魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

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 ご存知のキャラクターと名前が同じ別人とでも、思っていただければ。
 あと守護騎士達も少し違う部分がありますので、ご了承下さい。
 関西弁難しいですね。滅茶苦茶でも、野呂盆六だとでも思って下さい(爆)。
 ネタが分からない方は、調べてみて下さい。

 では、お願いします。


第26話 足音

              :夢

 

 昔の夢というのは、嫌なものだ。

 今も夢だと分かっているのに、目が覚めない。

 

 夢の中の私は、高速飛行中である。

 これが、どの出来事かも、完璧に把握している。

 どんなに急いでも、間に合わない。

 それが分かったとしても、スピードを緩めるような真似はしなかっただろうけど。

 

 私は、この時、友達を助けようとしていた。

 第五王女なんていう中途半端な身分でも、私は腐っても王族。対等な友達なんていなかった。

 それでも友達が出来た。

 

 切っ掛けは、当代の聖王だった。

 聖王連合諸国の近場で、キール国王の野心満々のエロジ…もとい、自称・邪眼王などと名乗る

残念な王様が、領土の拡大を始めたのだ。

 (邪眼王は、艶福家として有名。妾の数はベルカで1番だった。)

 ベルカの統治者を自任する聖王陛下は、この厨二病患者がお気に召さなかった。

 ただ、相手の能力が分からない。

 何故か、強い。何故か、戦争に大した損害もなく勝つ。

 あの患者の能力が、厨二病を拗らせたものか、美堂蛮よろしくチートなのか確かめたい。

 でも、戦って負けるなど聖王の沽券に係わる。

 そこで、俄かに注目度が上がった国が、聖王連合諸国とキール王国との間に存在する小国・

ヴァリスだった。

 あの国、どうせ侵略対象になってるだろうし、様子見に使えるんじゃね?

 という、軽いノリでヴァリスのテコ入れが決定した。

 そして当時、領土を取り返したりして、調子に乗っていた私にやれというお達しがあった。

 聖王連合が関わっていると、大っぴらには出来ないので、独立戦力で当たれと。

 つまり、私1人。…ヤル気あんのか?

 

 当然、ヴァリス側に、いい感情なんてある筈もなく、当時は苦労した。主に私が。

 ヴァリス王と話すのは、一苦労だった。

 

 ロード・ディアーチェ。

 白に近い銀髪の女性で、傲慢とも取られ兼ねない自信の漲った人物だった。

 彼女の起源はミッドの方らしい。父王が早逝した為に、唯一の継承者である彼女が後を継いだ。

 因みに、ディアーチェは称号のようなもので本名ではない。

 前世の知識の所為で、友達になった後も、私は彼女をディアーチェと呼んだ。

 

 更に厄介な事に、王の両腕と呼ばれる者のうち、左腕の方がアホの子だった。

 レヴィ。

 蒼い髪の女の子で、元気がよかった。威勢もよかった。

 ディアーチェが取り付く島もない受け答えをしている最中も、大声でそうだ!そうだ!と合の手

を入れ、主君を煽る。

 私が外見の年齢通りなら、キレていたところだ。

 それでも、友達になってみれば、天真爛漫な食いしん坊さんだった。愛すべきバカだ。

 魔導騎士としては、左腕と言われるだけあって破格の腕前だった。

 因みに、彼女も本名ではない。例によって、私はレヴィと呼んだ。

 

 そして、右腕。

 彼女は、ヴァリスの常識人だった。

 唯一、私を他国の要人扱いしてくれた人物である。

 私は非公式とはいえ、一応は聖王連合の使者として面会したんだけどね。

 シュテル。

 茶色の髪に理知的な美人さんといった感じで、彼女がいなければディアーチェと会話が、成立

しなかっただろう。武力だけでなく、政治にも関わっていた。

 レヴィが武人とするなら、シュテルは武人であり、将だった。

 友達になっても例の事情によって、シュテルと呼んだ。

 

 仲良くなったのは、ベルカ特有の肉体言語だった。

 余りに、私がしつこいので、ならば実力を示してみよ!となった。

 王本人と両腕対私である。勿論、1対1だ。それを3回。

 結果は、私の3勝。

 それから、私の事を認めてくれるようになった。

 自分達に手を貸す実力があると。

 でも、夕日をバックに殴り合いして友情が生まれるって…古くない?古代でしたね、ここ。

 私としては、やり易くなったんだから、文句なんて言えない。

 

