魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

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 少し時間が掛かってしまいました。
 私にしては、普通の長さになってます。
 どんな展開でやるか、考えてこうなりました。

 ギリギリまで考えたんですが、動いている他の人に関しては、
次って事で、お願いします。

 それでは、お願いします。


第27話 新たな始まり

              :飛鷹

 

 もうコートが必要な寒さになった。

 闇の書の起動を確認しようにも、はやての住所が分からん。

 こういう時は、私立は不便だ。公立ならある程度近い場所に住んでいると予想出来るんだがな。

 正直、サーチ範囲に魔力反応はなかった。

 ちゃんと0時に調べてたんだがな。そう都合よくいかねぇって事か…。

 こんな事なら、はやてが通う病院は分かってるんだから、ストーキングすればよかったか?

 後悔先に立たずだよな。

 ここらが、覚悟がないって言われんのかな。

 時期的に、闇の書は起動している筈だ。

 

 そんな訳で、切り替えていく事にする。

 今、出来る事は自分を鍛える事だ。

 

 朝、なのはとの恒例の鍛錬だ。

 だが、最近ある意味問題が発生している。

 原作で、なのはが空き缶使った鍛錬やってたろ?

 100回空き缶を地面に落とさずに打ち上げるってやつだよ。

 

 実はあんなのもう出来るようになってんだよ。

 今は続けようと思えば、幾らでもイケるだろう。

 もう、鍛錬にならない。

 

 だから、今は複数の空き缶と、複数の魔力弾でバトミントンをやっている。

 複数の空き缶を弾く軽い音が、高速かつ連続で響いている。

 実力が上がったのはいいのだが、お互いミスをしなくなったのだ。

 少し前までは、何点先取で勝利。とかやってたんだが、今はどちらかが失敗するまでになった。

 これは、いい加減やり方を変えるべきなのだが、なのははこれが気に入ったらしい。

 嬉々としてやる。

「いい加減、終わりにしねぇか!!」

「うん。飛鷹君もミスしていいんだよ!?」

 お互い嫌らしいコースで空き缶を返すが、悉く打ち返す。終わりが見えん。

 お互いかなり負けず嫌いだったらしい。俺もそうだとは予想外だな。

「そろそろ、負けてくれてもいいよ!!」

「まだまだ、先生面する予定だしな!それに、こんな短時間で抜かれたら格好悪いだろうが!!」

 お互い速度を、更に上げていく。

「「アクセル」」

 お互いに教え合えるところは、取り入れてる為に、技術が同じ部分があるんだよ。

 空き缶を弾くのも技術がいる。

 力を入れ過ぎたら、空き缶が潰れる。力が足りないと飛ばない。

 絶妙な力加減で、弾かなければならない。

 スピードを上げるのも技術がいるぞ。勿論。

「また遅刻しちゃうよ!」

「それは、俺の所為じゃねぇよ!」

 遅刻とは学校の事じゃないぜ?高町家の朝稽古の時間の方だ。マジで命が危うい。

 

 

「なのはさん!そろそろ俺の命に気を遣ってくれませんかねぇ!!」

「大丈夫!飛鷹君、強いから!!」

「まさかの適当発言!?」

 咽び泣きたくなる朝だった。

 

 なんとか今日も勝ったぞ。

 

 なんて言ってる場合ではない。

 遅刻寸前だ。学校じゃないぞ以下略。

「どうして、こうなった!?」

 俺も意地張ったからだけどね。

「ごめんなさい!!でも、強くなりたいし!スターライトブレイカーも強化したいし!」

 は!?アレを強化だと!?正気か!?

 マジでフリーザ爆殺を目指すというのか!?

 お前に、その位置からスターライトブレイカーを撃てる訳がない!とか言わせたいのか!?

「ホラ!斬られて爆発しちゃったでしょ?だから、斬れた糸を編み直して、幾つかの散弾にして

ぶつけようと思うんだよね。飛鷹君がやってたでしょ?」

 もしかして、烈火の炎の主人公がやってたヤツのコピーの事か?

 そりゃ、出来なくないのか?

