魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

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 多くは語るまいと思います。
 それでは、お願いいたします。


第48話 回帰

             :フェイト

 応援に向かったはいいけど、美海とあの蛇の巨人の対決に割って入れる感じではなかった。

 ならば、邪魔にならない範囲で援護する必要がある。

 それなら、あの魔法陣と繋がるラインだ。

 あれを切断する。

 飛鷹の剣や美海の剣を参考に自分自身で訓練して、やっと形になった技。

 あれを使う。

 こっちに注意が向けば、美海だって戦い易い筈だ。

 私は自分の行動を決めると、タイミングを計る。

 こちらの意図に気付いている様子はない。

 美海と蛇巨人がほぼ同時に動く。

 美海とタイミングを合わせ、私も動く。

 研ぎ澄まし、振り抜く。

 魔法陣のラインが切断され、蛇巨人の魔力供給がストップした瞬間、即座に蛇巨人がこちら

を向いた。

 この技は、まだ放った後にすぐに態勢を戻せない。

 でも、防ぎ切れる!

 そう思っていた。

 でも、蛇の巨人の拳が迫る中、美海とリニスが私を庇う。

 信じられない事に、蛇巨人の拳は美海の張った強力な多重障壁を何枚も叩き割り、私達を

吹き飛ばした。

 一瞬のパニック。

 気付けば、何かにぶつかる直前だった。

 でも、激突の瞬間、美海が私と身体の位置を入れ替える。

 声を上げる暇もなく戦艦の残骸に激突する。

「美海!!」

 幸い…と言っていいのか、私は美海のお陰で激突時の衝撃は殆どなかった。

 でも、美海の返事がない。

 そんな…まさか気を失っている?

 私の頭の中が真っ白になる。

 彼女と協力してた時に言っていた。

 自分はどんなに大怪我をしても、自己修復するから大丈夫だって…。

 実際、そうだった。

 でも、今は声を掛けても目を覚まさない。

 今は蒼い光に包まれて、ぐったりとしている。

 私は…美海を助けに来たのに!逆に邪魔になるなんて!!

「フェイト!!しっかりしなさい!!」

 喚きそうになったその時、横からリニスが顔を出し、私を叱咤する。

「リニス…」

 蛇巨人は私達にゆっくりと近付いてくる。

 勝利を確信したのか、心なしか顔が嗤っている気がした。

 だが、その顔に魔力砲撃が打ち込まれる。

 地球から!?

 クロノ!

『チャージに時間が掛かるんだ!退避なら早く頼む!』

 クロノからの念話が届く。

 さっきラインを切断していたお陰で、再生速度が鈍い。

 ラインもまだ復活していない。

 砲撃のお陰で邪魔されたのかもしれない。

 蛇巨人が忌々しそうに地球を見下ろす。

 見ると、なのは達もラインを復旧させまいと必死になっている。

 

 そうだ。何かしないと…。

 

 思考がぐちゃぐちゃになっている私に、リニスが再び声を上げる。

「私には殆ど回せる魔力が残っていません。美海に魔力を分けて下さい!」

 あっ!そうだね。それが出来る!

『早くやれ!自力で保護も剣の身にはきついのだ!』

 いきなり頭に声が響く。

 念話とはどうも違う。

「フェイト!今の声は無視して構いません。それより魔力を!」

 リニスの言葉に、美海が持っている剣がカタカタと音を立てて震える。

 私は、なのはみたいに同調する事は出来ない。

 それでも大丈夫なら…。

 そう言えば、リニスが教えてくれた事がある。

 他人に魔力を渡すだけなら出来るけど、所詮は他人の魔力、扱うには並外れた魔力操作の

才能と経験が必要だって…。

 美海ならそれを満たしている。

 心配はいらない!!

 

 でも、確かそれって…。緊急時は…。

 授業風景が頭の中で再生される。けど…。

 

 今は非常事態!!これは、人助け!!私の所為でこうなったんだから、構わない!!

 

 顔が羞恥で真っ赤に染まるのが、自分でも分かる。

 けど、私は息を吸い込んで。

 

 美海に口づけした。

 

 舌越しに魔力を注ぎ込む。

『「っ!!?」』

 リニスが固まった。

 でも、他にも反応してたような?

