魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

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 随分と時間が掛かってしまいました。
 すいません。

 では、お願いします。


第44話 打倒

              :キリエ

 

 使い魔の2人がイリスに立ち向かっている。

 どうして挑めるの?

 少し前の私なら、躊躇せずにイリスを助ける為に行動した。

 でも、今は…分からない。どうしたらいいのか…。

 私は重傷のお姉ちゃんを抱えて、途方に暮れていた。

 2人はイリス相手に善戦していた。と言っても、イリスが試運転がてらに遊んでいただけの

ようだけど。

 2人はまずユーリの解放を第一に動いたが、封印から目覚めた翼に阻まれ、失敗した。

 翼は万全の状態じゃないのか、ユーリを護る以上の動きはない。

 あの翼がある限り、ユーリの救出は難しいだろう。

 2人は頭を切り替えて、イリスと協力して戦うが、すぐにイリスの魔法で形成が変わる。

 赤黒い槍の形が崩れ、イリスに吸収されていく。

 そして、最後には人型となった。実体化した…の!?あんな事まで出来るなんて…。

 イリスは今までに見た事のない格好をしていた。

 いつものドレスではなく、装甲まで付いた動き易い格好に。

 イリスが無数の槍を放ち、自らも槍で攻め込む。

 

 私はただその姿を見ていた。

 その時、腕の中でお姉ちゃんが動いた。

「お姉ちゃん…」

 お姉ちゃんが目を開く。

「戦いは…どう…なりましたか?」

 お姉ちゃんの目は、まだ諦めていなかった。あの2人のように。

 2人は黒い球体の攻撃でボロボロになっていた。

「多分…もうすぐ…終わるよ…」

 私はお姉ちゃんの顔を見られなかった。

 結局、私のした事はエルトリアの、父さんの手助けにならなかった。

 状況を悪化させただけ…。合わせる顔もない。

 かと言って、どうする事も出来ない。

「そうですか…」

 お姉ちゃんはそう言うと、私の腕を退けようとする。

「何する積もり?」

「私も戦います。最後まで…」

「無理だよ!!」

 私は思わず反論した。

 お姉ちゃんが何も言わずに、私の頬を軽く叩く。

 全く痛くなんてない。でも、驚いてしまった。

「キリエ…。告白…します。私は貴女の…事が嫌いでした」

 別に好かれていると思っていた訳じゃない。

 でも、ハッキリと言われるのは初めてだった。

「貴女はみんなに…甘やかされて…いた。みんなが可愛がった。貴女がそんなだから私は物分かり

のいい…姉でいなければならなかった。そうしないと…認めて貰えない気がして…。それは正しく

も…ありました。だから、認め…られた。エルトリアの状況の悪化で…私は頼って…貰えるように

なりました。でも…相変わらず、誰にも甘える…事は出来なかったんです。だから、腹が立ち

ましたよ。貴女の態度が」

 お姉ちゃん…がそんな事を考えていたなんて…。

 そんな事、1度だって表に出さなかったのに…。

「今まで、姉として…いえ、アミティエとしての意地で、姉として振舞ってきました。…でも、

今…アミティエとして言います。甘えるんじゃ…ないの!自分の、不始末は自分で…どうにか

しなさい!私は、そうします。退いて下さい」

 お姉ちゃん…。

 私は腕に力を籠めた。

「キリエ!」

 お姉ちゃんは非難の声を上げる。でも、手を放す訳にはいかない。

「私もみんなが頼りにするお姉ちゃんが嫌いだったよ。だから、お願いは聞かない。私が行くよ」

「そうですか…」

 なんだか、少しだけスッキリした気がした。

 お姉ちゃんの顔にも、いつもの余計な力が入っていない気がした。

 どうすればいいか、未だに分からない。でも、行かなきゃいけない。

 このまま止まっていては、また動けなくなってしまうから。

 お姉ちゃんを地面に寝かせて、走り出す。

 リミッター解除を行う。

 

 いつの間にかクロノ執務官が、戦いに参戦していた。

 だが、イリスの力の前には、力が足りなかったみたいだ。

 イリスから黒い球体が放たれる。

 私はヴァリアントザッパーを拳銃形態に変えて、黒い球体の軌道を逸らすように魔力弾を撃つ。

 黒い球体は、軌道をズラし3人の横を通過していった。

 私は3人の前に庇うように立つ。

「アンタ…」

 紅い髪の使い魔が呟くように言う。

「キリエ。アンタ、まだいたの?しかも、邪魔するとはね」

 イリスの事を真面に見る事が出来ない。

 でも、言わなきゃいけない。 

「しかも、私がカスタムして上げたリミッター解除で邪魔するとはやるじゃない。どうしたの?