「あれなら、フェイトちゃんのファランクスみたいなのを、近距離で撃ち込めると思うんだ!」

 実は殺そうと思ってるか?相手を…。

 衝撃の発言に、思わず走るスピードが落ちてしまった。

 

 朝稽古に間に合わず、高町家の男2人にボコボコにされたのは、言うまでもない。

 

 

              :フェイト

 

 裁判は長引く事なく、進んでいた。

 やっぱり、自首扱いされているのが、大きいみたいだ。

 ある程度、自由にさせて貰ってるし。

 なのはとは、ビデオメールで話している。

 なのはの友達も紹介して貰った。一気に3人も友達が増えた。

 少し戸惑いもあるけど、嬉しいと思う。

 飛鷹とも友達になった。姉さんの事を頻りと気に掛けてて、いい子だ。

 もう1人いるらしいんだけど、予定が合わないんだって言ってた。

 本来なら、こんな事は許されないんだって。クロノには感謝しなくちゃいけない。

 

 今は裁判の最後の日に備えて、最後の打ち合わせをしている。

「今回は、アルフにも被告席に立って貰う」

「分かった」

 アルフは、本格的に裁判に参加するのは初めてだ。

 少し緊張してるみたい。

「ユーノ。君も証人として今回も出廷して貰う」

「分かってるよ」

 ユーノは、ずっと裁判に証人として出ている。

 私が重い罪に問われないように、頑張ってくれている。

「もう勝訴は確定しているが、油断は出来ない。どんな事を言われてもブレない事。

発言内容は、そこに書かれているが、アドリブをやっても大丈夫なくらいに練習して

いこう」

 クロノが検察の役をやる。クロノが意地の悪い質問を思い付く限りする。

 私達は、それに冷静に答えられるように、練習するという形式だ。

 

 準備は万端。やれるだけやった。

 

 後は、鍛錬の時間になる。

 なのはには、飛鷹がいるけど。私には傍にレクシアがいない。

 でも、言って貰った事。見せて貰ったものもある。

 

 私は心を澄まし、バルディッシュを振る。

 動きを確認するように、どこでどう力を籠めて振るうのかを考えながら、ゆっくり振る。

 飛鷹も凄いけど、やっぱり剣はレクシアの方が凄い。

 頭にレクシアの剣を思い描く。見事な魔力切断。

 なのはの時は失敗した。でも今度は成功させる。

 なんて思ってるけど、なのはの時の感覚すら、私の中にまだ固まっていない。

 焦らず、じっくりとやらないといけない。

 今ズレた。修正する。力の加減が違うのかな?

 

「そろそろ、終わりにしないか?明日に差し障るぞ」

 無心で振っていたから、クロノが来てる事にも気付かなかった。

 クロノにも空戦のアドバイスを、偶に貰ったりしている。流石に執務官だけあって、クロノの

腕は確かだ。

「ごめん。気が付かなくって…もうそんな時間?」

 時計を見るとかなり時間が経っていた。

 

 アリシアのお見舞いに、裁判が終わったら行かないとね。

 

 アリシアは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 原因は分からない。医学的には問題は見当たらない。でも、目を覚まさない。

 

 今もアリシアと、どう話していいかは分からない。

 でも、何か声を掛けてあげたいと思う。

 

 それが多分、最初の一歩だと思うから…。

 

 

              :美海

 

 相も変わらず、私はなのは達のグループにいる。

 そろそろ誰か、白タオルを投げてくれてもいいと思う。

 この前なんか、フェイトに送るビデオメールに強制出演させられそうになったし。

 私の変装は、フードと口元のマスクくらいなんだよ。声とか目の周りとかモロバレ要素満載

なんだよ。

 探してとかいった手前、そんなのに出演出来ないって。

 だから、その日は用事があるとか、用事が出来たとか言って、のらりくらりと出演を避けて

いる。

 今までの経緯から、特に不審には思われていない。

 私はそういう星の元に生まれたのさ。って事でよろしく。

 

 でも、話を聞く限りフェイトは、友達を得て明るくなってきたらしい。よかったね!フェイト。

 アリシアは、目を覚ましていないらしいから、完全に元気って訳にはいかないだろうけど。

 アリシアの件は、飛鷹君経由で盗み聞き…もとい、知った事だけどね。

 