 

 何!?その反応!?間違ってないでしょ!?

 だって、粘膜接触の方がいいって! リニスが前に言ったんだよ!?

 

 私は何故か、言い訳みたいにそんな事を思った。

 

 

             :美海

 

 体内に魔力注入を確認。

 

 魔力変換開始。

 

 自己修復術式オートスタート。

 

 バックアップよりリード。

 

 復元開始。

 

 完了。

 

 意識が一気に覚醒する。

 たっく!平和ボケもいいところだよ!昔ならあんな状態だって…!?

 眼を開けると何故かフェイトの顔がドアップだった。

 ええっと?これはもしかして…。

 多くは語るまい。いや、語れない。

 私はそっとフェイトを引き剥がした。

「なんというか…安心して?これはノーカンだから!!」

 我ながら何言ってんだ。

 フェイトに再成を掛けてやる。

 うん!君は清い身体に戻った!完璧だよ!

 無駄魔力を使用した!?それがどうした!!

「う、うん!兎に角、私も助けになれてよかったよ!」

『「……」』

 何やら冷たい空気が…って、もう目の前に氷を溶かした蛇来てるよ!

 どうして凍ってって、地球からの援護射撃か…。

 スッと頭が冷える。

 

 私は何をやっている。

 不意に自分に対する怒りが沸き上がる。

 なんだ。このザマは!!

 女の子にとっては大切なものを、私に使わせるなんて!!

 穏やかに過ごしたい?

 今はそんな事を考えたり、考慮する力なんて今の私にはないだろう!

 こんなんじゃ、飛鷹君にどうこう言えやしない!

 

 私は目を閉じる。

 昔のなんでもやっていた私を思い出す。

 実感として、思い出す。

「フェイト一時的にライン繋ぐよ!」

「え!?」

 本来は守護獣用なんだけど、これが一番使い慣れている。今は。

 守護獣の契約まではしないから、一方的な搾取になっちゃうけど、ごめん!

 フェイトとのラインを無断で造り出す。

「ええ!?」

 私との間に、突然一方的なラインが出来てフェイトが戸惑う。

 カッコ悪い?ダサい?情けない?

 そんなの今に始まった話じゃない。

「うん!罵倒は後で聞くから!」

 流石に魔力が潤沢だね!

 私はフェイトをデブリに残して、跳ぶ。

 爆発的に魔力が跳ね上がる。

 蒼い光が奔流になって迸る。

 はは!楽だわ、これ!

 小さい身体を補う為に、潤沢に魔法が使える。

 普段は2つくらいだけど、今は5・6個の魔法をマルチキャスト出来る。

 私の姿が霞んで消える。

 怒っていた蛇が、驚いたような鳴き声を上げる。

 怒りを籠めて甚振る積もりだったんだろうけど、そうはいかない。

 蛇が私の姿を捉えた頃には、私はそこにはいない。

 蛇が滅茶苦茶に腕を振り回し、翼で空間攻撃を展開するが、腕は悉く空を切り、空間攻撃

は無効化する。

 蒼い閃光が走る。

 蛇の身体が崩れるように溶け出す。

 蛇が戸惑いと怒りの鳴き声を上げる。

 蛇は私を攻撃しようとして、驚愕したように静止した。

 そりゃそうだ。()()()()()()()()()()

 勿論、偽物や幻影じゃない。

 実体を持っている。

 それが分かったから、思わず止まったんだろう。

赤い分身(ブラッディアバター)

 私のレアスキル一番のチート技。

 どれも私と戦闘力は変わらない。100%本物と変わらない。

 血液で出来ている事を除けば。

 ただ、武器は複製出来ない為、持っている武器は別々だ。

 魔剣や聖剣があるから出来る事だ。

 

 私は何を今まで甘えた事を考えていたんだろう?

 犠牲が出ないように?

 今の私が?

 前世で散々学んだじゃない。

 負ければ次などない。だからこそ、なんでも遣るべきなんだって。

 フェイトに偉そうな事は言えないな。

 全盛期だったら?今は違うんだから、昔通りに遣るしかない。

 何をどう思われようと、手を尽くして倒す。

 それだけだ。

 

()()()()()()()()()()

 私はフェイトに言った。

 今更何をって言われるだろうけど。

 後ろを向いていても彼女の驚きが伝わってくる。

 うん。約束通り罵倒はあとで聞く。

「う、うん!」

 え?

