魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

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 決して、折れた訳ではありません。
 大体の展開は決めているのですが、細部の構築が…。
 難しいですね。

 それでは、お願いします。


第30話 因果

             :美海

 

「ねぇ!フェイトちゃんって、外国の人だよね!?」

「日本の食べ物は何が好き!?」

 私の周りまで群がった人が、来てるんですけど。

 戦術的撤退をした方がいいよね?これ。

 フェイトちゃんフィーバー中です。

 フェイトは輪の中心でオロオロしてます。

 私は立ち上がって、撤退を開始しようとしたら、掴まれた。

「静かに!そんなに一度に話し掛けられたら、フェイトが答えられないでしょ!!」

 うん。正しい言葉だけど、なんで私を掴むのかな?

 そう言うとアリサは私を掴んだまま、フェイトのところへ向かった。

 これがアニメでよく見るバーゲンセールの状態か。

 フェイトのところに辿り着いた時には、私は揉みくちゃになっていた。

 なんの罰ゲームなの?

 私の有様に比べて、アリサは全く平気だった。

 どんな裏技を使ったの?

 アリサが周囲を落ち着かせる。

「それじゃ、順番にね」

 ようやく、一息吐けてフェイトもホッとしたようだ。

「ありがとう。アリサ」

 フェイトが礼を言うと、周りが驚く。

「ええ!?アリサちゃん知り合いなの!?」

 アリサはドヤ顔である。

 だから、なんで私を連れて来たの?

 更に不可解な事に、フェイトまで私を掴んでいる。

 だから、何故だ。

「どこの国から来たの?」

 フェイトには、答え辛い難問が放たれる。

 が、同じグループのフォローが入る。

「テスタロッサだから、イタリアじゃない?」

 流石、すずか。やりよるわ。

 

 その後も、ドンドン質問を捌いていって終了した。

 

 で、終わった後。

「アンタね。友達が困ってるのに、平然と逃げようとすんじゃないわよ」

 眉間に皺を寄せてアリサが怒る。

 ああ!なるほど!そういう事だったか!

「美海も一緒にいてくれて、ありがとう」

 フェイトが私に礼を言う。

 君とアリサに掴まれて、動けなかっただけだから気にしないで。

 

 そして、フェイトはなのは達のグループになりました。

 

 昼休み。

 お弁当を食べて、ガールズトークに花が咲く。

 話は、携帯電話の話題に流れていった。

「フェイト、携帯電話持ってないんだ?」

 そりゃ、念話使えれば要らんだろうよ。

 デバイスもあるし。

「それじゃ、この機に携帯電話買おうよ!」

 すずかが携帯電話のよさを語り出す。

 マニアックなところまで。

「う~ん。どういうのがいいの?」

 メーカーの回し者かと言うくらいに、すずかが語り終えた後、フェイトは

訊いた。

「通話とかメールは、そこまで大差ないから音楽が聴けるやつとか、写真機能

が充実してるやつがいいよ!」

「操作性も大事だよ!」

 なのはが、声を上げて言う。

「デザインで決めるのも手ね。すずかの言う通り性能は大差ないんだし」

 今度はアリサが口を開く。

 そして、アリサが私と飛鷹君を見る。

「アンタ達はどう思う?」

 飛鷹君は珍しく私達と弁当を食べていたのだ。

「うん?フェイトが、実際見て選んだ方がよくね?携帯なんて電話出来て、

メール出来ればいいんだし」

「携帯電話、嫌い」

 私は端的に述べて上げた。

 あれ、どこでもお構いしに掛かってきて、嫌なんだよね。

「アンタ達に訊いた私が、バカだったわ」

 アリサが唸るように言った。

 なのはとフェイトが苦笑いしていた。

 

 更に話は変わり、私にとって重要そうな話になった。

「でも、フェイトがこのタイミングで来たのは、丁度いいわ!例のアミューズメント

パーク。遂にご招待出来るわよ!」

 例の水晶だね。

「その名もオールストン・シー!今回は関係者だけ先行して楽しめるわよ!みんなで

行きましょう!すずかも友達誘ってみたら?」

 すずかは難しそうに考え込む。

「う~ん。身体悪い子だから、どうだろう?一応、訊いてみる…」

 まあ、話は振り難いよね。

 

 いよいよご対面か。

 

 そして、フェイト。何故、私の裾を掴む。

 

 

