魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

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 頭の中で、策を練っておりますが、何故か詳細を詰めると
 作戦通りにいかないです。
 
 では、お願いします。


第34話 決断

              :クロノ

 

 正式な提案でもないにも関わらず、()()()()()()()()()()()()()

 普段はウダウダと長く会議をやるのにだ。

 正式な命令は、永遠結晶(エグザミア)での封印を継続するようにという内容だった。

 更に、美海の逮捕が任務に加えられている。

 前回の人員で無理だったのに、出来る筈がない話だ。

 今、上層部にいる人達は、大して現場を知らない。

 時として、こんなとんでもない無茶を言ってくる。

 流石に、子供の姿な訳だから、全盛期の力という事はないだろうが、それでも厄介な事

に違いはない。

 

 艦長は上申する積もりのようだが、覆せるかどうか。

 実は、艦長も僕も蒐集をどのようにするかは、腹案があった。

 軌道拘置所に収監されている囚人の中でも、更生の余地がありそうな人間を見繕い

リンカーコアを提供させるというもの。

 それで司法取引を持ち掛ける。というものだ。

 中には凶悪犯ばかりではないから、減刑を引き換えにすれば応じる者はいる筈だ。

 その案で、デメリットの印象を薄れさせようとした。

 が、早々の正式通達だ。

 

 裏側はレティ提督も掴めていないようだが、何かあるのは確実だ。

 

 上申には僕も参加する予定だ。

 そして、自分の案が棄却されるというのに、ユーリも美海の案に賛成していて、自分も

立ち会うと言ってきていた。

 単純に美海が、闇の書…夜天の魔導書のアレンジをどうようにやるのか興味があるだけ

みたいだけど、それでも有難い。

 ユーノの途中経過報告でも、美海の話が真実である可能性が高いという事だし、厄介な

相手を敵に回すのは避けたいものだ。彼女の言い分も、分からないとは言えないしね。

 

 僕は誠意を示す為、美海に協力出来ない可能性がある事を、伝える事にする。

 確か、今はユーリと話をしている筈だ。

 何か向こうの譲歩を引き出すようなものが、出ていればいいが…。

 部屋の前で護衛していたのは、機動3課の2人だった。

 部屋の中に入れて貰う。

 扉が開いた瞬間に声が飛び込んでくる。

「疑似的なリンカーコアを作成してみる、というのは?」

「まず、夜天の魔導書を誤魔化す程の精度のものを、どうやって造るの?データの塊を

魔法式の形にして丸めるくらいじゃ、誤魔化せないよ?」

 今まさにその問題を話しているようだった。どうもダメそうだが。

 リンカーコアは、生物に1つしか生成されない。

 つまり、生物から取り出す以外ない。

 粗悪品でも造れる方が、どうかしているものだ。

「じゃあ、それらしきものは造れるのですね!?そこから改良出来ませんか!?」

「そんな事出来れば、ベルカは魔導騎士で溢れ返ってるよ」

 出来たら出来たで頭痛の種になる訳だ。

 そうなると難しいか。

 2人の議論は続いているが、横から声が掛かった。

「クロノ。どうかしたか?」

 声を掛けたのは、飛鷹だった。

 少し顔付きが変わったか。

 それは、別にいいか。

 なのはも僕の表情から何か感じたのか、心配そうにしている。

 問題はフェイトだ。どうして機嫌が悪そうなんだ?

「なんと、本局からこちらがまだ提案すらしていない案件について、返答がきた」

「「!?」」

 2人が驚く。フェイトは無反応だ。多分、聞いていない。

 更に、議論中の2人は、白熱していて僕の存在を無視している。

「どうなるんだ?」

 飛鷹が真剣な表情で問い質す。

「本局の答えは、美海の提案は却下。美海は逮捕しろとの事だ」

「そんな!!」

 なのはが悲鳴のような声を上げる。

 