 フェイトが矢鱈と勢いよく頷く。

 しかも、嬉しそうって、どういう事?

 だが、私は一端その事を置いておく事にする。

 今は優先すべき事がある。

『地上に居残り班の連中は、これから攻撃の余波とかが、そっちにいくと思うからなんとか

してくれる?』

 私は地上にいる守護騎士や援護射撃を実行中の面々に念話を送る。

『『『『ハァ!?』』』』

 守護騎士達の怒りやら、戸惑いやらが含まれた声が返ってきたが、無視する。

『ふん。我は偉大な王であるからして、なんとかしてやろう』

 偉そうな声がディアーチェ。

『おい!これ以上の精密射撃しろというのか!?こっちはチャージにだって時間が!』

 これは執務官殿。

『そう、悉く地上に届く前に無効化して』

 私は無慈悲に告げて、一方的に念話を切る。

 泣き言なんて聞く気はない。

 こっちも言ってる暇はない。

 

「フェイト。コアの場所を教える。合図したら一気に叩いて。攻撃は私達がなんとかする」

 フェイトがトライデントを構えて頷く。

 4人の私が同時に蛇に襲い掛かる。

 右腕で氷雪が吹き荒れ、左腕で赤い剣閃が再生する先から切り刻んでいる。

 右脚で風の刃が躍り狂い、左脚では樹木が脚を圧し潰そうとしている。

 蛇も黙ってやられている訳ではない。

 四肢が形を変え、蛇になった。

 それに伴い身体も変化する。

 更に本来ある首からもう1つ枝分かれしたように、首が生えて6つの首を持つ蛇になった。

 私はニヤリと笑う。こう変化したか。都合がいい。

 上手く私達に対処する為に、変化したつもりだろうけど甘い。

 6つの頭を使うという事は、それだけ複雑な動きを必要とする。

 元々そういう設計であるなら兎も角、急造したのなら圧倒的に処理能力が足りない。

 首を6つにしたのは、最後に残った私とフェイトを警戒したんだろうけどね。

 攻撃がブレスによるいい加減なものに変わる。

 

 そう赤い分身(ブラッディアバター)にも副作用はある。

 でも、後先考えて無茶なんて出来ない。

 それを忘れていた。

 だが、2度と忘れない。

 何を一番に護るべきか、何を失ってはいけないか、それを決めて自分の力で足りなければ、

他人に助力を頼む。または利用する。それしかないっていう事を忘れてた。

 そして、やっと事の非難は甘んじて受ける。

 

 私は、一応、今、友達がいる訳だから。

 これからも友達でいてくれるか、分からないけど。

 

 ブレスを4人の私が一蹴する。

 いくら6つの首で放っていようが、雑なエネルギー放射程度、私の技が後れを取る訳がない。

 派手に地球にエネルギーの余波が、雨のように降り注ぐ。

 まあ、地上には人員がいるんだから、どうにかして貰う。

「フェイト!!」

「ハアァァァァーーーーー!!」

 私の合図と共に、フェイトが気合と共に蛇のコアへと突っ込んでいく。

 魔法陣の方へ向き直っている私とフェイトが交錯する。

 フェイトは不敵に笑っていた。なんともまあ、嬉しそうな顔だったけれども。

 私も微かに笑っていたように思う。

  

『なのは!ユーリ!魔法陣の解析結果をこっちに回して!!』

『え!?う、うん!』

『は、はい!』

 私からの突然の念話にも即座に応えてくれる。

 私の目の前にウィンドウが開く。

 データに目を通す。

 魔法陣の魔法式は現在進行形で解析を妨害するように、書き換えられて続けているのが、

分かる。

 だが、これが分かるだけで、負担は少しは軽くなる。

精霊の眼(エレメンタルサイト)。コードアクセス」

 

 カウンタープログラム作成開始。

 

 解析作業を短縮、データスキャン。

 

 改変パターンを比較分析。

 

 法則性を解明。

 

 それを加味して構築開始。

 

 構築完了。

 

 

