魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

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 休みの日しか、まとめて書けないです。
 今回は、そんなに話は進んでいません。

 それでは、お願いします。


第29話 思惑

             :飛鷹

 

 俺は、なのはに急いで駆け寄って行った。

 なのはは、辛うじて意識は保っていた。

「なのは!大丈夫か!?」

「飛鷹君…」

 俺は治癒魔法を使う。

 癒しの光が、なのはの傷を癒す。劇的に回復したりしないけどな…。

 

 自分の技が通用したもんだから、夢中になっちまった。

 どうしようもねぇな。俺は。

 

 なのはの治療に夢中になってる間に、リニスが消えていた。

 益々、凹むぜ。

 

 すぐにフェイトとアルフが、何故か到着した。

 あれ?裁判終わったって連絡なかったぞ?

「ごめん!遅くなった!」

「悪いね」

 フェイトとアルフがそれぞれ口を開く。

「フェイトちゃん!?」

「こっち、来てたのか!?」

 俺となのはもビックリした。聞いてないもんな。

 てっきり、原作と違って長引いてんのかと思ったぜ。

「うん。実はリンディさんの発案で、ビックリさせようと思って…」

 あの人の茶目っ気か。

 フェイトは少し申し訳なさそうだった。

 逆にアルフは、俺達が驚いて満足そうだ。おい!

 

 そして、聞かされる驚きの事実。

 フェイトも襲われたが、ヤツに助けを求めたんだとか。

 しかも、ヤツは応援にやってきたそうだ。

 リニスがこっちに来たのは、そういう訳か。

 

 

 いつまでもここにいる訳には、いかない。

 俺達は認識阻害を使って、公園に移動した頃に管理局御一行様が到着した。

 

 遅せぇよ。とは言える立場じゃねぇな。

 

「無事だったか。まあ、救援は別に入ったようだから当然か」

 淡々としたクロノの発言が、俺の心に刺さる。

「みんな!大丈夫だった!?」

 そこにいたのは、ユーノだった。

 俺は無言で頷いた。俺の方は大した怪我はない。

 なのはも無理して少し笑いながら、大丈夫!と答えた。

 敗戦が堪えているんだろう。

 

「ユーノ。報告はしてきたのか?」

 俺は気分を換える意味合いで、ユーノに訊いた。

 ユーノは裁判もあるが、氏族への無事ジュエルシード発見・回収の報告をすると言っていた。

「うん。随分、怒られたよ…」

 まあ、だろうな。

 普通、身内が無茶したら怒るだろう。まあ、愛させれてるって事だろう。

 怒られた後は、無事でよかったって言われたそうな。

 いい人達だ。

 

 クロノは武装局員に、慎重に周囲を捜索するように指示する。

 連中が捜索の網に、引っ掛かるとは思えんがな。

 暫く、捜索したが案の定、影も形もなかった。

 

 その間、俺達はと言えば、フェイト達の拠点となるマンションに移動していた。

 高町家には、俺も電話に出て説明した。

 男衆には、冗談抜きで殺気が混じっていたが、今回ばかりは俺が悪い。

 甘んじて制裁を受けなきゃならん。

 

 そして、クロノ達も見切りを付けて、マンションに戻ってきた。

 フェイトはヤツに傷を治して貰ったようで、無傷だったが、なのはは違う。

 俺とユーノの治癒魔法で、ある程度治していた。

 レイジングハートは、破損したままだ。

 フェイトのバルディッシュも一度、壊れているらしい。

 レイジングハートは、ユーノが応急処置をする。

 念の為に、2機とも技術スタッフ送りに決定。

 

 落ち着いてから、クロノが口を開いた。

「まずは、忠告が遅れた事と、救援が間に合わなかった事を謝罪する」

 俺達は、力なく首を横に振った。

 特に俺は、クロノを責める資格はないしな。

「ここからは、僕達が捜査を続行する。君達に危害が及ばないように、全力を尽くす積もりだが、

人員には限りがある。済まないが、各自、何かあれば撤退を第一に考えてくれ。危険な事は極力

避けてくれ」

 クロノは苦々しくそう言った。

 そこで、なのはが手を上げる。

「私達も手伝いたいんだけど…」

 負けた手前、邪魔と言われれば、どうしようもない。

 だからか、なのはの口調はいつになく弱々しい。

「戦ってみて分かったと思うが、今回の相手はある意味プレシアより厄介だ。こちらとしては、

自身の安全を第一に考えてほしい。なのははデバイスも壊れているしね」

 やんわりとではあるが、これは断られたという事だろう。

 