「私、図書館で新しい友達が出来たの!」

 すずかのセリフにハッとなった。

 飛鷹君も反応している。

 そう言えば、すずかははやてと図書館で友達になるんだっけ。ここら辺は朧気だよ。

 なのはとアリサは、食い付きがいい。

 どんな子か訊き出している。

 曰く、身体が悪いようで、車椅子に乗っている。保護者が外国人という事だ。

 そして勿論、本が大好き。

 そこまでいくと人物が特定出来るよね。はやてだね。

 しかもやっぱり、あの連中が付いてるんだね。もう関わりたくないわ。

 連中と向き合ったら、私怨やら八つ当たりやらで、やり過ぎそうだ。

 私が、表情に出さずに思考の海に遊びに行っている間に、話が移り変わっていた。

 

「私の方も、負けないくらい凄い話があるわよ!」

 アリサが今度は意気込んで言う。

「実は、家でプロデュースしてるアミューズメントパークの建設予定地にね、物凄く大きい水晶が

出てきたのよ!折角だし、アミューズメントパークの目玉として、展示しようって話してるくらい

なのよ!」

「どれくらいの大きさなの!?」

 なのはがアリサに訊く。

「大体、校舎の2Fくらいは高さがあるわよ」

 アリサは得意げに言う。

「もうすぐ完成するから、みんな招待するわね!って言ってもすずかは、既に来る事になってる

けどね」

 流石、金持ち。すずかの家は金を出資してるのだそうだ。

「美海!アンタは参加条件は、フェイトのビデオメールに参加する事よ!いつも用事とかで逃げる

んだから!!」

 金持ちのクセにセコイ条件出すな。

 本来なら、興味もないけど、この時の私は発見された水晶に、引っ掛かるものを感じていた。

「分かった…」

 顔に出さないけど、渋々頷いた。

 みんな。頷いたのに、なんで驚いてんの?

 

 さて、これは偶然か、必然か。昔の夢に水晶が出てきたばっかりなんだけどね。

 

 

 フェイトに何言えばいいのさ?表向き初対面の相手に。

 

 バレないように出来るかが問題か

 

 

              :フェイト

 

 なのは達からビデオメールが届いた。

 私は裁判で保護観察処分が下ったばかりだ。

 返事にその事を報告しようと思う。

 

 それで、ビデオメールを見たんだけど…。

 

 最初にみんなの最近あった出来事なんかを順番に話してくれた。

 そして、最後に今まで都合が合わなかった子が、初めて出てきた。

『初めまして…綾森美海です。……以上』

 少しモゴモゴ言った後、終了したみたい。…人見知りなのかな?ちょっと親近感を感じた。

『だぁーー!美海のクセに何、人見知りしてんのよ!もっとなんか言いなさいよ!!』

 アリサの怒号が飛んでいる。

 すずかが、素早くアリサを宥めに入る。

『アリサちゃん!フェイトちゃんへのメッセージだから、邪魔しちゃダメだよ』

『どんなメッセージよ!!ただ名前言っただけじゃない!!』

 なんか美海は、もう素早くフレームアウトしている。

『ちょっと!何、やり切ったみたいな顔してんのよ!やり直しよ、やり直し!』

 なのはと飛鷹も宥めるのに参加している。

 ただ、騒ぎの原因である美海は、どこかに退避したらしく、一切映っていない。

 もう、カオスだった。

 

 暗転した後に、全員が並んで私へのメッセージを言ってくれた。

 

『ええ…失礼しました。では、改めて…』

 なのはが少し汗を流しながら、最初に話す。

『『『『『もうすぐこっちであえるね(な)。楽しみにしてるよ(ぞ)!!』』』』』

 みんなで揃って言ってくれた。

 

 こんなに嬉しい気持ちになるんだ。知らなかったな。

 

 でも…大丈夫かな。この中に入って上手くやっていけるかな?

