魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

20 / 54
 意を決して、修正を幾つかしました。

 聖祥学園→聖祥大付属小学校

 再生→再成

 第16話 忍のセリフの一部

 やっぱり、間違いが多いな。
 気を付けねばと、改めて思いました。
 今後、更に気を付けて投稿しようと思います。



第18話 次元震

              :美海

 

 温泉から帰ってきたけど、不味い事を思い出した。

 フェイトの問題とケアで、すっかり忘れてた。

 

 なのは達にお土産を買ってなかった。

 

 よしんば、覚えていたとして、お土産の問題は解決しなかっただろうけど。

 なにせ、行った場所が同じだからね。

 お互いに海鳴温泉のお土産交換してどうする。

 非難の弾丸で、蜂の巣になってしまうよ。

 頭を抱えていた私に女神がいた。

 ヒルダさんである。

 彼女は家に来る際に、東京土産を買っていたのである。

 私達にもくれたので、有難く頂戴した。

 そして、両親にお願いして東京土産を全て譲って貰った。

 ふぅ、ギリギリで助かったよ、本当に。

 

 

 放課後になのは達(飛鷹君・ユーノ君を含む)と翠屋に来ていた。

 なのは達から海鳴温泉のお土産を貰った。

 木彫りのキーホルダー。梟かなこれ。フェイトもこれ手に取ってたような…。

「私が選んだんだ!」

 なのはが元気一杯に言う。

 ああ、君達、やっぱり気が合うんだね。

 

 でも、元気一杯に見えるけど、私は気付いていた。

 時々、表情が翳るのを。

 フェイトに負けた影響かね。

 まあ、なのはの事は飛鷹君に任せるよ。

 飛鷹君も気付いているみたいで、心配そうだしね。

 頑張ってねー。薄情だって?私は今、フェイトの味方だからね。それでいいよ。

 

 さて、私の番だね。

 ドヤ顔で箱を出す。

「1人、2つずつね。余ったのは話し合いでよろしく」

「「「「「……」」」」」

 あれ?どうしたの?

 銘菓ひ〇こ12個入り。東京土産の定番でしょ。

 実は、東京の銘菓じゃないってところもポイントだ。

「アンタ、お土産のセンスもないのね」

 アリサが絞り出すように、それだけ言った。

 他の面々は、黙ってひ〇こを取って、お礼の言葉を絞り出した。

 

 なんだ、東京ば〇なの方が、よかったっていうの?

 

 

              :なのは

 

 あの敗北から、私は更に飛鷹君と一緒に鍛錬を重ねた。

 最近は、朝練でお父さん達の修行に付いて行って、ランニングしたり、道場で近接戦闘の

訓練をしたりしている。魔法の訓練も勿論やる。

 レイジングハートとも、訓練では動きの素早いターゲットを利用したりしている。

 やり過ぎないように、飛鷹君とお父さん達に注意される事もある。

 私って、そんなに無茶するイメージなのかな。…してるかもだけど。

 

 ちょっと、熱中し過ぎているとは思う。

 思い浮かぶのは、あの冷たいのに悲しみに満ちた眼。

 なんにも知らなかった私を助けてくれた。

 優しい子なんだと分かってる。

 でも、どうしてあんな危険なものを集めているんだろう?

 凄く必死だった。ユーノ君みたいに。

 飛鷹君が言うには、ユーノ君も隙あらば1人で探しに出歩いてしまうみたい。

 止めるのが大変だって言ってた。飛鷹君も1人で動こうとするから、似た者同士かも。

 じゃあ、あの子はどうなんだろう。大怪我しちゃうかもしれないのに、全然気にしてない

みたい。

 あの子に話をして貰う為に、鍛錬を重ねてるけど、最近は重ねるほどにあの背中は遠いと、

感じる。

 私はあの子に、話をして貰えるのかな。

 