「でも、何が起こっているかは、説明するよ」

 

 ロストロギア・闇の書。

 その説明は、原作通りだった。

 

 発覚の経緯は、次元犯罪者からのものらしい。

 

 リンカーコアを食らいページを増やし、完成後は主を巻き込んで厄災を振り撒く。

 そして、リンカーコアを蒐集するのが、闇の書の守護騎士達。

 

 原作と違って、なのはは蒐集を免れているが、自分の魔力が厄災を振り撒いたかもしれないと

聞いて、なのはは蒼い顔をしていた。

 

 それは俺も同じだった。

 

 今のなのはは、間違いなく原作より強い。とんでもない殺し技もある。

 原作時のなのはでさえ、あれだけページが埋まったんだ。今は、もっとページが埋まる筈だ。

 それは、フェイトも同様だし、俺とヤツというイレギュラーも蒐集されたら、ヤバい。

 特にイレギュラー組は、完成間近ぐらいいくんじゃねぇか?

 

 俺が調子に乗った所為で、世界がヤバくなっていたところだったのだ。

 俺は、何が何でも自分となのはを、護らなければならなかった。

 だが、俺は相変わらずだった。前回の事件から成長出来てねぇじゃねぇか!

 

「守護騎士達に関しては、過去に会話が出来る事は確認されているが、今回のような自分の意志

を感じさせる発言をしたのは、確認されていない」

 説明しながら、俺とフェイトのデバイスに記録されたデータを見ながら、クロノが言った。

「でも、ヴィータちゃんは、感情豊かな感じだったよ?」

 なのはは不思議そうに言った。

 なのはがフェイトを見る。

 フェイトも、それだけで訊きたい事を理解したようだ。

「私が戦ったシグナムも、苦悩?みないなのを感じたよ」

 俺は原作を知ってるからな。守護騎士がシステム通りにしか、動けないような連中じゃないって

知ってるからな。特に驚きも不思議もねぇけど。

「それも今まで確認されていない」

 クロノは淡々と言う。

 

 フェイトは怪訝な表情で手を上げて、発言の許可を求める。

 クロノが軽く頷くと、フェイトは言った。

「さっきからよく分からないんだけど。守護騎士達は結局どういう人達なの?」

「守護騎士は、闇の書のシステムの一部だ。人間でも使い魔でもない。ページを蒐集するだけの

システムと言っていいだろう」

 フェイトは、複雑そうにポツリと呟いた。

「人間でも、使い魔でもないって、例えば…私みないな存在?」

「「「違う(わ)(よ)!!」」」

 クロノ、リンディさん、なのはが強い口調で否定する。

「フェイトさんは、少し違う生まれ方をしただけで、フェイトさんは人間よ!」

「そうだ。検査でも、そういう結果が出てただろ。馬鹿な事を言うもんじゃない」

「フェイトちゃんは人間だよ!」

 3人がそれぞれフェイトに言った。

 

 フェイトの方は、少し戸惑ったような顔をしている。

 自分が造られた存在だと、気にしているんだろうな。

 まあ、これからだろう。

 

「守護騎士は、古代魔法によって造られた存在だ」

 クロノは怒ったように、付け加えた。

 遺伝子操作して生み出した存在でもない。

 100%魔法で記述され、それが具現化した存在。

 生命とすら定義出来るか疑問な存在。

 

 どちらにしても、フェイトと一緒ではないわな。

 

「まあ、そういう事だ。フェイトはまだ気になるんだろうが、俺達は気にしてない」

 俺も最後にコメントした。

 少しづつ変わっていけばいいだろう。時間はあるんだから。

「ありがとう…」

 俺達の言葉にフェイトが礼を言った。

 

「話は変わるが、俺は協力させてくんねぇかな?」

 管理局の面々は、話聞いてたか?といったような顔をしている。

 他は純粋に驚いた顔をしている。

 

