魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

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ようやく、書き上がりました。
うーん。予定では、もう一話ぐらい書き上げてる筈だったんだけどな。
難しいです。


第2話 雨音の記憶②

            :美海

 

 結局、放課後になっても雨は止まず、雨の中を帰宅という事になった。

 突然の雨だったが、心配は無用である。他の生徒と違い私は常に折り畳み傘を持っているのだ。母上の手を煩わせたりはしない。

「美海ちゃん、帰るの?傘は?」

「大丈夫。持ってる」

 私は仲のいい子に挨拶をしてから、教室を後にする。

 友達を置いていくのかって?二人で差して歩けるほど傘は大きくないからね。決して冷たいわけではないぞ。それに大体、放課後は残らずにサッサと帰るのが常だしね(爆)。

 女の子はグループを形成する。ウチのクラスにも幾つかあるしね。断っておくが、みんな仲はいいよ。ただ、あまり話さない子もいるだけ(爆)。私はなのはちゃん達とは違うグループに薄く繋がっているだけだったりする。よく話す仲のいい子はいても、休みに必ず遊びに行くという感じではないので、薄情だと思われたことはない…筈だ。

 実は友達いないのかも…。まあ、いいか。

 

 私は学園の外に出た瞬間に、カバンからヘッドフォンを取り出す。

 元キャラの所為か今生になってヘッドフォンが気になってしまって、初めて親に頼んで誕生日に買って貰ったものだ。ベルカ時代は存在しなかった所為か気にならなかったのにね。ヘッドフォンは大型電気店で父上と一緒に選んだものだ。黒いヘッドフォンで炎のマークが入っている。元ネタは覚えてるよ。思わず懐かしくて購入してしまった。

 CDも何枚かプレゼントして貰った。勿論、小型のCDプレイヤーも。

 今ではローテーションでCDを選んで、聴いている。

 

 断っておくけど、ヘッドフォンで音楽を聴きながら歩くのは危ないよ。私だから出来る事だと思ってね。真似はダメだよ。

 

 

 音楽を聴きながら、ダラダラ歩いていると、近所の子供が遊ぶような小さな公園の前で、キン!と澄んだ音が頭の中に響いた。

 

 私は公園を見ると、人除けの結界が張られていた。

 あまり出来はよろしくない。所々、術の形成に甘い部分が散見される。

『それは、主の魔法に比べれば不出来なのは仕様がなかろう』

 念話で突然に声を掛けられたが、これは私の相棒である。インテリジェンス・デバイスではない。

 ベルカ時代の愛用の聖剣である。名をバルムンクという。()()()()()()()()

 ゲットバッカーズの赤屍 蔵人の能力が私の二つ目の特典である。私の血の中には他に様々な武器が入っている。

 因みに、これは私のレアスキルとなっている。

 勿論、私はデバイスも持っている。それは、バルムンクに制御させていたりする。チート技術でどうにかしてますが、何か?どうせ騎士甲冑の形成や魔法の簡単な補助ぐらいしかやらせないし。

『そうかな?この時代の魔法自体いい加減だと思うけど』

 正直、もっと丁寧に術式を組めばいいと思うけど。それだけで、負担は大幅に減るし、魔力の節約にも繋がる。

 バルムンクの苦笑いが伝わってくる。

『それは主には全てが見通せるからな』

 精霊の眼(エレメンタルサイト)があるので当然と言われ、少し不機嫌になってしまった。

 私だって努力してるけどね。

『そう不貞腐れるな。主が資質故に人の何十倍も努力している事は知っておるよ』

 分かってるなら言うなと言いたい。

 気持ちを切り替える。

 それよりも、今は結界の内部だ。

『誰かが、人に入ってきてもらっては困る事をやっているって事だからね』

 結界に触れ、より深く術式を探る。

 どうやら侵入者を警告する機能はないらしい。

『不用心だね。まあ、いいけど』

『やり過ぎるでないぞ。主よ』

 やり過ぎとは、環境破壊行為ですね。分かります。

 私は頷き、結界の内部に入り込んでいった。

 

 あまり大きな公園ではない為、すぐに目的の場所に到着したようだ。

 移動に一切の音も気配も漏らさない事など、私には朝飯前だ。

 目立つ傘はとうに投げ捨てている。

 小柄な体の為、隠れるのも楽だ。

 眼を使うまでもない。声も聞こえる。

「こんな所に落ちてたのか」

「あの年増の元使い魔なんて、どうすんです?もうすぐ消えそうですぜ」

 男二人が、毛玉をしゃがみ込んで見て話していた。

「バカ。あの年増が造った使い魔だぞ。力も経験もある。使えりゃ、俺達の仕事も捗るってもんだろ。依頼料をケチられたしよ。このぐらいの駄賃は頂いてもいいだろう。

 それに、人間の形体はなかなかいいカラダしてたしよ」

 頭らしき男が下品な本性丸出しで笑う。

「ゲっ!マジっすか!本体獣すっよ!俺、無理だわ」

「バ~カ!こういうのがいいって物好きもいんだよ」

「あっ、兄貴の趣味じゃねぇんですか」

 兄貴とかいう男はもう一人の男の頭を叩いた。

 