「ん?ああ。執務官殿、来てたの?」

 ここまで騒いで、ようやく美海が僕に気付いた。

 それで改めて本局の決定を伝える。勿論、上申はする旨も伝えた。

「どうして!?」

 フェイトも聞いていなかったようで、ようやくそう言った。

 肝心の本人の反応は、淡白だった。

「ふ~ん」

 一切、興味なしと言った感じに頭痛を感じる。

「もう少し、危機感を感じてほしいんだが」

 頭痛を堪えて辛うじてそう言った。

「意外だなとは思うよ。だって執務官殿も私を逮捕したがってたでしょ?」

「それと救済案は別だよ。逮捕は穏便な方法にすべきだと考えている」

 強硬な手段に訴えれば、最悪全滅という事態になり兼ねないからね。

 穏便とは、例えばフェイト同様に自首して貰う等だ。

 確かに、美海は管理外世界の住人だし、フェイトを助ける為にプレシアの手助け

を行っていた。手助けと言っても、フェイトに協力したのみで、プレシアの逮捕に

協力したとすら言える。裁判は形だけのものになるだろう。

 そういった形を整えてくれれば、態々敵対する必要もない相手だ。

「まあ、ありがとうとは言っておくよ。犠牲を出さない為の考えだったとしても」

 まあ、事実だが。

 

「救済案は私が勝手にやる事。敵対するなら、そりゃどうぞだよ」

 美海は大した事ではないと言わんばかりに、そう言った。

 はやての考えにもよるけどと、美海は最後に付け加えた。

 ユーリは、局の上層部に発案者として、こちらを案を採用するように働き掛けて

くれると言っている。

 これは、僕が話すまでもなく用件が済んでしまったな。

 

 だが、フェイトは苦悩に満ちた表情で黙り込んでいた。

 

 

              :リンディ

 

 上申には、早速、グレアム提督に口添えを頼んだ。

 あの人が声を発したなら、耳を傾けなければならない人は多いから。

 私とクロノはどちらに転んだとしても、作戦を実行する為に艦を離れられないので、

映像での参加になる。

 私の横では、ヤル気に満ちたユーリさんが座っている。

 発案者からの口添えを貰えるのは、正直有難い。

 

 そして、ウィンドウには本局お歴々が勢揃いしていた。

 そして、3提督の姿もある。

 これは、グレアム提督が捻じ込んだのだろう。

 現在の上層部は、3提督を煙たがっているから。

「それでは、闇の書対策案に対する上申がなされた為、検討会議を始めたいと思います」

 進行を務めるのは、キント執務官長である。

「この案件は既に決していた筈だが?今更、どんな案を持ち出すのかね」

 将官の1人が口を開く。

「もうご存知でしょうが、闇の書のアレンジ案の再検討をお願いしたく」

 私はお歴々に向かってハッキリと言った。

「違法行為をする必要のない事で、態々違法行為を行う必要はあるまい」

「大体、犯罪者の出した案に乗るなど、正気の沙汰ではない」

 お歴々がそれぞれに肯定を示す。

「彼女は、管理外世界の人間です。厳密に言えば、管理局法の範囲外です。また、管理

世界の魔導士の身内でもありません」

 クロノが執務官としての意見を述べる。

「それでも、魔法で行われた犯罪に関しては、適用していた筈だ」

 将官の1人が、何を今更と言わんばかりに言った。

「その通りです。ですから、逮捕に反対はしません。しかし、その手段は実力行使が

伴うものであってはならないと考えます」

 クロノの言葉に嘲笑が起きる。

「勝てそうにないからかね?」

 揶揄するようなヤジが飛ぶ。

 だが、息子はそんな言葉に恐れ入るような事はない。

「その通りです。現在の管理局の戦力で彼女を取り押さえる事は出来ません。怪我人を

量産するだけです」

 アッサリと認められ、上層部お歴々が鼻白む。

「クロノ執務官。説得出来そうなの?」

 黙り込んでしまったお歴々の隙を突くように、のんびりとした声が発せられる。

 発言者はミゼット提督だった。

「材料はあります。徐々に、といったところでしょうか」

 フェイトさんの説得なら、罪に問われない条件で裁判に出廷させるくらいは出来そう

よね。フェイトさんを出汁に使うのは、個人的には嫌なんだけど…。

 かの剣王を敵に回すよりマシなのよねぇ…。

「そうなの。なら、逮捕というより自首を促すという形ね?」

「はい。こちらが一方的に屈した形でなければ、ハッキリ言わせて頂いて構わないと

考えます」

 フェイトさんと美海さんは縁が出来てしまった。

 なのはさん達の絡みもある。

 付き合わないという選択は、フェイトさんにはないだろう。

 なら、形だけでも美海さんにも裁判は受けて貰った方がいい。

 