 

            :ディアーチェ

 

『地上に居残り班の連中は、これから攻撃の余波とかが、そっちにいくと思うからなんとか

してくれる?』

 突然、友から念話が届く。

「ふん。漸くらしくなってきたではないか」

 我は思わず笑ってしまった。

「は!?」

 夜天…いや、今はリインフォースか。

「無責任な言いようだと思うか?」

 リインフォースは戸惑ったように黙ったままだ。

『ふん。我は偉大な王であるからして、なんとかしてやろう』

 念話を返してやると、若干呆れたような感情が感じられた。

 それでは我等も空へ上がるとするか。

 我が飛び上がると、リインフォースも慌てて付いてくる。

「あの、先程のお言葉は?」

「おお!そうであったな。自分1人居れば、全てが片付く。そんな事ある訳あるまい。偉大

な我でさえ、1人で出来る事等限られておるわ。ヤツとてそれは分かっている筈だ。だが、

ヤツは矢鱈と過保護になっておった。手を借りるのは最小限、後は全て自分が丸く収める。

 向こうとて、事を成そうと全力を尽くすのだ。それが通用するのは格下だけよ。今回、

()()()()()が絡んでいる以上、そのままでイケる筈なかろう」

 向こうがお遊び感覚だったとしてもな。

 リインフォースは考え込むように頷いた。

「確かに、以前お会いした時より、固い印象でしたが…。分かっていて何も仰らなかったの

ですか?」

「納得しないと、飲み込めん」

「は?」

「ヤツがよく言っておった事よ。だから、友として気が付くように手助けはしたではないか」

 全く、全て言わせるな。無粋な奴め。

 我は照れ臭くて顔を逸らした。

「ま、友として、これが最後の助力よ」

「主に代わり、お手伝いさせて頂きます」

「構わん。小鴉が起きたら、そっちを優先せよ」

 我は速度を上げる。

 

 守護騎士共は、雨のように降り注ぐ魔力の塊を捌くのにもたついておった。

 仕様のない奴等だ。

「ギャラルホルン!!」

 ラグナロクに単発の威力では劣るが、広範囲攻撃が可能な魔法。

 降り注ぐ魔力の塊を悉く打ち砕く。

 守護騎士共が我等を振り返る。

「気を抜くでないわ!不甲斐ない!この程度の範囲、貴様等で防いで見せよ!それともアヤツ

に眼鏡違いで自分達には出来ませんでした、とでも言う積もりか!騎士の誇りがあるというなら、

ここで我に示して見せよ!!」

 我の言い分に怒りを示す騎士共。

 ふん。気概はあるようだな。

「勘違いすんじゃねえぞ!アイツの為じゃねえ!はやての為だ!」

「そこまで言われては、貴殿の度肝を抜いてやらねばなるまい」

「頑張っちゃいますよ!」

 最後の守護獣は物言わず、拳を握り締める。

 

「よかろう。見せて貰おうではないか!!」 

 

 騎士共が、一斉になおも降り注ぐ魔力から地上を守る為に、立ち向かっていく。

 リインフォースも騎士共と並び、魔力の塊を防いでいく。

 

 ふん。小鴉め。いつまで倒れておる積もりだ。そろそろ目を覚まさんと知らんぞ?

 

 

            :クロノ

 

 アミティエにパイルスマッシャーを保持して貰う。

 男として若干情けなさを感じるが、ここは敢えて無視しなければならない。

 出来ない事を嘆いたところで、仕方ない事だ。

 因みにリーゼ達は、他にも下準備する事があるといって、グレアム提督のところに戻っていた。

「いくぞ!デュランダル!」

『OK!ボス』

 パイルスマッシャーに装填されたディランダルが応える。

 術式の読み込み及び増幅が開始される。

「執務官。照準このままで、速度と進路が一致したら、このまま撃って下さい!」

 アミティエがピタリと砲身を固定する。

 普通なら捕捉する事すら困難なスピードだが、彼女の眼でなら計算次第では当てられるらしい。

 現状の管理局は、なんでこんな人材を無駄に犯罪者にするような事をするんだ。

「目標が動きを変えました!!撃って下さい!」

「エターナルコフィン、発動!!」

 僕の魔力量で放ったとは信じ難い程の砲撃が、宙を突き抜けていく。

 どういう状況か理解は出来ないが、迷わずトリガーを引き撃った。

「命中しました…けど、すぐに魔法を打ち消されました!!」

「何!?アレをか!?」

 これじゃ援護にならないぞ!!