 そして、最後に友達になった人物が問題だった。

 アイツは闇の書、いや、夜天の書のマスターだったのだ。

 夜天の魔導書。

 リリカルなのはA`sに出てくる悪意の改変を受けた悲劇の魔導書。

 よりにもよって、私の友達がマスターとなっていた。

 守護騎士にも実際に会った。現実と理想は違うもの。

 連中は私の知る彼女達ではなかった。

 言ってはなんだが、転生する前の私は守護騎士贔屓だった。

 だが、それを帳消しにして、マイナス反転するくらいの連中だった。

 

 それから、私は客将としてヴァリスに滞在する事になった。

 ちょくちょくキール王国の国境を越えて、みんなと遊びに行った。

「ディアーチェ。アンタは来たら不味いでしょ」

 そう言ったが、聞かなかった。

 嫌がらせとは、楽しいものだ。困った事に。

 暫くは、そんな日々を過ごしていた。

 

 だが、そんな日は長続きしなかった。アイツが突然、倒れたのだ。

 闇の書の呪いが、本格的にアイツに牙を剥いたのだ。

 

 それからの私は、それこそ寝る暇も惜しんで動き回った。他人の手もコッソリ借りた。

 前から諸々の対策を考えていたが、完成を急がなくてはならない。

 厨二病患者が仕掛け難くなるように、本格的に工作をやり、合間に夜天の魔導書から自動防衛

プログラム・ナハトヴァールを抑えるか、停止して、暴走を起こさないようにプログラムを、

アレンジする案を纏める。傍らナハトヴァールを止める道具造り。時間が幾らあっても足りない。

 この頃には、バルムンクを持っていたが、制御が出来なかった為に因果のみを切り裂く事は、

出来なかった。それに切断しても問題ないよう機能しないと意味がない。

 システムをアレンジした方が早い。

 

 アイツには、守護騎士にページを収集をさせて、時間を稼ぐように言って置いた。

 蒐集をしたところで、相手は死にはしない。守護騎士自身が手を下さなければ。

 そう言ってアイツを説得した。

 だが、油断出来ない。

 突如、マスターに対する侵食を、加速させる事もあり得るからだ。

 

 時間がないというのに、本国から一時帰還命令が私に届いた。

 無視していたが、脅迫紛いの文言になってきたので、仕方ないので、少し国に報告に戻った。

 丁度、そんな時だった。

 

 最悪の報が届いたのは。

 

 邪眼王が、僅かな隙を付いてヴァリスに電撃戦を仕掛けたという報告。

 そして、闇の書が暴走寸前であるという報告を受けた。

 

 この時代でも既に、かの書の厄災は有名になっていた。

 事態を甘く見ていた慢心のツケを、私は最悪の形で支払わされる事になる。

 聖王から、何とかしてこいという命令をされるまでもなく、私は全力で飛んだ。

 

 ヴァリスとの国境地域に到達した時、もう邪眼王の旗印を付けた戦船がいた。

 私は怒りに任せて、邪魔してくる戦船を全て叩き落した。

 ヴァリスの国民が、アーヴェントに向かっているのが、分かる。

 それくらいの段取りはしていたが、それを実行したという事は、不味いという事だ。

 祈るような気持ちで、先を急ぐ。

 

 祈りも空しく、既に手遅れだった。

 

 眼下には、紫の魔力の帯が触手のように周囲に伸びて、あらゆるものを侵食を開始している。

 完全な暴走状態。

 これを避ける為に、頑張ったのに。

 これから更に、防衛プログラム・ナハトヴァールは、世界を飲み込み始める。

 その前に、止めなくてはならない。

 

 こうなってしまったら、マスターからのコマンドも、管制融合機のコマンドも受け付けない。

 

 アイツは、敵軍に暴走状態のまま突撃をしたようだった。

 最後に少しでも国の為になる事を、なんて思ったんだろう。

 敵の先鋒が壊乱している。 

 

 私はヴァリスの本陣を見付けると、急降下していく。

 既に本陣にしか騎士はいない。完全に敗北は決定していた。

 私は生き残り本陣に近付こうとする敵兵を、雲散霧消(ミストディスパージョン)で片っ端から消し去る。

 

 私は降り立つと、ディアーチェに詰め寄った。

「どうしてこんな事に!?」

 黒と紫の騎士甲冑を纏ったディアーチェは、無表情だった。

「我も、あのエロジジィと、アイツを見くびっておったのだろう」

 自嘲するように、それだけ言った。

「守護騎士連中は!?」

「奴が、蒐集を容認する訳があるまい。連中も命令がなければ、働く事などない」

 はやての時は、勝手にやってたのに!!