 ちょっと不安。

 

 私はこの後、海鳴へ正式に住む事になっている。リンディさん達と一緒に。

 リンディさんは私とアリシアの保護責任者になってくれたんだ。

 ホントにこんなによくして貰って、申し訳ないんだけど。

 後見人になってくれた人は、リンディさんより偉い人で忙しくて、今は会えないんだって。

 会ったら、お礼を言わないと。

 

 

 でも、美海って、レクシアに似てる気がするんだけど。

 声とか、もう少しハッキリ喋ってくれると分かるんだけどな。

 私はビデオメールを巻き戻して、美海の顔を映す。

 口元と頭を隠してみる。

 う~ん。似てるような…似てないような?

 向こうで会えるから、それで確認すればいいよね?

 

 ああ!そうだ。私もビデオメール撮らないと!

 

 

              :とある犯罪者

 

 俺は仲間と一緒に、管理外世界にいる生物のハンティングに来ていた。

 だが、それは、中止しなければならなくなった。

 

 俺は今、必死に逃げ回っている。

 相手は、たった一人だったのに。

 俺が何したよ!?

 ただ、狩りを楽しんでただけじゃねぇか!そのついでに金になりそうな生物を捕獲する。

 俺の天職だ。楽しみながら、大金が貰える。最高だ。

 少し前まで、俺もそう思ってた。でも違った。

 

 追ってくる気配は、続いている。

「なんなんだよ!?来るな!!」

 俺は振り返ってデバイスを向け、魔法を放つ。

 魔力弾が光の尾を引いて、追っ手に殺到する。

 爆発が起こる。

「へっ!ザマァミロ!ハッハハハハ!!」

 

「面白れぇか?」

 ゾクッとした。恐る恐る声のした上を見上げると、それがいた。

 赤いドレスみてぇなバリアジャケットを纏ったガキを。

「くたばれよ!!」

 デバイスを向けようとしたが、間に合わずに地面に押し付けられた。

「お前みたいな奴だと、気楽だよ。お前は餌だ」

 ガキの手から、本が出現する。

 何するつもりだ!?

「ア、アンタも同業者だろ!?アンタの縄張りを荒らしたのは悪かったよ!!もうここに

は来ないからよ!見逃してくれよ!」

 俺は媚びるように笑いながら言った。

 が、ガキは俺の頭を地面に打ち付けた。

「一緒にすんじゃねぇ。もういい。闇の書、蒐集」

『蒐集』

 本が怪しい光を放つ。

 俺の胸の辺りが、突然、強烈な痛みを感じる。

 俺の胸から、光の玉が出てきた。まさか、これは!?

「ウワアァァァァァ!!」

 俺の意識は、ここで途切れた。

 

 気が付くと、俺は仲間と一緒に管理局に捕まっていた。

 

 どうなってんだ…。

 

 

     

              :レティ

 

 管理外世界を中心に、違法なハンティングをしていたグループを確保した。

 それだけなら、よかったのだけど。確保した経緯が問題だった。

 彼等は、魔導士の核である。リンカーコアを抜かれて、意識を失っていたのだ。

 事情聴取に、彼らの1人は、聞き捨てならないセリフを聞いている。

 

 闇の書。

 

 第一級捜索指定ロストロギア。

 そして、友人であり、親友の夫である人物が、死ぬ原因を作った因縁のロストロギア。

 果たして、これは親友に告げるべきかしらね…。

 

 悩んだところで、決まっている。

 今、手が空いているのは、彼女のアースラだけなのだから。

 闇の書の事を知って、リンディが我を忘れる程、未熟だとは思わないけど。

 

 心配だった。

 

 でも、任務に私情は挿めない。

 

 事の始まりは、もっと前からの可能性が高い。

 管理外世界に出入りしている犯罪者や、魔法生物を違法にハンティングしている者が、

いるのは分かっていた。

 だが、普通はリンカーコアの有無まで確認しない。

 逮捕された連中は、大抵、発見が遅れて意識を取り戻し逃げている最中だってし。

 逮捕されれば、魔封じの手錠を掛けられる。

 今回のように、発言を記憶している被疑者がいたから、分かった事だ。

 ハンティングされた魔法生物は、大抵は殺されていたから、調べてすらいない。

 今、洗い出しを開始しているが、ほぼ闇の書の騎士達の蒐集行為で、間違いないだろう。

 勿論、何件かは、ただの密猟者や犯罪者だが。

 