 前回も同じ様な事言ったけど、俺もいい加減変わらねぇとな。本当に。

 

 

             :シグナム

 

 全員の撤退を完了して、集合場所に無事辿り着いていた。

「シグナム。大丈夫?」

 シャマルが、治癒魔法で傷を治してくれている。

「ああ。ほぼ、傷は塞がった。もう大丈夫だ。主に心配される事はないだろう」

 身体を軽く動かしても痛みはない。魔力もすぐに回復するだろう。

「まさか、お前がここまでやられるとはな」

 ザフィーラが言う。

「まっ、アタシ等も撤退したから、人の事言えねぇけど…」

 ヴィータは言葉を濁してそう言った。

 まさかヴィータの側にも、救援が来ていたとはな。

「いずれにしても、ここでの蒐集は避けた方がいいだろう」

 私は将としての判断を、みんなに伝える。

 他の2人は素直に頷き、ヴィータでさえ、渋々頷いた。

 ヴィータは、ここで大物を確保したいと思っただろう。

 リベンジしたい気持ちもあるだろう。

 私も気持ち的には同じだ。

 それでも、失敗は許されない。慎重にいかないと取り返しがつかない。

 

「シャマルは、暫く主の傍を離れるな。あの怪しい男の目的が分からん」

 シャマルが深刻な表情で頷く。

 怪しい男とは、勿論我等を助けた怪しい仮面の男だ。

「闇の書でも狙ってんのか?そいつ」

 ヴィータが、無駄だと言わんばかりに言った。

 闇の書を奪っても、主以外には使えない。

 だが、だからこそ、今、奪わなかったと見る事も出来る。

 恩を売って、主の力を利用する積もりかもしれない。

 

 偶々にしては、タイミングが良過ぎる。

 

 最悪、監視されていた、という可能性も考慮に入れるべきだろう。

 我等に今まで一切気付かせない程の監視となると、凄腕という評価でもまだ足りない。

「助けて貰っただけっていうのは、楽観的過ぎるものね」

 シャマルがポツリとそう言った。

「主の家の護りも強化しておけ。ザフィーラも主のガードに付け」

 シャマルとザフィーラが僅かに目を見開く。

「2人だけでやる積もりか」

「止むを得ないだろう。今までより遠出する事になるが」

 ヴィータを見ると、不敵な笑みを浮かべた。

 見た目は子供だが、頼りになる一流の魔導騎士だ。

 

「蒐集の件はそれでいいけどよ。救援に入った連中の対応はどうすんだよ?」

 ヴィータが次の問題を提示してくる。

 ヴィータの側に来た救援も、只者ではないようだ。

「それは問題ないだろう。どうもテスタロッサ…私が蒐集を失敗した相手だが…あの子に

助けを乞われたから、来ただけで、こちらには関わりたくなさそうだった」

 恨みは買っているようだがな。

 過去に出会っていただろうか?

 記憶にない。

 あれくらいの年の子となると、前回の目覚めでさえ、恨みを買うには若過ぎる。

 

 あの剣技…どこかで見た気もするが…。

 

 

             :クロノ

 

「話は変わるが、俺は協力させてくんねぇかな?」

 

 飛鷹が、今回の敗戦に思うところがあるのは分かる。

 が、今回、上手くすれば決着が付けられるかもしれないのだ。

 正直、飛鷹達の手は借りずに済む。

 少なくとも、上層部はそう考えているようだ。

 僕は眉唾だけど。

「飛鷹君…」

 なのはも、飛鷹の決意のようなものを感じているようだ。

 

 言い辛い。が、言わない訳にはいかないだろう。

 

「済まんが、今回、手を借りる必要はなさそうなんだ」

 流石に僕も少し申し訳なく感じる。

 僕も、その話を聞いたのは出る直前だった。

 その決意は、別に取って置いてくれ。

「は?」

 飛鷹は、反対されるだろうと思っていただろう。

 しかし、いなくても解決出来ると、暗に言われて怪訝そうだ。

「実はな…。闇の書の封印が可能なようなんだ」

「何!?」

 今まで管理局が封印出来なかったロストロギアが、急に封印出来ると言い出したんだ。

 不審には思うだろう。それは僕でさえ、そうだ。

「どうやるんだよ!?暴走した闇の書って、確か純粋な魔力の塊で、どんな封印も破る

んじゃなかったのか!?」

 そこまで説明した覚えはないが、飛鷹なりの推論か?