             :ヴィータ

 

 全く、時間掛かって仕様がねぇな。

 ようやく、三分の一に届くってところか…。

 アタシの足元には、デケェ亀がひっくり返っている。

 魔法生物は、罪悪感をそんなに感じなねぇけど、デカい図体の割に質が悪りぃんだ

よな。

 そろそろ、シグナムと引継ぎか。

 アタシはガキの容姿だからな。長時間出掛けられねぇ。

 大体、なんでアタシだけガキなんだよ。

 アタシ設計した奴出て来いよ。アタシ1人ガキって可笑しいだろ。

 ガキで得する事なんてないだろ。

 

 闇の書のページを意味もなく捲っていたが、突然、闇の書が私の手から離れる。

「おい!なんだよ!」

 アタシは文句を言ったが、アタシの文句なんて聞く訳ねぇか。

 睨み付けるが、闇の書がアタシの手に戻って来ない。

「おい!なんだってんだよ!」

 シグナムと合流しなきゃらなねぇんだよ!

 

 何が言いてぇんだよ!お前はよ!

 

『ヴィータ。どうした?どこにいる』

 げっ!シグナムから念話きちまったよ。

『闇の書が、アタシの手に戻んねぇんだよ。現在位置が…』

 アタシは仕様がないから、シグナムの方にこっちに来て貰う事にした。

 うるせぇ事言われそうだな、おい。

 アタシは溜息を吐いた。

 

「成程。確かに何か伝えたいのだろうな」

 アタシのところに来たシグナムが、何度か頷きながらそう言った。

 シグナムが手に取ろうとしても、避けやがる。

 はやての命が、掛かってんだぞ!全く!

「よし。主の元に戻るぞ。ヴィータ」

「は!?」

 なんでそういう結論になんだよ。

 シグナムがそう言うと、闇の書がシグナムの手に戻った。

 おいおい。正解なのかよ!時間ねぇんだよ!こっちは!

「闇の書がページの蒐集を邪魔する訳がない。ならば、それを中断せざるを得ない

事が起こったと見るべきだ」

 一体何が起きたってんだよ。

「でもよ。シャマルからもザフィーラからも、なんの連絡もねぇじゃんか」

「連絡出来ないのか、それともシャマル達にも把握出来ていないのかもしれん」

 シグナムはそう言うと、サッサと飛ぶ。

 アタシも後を追って飛ぶ。

 一応、視認し辛い位置から、元の世界に戻らねぇと、どこで襲われるか分かんねぇ

からな。

 アタシはシグナムを後ろから見て、意地悪く笑う。

「なんだ」

 シグナムは、すぐに気付いて声を掛けてくる。

「いや。()()()()()()()()にしては、早く帰る事になったよな」

 揶揄うように言うと、シグナムの眉尻が上がる。

「喧しい」

 シグナムがムカついてる。自分が言ったんじゃねぇか。

 アタシは忍び笑いを漏らす。

 シグナムの背が怒ってる。後で殴られるかもな。っぷ!

 

 そう、シグナムが長期に家を留守にする理由。

 男と旅行に行く、だった。

 最初、聞いた時は唖然としたぞ。

 

 

「シグナム。でも、そんなに貴女が家を空けると、はやてちゃんが心配するんじゃ

ない?」

 それは、シャマルがそう訊いた時だった。

 次に笑撃のセリフが、あのシグナムから飛び出した。衝撃じゃねぇぞ。

「私が剣道場に出入りしているのは、知っているだろう。あそこには男が大勢いる。

その中の適当な奴と旅行に行くと、言えばいいだろう」

「「「……」」」

 全員が、初めて将のセリフに絶句した瞬間だろう。

 あのザフィーラでさえ、こめかみに汗が一筋流れてたからな。

「確かに、お前、胸はデケェけど。マッチョじゃねぇか!」

 アタシの失言に、すかさずシグナムが拳骨を落とした。

「同性と旅行も考えたが、流石に旅行資金まで向こう持ちはないだろう。だが、男と

なら全額向こう持ちで通る。主に偽装とは言え、金の無心などせんで済むからな」

 恐るべき事に、シグナムは本気だった。

 流石に、シャマルとザフィーラは余計な事を言わなかった。

 

 はやては、大喜びでどんな人か訊いてたけどな。

 シグナムが冷や汗流して、適当言った。

 自業自得って、こういう時に使うんだよな?