何か言ったら?」

 私は目を合わせないまま、自分の気持ちを伝えた。

 でも、イリスから返ってきたのは、嘲りと怒りだった。

「罪!?罪ですって!?随分とご立派な事ね!!じゃあ、償いは手伝って上げるわ!!」

 イリスが翼に命令を下す。

「魄翼!!もう1人の主を護りなさい!!」

 その言葉と共に、ユーリが翼に取り込まれる。

 そして、翼を背に装着したユーリが姿を現した。

 

「天使…」

 

 誰かの呟きが聞こえる。  

 だけど、あれはそんなものじゃないのは、イリスが語っている。

「イリス…」

「あら、思い出したの?よかったわ」

 イリスがニッコリと笑う。でも、目は笑っていなかった。

 今まで誰か分かっていなかったのに、今はイリスのことを知っているような感じだ。

 イリスがユーリを殴り付ける。

 そして、語られるイリスの気持ち。

 そうだったんだ。イリスにとってユーリは大切な存在だったんだろう。

 でも、それはユーリのなんらかの理由で破られた。

 イリスは傷付いていたんだ…。

 私はそれに気付いて上げられなかった…。

 確かに、私は友達を名乗れないのかもしれない。

「魄翼!手始めにここにいる奴等を皆殺しにしなさい!!」

 イリスがそう命じた直後、イリスに魔力弾が命中する。

 射手を見ると、お姉ちゃんだった。

 お姉ちゃんは這うように、ヴァリアントザッパーを構えていた。

「死に損ないが!!消し去りなさい!!」

 ダメっ!!

 私は咄嗟にお姉ちゃんえお助けに向かう。

 ユーリの悲鳴のような声と共に、攻撃が放たれる。

 けど、間に合いそうにない!!

 絶望的な気持ちで体を動かす。時間がゆっくりに感じる。

 お姉ちゃんが目を閉じる。

 

 何か影のようなものが、お姉ちゃんの前に飛び込むと、物凄い音が響く。

 

 私は驚いた。そこにいたのは、敵だった筈の子がお姉ちゃんを庇うように立っていた。

 イリスにしたら、全員始末してから、戦いたかったのだろう。

 悪態をつく。 

「今度こそ、失敗しない」

「俺も忘れないでくれよ」

 彼女のセリフの後に、私と戦った男の子が出てくる。

「「さあ、始めようか!!」」

 戦闘開始の戦前をした。

 

 私は今になって、ようやくお姉ちゃんの元に辿り着く。

 お姉ちゃんが2人の背中を見ている。

「この世界には…ヒーローがいるんですね…キリエ」

 私達はなれず。

 私達の世界には今のところいない存在。

 それが今、目の前にいた。

 

 小さな2つの背中が、心なしか大きく見えた。

 

 

              :フェイト

 