 更に、嫌な事実がある。

 闇の書の蒐集活動が、解析してみると大体97管理外世界を起点として動いている可能性

が高いという事。

 

 どれもリンディに関係するのだ。

 

 そして、最近、親友が入れ込んでいる子は、優秀な魔導士だ。

 リンディは、その子と一緒に97管理外世界で暮らすと決めていた。

 

 事件に巻き込まれなければいいけど…。

 

 取り敢えず、クロノに先に連絡かしらね。

 

 

              :オーリス

 

 私は地上本部の幹部の執務室が、密集している階の廊下を歩いていた。

 父であり、上司に報告する為だ。

 レジアス・ゲイズ少将。

 地上のトップを支える将官の1人である。

 

 執務室の扉をノックする。

 返事はないが、それはいつもの事だ。私は構わず扉を開け、入っていく。

「失礼します」

 それでも一言添えるのを、忘れてはいけない。

 顔を上げると、上司はサウンドオンリーで通話中だった。

 

「それは、難しい。アレは長官のお気に入りだ」

『今回の事では、必要な人材なんだがねぇ…』

 どうやら、あの男と話しているようだった。

『貴方なら、説得出来るのでは?』

「そうさせるだけの、成果を見せるのが先だ」

 上司は冷ややかと言える程に、冷静に返答する。

 あの男は、こちらに頼み事を多く持ってくるのに、こちらの依頼は一向に進む気配はない。

『まだ、満足していないんだがね。まあ、進んだ部分だけでいいのならデータを送ろう』

「データを検証してから、再度連絡する」

 上司は一方的に通話を打ち切った。

 

 聞いただけの情報でも、用件は予想出来る。

「ユーリ・エーベルヴァインを貸し出せと?」

「ああ。…そんな事より、報告があったのではないのか?」

 ジロリと私を見る。私は背筋を伸ばす。

「失礼いたしました」

 私は頭を下げる。

「いい。報告を頼む」

「はい。2件有ります。1件目は、本局がエーベルヴァインと接触したがった理由が分かり

ました。闇の書が発見されたようです。最も、主は特定出来ていないようですが」

 上司は鼻を鳴らした。

「なるほど、それでか」

 先日、本局の上層部の1人から、接触させてほしいと依頼があったばかりだ。

 この事を念頭に置いた接触だったのだろう。

 理由は、闇の書を絡めて考えれば、自ずと答えが出る。

 最近、彼女が発表した論文だろう。

 確か、魔導で構築された水晶の活用に関するものだった。

「何故、あの男が?」

 本局なら分からなくもない。でも、何故あの男がエーベルヴァインを?

「何も、ヤツの元へ送る訳ではない。本局に捜査協力者として送り込めという事だ」

 何か企んでいるという事ですか。まあ、本局相手ならどうでもいいですが。

「で?どうする御積もりで?」

 それによって、私の仕事も決まる。

 上司は少し沈黙した後で、口を開く。

「データ検証後。使えるようなら、協力する」

 私は、この決断で、自分がどう仕事するかを、頭の中で組み立てていく。

「説得出来ますか?」

「出来る」

 言葉少なく断言する。

 上司は、絶対的な信頼を方々に勝ち得ている。

 お気に入りでも、なんとかするのだろう。

「もし、アレを貸し出すとすれば、こちらからも人を出しておけ。2人でいいだろう。

人員は分かるな?」

「ハッ!」

 私は了解の代わりに敬礼で答える。

 護衛と監視を行える人員という事だ。

 それに長官は、無類の本局嫌いだ。

 あちらの護衛のみでは難色を示すだろう。

 