 僕が不審そうなのを感じたのか、慌てて飛鷹が弁解する。

「だって、魔力蓄積型だろ?」

 リンカーコアを蒐集するというだけで、そこまで考えたのか?

 まあ、今は忙しい。その問題は今でなくていいだろう。

「ミッドである論文が発表された。過去に存在した永遠結晶(エグザミア)についてだ。

それはどうやら実在し、魔法的な異空間を内包しているという研究結果だ。欠片だけで

容量は大き過ぎて測定が困難な程らしい」

 始まりは、永遠結晶(エグザミア)の欠片の発掘らしい。

 そこから誰もが、お手上げ状態だったらしい。

 ただの水晶の欠片でない事は分かる。

 でも、そこから中が解析出来ない。

 解析する為の鍵があるだろう、とまでは突き止めたが、魔法のコードはそれこそ無限

に近い。匙を投げたところを拾ったのが、かの論文を書いた人物だった。

 その人物は、気の遠くなるような作業の末に、魔法式の断片を発見。

 そこから、全体像を類推。遂に中身を解析した。

 まさに、稀代の天才だ。本当にそれをやったのなら。

 

 その魔法空間は、中に入れたものの魔力を外に漏らさず、遮断する特性がある。

 完品が見付かれば、理論上でしか存在しない惑星級魔法でさえ、吸収し封印する事が

可能なんだそうだ。

 

 管理局の上層部が、論文執筆者に確認を取った。

 闇の書は封印可能と。

 

 それを説明してやる。

 

永遠結晶(エグザミア)?なんだそれ…」

 飛鷹は呆然とそう呟いた。

 顔色が悪い。

「大丈夫か?」

 飛鷹は緩慢な動作で頷いた。

 飛鷹の様子は気になるが、僕もいつ動く事になるか分からない。

 

『クロノ君!お客さんが到着したよ!マリエルも』

 エイミィがウィンドウ越しに報告してくれる。

 タイミングがいいな。

「なのは、フェイト。技官が到着した。一緒に来てくれ」

 なのはとフェイトも飛鷹の様子を気にしているが、頷いた。

「じゃあ、飛鷹君…」

「俺も一緒に行くよ。今度こそちゃんと送ってく。1人でなんて帰したら殺されるわ」

 飛鷹は間髪入れずに答える。

 顔色も少しは、よくなっている。

 

 そこにユーノが部屋に入ってくる。

「レイジングハート。持ってきたよ」

 なのはがレイジングハートを覗き込む。

「ごめん。レイジングハート。また壊しちゃって…」

 ユーノは落ち込んだなのはを、慌ててフォローする。

「大丈夫だよ!核である部分は無事だから!すぐに直るよ!」

 ユーノは明るい声を無理やり出して、慰める。

 なのはも気遣いに、微かに頷いた。

「フェイトも、バルディッシュを見て貰った方がいい」

 僕もフェイトに声を掛ける。

 

 僕達は、そのままアースラに移動する事になった。

 

 

             :リンディ

 

 随分と急な話だったのに、素早いわね。

 皮肉っぽく私は、頭の中だけでそう呟いた。

 ()()()()()()()()()()()()

 結局は、レクシアさんからの説明もなし。

 ただ、フェイトさんの助けを求める声に応えただけ、という訳ね。

 

 管理局が、こういう手回しが早い時程、警戒しないといけない。

 大抵、碌な事にならないから。

 

 そして、私の前には5人の人間が立っていた。

「聞いていた人数より、大分多いようだけど?」

「すみません。今回、協力させて頂く、ユーリ・エーベルヴァインです」

 本命の協力者のユーリさんは、申し訳なさそうにしているが、他はふてぶてしい。

 顔色一つ変えない。

「本局特別捜査官・アミティエ・フローリアン准尉であります」

「同・キリエ・フローリアン准尉であります」

 この2人だけだと聞いてたんだけど。

 2人は有名人だ。若いが腕のいい捜査官だと。それを護衛に任命とは剛毅だわ。

「遺失物機動3課・ニルバレス・ホールデン一尉であります」

「同所属・ケイト・ドヴェルグ陸曹であります」

 この2人は聞いていない。

 ホールデン一尉は、本局でも有名だ。女性関係で。

 元々、3課は個人が違法に所持しているロストロギアを、追う部署だ。

 彼は、そこで女性に取り入って情報を得ていると、評判の人物。

 女性によって対応を変えているのだろうけど、今は素なのかしら?