 何かもう始末を付けていいように思う。

 私はウンザリしつつ、デバイスを音も無く起動させる。魔力を不必要に散らすようなヘマはしない。

 手の中に普通の拳銃より薄い作りのカートリッジ付きのオートマティック拳銃型のデバイスが現れる。

 

「今すぐ…私の前…から…消えなさい」

 どうやら、毛玉が喋ったようだ。声も囁くような小ささで喋るのも辛そうだ。

 まあ、消えかけているのだから当然か。

「流石だな。魔力も殆ど無くなりかけてんのによ。お前にゃ俺の使い魔として、新たな人生をスタートして貰う。因みに拒否権はねぇよ。使い魔は契約に逆らえねぇ」

「下種…」

「契約が済んだら、まずは口の利き方からだな」

 兄貴とやらの足元から魔法陣が浮かび上がる。

 毛玉は必死に逃れようとするが、微かに身動ぎするのが精一杯のようだ。

 

 私はデバイスを構え、二度引き金を引いた。

 こんな近距離、ゼロ距離射撃と変わらない。外しようがない。そもそも()()()()()()()()()()()()()

 

 兄貴とかいう男の伸ばした手がバッシュっという音と共に風穴が開き、血が噴き出した。

 ニ発目は魔法陣。パキンっという軽い音を立てて魔法陣が消し飛んだ。

 

「ぎゃぁ!」

 兄貴とやらが手を庇って倒れる。

 その程度の痛みで、大袈裟な。戦場では死ぬよ。

 私は相手が倒れた頃には別の場所に移動を完了している。

 もう一人の手下は、まだ間抜けにも呆然と突っ立ったままだ。

 甘い。

 私は素早く手下の肩に魔法をポイントし、引き金を引く。

 次の瞬間には手下も肩を射貫かれ情けない悲鳴付きで倒れる。

 

『命が惜しければ立ち去れ』

 

 私は念話で二人に警告する。

 

「ちくしょう!!誰だ!ふざけやがって!!」

「兄貴ぃ…イテェよ」

 兄貴のメンツか知らないが、手を押さえたまま上体を起こし、辺りを見回し叫んでる。

 私はまたもデバイスの引き金を引く。

 空中に魔法陣が現れると、爆発のような凄まじい突風が放たれる。

 魔法科高校の劣等生の偏倚解放である。

 原作ではイチイチデバイスを操作するが、私には必要ない。すぐに必要な魔法を引き金を引くだけで使える。そのくらいの鍛錬は積んでいる。

 正確に二人のみを吹き飛ばす。

 骨が何本かイっているようで、二人は芋虫みたいにもがいている。

 もう、手下は半泣きである。

 

『今度は腕の一本も千切ってやろうか?』

 

 私は軽く殺気をぶつけてやる。

「分かった!!消えるよ!!勘弁してくれ!!」

 流石に私の殺気は堪えたらしく、二人はすぐさまリザイン。

 兄貴とやらは手下に肩を貸し立ち上がると、ヨロヨロと逃げていった。

 

 二人の魔力が遠ざかるのを確認し、管理局に魔力パターンと人相・違法渡航者として密告する。

『よいのか。あんなゴミを生かしておいて』

『ここはベルカじゃないよ。あんなのでも殺すと面倒になる。何よりやり過ぎるなって言ったのはバルムンクでしょ』

 あとは管理局の頑張りに乞うご期待でいいでしょ。期待できないけど。

 

 毛玉は猫のようだ。

 どこかで見たような?

 茶色の長い毛の猫である。

 私は念の為、侵入者・観察者(いるなら)を排除する結界を張り直した。

 取り敢えず、半透明になっているので、一時的に魔力を供給し意思確認をする事にする。

「あり……がとう」

 少ししか魔力渡してないのに、本当に凄い子だね。

「感謝は受けとく。確認するよ。あなたはどうしたい?」

 

 

           :使い魔(猫)

 

「あなたはどうしたい?」

 私を助けたのは女の子だった。しかも、私が面倒を見ていた教え子と歳は変わらないように見える。

 だけど、決定的に違うのが、眼だった。

 あの子の眼は何の感情も浮かんでいなかった。私の教え子でももっと感情が豊かだった。

「このまま消えたい?それとも生きたい?消えたいのなら、さっきのみたいな連中が出ないように手を汚してもいい」

 表情を一切変えずにデバイスを私に突きつける。

「穏やかに一人で消えたいなら、結界を維持したまま、外であなたが消滅するまで待つ」

 淡々と選択肢を上げる女の子は、雨でグッショリ濡れていた。

「生きたいのなら、私と契約する手もある」

 ここでほんの僅かな感情の揺らぎを私は確かに感じていた。

 表情が一切動かなくても。

 この子は多分、私に生きていて欲しいのではないか。

 凄く不器用な子なのではないか。

 放って置けない。そう、思ってしまった。

 

