリです。

 こういう時に言う言葉は、ベルカマジパネェっす。かな?

 

 数分後。

 模擬戦再開。前回と私は同じ条件でやる。

 魔法まで本格的に使ったら、私の鍛錬にならないからね。圧勝してるのに何をって?

 さっきから言ってるけど、私の方は体の使い方を思い出す為にやってるからね。

 終わった後はリニスにも悪い点は指摘して、改善法をアドバイスしてるよ。

 まあ、模擬戦結果は同じだから割愛するよ。

 いきなり、強くなったりしないから、ドンマイ、リニス。

 

 模擬戦終了後、魔法の講義。私が受ける方だよ。

 リニスは模擬戦の影響で人型を維持出来ず、猫に戻ってしまっている。

「特性に多少の違いはあるけど、ベルカ式とそんなに違いはなさそうだね」

「多少の違いで済ませられるのは、美海だけです。何より、使い勝手が違いすぎます」

 リニスが倒れたまま、弱った声を出す。

 まあ、ベルカ式は近接戦闘を前提としたものが多いからね。勿論、支援魔法もミッド式同様遠距離射撃魔法もあるが、基本動き回る前提ではない。支援も長距離射撃も後方から動かない支援も可能な固定砲台みたいなものだ。分かり易く言えば、はやてやシャマルを見ればわかると思う。彼女達激しい立ち回りなんてあまりしないでしょ?

 一方、ミッド式はなのはちゃん達を見れば分かるけど、高速移動しながら攻撃を繰り出す事を前提としている。支援とか大威力砲撃とかは流石に足止める事になるけど。

『駄猫!なんだ!そのザマは!主に仕えておった騎士達は、どれだけ疲弊したとて、主の御前では最後まで立っておったもんだぞ!未熟者め!!』

 バルムンクは、疲労から倒れたまま講義しているリニスにお冠だ。

 

 実は私はリニスからミッド式の魔法も教わってるんだよね。

 現在はベルカ式と言えば、ミッドとベルカが混ざった近代ベルカ式が主流になっているくらいだから、そんなにかけ離れた魔法ではないと思うけど。術理も理解出来るし、もうオリジナルの魔法とかやろうと思えば組めると思う。

 

「駄剣の言う通り、確かにまだまだのようですが、貴方は出されてすらいなかったですよね?」

 そう、私は鍛錬で一度もバルムンクを出した事がない。

 今日も使ったのは周辺諸国が送ってくれた魔鋼を鍛鉄した剣だ。これすら、厳密に言えばロストロギア扱いらしい。売り買いが可能なレベルで、私が剣聖操技で使う聖剣・魔剣に比べ、使っても問題ない品だからだ。バルムンクを筆頭とした聖剣・魔剣は問答無用で秘匿級である。威力も洒落にならないから、迂闊に使えないのだ。

『ふん!愚か者め、我は主の切り札なのだ。そこらの有象無象の剣と一緒にするでない」

「つまり、使い勝手が悪いんですね?」

 静寂が流れる。

『貴様とは一度徹底的に話す必要があるな』

「奇遇ですね。私も同じ事を考えていました」

「『……』」

 いつの間にか立ち上がっていたリニスとの間に、バチバチと火花が飛び散っているが、リニス貴女立てなかったのでは?

 

 そして、私は僅か半月でミッド式魔法講座を修了した。

 

 なんか、もういいって事で。

 

 投げ槍になってませんか?リニスさん。

 

 

          :リニス

 

 今の私の主は、間違いなく天才だ。

 

 魔法は元々使えていたとは言え、術式の違う新しい魔法を瞬く間にマスターしてしまった。

 フェイトも才能という点では凄い子だったけれど、例えば今からベルカ式魔法を一から覚えろと言われたら、ここまでアッサリとはいかないだろう。下手をすれば習得出来ない可能性すらある。本来は一つの術式をものにしていれば、他を覚えるなど無駄と判断されるからだ。凡人では混乱するか、どっちつかずになるかである。つまり、役立たずが出来上がる。

 しかし、美海は魔法を組む上で他の術式のコードを見ておくのは、無駄にならないとアッサリと吸収してみせた。もう、オリジナルで魔法を組めると言う。流石の私も修了を宣言せざるを得ない。私が再び、ミッド式魔法を使えるように契約を調整するとまで言っている。何度でも言いますが、普通は無理ですからね?契約後に術式弄るなんて。

 

 模擬戦にしてみても、流石にベルカの英雄。

 剣ならまだ完成していない、というのでやってみれば、惨憺たる結果だった。

 剣筋が尋常ではない。直線から曲線、曲線から直線、剣筋が変幻自在で攻撃しようとする頃には、攻撃がすでに繰り出された後という始末だ。結果、私は防御一辺倒になってしまう。反省会では、容赦ないアドバイスが飛ぶ事になる。

 私もかなり出来ると認識していたが、美海を見るとそんな認識捨てた方がいいと思える。

「じゃあ、槍か組打ちにする?」

 騙されませんよ。

 訊いてみると、槍は二番手で組打ちは三番手だったそうだ。ホラね?ボコボコになる未来しか見えないですよ?そうは言っても私は美海の守護獣。精進は欠かせません。…やるしかありません。

 関係ない事ですが、バルムンクとかいう剣が小姑みたいに煩いです。

 

 因みに、守護獣と使い魔の役割は大して違いはないようです。少しホッとしました。

 

 

 転移の魔法で海鳴に帰還すると、もう立派な夕暮れでした。

 帰宅途中の事だ。

 

 私は美海の横を猫のまま歩いていました。

 日は大分傾いて、夜が近付いていた。

 私達の前を一台の車が横切った。高級な黒塗りの車です。

 そして、後から距離を開けてスクーターが通り過ぎる。

 起こった事はそれだけ。

 

 美海はその後ろ姿を立ち止まり、見詰めていた。

 高級車は大きな門に入って行く。

 スクーターは門の前で曲がって消えていく。後からライトバンがスクーターが消えた方向に走り去った。

「どうしたんですか?」

 私は美海を見上げると、美海は鋭い視線をスクーターやバンが消えた方向に向けていた。

「あれ、アリサちゃんの屋敷」

「はあ、立派ですね」

「うん、そうだね」

 呟くような小さな声だったが、私にはハッキリ聞こえた。

 

「悪意…」

 




 案の定、一話で終わらなかったよ。
 最低、あと二話くらいいきそうな感じです。
 原作開始までもう暫くお付き合いを、お願いします。
 関西弁に関しては、おかしいところがあったら教えて下さい。
 一応、ネットで調べたんですけど。分からん(汗)

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