 

 闇の書のページは、230ページをシグナム回収分で越えた。

 しょっぺえな。やっぱ、あの白い奴…高町なのはから蒐集出来なかったのは、痛いぜ。

 

 

             :キリエ

 

 お姉ちゃんが、戻ってきた。

 地理と永遠結晶(エグザミア)を確認して。

 映像からイリスは、間違いないと断言した。

 まずは一安心。

 ここまで来て、空振りは勘弁して貰いたいしね。

 

 表向きの任務としては、進展がない。

 永遠結晶(エグザミア)を生成する手筈を整えている最中だ。

 説明はよく分からなかったけど、生成なんて出来んの?

 実際、籠って生成し始めてるんだから、出来るんだろうけど。

 完成品があると知られる訳には、いかない。

 

 あれは、私達が使うんだから。

 

 外出は、まだないから暇もいいところ。

 まだ、鍵も取り出せないから、動けないし。

 与えられた一室で、ボウっとしていると、デバイスからイリスが顔を出す。

「暇なら、少し手を打ちにいかない?」

 流石に護衛だから、出掛けるっていうのはね…。

 お姉ちゃんも、サッサと戻らなきゃいけなかったし。

「護衛なら、4人もいるんだよ?ローテーションでやればいいじゃない」

 あっ。そうだよね。自分達が任されて、向こうが勝手に増員したから思い浮かば

なかった。あのスケベ男にも仕事振ればいいんだ。

 アイツ、流石にユーリって子には、そういう視線は向けないけど、私達には向けるから

ね。正直言って鬱陶しい。

 

 善は急げ。

 

 私はリンディ艦長に進言しに行った。

 

「ローテーションですか。機動3課の2人が承知するなら構いません。今のところ、外出

する事はなさそうですから」

 話が分かる人は、いいわね。私達の上司も、これくらい融通が利けばいいのに。

 まあ、あのスケベ男を、仕事で拘束する意味もあるんだろうけど。

 

 私は意気揚々と部屋に戻る。

 と、そこにはお姉ちゃんが待っていた。

「どういう事ですか?先程、リンディ艦長からローテーション件を聞きました。私は聞いて

いませんよ」

 上手くいった高揚感が、萎んで苛立ちに取って代わる。

「イチイチ、お姉ちゃんの許可なんていらないでしょ。私達は階級も同じ筈だけど?」

 一瞬、お姉ちゃんが怯んだが、すぐに立て直す。

「コンビで仕事をしてるんですよ?相談くらいしてくれてもいいじゃありませんか」

 私とお姉ちゃんの睨み合いは、突然の訪問者に断ち切られた。

 

 来たのは、スケベ男と陰険女だった。

「ローテーションの件は聞いたよ。先に話をこっちにしてほしかったけどね」

 にこやかに嫌味を言うスケベ男。

 隣では、皮肉っぽく鼻で嗤う陰険女。

 嫌な取り合わせね。

「すみませんでした。それで如何でしょうか?同じ護衛なのです。ここは協力しませんか?」

 少し考えてから、スケベ男は気障ったらしく頷いた。

「そうですね。現在の状況なら、4人纏まっている必要はないでしょう」

「本局の軟弱者は、お休みが必要なようだしな」

 陰険女は嫌味を忘れない。ムカつく。

「では、ローテーションを決めてしまいましょう」

 お姉ちゃんが黙っているので、私が勝手に進める。

 ツーマンセルで、交代する事に早々に決定。

 まあ、これしかないよね。組み合わせも。

 

 打ち合わせが終わり、結果をリンディ艦長に報告しに行く時だった。

 

「それはそうと、君達はこの世界に興味があるのかな?」

 それは何気ない疑問。

「それは、魔法文化のない世界と聞いていますし」

 無難な答えを返す。

「そうですか。仕事をしてくれれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 コイツ…。

 

「僕の事は、ニールと親しみを込めて呼んで下さい」

 スケベ男は、最後に爽やかにそう言った。

 コイツ。私達に、別の目的があるって気付いてるの?