 聞けば、もう取り込まれた後なのだそうだ。

「なんにしても、弱虫の臣下が勇気を見せたのだ。我も付き合ってやらねばな。最も、もう王では

ないがな」

 目の前の惨事を前に、無表情な顔は優しげなものに変わった。

 最早、決意を固めている様子だった。

 

 私は表情に出さないように気を付けていたが、奥歯を噛み締めていないと怒りが噴出しそう

だった。

 守護騎士さえ、もう少し主の事を考える連中だったら、アイツが無事だったら、ディアーチェ

だって違う選択を現時点でしただろう。

 私も守護騎士達の境遇は多少知っている。

 ああなるのも無理はないだろう。

 分かっていても割り切れないだけだ。

 私だって、都合のいい事を言っている自覚はあるんだから。

 そうだ。自分がもっとしっかり工作を、やっていればよかった。

 最初から、工作は信頼出来る連中に任せて、夜天の書の問題に注力すればよかった。

 例え、聖王から文句を言われようと、私の立場が不味くなろうと。

 

 両立出来ない事だったのに、二兎を追った。実力を過信した。

 

 他人を責めるなど、お門違いだ。

 

 私は無様だった。

 

「そのような顔をしないで下さい」

 凛とした声が、私に向けられる。

 私は声の方を向くと、シュテルがいた。

 シュテルは返り血に塗れていた。

「貴女が、この国の…いえ、私達の為に無理をし続けてくれた事は知っています。聖王にバレない

範囲で他人の手を借りていた事も」

 そこで、言葉を切った。

 その顔は、まるで慈母のようだった。

「貴女は、胸を張ってよいのですよ」

 シュテルは、最後にそう呟いた。

「そーだよ!!ありがと!!アーちゃん」

 レヴィが、何の裏もない言葉を放つ。

 レヴィはシュテル以上に真っ赤に染まっていた。

 レヴィは、私の事をアーちゃんと呼んでいた。アレクシアだからと。

 

「して、友よ。この最悪の事態を少しはマシにする方法が、あるのだろう?」

 ディアーチェが私にそう訊いてくる。

 確かに、私はナハトヴァールをどうにかする物を、準備していた。

「このまま、ベルカを心中に巻き込む訳にもいくまい。アヤツは、偶に抜けておる」

 そう言ってディアーチェは苦笑いした。

 だが、渡していいのか?私が責任を取るべきじゃないのか?

「戯け。貴様には、まだやるべき事があろう」

 

 私は観念して、血液中からある物を取り出した。

 

()()()()()()()()()()()

 

 ディアーチェは使い方を聞き、結晶を受け取ると、精一杯の笑みを浮かべた。

 

「さらばだ。友よ」

 

 

 

 ディアーチェ達は、その後、残った騎士達を率いて夜天の書へ突撃した。

 私はそれを見送った。拳を握り締め過ぎて、血が滴った。

 邪眼王の軍は、もう撤退を開始している。逃げ遅れが飲まれている。

 たった1度しか通じない、手段。

 封印というより、活動を封じるが近いだろう。

 ウィルスを流し込んでナハトヴァールを飽和攻撃し、機能停止に等しい状態にする物。

 そして、管理権限を取り戻した管制融合機が、転生を強行する。

 厄災を最小限に抑えて、彼女達はこの世から消えた。

 遺体も残らなかった。

 

 私はこの日、一度に友達を全て失った。

 

 

 

 鳥の囀りが聞こえる。

 目は覚めたようだ。

「また、昔の夢を見たんですか?」

 心配そうな声が上から聞こえる。

 正式に私の守護獣になったリニスだ。

「こればっかりはね」

 見る理由は見当が付く。

 