「次は?」

「最後はバーン元・提督の事です」

 上司の眉がピクリと動いた。

 上司にしては、反応した方だろう。

 無言で報告の続きを促してくる。

「最近、探られているようだ、と」

 上司は重い溜息を吐いた。

「気の済むまで探れと言ってやれ、と言っておけ」

 証拠など、残っていないのは、本人も分かっているだろう。

 それでも、不安を感じるから言っているのだ。

 私の視線で、言いたい事を正確に把握したらしい上司が、再び口を開いた。

「ボロを出さないように言え。魔法で得た証拠など、どうせ、希少技能保持者の魔法だろう。

水掛け論に持ち込んで、煙に巻くなど容易い」

 希少技能保持者の魔法に、本当に正しい効果があるのかを実証しろと言われれば、幾らでも

難癖を付けられる。術式の開示など、本人にも出来ない。

 したとしても、理解など出来ないだろう。

 現代で再現出来ないから、希少技能なのだし。

 結局は、希少技能保持者も、その力で直接的な証拠を探さなければならない。

 だが、今回はそれがない。ならば、どんなものを出されてもでっち上げとなる。

 魔法のみでは、証拠として我々が納得しない。

「だが、念の為だ。()()を1人付けておけ。いざとなったら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。以上だ」

 私は承知した事を、敬礼をもって答える。

 

 思考の海に沈んだ上司の邪魔にならないように、執務室を後にする。

 

 アインヘリアル計画。

 あの男の研究だけで計画を立てる訳には、いかない。

 独自でも研究しなければならない。

 あの男がデータを送ってきたとしても、検証が必須だ。

 

 廊下の窓に目を向けると、街から一筋の煙が上がるのが見える。

 

 また、犯罪が起きたのだろう。急がなくてはならない。

 

 力を手に入れる。平和を贖えるものを。

 

 

              :ヴィータ

 

 夜。

 表向きは、公園で知り合ったじいちゃんの家にいる事になってる。

 だが、今日はアタシの蒐集日だ。

 はやての傍から、んないなくなると不安だからな。

 持ち回りで、蒐集をやってる。

 あんまり、時間も取れねぇけどな。

 下手に遅くなると、じいちゃんの家に連絡がいく場合もあんだろ。

 

 チマチマ雑魚から蒐集してたんじゃ、時間が幾らあっても足りやしねぇ。

 まだ、闇の書は、ページ3分の1以下。

 ここらで、大物を狩る必要がある。

 

 そこで目を付けたのは、はやてのいる世界にいる巨大な魔力反応2つだ。

 そこは、アタシに一任して貰っている。

 発見したら、そくゲットだ。

 相棒を片手に、慎重に調べていく。

 どうも、出たり消えたりしていて、見付け辛ぇ。

 今日こそ、見付けてやる。

「ヴィータ。どうだ?」

 アタシの後ろには、ザフィーラが声を掛けてくる。

「どうも、ビシッと分からねぇんだよな。いるような、いないような…って感じだ」

 焦って見逃すなんて事をやる程、素人じゃねぇからな。

 じっくり、探すさ。

 

 少しずつ、範囲を変えてサーチしていく。

 

 

 巨大な魔力反応が、お誂え向きに2つ並んでいやがる!

 

 見付けた!

 

「行くよ!グラーフアイゼン!」

『了解!』

 アタシは一瞬で騎士甲冑を纏う。

「気を付けろよ。ヴィータ」

「分かってるよ。アンタもしっかり頼むよ」

 ザフィーラの言葉にアタシはしっかり答える。

 前までは、これ、うるせぇって思ってたけどな。変わるもんだよ。

 だから、護らなきゃならねぇ。大切なものを。

 

 その為なら、なんでもやってやるよ。

 

 だが、今回は余裕だろう。

 いくら魔力が大きかろうが、所詮、平和ボケした魔導士だろ?