 エリート様は伊達じゃないって事ね。

 警戒を強めて、私は頭だけ下げた。

 

 リンディ艦長に報告後、イリスと打ち合わせだ。

「で?何するの?」

 イリスは微笑んで言った。

 

永遠結晶(エグザミア)に細工に行きましょう!気付かれていない今なら簡単だし!」

 

 

             :はやて

 

 まさか、シグナムに彼氏が出来るとは、堅物っぽかったのに意外やなぁ。

 祝福して送り出したけどな。

 でも、やっぱり強さが重要なんやなぁ。

『まあ…見所のある男です』

 なんて言うてたし。多分、剣やろ?見所って。

 焦るシグナムってレアなもんも見れたし、満足や。

 ヴィータも、今はゲートボールにハマっとるらしい。

 よく練習に行ったきり、暗くなるまで帰ってけぇへん。

 もう少し早く帰るよう、言わんとあかんか?

 

 シャマルは、近所付き合い専門みたいになっとって、買い物くらいしか行かへん。

 ザフィーラは狼のままじゃ、外出出来へん。ご近所、怖がらせてまうから。

 人型にもなれるって言うても、あの耳やし。

 ザフィーラは、シャマル以上に外に行かん。

 

 そんな事をつらつら考えとるうちに、夕食の準備が終わった。

 あとは、ヴィータが帰るのを待つだけや。

 

 携帯が鳴っとる。

 

 テーブルに置いてある携帯を取って、出るとすずかちゃんやった。

 暫く、本の話をしてから本題へ入った。

「実はね…。私達、新しく出来たアミューズメントパークへ行くんだけど、一緒にどう

かな?バリアフリー化もチャンとしてるし、アトラクションも絶叫系以外は楽しめる

よ?それに、先行で招待されてるから、人も少ないし」

 すずかちゃんは、気を遣ってくれとるんや。

 声がいつもより優しい。

 こんなお誘いしてええか、迷っとるのやろうな。

「私、こんな足やし、他の友達にも迷惑になるやろうし、今回は…」

「大丈夫!そんな事、迷惑に思う子と友達になってないから!」

 おっと、すずかちゃんの友達、侮るような事言うてもうたか。

「私の方の問題やから。すずかちゃんの友達は信じとるよ」

 私の方で引け目を感じてまうだけや。

「無理強いする気はないんだけど…。折角、友達になれたから寂しいよ」

 う~ん。そう言われるとなぁ。

 私自身が、壁造っとるみないやな。

 でも、迷惑掛けたくない言うんも本当やし…。

「私自身、はやてちゃんと行きたいの。正直に言うと。はやてちゃん、余計なお世話

なのを覚悟で言うけど、別れる時、寂しそうだよ」

「!!」

 もう諦めとると思っとったけど、まだまだ勝手なところが残っとるんやね。

 挙句、友達が言いたくないと思っとった事まで、言わせてまうなんてな。

「私ははやてちゃんの友達のつもりだよ。だから、はやてちゃんの力になりたいって

思ってる。子供だし、こんな勝手な事しか出来ないけど」

 有難いなぁ。私の足が…身体がこんなでも、友達として、なんて言うてくれる。

 友達と疎遠になってもうて、諦めたつもりやった。

 どうせ、付き合いなんて、すぐになくなるんやろ?って思っとったのかもしれん。

 でも、諦めた積もりになっとっただけやったんやね。

 なら、私も応えなあかんな。失礼やしな。

「先生に訊いてみるわ。それでOKやったら一緒に行ってもええやろうか?」

 勝手に行ったら、石田先生がキレるしな。

 優しい先生やけど、怒ると怖いねん。

「うん!いつぐらいに分かりそう?」

「明後日に、丁度、病院やから訊いてみるわ。分かったらメールするな」

 すずかちゃんの嬉しそうな声を聞いて、携帯を切る。

 ふと、テーブルの上のグラスに私の顔が映っとった。

 

 なんや、意外と私も楽しみにしとるんやないか。

 

 無意識に笑みを浮かべているのに、気付いて苦笑いに変わった。

 

 

             :シャマル

 

 はやてちゃんが、友達と出掛ける。

 それは、私達にとっても嬉しい事だ。

 現状がこんなでなければ。

 グレアム氏、怪しい仮面の男、応援に来た未知の使い手、管理局、蒐集し損ねた相手。

 厄介の種が多い。

 どこが、どう絡んでいるのか見当が付かない。

 それぞれ独立している勢力なのか、協力しているのか、はたまた根は同じなのか。

 未知の使い手は無視していい。

 だけど、他がどうなのかしら。

 主を1人で行かせられない。ザフィーラは目立つから外はダメ。

 となると私しかいないのよね。

 はやてちゃんには悪いけど、石田先生が許可しなければいいんだけど…。

 

「海鳴から出るんだったら、ダメって言うところだけど、そんなに遠くない所ならいいわよ!」

 無情にも、許可が出た。

 理由を訊いてみると、はやてちゃんが治療に前向きになってくれる切っ掛けになるかもって、

説明してくれた。心って治療に結構、重要だって知っていた積もりだけどね…。

 なんか、変な力が働いてる?