 更に金髪の教え子の姿が過る。

 

 綺麗事は言うまい。未練が出たのだ。消滅するしかなかった私にチャンスがきた。

 可哀想なあの子を助けるチャンスを。

 分からず屋な元主を諫めるチャンスを。

 

「…たす…けて……下さい」

 気が付けば力を振り絞って口にしていた。

「承知」

 その子は言葉短く承諾した。

 私たちの包み込むように、先ほどの下種とは似ても似つかぬ精緻な契約魔法陣が現れる。その魔法陣は三角形をしていた。

「我は汝と共に歩む事を願う。汝、我と共に歩む事を望むか。我に応えるならば、汝の名を示せ」

 物凄いスピードで、魔力の供給ラインが構築されていく。

 繊細だが遊びを持たせた見事な契約魔法。こんな美しい魔法は見た事がない。一切無駄な魔力が使われていない。大魔導士と言われた元主ですらここまで到達していない。

 私は得難い主を得たようだ。

 

「私の名はリニスです」

 

 契約は成された。

 

 

 

           :夢

 

 ブランセル王国

 万物を腐敗させる禁忌兵器を使用し、民諸共敵を葬った国。

 そんなやり方をして民が納得などする筈がない。

 そして、助けを求める相手は我が国の同盟国であり私だった。

 

 精霊の眼(エレメンタルサイト)は禁忌兵器の場所を正確に割り出す。

 

 一番守りが厚い場所。

 

 一番兵がいる場所。

 

質量爆散(マテリアルバースト)発動」

 魔法科高校の劣等生の戦略級魔法。

 

 私は使った。これ以上泣く人が出ないように願いながら。

 

 禁忌兵器ごと周辺数十キロが消滅した。

 

 守っていた兵・騎士ごと

 

「助けてくれてありがとう!!」

「あなたは英雄です!!」

「死んだ連中の仇を打ってくれてありがとうございます!!」

 

 口々に皆が称える。

 

 やめてくれ。私は失敗した。禁忌兵器をもっと穏便に始末する筈だったんだ。

 私は失敗を誤魔化す為に、虐殺しただけだ。

 

「やめて!!!」

 

「そうです!すぐやめるべきです。不健康ですよ!美海」

 

 あれ?誰?

 振り返ると猫がいた。

 

 

           :美海

 

 

 意識がズルズルと浮かび上がってくる。

 朝のようだ。

 鼻を何かがくすぐっている。

 寝ぼけ眼で起き上がるとリニスがいた。

 どうやら、尻尾でくすぐっていたらしい。

 何やってんの?

 

 昨日、ずぶ濡れで帰宅する羽目になり、母上には物凄く怒られた。仕様がない。

 母上にまず、リニスの事を説明し飼う許可を貰う、という難事を劣勢の状態でやらなければならないのは辛かったが。

 両親には私のベルカ時代の事は大体話してある。物心ついた頃の私は生きる事に投げやりで、両親には迷惑を掛けた。毎日、私の所為で喧嘩していて、両親は離婚寸前だったし、私も養護施設行き寸前だった。父上の上司が割って入ってくれなかったら、今の私達家族はない。なんでも、その上司の子供も難しい子だったのだとか。

 結局は父上が帰ってきてから家族会議となった。

 結局は、私を守る存在になるならいいだろうという結論になった。二人とも流石に人型に変身したリニスには驚いていたが、受け入れてくれた。

 

「もしかして、私の夢に割って入った?」

「はい。魘されていたので。ロクロウとサエにも頼まれていましたからね」

 祿郎と紗枝とは両親の名前である。両親よ、いつの間にそんなに信頼した。

 

 私とリニスの話し合いとしては、まず基本私の守護獣として活動する。私の方はいずれ来るフェイト テスタロッサを助ける為に協力するという事になった。そう、思い出したよ今更。リニスってフェイトの師匠でデバイスのバルディッシュのマイスターだったよ。チョロッとしか出てなかったんで、すぐ思い出せなかったよ。ついでに無印ラスボスの元使い魔。

 

 やっぱり、原作介入有ですか。

 

 リニスの話ではあの下種二人組は、ラスボスの依頼でロストロギア関連の情報を探らせていた連中らしい。捕まって、計画事前阻止とかないですよね。

 私は溜息をついた。

 私の溜息をどう取ったのか、リニスが勢い込んで言った。

「美海。失敗したなら、それを今生で活かせばいいのです。嫌な記憶もいい記憶でドンドン埋めていきましょう。雨の日もいい事があるのですから」

 まあ、ボチボチやっていきましょう。先は長いし。

『ふん!何を偉そうに。弁えよ駄猫』

 バルムンクは主従関係に意外と厳しい。

「ご心配なく。キッチリ務めさせて頂きますよ。駄剣殿は自分では動けませんからね」

 何やら火花が散ったような…。

「「………」」

 

 何はともあれ、記憶の上書きには問題なさそうか?

 




次回、ようやくもう一人のオリ主視点の話になります。
頑張らねば。

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