「足止め程度にはなるかと!」

「成程、多少意味はあるか…」

「はい!次弾準備を!」

 凹んでいる場合じゃないだろうからな。

「執務官!」

 宙を観測していたアミティエが、慌てたように声を上げる。

「どうしたんだ!?」

「今、メインで戦っていた子が動けなくなったみたいです!!ピンチですよ!!」

 クッソ!まだ、チャージ中だっていうのに!

 仕方がない。

「チャージを中断する!すぐに撃つぞ!!」

「了解!!」

 アミティエが、パイルスマッシャーの砲口を調整する。

 彼女もここでチャージを中断して撃っても効果が低い事は承知している筈だが、何も言わない。

 必要なのは今だ。

 稼げる時間は僅かだ。それでなんとかしてくれよ!

「発動!!」

 砲口から白銀の一撃が宙へ伸びていく。

「着弾確認!!」

 問題は効果の方だ。

 時間稼ぎになっていればいいが…。

「あっ…いえ、大丈夫みたいです。撃った甲斐があったみたいです…」

 なんでそんなに歯切れが悪いんだ。

 僕の頭に疑問符が浮かぶ。

 僕はそれを抑え込んで、再びチャージを開始する。

 そんな事をしていると、行動不能になった当人から、恐ろしい丸投げ発言が念話で届いた。

『地上に居残り班の連中は、これから攻撃の余波とかが、そっちにいくと思うからなんとか

してくれる?』

 何!?ここにきて更に無茶な注文を!

 方々から肯定と不満が漏れる。

『おい!これ以上の精密射撃しろというのか!?』

 余波という事は、地上に殺し切れなかった砲撃の流れ弾が飛んでくる。或いは衝撃波が届くと

いう事だ。

『そう、悉く地上に届く前に無効化して』

 それがどれだけ無茶か分かってないのか!?

 念話は無情にも切れた。文句を言っても仕方がないが…。

 となると、振り回す必要があるな。コレを。

 いっその事、パイルスマッシャーを捨てて、デュランダルを持って空へ上がるか。

「このまま使おうよ、これ」

「何!?」

 意外な事に、今まで黙っていたアルフがそう言った。

「よく分かんないけど、地上に届く前に無力化すればいいんだろ?これ、魔法だろうとなんだろう

と当たったら、凍らせるんなら、その余波でもなんでも凍らせれば楽なんじゃないの?」

 成程、元々は暴走する魔力の塊を封印する目的でデュランダルは造られたんだから、イケる筈だ

な。でも、問題はチャージ時間だ。

 上空には守護騎士達もいるらしいが、打ち漏らしがないとも限らない。

 悠長に考える時間はない。

 折角持って来て貰ったが、試作品の出番はここまでだ。

「済まないが、デュランダルを取り外す。手伝ってくれ」

「いいのかい!?」

「これから必要なのは手数だ。威力を失うのキツイが下手をすれば、地球に被害が出かねない」

 それにパイルスマッシャーは、あくまで増幅させる為に持って来た物だ。

 本来の機能はデュランダルに備わっている。

 僕は、その事を説明する。

「なら、こっからは個々でどうにかする場面って事だね?」

 アルフが単純に纏める。

 まあ、要するにそう言う事だからいいが…。

「これでアタシもフェイトの為に出来る事が出来たって訳だね!」

 アルフが何も言わないし、していないと思ったら、柄にもなく悩んでいた為らしい。

 これは、アルフに失礼だろうか。

「よし!そうと決まれば、行ってくる!」

 アルフは僕らと違って準備の必要がない為、サッサと飛び上って行った。

 いつもよりスピードが速い気がする。

 そんなアルフを思わず見上げていると、アミティエが声を掛けてくる。

「それでは取り出してしまいましょう」

 アミティエは、そう言うとパイルスマッシャーからディランダルをパージするべく、弄り

出した。

 僕も参加して、パーツを慎重に外していく。

 無事に取り出した僕達は、アルフの後を追って空へと飛び上った。

 