 美海と飛鷹が、飛んで行ってしまう。

 私達だけでやるんだ…。

 でも、信頼の証だと思えばいいと思う。美海もハッキリと大丈夫だって言ってたし。

 切り替えて、状況を確認していく。

 夜天の魔導書と防衛プログラムは切り離され、黒い澱みとして存在する。

 アレをどうにかしないといけない。

「状況の確認をしようか」

 なのはが口火を切る。

 みんななかなか口を開けない中、真っ先に口を開くなのはは凄いと思う。

「そうやね。ええと…切り離された防衛プログラムを行動不能にするんが、今回の目的

やね。プログラムの意思みたいなもんがある以上、実体化するのは確実やと睨んどる。」

 はやてが分かっている事を含めて、予測を口にする。

「どうして?だって、全て呑み込んじゃうじゃなかったっけ?」

 なのはが実体なんていらないんじゃない?と語外に言う。

「私が会ったんは、もう狂った人やったけど、人型やった。つまり自分を人として認識

しとるんやなかいかと思うんよ。マスターを使って滅ぼすんやったら、それでもええの

かもしれんけど、今は夜天の魔導書から切り離されて、自分でやらなあかん」

「つまり…自分の形を定義しないと動き難いって事?」

 私の解釈にはやてが頷く。

 朗報は、夜天の魔導書から切り離したお陰で、全てを飲み込む虚無を自在に操れないらしい事。

 その代わりに防衛プログラムを護る為のシールドを、具現化するんだとか。

「それは、物理と魔法が交互に4つの構造で出来とる。まずはそれを破らなあかん」

 幸い騎士達が復活して、物理に関しては問題ない。

 魔法に関しても、私となのはがいる。

「問題はシールドを破った後や。純粋な魔力の塊になっとるナハトヴァールに下手な攻撃

は通用せぇへん。実体はあくまでコアである意思を護る為のもんや。実体を幾ら壊しても

再生してまうと思うわ」

 つまりは、コアを露出させた後、速やかにコアを一撃で消滅させなければならない。

 二段階突破すべき事があって、コアの露出も多分、短時間。

 コアの強度不明。厳しいな…。

「ええと、ヴィータちゃん達は何か意見はないの?」

 なのはがシグナム達にも意見を求める。

 そう言えば、騎士達はさっきからずっと黙ったままだったね。

「すまん…それに関しては有益な情報がないのだ」

 シグナムが苦い顔で言った。

「大体、こんな事態になってる時は、アタシ等は取り込まれてたみたいだしな」

「故に、それに関する知識はないのだ。どの程度手強いのか、それとも大した事がないの

か、それすら分からんのだ…」

「すみません…」

 ヴィータ、ザフィーラ、シャマルが同じく苦い顔で言った。

「私も、その時には優先がナハトヴァールに移っているから、主が語った概要程度しか情報

がない。済まない」

 夜天の意思がはやての肩で項垂れる。

 やっぱり、コアの方は私となのはで砲撃するしかないかな…。

 問題はそれで倒し切れるか、だね。

「コアの再生能力は、実体以上と思って間違いない」

 はやてが私の考えを呼んだように、追加情報を出す。

 コアが再生能力を司っているなら、それも考えられるね。

 

 悩む時間は限られている中、通信が入る。

 出るとリンディ提督だった。

『通信に出れるという事は、今のところ順調と考えていい?』

 リンディ提督の表情が硬い。

 私は代表して今の状況を説明する。

『成程ね…。コアの破壊を…。こちらにアルカンシェルでもあれば、状況次第では協力も

出来たんだけど…』

 アルカンシェル。対反応消滅砲、だったと思うけど、あれは被害が大き過ぎて流石に、

地球で使ってほしくないものだ。手札にないくらいが丁度いいと思う。

 守護騎士達も、これにはとんでもないと反対した。

 理由が、はやての家がなくなるからだったけど、私達も似たような理由で嫌なんだから、

苦笑いするしかない。

『それでね。こちらにも悪い知らせがあるの…』

 リンディ提督は、本当に申し訳なさそうだった。

『まずは僕から説明するよ。出来る限り簡潔に話すから』

「ユーノ君!」

 なのはが声を上げる。ウィンドウがもう1つ開き、話し出したのはユーノだった。

 なんだか凄く久しぶりな気が…。

 その説明は驚く事ばかりだった。クロノのお父さんの事、防衛プログラムの成り立ち。

 中に仕込まれたシステム。更にリンディ提督の友達・レティ提督という方からの報告も

付け加えた形で教えてくれた。

 守護騎士達も驚いていた。

 はやても知らない部分があったのか、驚いていた。

 美海の因縁がここで出てくるなんて…。

 更に驚きの知らせがあった。

『実はね。そちらにアルカンシェル搭載艦が5隻、証拠を消す為に向かっているの』

 全員の顔色が変わる。

 対応を間違えば、地球だって危ない。

「管理局って、そないな暴挙やるんですか」

 はやてが冷ややかとも言える口調で言った。

『一言もないわ』

「いえ!別にリンディさん、責めてる訳やないですよ!」

 はやてが慌てたように、手を振って全身で違うと表現していた。

「それでも、組織の一員としてお詫びするわ。勿論、全力で対処するから」

 リンディ提督が、決意を籠めて言った。

 それから、リンディ提督にも対処の相談をする事にした。

 リンディ提督も、その条件だとアルカンシェルくらいしか思い付かないみたい。

 何か、一撃で…。

 

 あっ…。

 

 私は手にしたトライデントを見詰める。

 レヴィが受け取った力。

 これで一気に崩壊に導けるんじゃない?