 ここで咳払い。

 咳払いは本局長官だった。

「ミゼット提督。貴女方の出席はオブザーバーとしての筈だ。勝手な発言は控えて頂き

たい」

 長官が3人に睨みを利かせる。

「いやいや。すまんな、ノルド長官。老い先短いものだからな、つい先を急いでしまう」

 キール元帥がにこやかに詫びを入れたが、眼光は鋭い。

 一瞬、怯んだ長官だったけど、すぐに立て直した。

「今後、気を付けて頂きたい」

 長官がキント執務官長を視線で促す。

「では、容疑者逮捕はクロノ執務官が交渉して自首させる、という事でいいのかね」

「却下だ!アースラでは手に負えないなら、別の者にやらせればよい!!」

 折角、キント執務官長が纏めようとしたのに、将官の1人が強硬に反対。

 結局、本局が特別チームを編成する事が決定した。

 クロノと私も食い下がったけど、聞く耳持たないのではどうしようもない。

 

 クロノの蒐集案も、アレルギー反応を起こすように拒否。

 受刑者の刑を無暗に軽くするなと、騒ぎ立てた。

 ユーリさんは、自分の案より救えるものがあるのならと美海さんの案を推したが、技術

的に出来るのか、どのようなものか訊かれ返答に詰まった。

 大魔導士のユーリさんでも、夜天の魔導書のデータなど知っている筈もない。

 ユーリさんは、それを言わなくてはならず、更に無責任な話だと言われる事になった。

 ユーリさんも技術革新に繋がるからと説明したが、それで承知する訳がない。

 

 やはり、ダメかと思い始めた時だった。

 

 本局側の会議室が騒がしくなる。

 局員が必死に静止する声が聞こえてくる。

 そしてドアが、滑りの悪い襖のように開けられる。

 あれ、手で開けるものじゃないわよね?

 

 そして、大勢の局員を纏わり付かせた巨漢が入ってきた。

「失礼する」

 まるで、局員がいないかのように平然としている。

 

 レジアス・ゲイズ少将がそこにいた。

 

 彼、魔法は使えなかった筈よね…。

 

 

              :レジアス

 

 本局の連中が、即時封印に拘っているので、なんとかしろと言ってきた。

 勝手な話だ。何故そこまで骨を折らんといかんのか。

 そもそも、即時封印に手を貸したのは、他ならぬ奴だ。

 今度は阻止しろと言う。

 データが使えるもので、大分研究が進むものでなければ、無視しているところだ。

 おまけに、貸し出したユーリ・エーベルヴァインも巻き込んで、上申したという。

 長官も騒ぎ出した。

 やらざるを得ん。

 溜息を吐きつつ、本局へ向かう。強引に参加した方が面倒がない。

 

 虎の子の魔導士に本局に転移して貰い、受付を素通りして会議室へ向かう。

 後から声が上がるが無視する。

「少将!突然の来訪はどういった用件ですか!?止まって下さい!!」

「会議に出席する為だ。邪魔は止めたまえ」

「そのような話は聞いていません!!」

「今、聞いたな?失礼する」

 武装局員が身体を張って制止してくるが、無視して進む。

 何人かワシにへばりついているが、平然と進んでいくワシに一般局員が道を空ける。

 会議室へ辿り着くが、ロックされている。

 知った事ではない。強引にドアを開く。

「失礼する」

 入室すると、3提督を除く連中が驚愕の表情で固まっていた。

「大魔導士が予定にない会議に参加させられると聞き、参上した」

 用件を口にすると、邪魔な人間を引き剥がす。

 軟弱な連中だ。鍛えられておらん。

 所詮、魔法に頼り切りの連中か。

 そこで、ようやく立ち直った連中が騒ぎ出す。

「ゲイズ少将!どういう事かね?呼んだ覚えはないが!?」

 理由は既に言ったと思うがな。

「技術協力というので、虎の子に協力させたというのに、これはどういう事ですかな」

 ワシはウィンドウを睨み付ける。

 流石に小動もせんか。

 だが、エーベルヴァインは焦ったように口を開く。

「いえ!これは、私からお願いしたのです!」

「それなら、こちらにも一報がほしかったところだ。こうなる前にな」

 エーベルヴァインが項垂れる。

 