 窓を開けると、朝日が差し込んでくると同時に、冷気が入り込んでくる。

 最近、空気が冷たくなってきている。

 確実に海鳴に、冬の足音が近付いていた。

 

 

              :はやて

 

 私は夕飯の支度をしとる最中やった。

 最近、空気が冷たくなってきたわ。

 そろそろ、鍋の季節やな。

 今は流石に早いやろうけどな。

 私は器用に車椅子を操り、夕飯を作りながら台所を動き回る。

 

 私に家族が出来て、4ヵ月になる。

 両親が、お星さまになってしもうてから、ヘルパーさんが来る以外1人やった。

 最初に()()()()()()、ビックリしたけどな。

 

 死ぬ時、1人やないだけ、有難いわ。

 

 効率よく夕飯を作り終えると、時間がポッカリ空いてもうた。

 本を読んどってもええんやけど、今は気が乗らん。

 最近は、みんな活動的で、ちょくちょく家を空けるようになってもうた。

 今日は、病院の帰りやったけど、珍しくみんな揃って用事が出来てもうて、出掛けて

もうた。

 出て来たばっかりの時とは、えらい違いや。

 それでも、夕飯には帰ってくるけどな。

 

 こうして、久しぶりに1人でおると、思い出すわ。

 私は、古い本・闇の書を見ながら、出会いを思い出した。

 

 

 私は、いきなり、よう分らん病気になってもうた。

 最初は、よう転ぶようになったな?ってくらいやった。

 学校でまた転んだ。いつもの事や。そう思っとった。

 でも、いつもと違ごうて、私は立ち上げれへんかった。それっきりや。

 最初は、みんな冗談やって思うとった。でも本気で立てへんと分かった途端にパニック

やった。私は救急車で運ばれた。

 最初あった足の感覚ものうなった。

 そこから、車椅子が私の足になった。

 訳が分からんかった。

 私の身体は、医学的にはどこも悪ないらしい。

 じゃあ、なんで立てへんねん。

 精神的な理由まで疑われたけど、原因なんて分からへんかった。

 それから、胸の辺りが痛なって、気を失う事が増えてきよった。

 

 正体不明の難病。

 

 笑えへん。なんで、私がこんな目に合わなあかんのや。

 最初は心配してお見舞いに来てくれた友達も、ドンドン来んようになった。

 あの時は、荒れたもんや。この時の自分を正直余り思い出したくないわ。

 何度目かの発作?で倒れた時に、確かな予感が私にあった。

 

 こら、死ぬわ。

 

 心の中が冷たかった。恐ろしくて仕様がない。

 暫くは、震えとった。そして、更に荒れた。

 

 心の中の嵐が過ぎ去って、心が静かになった。

 そんな時やった。信じられん事が起こったのは。

 

 あれは、6月の事やった。

 病院の検査が長引いてもうて、すっかり日が落ちてもうた。

 病院の前のバス停で、バスに乗って帰る途中やった。

 私の膝には古い本を置いとった。

 鎖が巻き付いとって、読めへんけど。大切な私の本。

 持っとると安心するんや。

 

 バスに乗っとる時に、私の携帯電話が震えた。

 携帯電話を見ると、メールを知らせるバイブレーションやった。

 送り主は、主治医の石田先生。

 優しいけど、厳しいお医者さんや。

 メールを開く。

 

『明日ははやてちゃんの誕生日よね?よかったら一緒に食事でもしない?都合のいい時間を

教えてくれる?』

 

 ほんま、ええ先生や。

 私はメールを確認すると電源を落とした。マナー違反やし。

 

 でも、断ろ。

 

 石田先生が忙しいのは知っとるしな。プライベートまで付き合わせたら申し訳ないわ。

 私は、流れていく街の灯りを到着まで、見上げとった。

 

 バスの運転手さんに手を貸して貰ろうて、私はバスを降りた。

 横断歩道が青に変わる。

 私は左右を見て、渡り始めた。

 その時、急に私は凄い光に晒された。

 トラックのヘッドライトやった。猛スピードでこっちにくる。ブレーキを掛ける様子はない。

 もう、避けられん。

 なんや、私、よう分らん病気で死ぬんやなくて、ここで死ぬんか。

 顔は凍り付いとったけど、心は冷めとった。

 私は目を閉じた。

 急ブレーキの耳に痛い音が私に届く。

 でも、幾ら待っても衝撃はない。でも、話に聞く浮遊感はあった。

 意外に痛ないもんやね。

 

 一向にお迎えがけぇへんな。あの世も渋滞するんやろか?