『バルディッシュ。どうかな?』

 私は自分の考えをバルディッシュに念話で話し、検証して貰う。

『魔力を解析出来れば、可能です』

 バルディッシュが少しの沈黙の後に、結論を教えてくれた。

 なら、迷う事はないよ。

「私、多分、一撃で消し去れると思う」

 全員が驚いて、こっちを見た。

「え!?ホンマ!?」

 はやてが信じられないと言わんばかりに、訊いてくる。

 まあ、無理ないかな。心の中で苦笑いする。もし、立場が逆だったら私も信じられない。

 私はレヴィの力を軽く説明する。

「レヴィさんの力って、なんか凄いね」

 流石になのはもビックリしている。

 でも、多分、なのはも戦った人から受け取ってるよね?

 それからの手順をリンディ提督とエイミィさんも交えて、決めていく。

 

「もうじき、ナハトヴァールが暴走を開始します」

 はやての肩に夜天の意思が、リミットを告げる。

「じゃあ、いこか!」

 はやてが締めくくり、みんなが配置に着く。

 

 これで夜天の魔導書の悲劇に、終止符を打つ。

 

 

              :なのは

 

 飛鷹君がいない戦いって、久しぶり…もしかして初めてかな?

 私もようやく任せてくれるくらい強くなったって事かな。

 美海ちゃんだって大丈夫だって言ってくれたし。自信を持っていいと思う。

 アースラからは結界の支援をして貰ってるけど、あんまり被害を出さないのがベスト。

 結界を過信すると、市街地に被害が出ちゃうらしい。

 だから、対策をする事にする。

『いい?例の場所に頑丈な結界を、もう1つ形成したから!座標を間違えないでね!」

「大丈夫です!はやてちゃんの家を護る為にも、失敗はしません!!」

「私もOKや」

 エイミィさんの最終的な確認に、シャマルさん、はやてちゃんがそれぞれに応じる。

 でも、シャマルさんのって…。

 エイミィさんも苦笑いしているし。

「主!」

 夜天さん?が警告を発する。

「みんな!打ち合わせ通りに!」

 黒い嫌な魔力が黒い澱みのような場所から、噴き出してくる。

 出て来たのは、女の人の上半身を持った怪物。

 邪神と言っても違和感なんかない。

「仄白き雪の王、銀の翼以もて、眼下の大地を白銀に染めよ。来こよ、氷結の息吹」

 夜天の魔導書のページが高速で捲られ、はやてちゃんが詠唱する。

氷結の息吹(アーテム・デス・アイセス)!」

 はやてちゃんが魔法を発動すると、出て来たばかりの邪神が一瞬で氷の彫像に変わる。

 こんな事をしても、すぐに元に戻る事は織り込み済み!

 ほしいのは少しの時間。

 私とフェイトちゃん、それに騎士達もバインドを使用して縛り上げる。

「シャマル!」

「はい!」

 邪神の周りに魔法の膜が形成される。

 シャマルさん1人じゃ出来ない。けど、はやてちゃんが持つ莫大な魔力があれば、出来る!

「「転送!!」」

 2人が息を合わせて、邪神を決戦の場に定めた場所に送る。

「エイミィさん!!私達も!!」

 はやてちゃんが叫ぶ。

「了解!」

 エイミィさんは返事と共に、アースラの転送で私達も決戦の場へ転移させる。

 

 到着と同時に、水飛沫が上がる。

 放り出された邪神が()に落ちたんだと思う。バインドでグルグル巻きだったし。

 これでかなり海鳴から離れたよ!

 私達は、オールストン・シーより離れた遠海に邪神を飛ばしたんだ。

「まずは4層のシールドを破る!」

 はやてちゃんがそう言った時に、派手に邪神がバインドを破り、水面に現れる。

 氷が割れて、新たな身体が氷の隙間から出てくる。気持ち悪い。

 随分と怒っているように感じる。

「鋼の軛!」

「戒めの風!」

 ザフィーラさんとシャマルさんが再び拘束していく。

 私とフェイトちゃんもバインドを掛け直す。

 邪神の後ろにある車輪のような物が回転して、バインドや拘束を破壊する。

 水面から触手が顔を出し、こちらに先端を向けると魔力が収束し出す。

 砲撃!