 はやてちゃんが喜んでるから、苦い顔は出来ない。

 

 私は心の中で泣いていた。

 

 そんな私にも朗報がって、朗報じゃないわね。

 闇の書が警戒するくらいの事態が、起こるかもって事だもの。

 でも、シグナムが戻るのは、朗報よね?

 

 シグナムから、一応メンバーを確認するよう言われて、はやてちゃんに訊いてみた。

 メールに添付された写真を見て、目の前が真っ暗になった。

 

 そこに映っていたのは、蒐集に失敗した3人だったんだから。

 シグナム。帰ってきてくれてありがとう。

 内心で、貴女の旅行案を無茶と思った私を許してね。

 

 シグナムに報告して、私1人が付き添いで同行。

 シグナムとヴィータが、陰から護衛するという形に落ち着いた。

 

 そして、遂に遊園地?に行く当日になった。

 

 因みに、シグナムは男性との旅行は上手くいかなかったと言って、前日に戻り、

はやてちゃんをガッカリさせた。

 ヴィータちゃんは、忍び笑いを漏らして拳骨を貰っていた。

 

 余計な力が抜けたわね。

 

 

             :美海

 

 水晶と対面する当日。

 高町家、月村家、バニングス家、それぞれが車を出し、目的地へ向かう。

 

 私と飛鷹君にとって、驚愕な人物が参加した。

 てっきり、ダメだと思ってたんだけどね。

 おまけに、嫌な奴まで同行してるし。

「八神はやてです。今日はお願いしますぅ」

「八神…シャマルです。お願いね」

 湖の騎士。アンタ、顔を見られてないからって大胆だね。

 しかも、他の連中も遠くから監視してるし。

 

 なのは達は嬉しそうに自己紹介。

 飛鷹君と私は、ぎこちなく自己紹介。

 

 自然と2つのグループに分かれる。

 

 グループ1は、なのは、飛鷹君、アリサ、すずか。

 グループ2は、フェイト、はやて、湖の騎士、私。

 何、この作為的な組み合わせ。

 て、いうかさ。すずか!はやての面倒を見てよ!

 

 そして、フェイト。何故、ここでも私の裾を掴むの。

「あの…なんで掴むの?」

 私は、思い切って訊いてみる事にした。

 フェイトは無意識に掴んでいたらしく、慌てて離した。

「ごめん!嫌だった?」

 フェイトが上目遣いに私を見る。

 ズルいな。嫌とは言えないでしょ、これ。

 私は無言で首を横に振る。

「あの…多分、美海が知り合いに似てるからだと…思う」

 フェイトが歯切れ悪くそう言った。

 心の中で頭を抱える。既にバレかけてますがな。

 

 ここで何も起きませんように!

 

 フラグかね、これ。

 

「2人は仲ええんやね!」

 はやてがそんな事を言った。

 フェイトが何故か照れる。

 何、その反応。

 表向き、付き合いははやてより少し長い程度です。

 はやてに冷やかされ、私達はオールストン・シーに入って行った。

 

 流石、特別招待。

 人が少ない事。ガランとしたアミューズメントパーク。新鮮だね。

「うわぁ」

 横にいるフェイトが感嘆の声を上げる。

 初めての体験だね。フェイト。

 私は顔には出さずに、心の中で微笑んだ。

 入場したら、グループは再びバラバラになった。

 すずかは、キチンとはやてを回収してくれた。よかった。

 湖の騎士と相席なんて、ストレス以外の何物でもないからね。

 うっかり、叩き斬っちゃったりしたら、不味い。

 その代わり、飛鷹君が微妙な顔してるけど。

 ガンバです!飛鷹君!