 

 

 もしかして、私、生きとる?

 

 トラックが止まってくれたとは思えへん。

 それに、急に寒なったような…。 

 

 私は思い切って目を開けた。

 開けてビックリや。

 私は、()()()()()()()

 よう分らんけど、寒いし、死んどらんみたいや。

 ここまで、ぶっ飛んだ事が起きると、一周回って冷静になるもんやね。

 

 私は銀色に輝く三角形の上に乗っとった。

 そして、目の前に紫色に輝く、私の大切な本。

 ファンタジーや。私、異世界に転生するんやろか?

 せやったら、ええな。今度は健康な身体が欲しいです。神様。

 早く、人間になりたい!って…別のネタやったか。

 

『マスターの危機を確認。保護の為、早期の起動認証を承認。闇の書。起動します』

 

 私がアホな事考えて、現実逃避しとる間に、事態は進んどった。

 本が膨張して、鎖を引き千切る。

 初めて見る本の中身。なんも書いとらんかった。真っ白け。

 立派な表紙やのに、なんて残念な本や。実は日記やったか!?

 

 紫色の輝きが増し、私の敷いとるもんと同じヤツが、4つ空中に現れる。

 そこから、4人の人間?が現れた。

 

 女の人2人。男の人1人。子供(女の子)1人。

 不思議な組み合わせの人達やった。

 特に男の人は、ケモ耳やった誰得や?

 みんな日本人やないみたいやし、黒い身体にピッタリした服だけ。寒ないの?

 

 みんな私の前に跪いとった。

 後ろを確認する。お約束やな。

 でも、誰もおらんかった。

 

「闇の書の起動を確認しました。我ら守護騎士、これより貴女様にお仕え致します」

 一番前におる。ピンクのポニーテールの女の人が口を開いた。

 

 私の事?これ…闇の書っていうんや。

 

 なんや、力が抜けてもうて…気も抜けてしもうた。

 ここらへんが、おふざけやっても精神的な限界やったみたいや。

 

 私はスッと意識が遠のくのを感じた。

 

 

 気が付くと、見慣れた天井が見えた。

 私の家やないで、病院やここ。

 実は、トラックに轢かれとって、病院に搬送されたってオチかいな。

 やっぱり、夢オチやったか。

 

 ボウッとしとったら、石田先生が覗き込んできた。

「はやてちゃん。気分はどう?」

「悪ないです」

 私は正直にそう言うた。

「よかった!…あのね。はやてちゃん。病院に運んでくれた人達なんだけど…」

 石田先生はホッとした後に、なんや警戒するみたいに視線を別の方向に向けた。

 私もそっちに目を向けると、…夢オチちゃうやん。

 

 そこには、怪しさ大爆発な4人組がおった。

 

「はやてちゃんの知り合いだって、言ってるんだけど。ホント?」

 石田先生が怪しむように言うた。

「はい!?知り合い…になったばかりですぅ?」

「はやてちゃん?」

 石田先生が眉を顰めとる。疑われとるわ。ヤバい。

「実は、グレアムおじさんが、手配してくれた人なんです。ほら!グレアムおじさんって、

警備関係のお仕事しとるって言っとったやないですか?ちょっと、事情があって一時的に

職場を離れなあかん人がおって、丁度、私が1人やないか!って事になって!送ってくれた

人なんです!ほら!みんな鍛えとるって分かるでしょ?でも、ビックリしてもうて、それで

倒れたんやと思うます」

 咄嗟に私はでっち上げが口からスラスラ出てきよった。

 すいません。先生。

「グレアムさんの?」

 石田先生はまだ疑わしそうに、4人を見とる。

 

 グレアムおじさんは、お父さんの友達やった人で、遺産の管理とか、資金の援助とかして

くれてる人や。葬式にも出れなくて申し訳ないって、色々やってくれとる。逆に、こっちが

申し訳ないわ。イギリスで警備関係のお仕事しとるとかで、こっちに来れんのやて。

 でも、電話でしょっちゅう話すで?日本語ペラペラやから。

 

 すみません。勝手に名前使こうてしまいました。

 後で、口裏合わせて貰わな。

 

「それじゃあ、グレアムさんに確認すれば分かるわね?」

 ギクッ。対応早過ぎやないですか?