 すぐに全員が回避を選択して、躱していく。

 それぞれが、こちらの援護射撃や、囮として派手に動き回る。

「先陣突破!ヴィータちゃん!なのはちゃん!」

 シャマルさんの指示で、私達は邪神に突撃を始める。

「足引っ張るんじゃねぇぞ!高町…なんとか!!」

「なのは!!ヴィータちゃんも失敗しないでよ!」

「誰に言ってやがる!」

 どうも、関わりが途中で薄くなったから、私の名前を忘れたみたい。

 ヴィータちゃんと言い合いしながらも、戦槌で魔力弾で邪魔な触手や砲撃を倒し、進路を

確保する。

 ヴィータちゃんの奥の手の間合いまで、あと少し!

 沢山の触手が砲撃体勢に入る。

 ポジションを確保しなきゃ!

「レイジングハート!アクセルシューター・バニシングシフト!」

『ロックオン!』

「シュート!!」

 同時に20以上の炎熱弾が、砲撃体勢にあった触手を焼き尽くす。

 シュテルから預かった炎は、凄い。

 前の私の魔力弾じゃ、撃ち抜く事は出来ても、完全に倒せなかったと思う。

 ヴィータちゃんが対応しきれない砲撃を、炎熱弾で撃ってポジションを確保。

 あまりの精密射撃で驚いたのか、ヴィータちゃんがこっちを一瞬振り向いて、目を見開く。

 私は笑顔で頷くけど、プイッとそっぽを向かれてしまった。

 仲良しになるには、まだ遠い…。

 そんな事を考えていても、手は止めない。目に映る全ての触手を焼却する。

 ヴィータちゃんが空中で止まり、魔法陣が形成される。

「鉄槌の騎士・ヴィータと黒鉄の伯爵・グラーフアイゼン!!行くぞ!!」

『ギガントフォルム』

 ヴィータちゃんの戦槌がカートリッジの弾丸を吐き出し、形が変わり戦槌が大きくなる。

 ヴィータちゃんが豆粒に見えるくらい大きくなった!?

 凄い魔力が噴き出す。

 ヴィータちゃんが超巨大戦槌を振り上げる。

「轟天爆砕!!ギガントシュラーク!!!」

 超巨大戦槌が信じられない速さで振り下ろされる。

 邪神の大きい身体が、衝撃に耐え切れずにシールドを一枚叩き割るだけでなく、水中に

沈める。凄い威力!!

 でも、感心してる場合じゃない!次は私だ!

「レイジングハート・エクセリオンと高町なのは!!行きます!!」

 私はレイジングハートを構える。

 魔力が凄いスピードで収束される。

「エクセリオンブラスト!!」

 レイジングハートから高熱を帯びた衝撃波が放たれる。

 エクセリオンバスターとシュテルの炎を合わせた魔法で、ぶっつけ本番だけど、成功

させる!!

 射線を遮ろうとする触手を、焼きながら吹き飛ばす。

「ブレイク…シュート!!!」

 そして、本命の魔力砲撃が放たれる。

 4つの魔力砲が互いに絡み合い邪神に直撃する。

 2つ目のシールドを撃ち抜いただけじゃ足りずに、巨体が後ろ向きに倒れる。

 それでも炎がシールドに纏わり付く。

 すぐに邪神が炎で焼かれている部分をパージする。

 焼かれた部分が再生してしまう。

「次!シグナムとテスタロッサちゃん!」

 シャマルさんの合図で決めてあった通りに、今度は私とヴィータちゃんが陽動と援護射撃

に入る。

 フェイトちゃんとシグナムさんが、入れ替わりに突撃する。

 邪神が2人の接近させないように、海面から触手を大量に出してくる。

 砲撃がチャージされる。

 けど、させない!

 片っ端から炎熱弾で焼き払い、2人の進路を確保する。

 ヴィータちゃんはヒット&アウェイで、邪神を戦槌で叩き気を逸らす。

「シグナム…」

「分かっている。今は共闘中だ。上手く合わせてくれ」

 フェイトちゃんは、多分、一緒に組むからお願いしますって言いたかったんだと思う。

 シグナムさんもそれが分かった。

 この2人って案外似てるのかも。

 シグナムさんが急激に止まる。

 あれ?剣で斬るんじゃないの?