 ワシはまだ地面に転がっている局員に、視線を送る。

「ここに来るまでに疲れてしまいましてな。椅子を用意して頂きたい」

 局員が慌てて退出していく。

「出席を許可していない!」

 声を上げる将官を睨み付けると、勢いが削がれ黙り込んだ。

 暫くすると、椅子が届いた。

 ドッカリと座ると、一同を見渡した。

「では、聞かせて頂こう」

 執務官長が詳しく経緯を語る。まあ、大部分は聞いているがな。

 それでも最後まで黙って聞く。

「成程、そんな事ですか」

 ワシの一言に場がどよめく。

「そんな事!?」

「そんな事ですよ。本局の皆さんは、即時封印の準備を続ければよい」

 上申した3人の顔が強張る。

「しかし、封印手段の完成前に闇の書が完成したのならば、仕様がないでしょう」

 会議室の全員が驚愕する。

「何を言っている!?」

 察しが悪いのか、頭が悪いのか判断に困るな。

「封印する機を逸したなら、出来る事をすべきと言っておるのですよ」

 3提督とウィンドウの向こうにいる奴等は、ワシの言いたい事に気付いておるぞ。

 そう永遠結晶(エグザミア)完成前に、やってしまえとな。

「地上本部はいつでも人手不足ですからな。どこぞの方々の活躍で、違法魔導士なぞ

幾らでもいる。協力者の素性など調べる余裕はない。そして、逮捕協力の過程で、

リンカーコアがなくなっていようが、調べようがありませんな」

「なっ!!貴様!!犯罪者に犯罪者狩りをやらせようというのか!?」

 ワシは心底不思議といった顔で言う。

「なんの事ですかな?地上でもし事が起こったらを想像して、つい愚痴ってしまっただけ

だが?」

「ぬけぬけと!」

 知った事か。

 

 このぐらいの駄賃は貰ってよかろう。なあ?

 

 この後、エーベルヴァインに永遠結晶(エグザミア)がいつ頃完成するか、しつこい程、

確認していたが、エーベルヴァインは時間が掛かりそうだと嘯いておった。

 

 何がなんでも急げと、仕舞には騒いでおったがな。

 呆れた連中だ。

 

 

 地上本部へと帰還した。

 子供の我儘みたいな会議が、終わって疲労しかない。

 エーベルヴァインには軽挙は慎むように、釘を刺しておいた。

 長官への義理はこれでいいだろう。

 

 オーリスが出迎えてくれる。

「逮捕に協力を申し出てくる者がいれば、あまり詮索せずに使えと通達を出しておけ」

 オーリスは何も言わず、敬礼で答えた。

 

 こちらに害がないなら、ヤツが何を企もうが好きにすればよい。

 

 

              :飛鷹

 

 話を聞いて驚いた。

 いよいよ、俺の原作知識は当てにならなくなってるな。

 まさか、ここでレジアス・ゲイズが出てくるとはな。

 

 皮肉な事に、早く夜天の魔導書を完成させないと、いけなくなった。

 しかも、ミッドで蒐集か。

 クロノも言ってたが、食えないオヤジだな。

 どうも、レジアスは俺の印象と違うように思う。

 まあ、気にしても仕様がないけどな。

 

 問題は結論が告げられた時だ。

「それじゃ、管理局でも本局は敵対と。地上本部は傍観ね」

 そう言って綾森は頷いただけだった。

「クロノ達はどうするんだ?」

 俺の問いに、クロノが苦い顔だ。

「正式な命令である以上、従わざるを得ないだろうね。最も、()()()()()()()()()()()()()