 

 でも、結果、フェイトと2人で歩いてるんですけど。

 前方には、本隊がいるから別にどうって事ないけどさ。

 

 まずは、はやてでも楽しめるアトラクションを楽しんでいく。

 トロッコに乗って、海上のコースをゆっくり巡る冒険物とか。

 リアルな映像で、海中を進むジェットコースターモドキとか。

 海の水族館とか。シャッチやイルカショーなんかもあった。

 あのショー、いるのか?ここに。

 ジェットコースターモドキとか、実際に飛んでいる人間には、あんまり楽しめない

よね?

 と思ったら、なのはとフェイトは楽しんでいた。あれ?

 私と飛鷹君が例外のようだ。

 

 それと、フェイト。映像と乗り物の動きだけのなんちゃってジェットコースターで、

手を握る必要ないでしょ。

 

 そして、いよいよメインイベントがやってきた。

 オールストン・シーの中央へ。

 これをメインにしてるのは、私くらいのものだろう。

 

 説明されるまでもない。

 嫌な予感は、当たった事を確信する。

 特殊な魔法の気配が、感じられる。

 他の3人も感じているようで、笑みが消えていった。

 勿論、湖の騎士も感じているようで、警戒心が顔に滲み出ている。

 

 そして、忌まわしい赤い水晶が姿を現した。

 

 やっぱりか…。

 

 嫌な事にフラグは回収される。

 

 唐突に灯りが全て消えたのだ。

 非魔導士組が動揺する。

「何かのトラブルかしら?」

 アリサが呟くように言う。

 

 トラブルはトラブルでしょうけど、機械的なものじゃないだろうね。

 これは、意思を持つ何者かの起こしたトラブルだ。

 

 私は警告もなしに、フェイトを押し倒した。

「え!?」

 フェイトが驚きと共に倒れる。

 直後、巨大な何かが私達の上を通過していった。

 

「何かいるぞ!気を付けろ!」

 飛鷹君が警告を発する。

「な、なんなんや!?」

 はやての戸惑った声がする。

「はやてちゃん!伏せていて下さい!敵です!」

「敵!?なんで!?」

 湖の騎士。身バレ覚悟か。この状況じゃ、日和見決め込む訳にいかないな。

 

 ボォとした灯りが天井に上がり、辺りを照らし出した。

 飛鷹君の魔法らしい。

「誰だ!姿を見せろ!」

 驚いた事に飛鷹君は、既にバリアジャケットを纏っていた。

 剣を構え、辺りを警戒する。

 

 湖の騎士は、蒐集のチャンスと見るべきか悩んでいるのか、周囲と飛鷹君の間を

視線が行き来している。

 まあ、流石にアレが敵だって飛鷹君は分かってるだろうけど。

 

 驚いた事に、()()()()()()

 

 なんか、ライダースーツっぽいコスチュームのお姉ちゃんだった。

「こんな筈じゃ、なかったんだけどね」

 合成音声みたいな声で、件の人物が喋った。

 

 ライダースーツのお姉ちゃんの後ろから、ゾロゾロとロボットが出てくる。

 さっきのは、ロボットの拳か。これは殺しにきてるね。

 

 遠慮はいらないみたいだね。

 

 飛鷹君がみんなの前に、庇うように立ち塞がる。

「同じ失敗はしねぇ。もう絶対にだ!!」

 彼の周囲から魔力弾が生成され、待機状態になる。

 

 なのはが、アリサとすずかを庇う位置に立つ。

 湖の騎士もはやてを庇う。

 そして、フェイトが私を庇う位置に立った。

 

 戦闘の火蓋が切って落とされた。

 

「ウオォォォォーーーー!!」

 飛鷹君は魔力弾と共に、剣を構えて敵に挑みかかった。

 

 

             :アミティエ

 

 ローテーションでの護衛が決定し、自分の考えを整理してから、キリエと話す

為に部屋に向かったが、部屋は既にもぬけの殻だった。

 

 まさか!?勝手に行動を!?

 何を考えているのです!

 念話にも通信にも、応答がない。

 

 イリスの差し金ですか…。あの子の勝手な行動の陰には、必ずあの子がいる。

 古代のシステムのナビゲーターという話ですが、本当なのでしょうか?

 私は、ハッキリ言って彼女を信頼出来ずにいた。

 ナビゲーターというには、人間臭い。システムというには嘘くさい。

 父さんも何故、彼女の計画に賛同したのか…。

 愚痴っていても仕様がありませんね。

 

 彼女達が向かうとすれば、鍵か永遠結晶(エグザミア)のある場所。

 

 私は大急ぎでアースラを飛び出して行った。

 勿論、艦長に外出する旨を伝えて。

 お陰で、大分、不信感を持たれてしまった。

 

 全く!