 さっきから、私の胸辺りに視線が集中しているけど。

 コンビを組んでいる彼女は、聞いた事がないが遺失物機動課にいるという事は、凄腕

なのだろう。

 

「失礼いたしました。本局の方々を信用しない訳ではないのですが、彼女は地上の宝。

長官より警護は厳重にせよとのお達しで」

 なるほどね。()()()()()()()()()()()()()というところかしら?

 遺失物機動課は本局の所属だが、3課だけは地上をメインにしている。

 地上と関係が深く、今では完全に地上本部よりの部署だ。

 全く、仕様がないわね。

 本局の人間が、本局の意向より地上本部の命令で動くなんて。

「分かりました。お招きしている身です。否やはありません」

「ありがとうございます」

 爽やか笑顔でホールデン一尉は、礼を言った。

 

 挨拶をそこそこに、アミティエ准尉がキリエ准尉に護衛を任せて、退出の許可を求め

てきた。

「貴女、護衛でしょ?」

 私が訊くと、彼女は事も無げに答えた。

「ずっとこの場所にいるなら、そうしますが、移動もあるでしょう。地理を把握して

置きたいのです。幸い増援もいる事ですし」

 皮肉ではなく本心のように見える。色々誤解され易い人柄みたいね。

「分かりました。許可しましょう」

 彼女は敬礼して出ていった。

 キリエ准尉の方は、出ていった姉の方は見もしなかった。

 仲が悪いって噂はあったけど、本当とはね。大丈夫なのかしら。

 

 そこへ戻ったクロノがエイミィを連れて入ってくる。

「遅くなりました。お待たせしてしまいましたか?執務官のクロノ・ハラオウンです」

 クロノがユーリさんに声を掛ける。

 彼女も自己紹介し、待っていないと微笑みながら首を横に振った。

 これまで、粘着質な遣り取りの応酬を見てきた事は、想像に難くない。

 クロノの対応は、好感が持てるだろう。

「では早速、今後の方針を決めていきましょう」

 クロノがユーリさんをエスコートしていく。

 護衛の3人が、ゾロゾロ後を付いていった。

 

 女性クルーには、気を付けるように釘を刺しておかないといけないわね。

 

 最後はあの男。エイミィのお尻を見てたし…。

 あれが、演技だとしたら大したものだわ。

 

 問題が起こりそうな予感に、私は溜息を吐いた。

 

 

             :フェイト

 

 アースラに行くと、すぐにクロノはエイミィと一緒に打ち合わせに行ってしまった。

 ユーノも打ち合わせに考古学者として、参加するんだって。

 飛鷹は、考えたい事があるって、別行動。

 

 バルディッシュは大丈夫だと思うんだけど。

 バルディッシュ自身も異常はないって言ってるし。

 心配してくれてるのが、分かるから断らなかった。

 点検して貰うのは悪くない。

 私達は、別のクルーの人に案内して貰って、メンテナンスルームに行く。

 

 到着すると、眼鏡を掛けた可愛らしい白衣の女の人が、出迎えてくれた。

「いらっしゃい!っていっても私の部屋じゃないけど。マリエル・アテンザです。

技術部に所属しています。今回は先輩…エイミィさんからの依頼で、貴女達のデバイス

を見る事になりました。よろしくね!」

 手を広げて、笑顔でマリエルさんは言った。

 私はなのはと一緒に、お願いしますと頭を下げた。

「なのはちゃんのデバイスから見るよ。もう一機のフェイトちゃんのは後でいいかな?」

 一転して真剣そのものの表情で、マリエルさんは素早くデバイスをユーノから受け取る

と検査機に入れる。

 コンソールを高速で操作していく。

「うん。核となる部分は無事だね。戦闘データを見ると、よく無事だったね」

 凄い。データだけで分かるんだ。

 ユーノも驚いている。

 映像で見たのではなく。デバイスに、記録されているデータそのものから読み取ったと

いう事だ。

 暫く、マリエルさんは、無言でコンソールを操作した。

 高速で操作して、手を止める。

 終わったのかな?