 フェイトちゃんは一瞬ビックリしたみたいだけど、すぐにシグナムさんが集中出来る

ように、離れた位置で速度を落として飛び回る。

「烈火の将・シグナム。レヴァンティン!連結刃に続く姿を」

 シグナムさんが鞘を手に取り、剣の柄尻に鞘を取り付けるとカートリッジの弾丸が、

吐き出されると、それは弓の形に変化した。

『ボーゲンフォルム』

 魔法陣が形成され、炎が吹き上がる。

 弓の弦が引かれると、剣の刃のような鏃が付いた矢が現れる。

「翔かけよ、隼!」

『シュツルムファルケン』

 矢が、物凄い魔力の炎を纏い、鳥のような姿になって邪神を撃ち抜く。

 3枚目の物理のシールドを貫き、邪神の身体が真っ二つに割れる。

 割れた身体から新しい身体が形成されていく。

 フェイトちゃんは、邪神の真上に陣取ると、魔法陣を形成する。

「フェイト・テスタロッサとバルディッシュ・アサルト!!行きます!!」

 フェイトちゃんが三又の槍を高速回転させる。

「焼き尽くせ!!」

『ジェットトライデント』

 回転の勢いを殺さずに、三又の槍を振り下ろすと、シールドごと邪神が真っ二つになると

同時に、切断面が破裂する。

 えっと…もしかして斬撃に加えて、電子レンジみたいな効果がある攻撃…なのかな?

 なんか怖い攻撃だね…。

 それでもコアが破壊されていないので、新しい身体が形成されていく。

 4層のシールドを張り直される前に、決着を付けないといけない。

 海面から新しい触手も現れる。

 邪神が海面から浮き上がる。

 周囲にシールドを展開していく。

 触手は懲りずに砲撃の構え。

 させない!私はレイジングハートを構える。

「盾の守護獣・ザフィーラ!!砲撃なんぞ撃たせん!!」

 私や他の人達より早く、ザフィーラさんが動く。

 気合と共に、白銀の刃が海面から飛び出し、触手を刺し貫き、砲撃を阻止する。

「テェオヤァァァーーー!!!」

 拳に白銀の魔力を纏わせ、シールドを殴り付ける。

 何度も殴り付けると、シールドが歪み凹んでいく。

 私達もそれを黙って見物していない。海面から次々に出てくる触手を倒していく。

 そして、遂にザフィーラさんの拳がシールドを貫いた。

 シールドが崩れ落ちると同時に一斉に魔法攻撃が、身体のあちこちから放たれる。

 ザフィーラさんが飛び退いて、躱す。

「湖の騎士・シャマルとクラールヴィント!行きます!」

 シャマルさんの指輪から魔力が放たれ、風が舞う。

「風の檻!」

 風が竜巻のように邪神を巻き上げ、動きを妨害する。

 触手も巻き込まれ、砲撃が見当違いな方向に飛んでいく。

 シャマルさんの魔力だと、そう維持出来ない。

「はやてちゃん!今です!」

 シャマルさんが滝のような汗を流して、叫ぶ。

 はやてちゃんが頷く。

 魔導書はもう新しいページを開いていた。

「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け!!」

 空中に無数のスフィアが形成される。

「石化の槍・ミストルティン!!」 

 魔法の完成と一緒にシャマルさんが魔法を解除する。

 スフィアが槍になって邪神に突き刺さる。

 物凄いスピードで刺さった部分から石化して、完全な石像に変わる。

「お願いします!」

 シャマルさんが私達に合図を送る。

 私達3人が頷く。

 私の周りの魔力が反応して、一か所に集まってくる。

 フェイトちゃんは呼び出した雲から雷を降らせて、三又の槍で受ける。

 順番上、はやてちゃんが連射にまるので一番キツイ。

 けど、はやてちゃんには夜天の意思?が付いているので、大丈夫という事で、

合わせて貰う事になった。

 ページが捲られる。

「響け!終焉の笛!!」

 凄い魔力と魔法式が展開される。

 

「スターライト…」

「プラズマトライデント…」

「ラグナロク…」

 

「「「ブレイカーーーー!!!」」」

 

 3つのブレイカーが身体を形成中の邪神に突き刺さる。

 肉や骨が3つのブレイカーで消し飛んでいく。

 再生する暇などなく砕いていく。

 

「捕まえ……た!!」

 シャマルさんが砕かれた身体の中から、コアを見付け出す。

「ザフィーラ!!」

 シャマルさんに応えるように、ザフィーラさんが白銀の柱でコアを空に突き上げる。

 

「なのは!」

 フェイトちゃんの声に応えるように、フェイトちゃんの肩に手を添える。

 同調を開始する。

 人数が限られる以上、無茶をする場面はどうしても出てしまう。

 でも、私達なら乗り越えられる!!