 後ろにおったフィリス先生が、頷く。

 おったんか、フィリス先生。気が付かなかったわ。

 この先生にもお世話になった。

 

「構いません。どうぞ、確認して下さい」

 ピンクのポニーテールの女の人が、突然、口を開いた。

 ええ!?バレるやん!?

 

 結果から言えば、バレへんかった。どうなっとるん?

 

 

 検査を念の為やって、帰宅する事になった。通院日が増えたわ。

 家に帰ってから、4人の話を聞く事になった。

 

 説明を聞くに、この古い本は昔の世界の魔導書で闇の書っていうんやて。

 ページが真っ白けなのは、蒐集しとらんかららしい。

 魔法使い?の核?のリンカーコアを収集して魔法の情報を集めページを増やすんやて。

 最後の666ページまで蒐集すると、凄い力が手に入るらしい。

 で、この人達は、守護騎士。闇の書の主を護る騎士らしいわ。

 つまり、私を護ってくれるんやて。

 闇の書のページ蒐集もやるみたいや。

 

 因みに、名前は烈火の将・シグナム、鉄槌の騎士・ヴィータ、湖の騎士・シャマル

盾の守護獣・ザフィーラ。ザフィーラだけは、狼がホントの姿なんやて。

 

「そうなんや…」

 説明を聞き終わって、私はそれだけ言った。

「ご命令があれば、すぐにでも蒐集を開始致します」

 シグナムが畏まって言うた。

 4人共、跪いて目を合わせへん。

「せんでええよ。蒐集」

「「「「はっ!?」」」」

 初めてまともに見てくれたわ。少しだけ勝利感。

「だって、沢山の人に迷惑掛けなあかんのやろ?確かに、健康になりたいとかあるけど、人様に

迷惑掛けてまで、叶えたいと思わへん」

 正直、あんまり未練もあらへんしな。

「ただ、一緒にいてくれへんか?最後まで」

 4人共戸惑った顔やった。

 でも、最後は全員頷いてくれた。

 

 ホントそれだけで、ええ。

 

「さて、他にも分かった事がある」

 4人が不思議そうに見ている。

「私が主になった以上、貴女達の衣食住、キッチリ面倒見なあかんいう事や」

 幸い、遺産はあるし、家も部屋数は十分や。

 医療費はグレアムおじさんに援助して貰ろうてるけど…。

 最初は、遺産から出してほしいって言うたんやけど、なるべく残すべきって言うて聞いて

くれへんかった。

 まあ、グレアムおじさんには、後で謝ろう。

「取り敢えず、服のサイズからやね!」

 あんな怪しさ大爆発の格好なんてさせられへんわ。

 

 

 それから、守護騎士同士がギクシャクしとるのが分かったり、心を開いて貰うのに、苦労

したわ。

 でも、それを乗り越えた。

 ホントの家族になったって感じでええと思う。

 

 それと、私を病院に担ぎ込んだのは、丁度、電話してきたグレアムおじさんの指示なんやて。

 その時に、色々話したらしいんやけど、よく信じて病院に運んで貰う気になれたな。

 私なら、疑うわ。

 グレアムおじさんは、仕事柄、嘘や誤魔化しを見破るのが、得意やからと言っとった。

 別に信頼はしてないとも。シグナム達もそんな感じや。

 

「「「只今戻りました」」」

「ただいま!はやて!!」

 

 腹ペコ共が帰ってきよったな?