「後は、足りないパーツを取り寄せて、組み立てれば終わりだから。すぐに直るよ!

応急処置も的確だったし」

 最後はユーノを褒める。

 ユーノは、自分で造ったデバイスですから、と照れながら言った。

 

 デバイスに詳しい人だし、訊いてみようかな?

 

「あの、知ってたら教えてほしいんですけど…」

 マリエルさんは、嫌な顔せずにいいよ、と言ってくれた。

「今回、戦った騎士?達の使っていたデバイスなんですけど…」

「あっ!なんか変わってたかも!なんか内部で爆発してた!」

 やっぱりなのはも気付いてたよね。

 その言葉だけで、心当たりがあるのか、マリエルさんの表情が真剣なものになる。

「カートリッジシステムだね」

「「カートリッジシステム?」」

 マリエルさんが頷く。

「魔力を籠めた弾丸を、デバイス内部で爆発させて、攻撃の威力を文字通り爆発的に高める

危険なシステム。未熟な術者が使えば、ただの自爆装置なんだけどね。優秀な術者が使えば

強力な兵器になる。そういった優秀な術者をベルカでは魔導騎士と呼んでるの」

 マリエルさんが、映像データで騎士のデバイスを拡大しながら教えてくれた。

 そうか、だからクロノも騎士って言ってたんだ。

 

 ベルカ…レクシアは、ここの記憶を持っているってクロノから聞いた。

 魔法の感じが似ていると思ったのは、気のせいじゃなかったんだ。

『自己紹介は、随分と昔に済ませてるでしょ』

 レクシアは、そう言っていた。

 シグナムは、覚えてなかったみたいだけど…。

 レクシアの声は冷たかった。

 レクシアは何か騎士達と因縁があるのかな?

 

 戻った時、レクシアとリニスは姿を消していた。

 2人を探す。それも私の目標だ。

 でも、それを後に回さないといけないかもしれない。

 

 マリエルさんが、今度はバルディッシュね、と言ったので、バルディッシュを預ける。

 

 私達は、マリエルさんにバルディッシュ達を任せて、部屋を出た。

 

 

             :アミティエ

 

 私は、闇夜に紛れて人工島に侵入する。

 この世界での遊び場…テーマパークというらしいですが。

 この世界は、こんなものを造る余裕があるんですね。

 羨ましいし、妬ましい。

 

 警備をすり抜けて、情報を元に奥へ進んでいく。

 そして、見付けた。

「これが永遠結晶(エグザミア)…」

 巨大な赤い水晶が、ガラスケースに包まれて、鎮座していた。

 今すぐに確保したい。

 しかし、今、騒ぎを起こすのは得策ではない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()

 確保は鍵を手に入れてからだ。

 

 私は未練を断ち切るように、永遠結晶(エグザミア)から背を向けた。

 

 周辺の地理を確認して置かないといけない。

 この世界の警備を出し抜くのは、容易い。

 後は人に出くわさないかどうかだ。

 侵入経路は確認した。後は脱出経路の確認だ。

 

「恨みはありません。でも、私達の世界を救う為です」

 

 私は自分に言い聞かせるように呟き、静かにその場を後にした。

 

 

             :キリエ

 

 長い長い打ち合わせがやっと終わった。

 

 打ち合わせって言っても、殆どあのユーリって子の理論説明。

 チンプンカンプンだし、聞いてるのも辛かった。

 お姉ちゃんに場所の下見を任せたけど、私がやればよかった。

 

 やっと与えられた自室に、引き上げてきた。

「イリス。もう出てきても大丈夫だよ」

 私は誰もいない事、監視されていない事を確認して呼び掛けた。

 すると、何もない空間から人が浮かび上がった。

 赤いドレスを着た女の子が現れる。

「ふうっ、やっと出てこれたぁ」

「ごめんごめん。時間掛かちゃって」

 古い遺跡のシステムナビゲーター。それがイリスだった。

 私が泣いていると、いつも慰めてくれた。

 私の友達だ。

 今は、私のデバイスにデータを移している。

 最初は容量が足りなくて、大変だったけど、イリス自身が色々と知恵を貸してくれて、

問題はなんとか解決した。

 お陰でデバイスの性能も上がった。

 