 美海ちゃんが信じてくれた。飛鷹君が任せてくれた。

 だから!!

 同調成功。

 フェイトちゃんと私の演算領域と魔力がリンクする。

 雨雲を維持したまま、熱波が放たれる。

 コアを熱波が通過する。

 コアが雨雲に突っ込んでいく。

『魔力パターン及び構成式を解析』

 バルディッシュの言葉に私達は同時に頷く。

 

 フェイトちゃんが槍を投擲姿勢に入る。

 

「「F&Nサイコウェーブバースト!!!」」

 

 空間が歪む程の力を纏い、三又の槍が投擲される。

 

『マダマダコロスコロコロコロ…!!!』

 コアが人型になり、髑髏が叫ぶ。

 三又の槍が咆哮を上げて、髑髏を貫くと同時に周辺のコアの魔力が纏まりを無くし、

崩れていく。

 固有振動数に合わせて超音波を発生させ物質崩壊するみたいに、魔力のパターンに

合わせて魔力の振動波を放つ魔法にアレンジした。

 制御を失い魔力が一気に分解・霧散していく。

 雲にコアが覆われていたから、逃げ場所はない。

 私達の魔法で雲ごと吹き飛ぶ。

 

 邪神みたいになった防衛プログラムの魔力が消えている。

 暫く、油断なく警戒する。

 

 再生する気配も、移動したようにも感じない。

 みんな溜息を吐いて、緊張を緩める。

 

 でも…いつの間にか空に人が沢山立っていた。

 ええ!?

 フェイトちゃんとはやてちゃんは驚いているけど、騎士達は気付いていないみたい。

 その人達の真ん中の男の人が、バラバラになった骸骨を抱えていた。

 もしかして、あの骸骨…。

 全員が礼のような仕草をすると、全員で去って行った。

 家族とか友達だったのかな

 ユーノ君が言っていた。あの人は大切な人達を失ったって…。

 迎えに来た人達とは、同じところにいけないかもしれない。

 でも、あの人も少しは救われるのかな…。

 

 私達3人は、あの人達が消えた空をジッと見ていた。

 

 

              :リンディ

 

 夫が命を懸けて調べた事。

 それが今になって分かった。

 でも、()()()()()()()()()()()

 あの人ならもっと上手く対応出来た筈だ。

 何か、まだ知らない事がある。

 

「艦長!やっぱり、5隻共に通信を無視しています。どうも通信を切っているようです」

 でも、まずは目の前の事をやらないと。

「いざとなれば、私が彼等の前に立ちます」

「「「艦長!?」」」

 勿論、その時は乗員は退避させるつもりだ。

 子供が自分の世界を護る為に、命を懸けているのに、大人の私が命を懸けない訳には

いかない。

 それに約束している。全力で対処すると。

「5隻の出現ポイントとその経路を割り出して」

 私の指示に、返事をしようとしたエイミィが言葉を飲み込む。

「どうしたの?」

 

「オールストン・シーの辺りから巨大な魔法式が展開されました!!」

 エイミィがウィンドウに表示する。

 それはドンドン拡大していた。

 な!?こんな規模の魔法なんて、有り得ない!!

 

 そう簡単には、今回の事件は終息しないみたいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ようやくここまで来ました。
 最初の部分は、キリエが手を貸した理由を書かなければ
 と思ったからです。
 まだ腹は決め切れていませんけど…。
 亡霊の最後が見えたのは、はやては夜天の魔導書の主
 だからで、なのはが見えたのは同調の効果です。
 フェイトが見えたのはなのはと同調していたからです。

 次回はいつ投稿出来るか、不透明です。
 折れた訳ではありません。
 最後まで書く所存でございます。
 気長にお待ち頂ければ幸いです。

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