如何ともし難いけどね」

 つまり、意図的にサボタージュしてくれるって事か。

「あ、あの!」

 フェイトが意を決した表情で口を開く。

 が、それは遮られた。

「フェイト。私に協力したいって申し出だったら止めてね」

「で、でも…」

「フェイトが気にする事ないよ。私がやりたくてやったんだから。フェイトはこういう

言い方嫌だろうけど、折角、プレシアのとばっちりから解放れたんだから、自分を大切

にしないと」

 フェイトは項垂れてしまった。

「でも、美海ちゃん。1人じゃ…」

 今度はなのはが心配そうに声を上げた。

「寧ろ、みんなには、そのまま管理局側にいてほしいんだよね。助けたいと思ってる

ならね」

「「?」」

 なのはとフェイトは、頭に疑問符が浮かんでいる。

 つまり、クロノ達同様俺達にも協力するフリして、足を引っ張れって事か。

「その場合だと、お前が悪役になるじゃねぇかよ」

 俺達は無能呼ばわりされるぐらいだろうが、コイツは益々管理局から敵扱いされる。

 綾森が苦笑いする。

「慣れてるよ」

 剣王の最後は聞いた。それだけに、胸の中で嫌なものが広がった。

「まあ、そんな顔しないでよ」

 宥めるように言われ、俺は顔を顰めた。

 コイツにとって、どこまでも俺はガキらしい。

「ウンザリなんだよ。大勢に味方するの。どうせ、やるなら自分の気持ちに正直でいたい

からね」

 俺達は、その言葉に何も言えなかった。

「当てにしてない訳じゃないからさ。間接的な協力を頼むよ」

 

 フェイトは拳を握り締めて、黙っていた。

 

 

              :なのは

 

 海鳴臨海公園での最終判断が迫る中、私達はデバイスの調整をしていた。

 新しく搭載されたカートリッジシステムを確かめる。

 レイジングハート達の名前も考えなきゃいけなくて、散々考えて決めた。

 

 レイジングハートが、レイジングハート・エクセリオン。

 

 バルディッシュが、バルディッシュ・アサルト。

 

 飛鷹君もカートリッジシステムを使わないか訊いたけど、要らないって言ってた。

 美海ちゃんに訊くと、使った事ないって。

 ベルカのシステムだよね?って訊いたら、負担がバカにならないから使わない人は、

結構いたんだって。

 

 ついでに、模擬戦も付き合って貰ったんだけど。

 結果は、全く歯が立たなかった。

 3対1で戦ったんだけど…。

 

 同時に攻撃しているのに、背中に目が付いてるみたいに回避されたり、剣で斬られたり

して、攻撃が当たらない。

 美海ちゃんは、全然魔法らしい魔法を使わなかった。

 それなのに、少しの時間で3人撃墜されてしまった。

 

「うん。当初よりは、考えて動けてるね」

 涼しい顔で言われると、なんとなく悔しい。

 飛鷹君は、かなり粘ってたけど、それでもあしらわれてる感じだった。

「化け物め…」

 飛鷹君が大の字に倒れたまま、呻いた。

「ベルカには化け物なんて結構いたよ?私なんて大した事ないよ。二つ名が付いた連中

とか、洒落にならなかったんだから」

 二つ名?

 私の疑問に気付いたのか、美海ちゃんが説明してくれる。

「ベルカの説明されたなら、聞いた事あるでしょ。聖王とか。それだよ」

「それが二つ名なら、シグナム達も二つ名を持ってるって事か?」

 飛鷹君が質問する。

 確かに、ヴィータちゃんは、鉄槌の騎士って言ってたっけ。

「アイツ等のは違う。一応、アイツ等は騎士団なんだよ。で、鉄槌の騎士とか烈火の将

は、騎士団での立場を表す言葉。誤解を恐れずに言えば、係長のヴィータとか課長の

シグナムですって言ってるようなものだよ。こっち風に言うと」

 思わずフェイトちゃんと顔を見合わせちゃったよ。

 その例えって、なんだか…。

「二つ名は、その人物が成した事に由来するものなんだよ」

 ベルカの豆知識を教えて貰ったけど、残念だけどよく分からなかったの。

 

 だけど、模擬戦のお陰で、問題点の洗い出しは出来た。

 美海ちゃんは、ついでだからってカートリッジシステムの調整をやってくれた。

 なんかもう1回試してみたら、ピタッときた感じ。

 私はフェイトちゃんと一緒に驚いてしまった。

 負担も段違いに軽くなったし!

 

 でも、マリエルさんは、なんだか燃え尽きていた。

 

 そして、はやてちゃん達と再び会う日が来ました。

 

 

              :はやて

 

 少し指定の時間より早く着いてもうた。

 遅れるよりええやろうけど。

 

 なんか緊張するな…。

 

「大丈夫です。我々が指一本触れさせはしません」

 みんなが笑って頷いてくれる。

 

 今更、何を心配しとんのや、主ならチャンとせんとあかんやないか!