「ちょっと!なのは!」

 アリサちゃんの声で気が付く、あっ、ここ学校だった。

「なのはちゃん、大丈夫?」

 すずかちゃんが心配そうに、覗き込んでくる。

「ごめん。この頃のあの問題で、ちょっと…」

 2人はそんなの分かってるって顔してる。

 最近だと、それしかないよね。

「最近、根を詰め過ぎなんじゃないの?」

 アリサちゃんの言葉に、すずかちゃんが頷く。

 美海ちゃんだけは事情が分からないから、キョトンとしている。

 アリサちゃんが、事情の分からない美海ちゃんを気遣って、問題ない範囲で説明して

くれる。

「最近ね。この子が、友達になりたい子と逢ったみたいなんだけど。話もしてくれない

らしいのよ。それで喧嘩しちゃってるみたい」

 うん。流石アリサちゃん。嘘じゃないけど、ちゃんと暈してある。

 美海ちゃんは軽く頷く。

「好きの反対語は嫌いじゃないって、よく言うでしょ?あれ、本当だと思うんだ。好きの

反対語は無関心だよ。喧嘩が出来るなら、まだいいと思うよ」

 美海ちゃんにしては、凄く喋ったから、私達はビックリしてしまった。

「言葉を、格好良く飾って言う必要なんてないよ。思った事を素直に言ってみれば?」

 美海ちゃんにとっては、なんて事ない言葉だったんだと思う。

 でも、私にとっては、凄い衝撃だった。

 

 私はいつの間にか、あの子と話をしようとしてなかったんじゃないの?

 力を手に入れて、どこかでそれにのぼせてたのかも。

 最近は、勝たなきゃってずっと思ってた。そうしないと話も出来ないって。

 勿論、勝たないといけないと思う。ユーノ君との約束だから。

 でも、話をする事を諦める必要なんてなかったんだ。

『それは、君達次第だよ』

 フェイトちゃんも助けたいって、伝えた時にあの人はそう言っていた。

 あの人は、美海ちゃんが言ったみたいな事を、言いたかったのかもしれない。

 自分の気持ちを、伝える事を諦めるなって。

 

 ここのところの、靄が少し晴れたような、そんな気がした。

 

 

              :海鳴署警邏

 

 パトカーに乗って、巡回中だ。

 連休の活気が何週間か前に終わり、街は落ち着きを取り戻している。

 不審人物は今のところ見当たらない。いい事だ。

 私の隣で運転しているのは、若手の警察官だ。

 一応の技術を身に着けているが、まだ経験が足りない。

 私が、面倒を見る事になったのだ。

 この街は、不審者に注意すればいいという訳にはいかない。特殊な街だ。

 

 そして、私の眼はあるものを捉えた。

 街のエアポケットのように広い歩道。そこに青い輝きを見付けたのだ。

「ちょっと、止めてくれ」

「どうしました?」

 若手の警察官はゆっくりと車を止める。

 車が止まったのを、確認し私は車を降りる。

 日の光を反射し、輝くそれを確認した。

「本署に連絡してくれ。捜索指定の危険物を発見したと」

「は!?どこですか?」

 キョロキョロしている若手に、私は問題のものを指で差した。

「え?アレ…ですか」

 私は1つ溜息を吐いた。

「いいから、連絡してくれ。後で説明する。急いでくれ」

 私は、応援到着まで、2人でどう人を遠ざけるか思案し始めた。

 

 

              :リスティ

 

 今までのジュエルシードとかいうものは、みんな彼か敵対している人物に回収された

という報告を、彼から受けていた。意外に律儀だ。

 彼の父親も律儀だから、血かもしれない。

 発見したはいいが、私達では流石に魔法の事は分からない。

 だから、捜索は難しいと考えていた。

 ここまで見付からないと、無理かもしれないと思い始めたくらいだ。

 それが、見付かるとはね。

 ベテランの巡査部長に感謝だ。

 

 現在、規制線を張って、処理できる人物の到着を待っているところだ。

 表向き、不発弾処理という事にして貰っている。

 カモフラージュに爆処理が、それっぽく動いてくれている。

 報道関係者も、ヘリも飛ばしていない。そこは土地柄というものだろう。

 依頼があったとしても、F関連なら誰も動かない。そういう事になっている。

 楽だから歓迎だ。

 

 もし、彼等が到着前に発動とやらの状態になったら、私がどうにかしないとね。

 そうならない事を祈るけどね。

 

 だが、私も警察官である以上、そうなってしまっては仕方がないか…。

 

 

              :飛鷹

 

 俺達も、日課と化しているジュエルシード探索を切り上げ、帰宅した時だった。

 携帯が着信を伝えてくる。電話はリスティ刑事からだった。

 リスティ刑事の話は、俺達の度肝を抜いた。

 まさか、警察がジュエルシードを発見するなんてな。

 しかも、未発動!