 空へ上がるとアルフは既に始めていた。

 流石に守護騎士達も守備範囲外まで手が出ないらしく、少し魔力の塊や魔法の余波等が降り

注いでいた。

「こちらも始めるぞ!」

「了解」

 

 僕とアミティエも地上への被害を防止する為に、腕を振るい出した。

 

 

            :美海

 

 フェイトがコアに迫るのを必死に邪魔しようとする蛇だが、私が振り払えないばかりか、残りの

首2本も剣で叩かれて、フェイトを阻めない。

 フェイトがトライデントを突き出す。

 トライデントがコアを捉える。

 コアを捉えたにも拘らず、変化がない。

 これ、どっかで見た気がするけど…。

「サイコグローリー…はっ!」

 フェイトは気合と共に、掌底を蛇に叩き込んだ。

 すると、蛇に罅が入り、その罅から砂のような光る粒子が零れ出す。

 あれは…レヴィが使ってた技だ!

「なのは!ユーリ!離脱!」

 私は慌てて2人に退避を促す。

「分かった!」

「分かりました!」

 私はバルムンクを一気に振り下ろす。

 なのははユーリの手を掴み、高速で離脱済み。

 よく分かってるね。

 カウンタープログラムを練り込んだ蒼い光が、柱のように伸びて魔法陣に直撃した。

 そこから魔法陣の性質を利用して素早く、カウンタープログラムが魔法陣を侵食する。

 フェイトがコアからトライデントを引き抜くと、飛び退く。

 残りの私も離脱する。

 

 すると、蛇が爆散した。

 

 それと同時に、魔法陣も光の粒となって地球に降り注ぐ。

 どちらにも補助させる事なく、崩壊させた。

 これで、復活出来ない。

 ここまでの失態の穴埋めに、エネルギーを地球に送り返すようにしたからね。

 振り返るとフェイトが笑って手を出した。

 私は彼女の希望通りにハイタッチして上げた。

 さて…帰ろ…。

 だが、そうは問屋が卸さないようだ。

 フェイトの背後には嫌な物が、無事な姿でそこにいたのだ。

「コアは破壊した筈なんだけどね」

 魔法陣も今はない。

 

 にも拘らず、そこには機甲の翼が、なおも翼を広げてそこにいた。

 

 

            :???

 

 モニター越しに状況をじっくりと観察する。

 彼女が自らに科した枷は、無事に取れたようだ。

 だが、このまま終わってはこちらが面白くない。

 泥仕合を観て最後はアッサリ等、最悪というものだ。

 うん。頭を増やすのか…。

 悪手もいいところだが、魄翼を魔法的にパージするいい機会か。

 僕はコンソールに指を躍らせる。

 ナハトヴァール複製と魄翼の惑星破壊プログラムをパージした。

 魔法の支援がなければ動かない機械なんて、ゴミと同じだからね。

 キチンと機械としても、最高の性能を発揮するようにしたさ。

 魔法ではないから、周辺情報からの適当に再現可能な兵器を検索っと。

 アレだけではサプライズとしては、弱いだろう。

 僕からの祝いだからね。

 地球上にある兵器で良さそうな物は…核か…でも手頃な材料が…。

 ああ!これでいいだろう。廃棄軍事戦略衛星、これのミサイルでも使えばいいだろう。

 堕ちるのは、海鳴とかいう街に設定すればいい。

 

 僕は古臭い受話器を手に取る。

 こっちの世界は遅れているな。

 すぐに目的の人物に繋がる。

「君か!セブンスプレイグが!!」

 慌ててるねぇ。

「落ち着いて下さい、()()()。顧問として助言致しますから」

 

 僕はニヤリと嗤って、愚かな指導者に助言をしてやった。

 この世界にある異能じゃ飽き足らず、魔法が見たいって言ったのは、君だ。大統領。

 じっくりと見ればいい。遠慮はいらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 まだ、終わりません。
 終わりがまだ書き上がりません。
 次回はそろそろサブ投稿を書こうと思うので、少し遅れます。
 年内には戦闘に肩を付けられればと思っていますが…。

 めげずに付き合って頂ければ幸いです。

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