「アミタは下見?」

 アミタとは、お姉ちゃんの愛称だ。

 当然、イリスの事はお姉ちゃんも知っている。

 これはイリスが示してくれた計画で、お父さんが承認してくれたから。

 でも、イリスがお姉ちゃんをアミタと呼ぶのは、嫌だった。

 ()()()()()()()()()()()

 だから、私の対応は素っ気なくなる。

 ただ頷いただけ。

 イリスもそれが分かったのか、苦笑いしている。

 

「これからが、大変だよ。覚悟は?」

 イリスは今なら引き返せると、暗に言っているのだ。

 私は自分の世界を救う。エルトリアを。

 そして、認めさせるんだ。

 お姉ちゃんやお母さんに。お父さんにだって。

 

 私が一番、優秀なんだって。

 

「出来てるよ。とっくにね」

 

 

             :飛鷹

 

 意外な事に、ボコボコにされなかった。

 ただ労われただけ。

 ポップがぶん殴られるより、気分が悪いと言っていた意味が分かった。

 俺はマゾじゃねぇが、モヤッとするな、これは。

 

 俺の知っている原作とは乖離が進んでいた。

 俺がいなくても、事態は収まる。ヤツすらいらないという。

 ホントにそんな事あるのか?

 なのは達にも、危害がこれ以上及ばない。そんな事信じられるか?

 

 活躍出来なかったのが、悔しいんじゃない。

 的確に行動出来なかったのが悔しいんだ。

 

 次こそ同じ失敗はしない。

 

 俺は聖祥に来ていた。

 当然だ。今の俺は小学生なんだからな。

 そして、本日、転校生がやってくる。

 言わずと知れたフェイトだよ。

 

 ヤツはどうしてフェイトの傍にいないんだろうな…?

 

 

             :美海

 

 残念ながら、サプライズは起こらない。

 何故なら、なのは経由でフェイトが今日、転校してくると知っているからね。

 ウェルカム、フェイト!と言えない事の方が残念だ。

 身バレの危険増大中。どうすんの?これ。

 私の気も知らず、なのは達はみんなにバレないように、静かに盛り上がるという神業を

披露している。

 

 先生が入ってきた。

 いよいよか。

 一通りの儀式が終了。

「皆さんにお知らせがあります。今日から皆さんと一緒にお勉強するお友達が増えます」

 みんなが、おお!とかええ!?とかナイスな反応を返す。

 私達は得意げにドヤ顔。

 私はしてないよ。飛鷹君は…放置でいいね。なんだか凹んでるし。

 

 そして、入ってくるフェイト。

「フェイト・テスタロッサです。宜しくお願いします」

 初々しいね。男子が沸いているよ。

 いくつでも男は男か。

 

 綾森美海としては、どう接するかな、これ。

 

 

             :マリエル

 

 レイジングハートは核の部分が無事だし、バルディッシュは無傷で機能に異常なし。

 修理もすぐに終わりそうだ。

 後は組み立てるだけ!

 そう思った時だった。

 2機共にエラー音が鳴り響く。

 あれ!?どうして!?

 私は急いでコンソールに急ぐ。

 データを確認し、エラーの原因を探る。

 

 その表示を見て、私は固まった。

「カートリッジシステム。貴方達…」

 

『『お願いします』』

 

 悔しかったのね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のが。

 

 私は期日を確認する。

 出来る限りはして上げる。

 

 そういう子が私は大好きだからね。

 

 

 

             :???

 

 踊れ踊れ、可愛い可愛い愚かな子。

 

 久しぶりに、あの子を見られた。憎むべきあの顔を。

 絶望に突き落として上げる。

 使い潰して、ボロ雑巾みたいに捨てて上げる。

 

 貴女がそうしたように。

 

 

 

 

 

 

 

 




 今回は、飛鷹君凹んでいます。
 次回から彼はドンドン成長していきます。
 多分。
 フェイトは、転入手続きも密かに済ませていました。
 最後の???は誰か分かるでしょ。という突っ込みは要らんですよ。

 次は来月になりますかね。

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