 すぐに、終わらせてやるよ。

 

 まっ、油断する気はねぇけど。

 

 アタシはザフィーラと二手に別れる。

 スピードを上げ、巨大な魔力反応に向かう。

「封鎖領域、展開」

『了解!』

 赤い魔力光が放たれて、人が消えていく。

 遂に、待望の魔力反応の持ち主を、閉じ込めた。

 閉じ込められた事に気付いて、移動してる。

 出られやしねぇよ。

 

 夕飯には、帰るぜ。

 

 

              :なのは

 

 放課後の鍛錬が終わって、私は飛鷹君に送って貰っていた。

 私だって、魔導士なんだから、大抵の相手は大丈夫なんだけど。

 飛鷹君は、男の見栄なんだから素直に受けろって言って、譲らない。

 お母さんも、飛鷹君はいい子ねって高評価。

 お父さんとお兄ちゃんは、なんか嫌な気を放ってる。

 お姉ちゃんはと言えば、苦笑い。子供っぽくないって。

 

 私としては、なんか少し、暖かい気持ちだ。

 

 口には出せないけど。

 

『警戒して下さい!』

『来るぞ!』

 レイジングハートとスフォルテンドが、同時に警告を発する。

 次の瞬間、結界内に私達は閉じ込められた。

「なんだと!?」

「何!?」

 奇しくも、私達も同時に声を上げた。

「敵襲って事でいいだろ」

 飛鷹君が即座に切り替えて、私に声を掛ける。

「でも、どうして?」

 私の方は、まだ動揺している。

「さぁな。あちらさんに訊くしかねぇだろ。答えてくれればだけどな」

 高速で大きい魔力反応が、一直線に私達に向かってくる。

 私も、深呼吸1つして、取り敢えず可能な限り落ち着ける。

「俺達も移動しよう。ここじゃ、やり辛い」

 丁度、私達がいるのは、住宅地の道路。少し、立ち回りには狭い。

 私は頷いて、一緒に魔力強化で走り出す。

 目指すは、ある程度高い建物の屋上。

 

 私達は、一番近い建物の屋上に出る。

 

 私と飛鷹君で背中合わせに、周囲を警戒する。

『来ます!実体弾です』

 レイジングハートの警告に、視線を向けると赤い魔力光を纏った複数の鉄球が、私達目掛けて

飛んでくる。

『飛鷹!』

 スフォルテンドの声で、視界の端で警告の元を見る。

 筋骨隆々の大きな男の人が、飛鷹君に突進してきていた。

「テオヤァァァーーーー!!」

 気合一閃。白銀の魔力光を帯びた拳が、飛鷹君を襲う。

 飛鷹君は舌打ち1つして、スフォルテンドを起動。バリアジャケットを纏う。

 次の瞬間、背中から飛鷹君が消える。

 

 でも、私も気を取られてばかりはいられない。

 複数の鉄球が私に襲い掛かる。

 私も一瞬で、バリアジャケットを纏うとレイジングハートを構える。

 この程度!

『アクセルシューター』

 私の魔力弾が、実体弾に放たれる。

 だが、絡み合うように、どれも当たらない。

『ホーミングバレットです!』

 問題なんてない!私も得意だ。

「コントロール…」

 突然、魔力弾の動きが変わる。

 鉄球を捉え出す。次々と鉄球を砕いていく。

 

 全て砕き終えると、飛鷹君の方に目を向けると、筋骨隆々の男の人と、飛鷹君が打ち合って

いる。

 私は接近するもう1つの影を捉えていた。

 視線を向けると、丁度、突っ込んでくるところだった。

 

「ぶっっっち貫けーーーーー!!」

 戦槌を持った女の子が、襲い掛かってくる。

 

 私はラウンドシールドを展開する。

 シールドで戦槌を逸らす。

 が、衝撃を逃がしきれずに、私は手摺を突き破って屋上から飛び出していた。

 

 赤いドレスみないなバリアジャケットの女の子が、驚きの表情をする。

 私もビックリした。逸らしきれなかった。

 

 空中に私は静止する。

 

 視界の端に飛鷹君達の姿も見える。

 丁度、飛鷹君達も、無言で構えて向き合っていた。

 

「大人しくしてりゃ、怪我もさせねぇ。だから、お前のリンカーコアを寄こせ」

 

 

 赤いドレスの子が、静かな口調でそう言った。

 

 どうも、新しい事件が始まっちゃったみないなの…。

 

 もうすぐ、フェイトちゃんもこっちにくるのに!

  

 

 

 

 

 

 




 はやてと守護騎士の交流に関しては、原作同様にして省略するか、
プラスするか悩みどころです。

 あと、お察しの人達は次回…に出てくる…と思います。

 

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