 

 今、私は幸せや。私はコレを求めとったんやなぁ。

 

 

      

              :シグナム

 

 今日、我々に衝撃が訪れた。

 

 主の病についてだ。

 足が悪く、歩けないのは知っていたが、命に関わるものだとは思っていなかった。

 我々が来るまでは、倒れたりしていたようだ。

 石田先生が言っていた。

 このままでは、内臓麻痺に発展する恐れがあると。

 倒れるのは、それが原因の1つのようだった。

 医学的に不可解な麻痺。

 

 だが、私達は心当たりがあった。

 

 闇の書の呪い。

 私の記憶では、あれ程、幼い主は初めてだ。

 未成熟な主の肉体を闇の書が圧迫していたとしても、不思議ではない。

 まして、主は蒐集を禁じているのだ。余計に負担があった筈だ。

 

 全く、気が付かなかった。

 

 そう言えば、かなり昔、我らを真正面から叱り飛ばした人間がいたか。

 何も考えず、命令通りに動けば、楽だろう。だが、そうじゃないだろうと。

 あの時は、何も感じなかったが、今なら分かる。

 我々は、いつの間にか騎士である事すら止めてしまったのだ。

 ただのシステムに成り下がってしまっていた。

 

 忸怩たる思いだ。

 

 私は幹に拳を打った。

「何故、気付かなかった…」

「ごめんなさい!」

 私の言葉に、シャマルが涙ながらに謝った。

 だが、私はシャマルを責めた訳ではない。

「自分に言っている」

 握り締めた拳が、メキメキと音を立てる。

 

「助けなきゃ…」

 今まで口を開かなかったヴィータが呟く。

「はやてを助けなきゃ!シャマル!治療魔法得意じゃんか!あんなの治してよ!!」

 シャマルが力なく首を横に振る。

「怪我や病気なら兎も角。闇の書が原因じゃ…ごめんなさい」

 涙を流しシャマルが俯いてしまう。

 ヴィータがクソッと吐き捨てるように言う。

 

「どうする?シグナム」

 ザフィーラが冷静に問うてくる。

 

 手はある。あるが…。

 

「方法はある」

 私は胸元からレヴァンティンを取り出す。

 それで、みんなが察した。助ける方法を。

「いいのか?」

 主は蒐集を禁じている。

 

 主は私達に感情を思い出させてくれた。

 対等な家族として迎えてくれた。

 頑なな心を解きほぐしてくれた。

 みんなが主を最初は、信じていなかった。だが、今は違う。

 これ程、みんなが打ち解けた事などなかった。

 

 これは、主の命令ではない。我らの願いだ。

 

「責めは私が負う。蒐集を開始する」

「シグナム…」

 ヴィータが辛うじてそれだけ口にした。

「シャマル。情報を集めてくれ。管理局といったか、魔法の犯罪を取り締まる連中についてだ」

「あんな連中。アタシ等の敵じゃないだろ」

 ヴィータがそう言い捨てる。

「我等がどの程度、活動を停止していたか分らん。未知の実力者や兵装がないとも限らん」

 ヴィータが不満そうに黙る。

 レアなスキル保持者などに奇襲されれば、我々とて敗北は有り得る。

「失敗は許されん」

 ザフィーラが同意するように頷く。

 シャマルも頷いた。

「後は、グレアムという男に警戒が必要だろう」

 それには全員が同意を示した。

 

 

 思い出すのは、主と出会った直後の事だ。

 

「……」

『おい!シグナム!』

 私は無視していた。どうせ、いつもの我儘だろう。

『こいつ。気絶してねぇか?』

 無礼を咎めようとした私は、中断して主を見る。

 気絶していた。

 

「大丈夫か。こいつ?」

 ヴィータの声が空しく響く。大丈夫かどうかは問題じゃない。我々に選択権などない。

 