 

 私は地上に降りると、()()()()()()()()

 まずは、訪れたばかりの場所へ!

 私はステルス機能を全開にして、バイクを走らせた。

 

 

             :シグナム

 

 主が、丁度敷地の中央にある施設に入った辺りで、雰囲気が変わった。

「おい!シグナム。なんか…魔力の気配がしねぇか?」

 ヴィータもそれを感じたようだ。

「闇の書の警告は、これか?」

 なんにしても、もっと近寄らねばならない。

 私とヴィータは、施設に侵入しようとして、立ち止まった。

 結界が構築される。

 隔離型の結界。

 

 私はヴィータとアイコンタクトを取る。

 ヴィータは正しく私の意図を理解した。

『シュワルベフリーゲン』

 ヴィータが無言で鉄球を撃ち出す。

 鉄球は過たず標的を捉えた。

 鉄で出来たロボット?が、打ち砕かれる。

 だが、すぐに再生して、立ち上がる。

 それを合図にしたように、建物の陰から大量にロボット?が出てきた。

 

 厄介な。

 

 私は剣をゆっくり構えた。

 ヴィータも既に戦槌を構えている。

 

 成程、主とシャマルを助けるには、コイツ等を叩き潰す必要がある訳か。

 

 私とヴィータは、同時にロボット?に向かって行った。

 

 

             :キリエ

 

 こんな筈じゃなかった。

 どうして、あの子達がここにいるの!?

 あの子達の事は、データで知っていた。ここの出身である事も。

 よりによって、このタイミングでここにいるなんて!

 永遠結晶(エグザミア)にイリスが細工して帰る。それだけだった筈なのに。

 あまり長時間、アースラを留守に出来ない。

 でも、手ぶらで帰れない。

 来た以上は、何か成果を持ち帰りたいのが人情だ。

 

「キリエ。あの子達の足止めをしてくれる?私の駒を貸すから」

 駒とは機械兵の事だ。

「どうするの?」

 私が訊くと、イリスはニッコリと笑う。

「逆に考えようよ!これは好機だよ。鍵の主もいるんだよ?鍵にも細工する

チャンスだって、ね」

 …確かに、その方が楽かもしれない。

「イリスは、どうするの?」 

「私は鍵に細工するよ!」

 大丈夫かな。データ通り騎士が護衛に付いている。

 データ通りなら、歴戦の魔導騎士だ。

 

「心配しないで!私は負けないから!」

 

 私は無理矢理笑みを浮かべて、頷いた。

 イリスが出来ると言うんなら、出来る。私はイリスを信じる。

 

 イリスが姿を消す。

 

 私は私でバリアジャケットをアーマーに変化させる。

 黒いライダースーツを基調にしたものに、フルヘルメットで顔を隠した。

 声も変える。

 もう1つの方は、切札だ。ここでは切れない。

 

 まだ、正体を知られる訳にはいかない。

 

 願わくば、大人しく気絶でもしてよ。

 あんまり、弱い者イジメは趣味じゃないんだから。

 

 私は身体の出力を上げると、電源を切断する。

 灯りが消え、暗闇に包み込まれる。

 

 私は機械兵と共に、敵の前に立った。

 

「こんな筈じゃ、なかったんだけどね」

 

 1人の男の子が、私の前に立つ。

 挑むというなら、相手になる。仕方ないから。

 

 

             :???

 

 永遠結晶(エグザミア)に鍵が訪れる。

 運命ってあるのね。

 このチャンスを、しっかり掴まないと。

 手加減しないわよ?私はね。

 

 お嬢ちゃんにお坊ちゃん。

 死んだら運が悪かったとでも、思いなさい。

 

 直接には、会ったことがないけど守護騎士は、どんなものなのかしらね。

 さあ、みんなで踊りましょう。私の笛の音で。

 私の駒も一緒に踊るから。楽しいわよ?

 

 

 

 

 

 




 次回は戦闘パートになります。
 いつ、グレアムさんとリーゼ達を出せるのか!?
 次の次辺りかな?
 ドンドンズレ込んで遅くなりそうです。
 ですが、書き切る覚悟は変わりません。

 3月中頃に投稿出来るように、頑張ります。

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