 私は笑みを作って見せた。

 

 みんな騎士甲冑姿で、武器を持っとるけど、構えてない。

 それでもすぐに戦える体勢なんやろうな。

 

 向こうから誰かが歩いて来てるみたいや。

 現れたのは美海ちゃんやった。

 美海ちゃんは一定の距離まで近付いて、立ち止まった。

 シグナム達が何もない方を警戒する。

 私もなんや違和感感じるわ。

 すると、何もない場所から人が湧いて出よった。

「転移して来たのです。魔法です」

 シグナムがコソッと教えてくれる。

 はぁ~。魔法って便利なんやね。

 結界っていうのも、張られてるらしいわ。人が寄って来んのやて。

 

「初めまして。アースラ艦長、リンディ・ハラオウンです。管理局を代表して来ました」

 艦長!若い人やね!物凄く優秀なんやろうか?

「僕は執務官・クロノ・ハラオウンだ。この前も会ったね」

 うん。覚えとるわ。変わらず黒尽くめやね。

 今度は私の番や。

「初めまして。八神はやてです。宜しくお願いします」

 私はペコリと頭を下げた。

 艦長さんも頭を下げて挨拶してくれた。

 でも、申し訳なさそうなのが気になるな。

「まずは、はやてさんの答えを…と言いたいところなのですが、こちらの方針を先に表明

しなければなりません」

 2人共、言い難そういう事は…。

「管理局本局は、永遠結晶(エグザミア)での封印を変える積もりはないそうです」

「……」

 そうか…。もしかして悪い知らせやないかと思っとったけど、やっぱりか。

 ショックは受けとるけど、絶望はしてへん。

 私は顔を上げる。

「それで、はやての答えは?」

 美海ちゃんが、今度は私に答えを求める。

 私は美海ちゃんとしっかり目を合わせる。

「私は、助けたい!みんな欠ける事なく今まで通りに、暮らしたい!私も生きる事を

諦めたくないんや!!」

 美海ちゃんはニヤリと笑う。

 なんや格好ええな。

「上等。私は貴女の手助けを全力でやろう」

 騎士達は嫌そうやけど。

 私は美海ちゃんを頼もしく思った。

 

 その時、全員が上空に弾かれたように視線を向ける。

 

「管理局だ!!武器を捨てて投降せよ!!」

 艦長さん達が現れた時みたいに、人が湧き出しよった。

「どういう事です!!」

「貴女のやり方は、温過ぎる。犯罪者などサッサと拘束すればよい!!」

 艦長さんは、知らんかったみたいやね。よかったわ。ええ人や、思っとったから。

 シグナム達が武器を構え、突撃しようとして動きを止めた。

 冷たい風が吹き抜けた。

 震える程の風や。

「自称レクシア。綾森美海だな。貴様を拘束する!!」

 この人等は、感じんのやろうか?

 この風は、美海ちゃんが発しとる。

「邪魔だ。命がある事に感謝しろ。ニブルヘイム」

 美海ちゃんが、無表情で腕を振り抜く。

 

 世界が凍り付いた。

 

 あれだけいた人等が、一瞬で氷の彫像になっとった。

 ドサドサと彫像が地面に落下した。

「美海!」

 執務官とかいう子が、非難の声を上げる。

 美海ちゃんは、眼力だけで執務官を黙らせよった。

「言った筈だよ?敵対するならどうぞって。まさか、手加減して貰えるなんて、甘い

事考えてなかったでしょうね?」

「いいえ…」

 艦長さんが力のない返事をした。

 

 美海ちゃんが今度は私を見る。

「覚悟は?」

「罪を背負って、償う覚悟なら出来とるよ」

 美海ちゃんは再び笑みを浮かべる。

 今度は優し気なものやった。

 

「それじゃぁ、始めようか」

「うん!!」

 

 私達は、そのまま臨海公園を後にした。

 

 

 

 




 次回からサクサクと話が進む筈!と大風呂敷を広げてみる。
 レジアスは原作通りにしたくなかったんですよね。
 それで、こうなりました。

 そして、3提督は原作でも大層な地位の割にお飾り臭かったですよね。
 それは、変えていません。

 次回から更に短くしていこうと思います。
 やっぱり、文章が長過ぎますよね。

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