 その時、何かの音が聞こえる。

 主の服から聞こえてくる。

 闇の書は、主の世界の情報を収集し私達に伝えてくる。

 おそらく、携帯電話という物だろう。

 問題は、放っといていいのかという事だ。

 余計な事をするのも面倒だし、気が利かないと文句を言われるかもしれない。

「それより、病院にでも連れて行った方が、いいんじゃないかしら」

 シャマルがどうでもよさそうだが、義務的にそう言った。

 そうだな。まずは病院にでも行くか。

 話はそれからだ。

「では、救急車でも呼ぶか?」

 丁度、電話はある。

 ヴィータが主の服から勝手に携帯電話を取る。

「おい!」

「グダグダ言ってたって仕様がないだろうが」

 ヴィータが携帯電話の通話ボタンを押す。

「あー。もしもし?通り掛かったモンだけど。持ち主が倒れたからさ。救急車呼ぶから。

切るぞ?」

 だが、一向に切る様子がない。

「どうした?」

 ヴィータが、ウンザリしたように携帯電話を、私に突き出す。

「大人と代われってさ」

 皮肉っぽくヴィータが言った。

 溜息混じりに携帯電話を受け取る。

「もしもし。話している間が、惜しいのですが…」

『だったら、君達の携帯で掛ければいいのではないかね?』

 落ち着いた年配の男性の声が、聞こえてくる。

 この口調には、慣れ親しんでいる。

 軍人だ。私はそう感じた。

「残念ですが、我々は携帯を持っていませんので」

『ついでに、パスポートもかね?』

「……」

 私はみんなに視線を送る。それだけで通じる。

 3人共、周囲を警戒し出す。

 パスポート。

 他国の人間が、この国に入るのにいる入国証明。

 私達が、この国の人間と容姿が違うと、何故分かる?

 それに、何故パスポートなどと言い出した?

『なに、驚く事はないよ。私も外国人でね。イントネーションで分かるのさ』

「なるほど」

 まるで、答えになっていない。発音もネイティブと変わらない筈だ。

 何しろ、闇の書が収集した情報をフィードバックしているのだから。

『そこで、お願いなんだが、その子を海鳴大学病院に連れて行って貰えるかな?救急車では、

時間が掛かるからね。運んで貰った方が早い。地図をメールで送る。困ったら、私が手配した

人間という事にして貰っていい。私はギル・グレアムという』

 そう言ってグレアムという男は、通話を切った。

 直後、メールで病院までの地図が送られてくる。

「どうした?シグナム」

 ザフィーラが訊いてくる。

「主に近しい人間らしいが、な。パスポートがないだろうと言われた」

「「「っ!!」」」

 シャマルが魔法で周囲を探り出すが、すぐ首を横に振った。

「なんにしても、警戒しておいた方がいいだろう。電話のタイミングも良過ぎる」

 

 こうして、私達は病院に新しい主を運んだ。

 

 

 のちに、グレアムという男は、主の御父上の友人であると聞かされた。

 遺産の管理から、医療費の援助もしているという。

 だが、聞けば聞くほど正体不明な男だ。

 主は信じ切っていて、不審にすら思わないようだ。

 

 それから、偶に電話で話すが、こちらを知っているように感じる。

 それにしては、あちらからアクションがない。

 不気味だ。

 

 主が心配するので、話し合いを切り上げて主の元へ戻らねば。

 管理局やグレアムに注意しながら、これから蒐集を開始しなければならない。

 

 難事だが、やり遂げねばならない。

 

 

 我等は守護騎士なのだから。

 

 

              :ユーリ

 

 薄暗い部屋に通された。

 私の研究に興味があるから、という事だけど。

 少し、怪しい。

 

 向こうの顔がよく見えない。

 年配の男性と、その左右に女性が立っている。

「君が、あのユーリ・エーベルヴァインかな?」

 私は、まだ若いけど次元世界の魔法関係者の間では、有名だと思う。

 魔法の理論研究者として。

「はい。それで…貴方は?」

「私の事は気にしなくていいよ。ただ君の意見が聞きたいんだ」

 益々、怪しい感じです。

 いつでも、逃げられるように魔法を待機させる。

「警戒するのも無理はないけどね」

 そう言って年配の男性は、苦笑いした。

「君は、闇の書を知っているかね?」

 闇の書。確か、一級捜索指定のロストロギア。

「概要は」

「ならば、話が早い。アレを完全封印するとして、方法は君の論文の内容が使えるかな?」

 ああ、管理局の人か。私は目の前の人物の正体に当たりを付ける。

 管理局の人から話で、ここまで来たんだから変な人の訳ないよね。

「過去にベルカの剣王が、被害を抑え込んでいるが、抑え込むだけでは足りないのだよ」

 

「はい。剣王は()()結晶を自作して対応しましたが、本物の永遠結晶(エグザミア)を使用すれば、完全封印は

可能と考えます』

 

 

             

 

 

 




 頑張って書いたんですけどね。こんな感じになってしまいました。
 難しいですね。ホント。

 守護騎士は、感情や意思疎通が確認されてないって言ってましたよね。
 ドラマCDでも、かなり鬱屈してたみたいですしね。
 だから、こんな感じになりました。

 オリジナル風味ですから、勘弁して下さい。

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