 こんな展開は、原作に完全にない。原作なんて当てにならなくなってるけどな。

 

 俺は、すぐになのはに連絡を入れ、ユーノと共に家を飛び出していく。

 所謂、緊急走行再び。

 すぐさま、なのはも合流する。

 まだ、発動兆候はない。それでも、最速で現場に行かないとな。

 

 俺は携帯でリスティ刑事に連絡を取る。

「飛鷹です!もうすぐ着きます!到着したら結界で隔離しますので、リスティ刑事も退避

して下さい!」

『有難いよ。結界とやらは、私達にも見えるのかい?』

 携帯の向こうで、少し安堵している様子だ。

「いえ、ジュエルシードが消えたら、それが合図だと思って下さい」

『了解、今現在は異常はないようだ。待ってるよ』

 通話をそれで終了させる。

 

 俺達が到着した、まさにその時だった。

 ジュエルシードが胎動するように、輝き出した。

「やべぇ!」

 ユーノが素早く印を切る。

「間に合え!!」

 結界がギリギリの線で構築される。

 輝きが洪水のように、溢れ出していく。

「なのは!」

「了解!ジュエルシード、封印!!」

 なのはは封印砲を放った。

 

 

              :フェイト

 

 ジッとしていられなくて、私とアルフはジュエルシードを探していた。

 私達のサーチじゃ、引っ掛からないかもしれないけど、運良く肉眼で発見出来るかも

しれない。

 レクシアには呆れられるか、ちゃんと休むよう怒られるだろうけど。

 最近の私は、おかしさが少し増した。

 レクシアに注意されると前は、落ち込んだけど、最近は本気で心配してくれてるって

分かるから、少しだけ嬉しかったりする。

 こんな事言ったら、レクシアが怒るかな。

 そんな事を考えて、少し笑った。

 視線を感じて、横を見るとアルフが安心したみたいに笑ってた。

「どうしたの?」

「フェイトが笑ったのが、嬉しかったんだよ」

 そんなに変だったかな?

「フェイト。最近、笑わなくなっちゃってたからさ。安心したんだよ。そりゃぁさ、笑顔を

作る事はあったけど、上手く言えないけど本当に笑ってなかったんだよ」

 そう、だったかな…。

 だとしたら、アルフに心配掛けちゃったな。

 確かに、早くしなきゃっていう焦りは消えてない。

 最近では悩みも増えたけど、信頼出来る人が支えてくれる、助けてくれる。

 そういった安心感があるから、必要以上に固くならずに済んでいるのかもしれない。

 

 そんな事を考えていた時だった。

 胎動するような魔力の波動。

 これは!?

「フェイト!」

「うん、もう発動する!」

 意外にそう遠くない。間に合う!

『フェイト。発動したけど、気を付けて。なんか不気味だ。アレの小細工は入ってると

思うから。私もすぐに合流するよ』

 レクシアからの念話が入る。

『分かった!』

 私達がジュエルシードのところへ来た時には、結界が構築される寸前だった。

 あの子達だね。

 私達はすぐに構築寸前の結界に飛び込んでいった。

 

 ジュエルシードのある場所に立つと、あの子が封印砲を既に放っていた。

 封印は成功した。

 あの子達が回収しようと近付いたと同時に、私達は彼女達と相対する形で降り立つ。

 

 今度は私達が貰う。

 

 

              :美海

 

 発動の兆候を確認して、動き出した所為で、少し出遅れたかな?

 すぐに、リニスと一緒に飛び出したんだけどね。

 さて、アレはどんな小細工したのやら。

 一応、フェイトには注意するように言ったけど。

 

 呑気に考えているように見えるだろうけど、今、私達は高速移動中です。

 少し、荒っぽくなるけど、結界に入るとしようか。

「行くよ!リニス!」

「はい!」

 

 私は剣を取り出すと、魔力を籠めて剣を振るった。

 

 

              :なのは

 

 やっぱり来た。

 前回とは逆になったけど。

 ユーノ君は赤い狼の方を警戒しながら、私達をサポート出来るように下がる。

 赤い狼の方は、今日は人型になっている。

 人型になると、あんな感じなんだ。

 飛鷹君は、あの人の姿がないのを警戒しているみたい。

 

 私は少し緊張しながら、2人に近付いていく。

 2人が、警戒しデバイスを構えたり、無手で構えた。

 私はそこで止まった。

 私は思いっきり息を吸い込んで、吐くと2人に向かって呼び掛けた。

「私は高町 なのは!聖祥大付属小学校3年生です!」

 いきなり、自己紹介を始められて、2人共戸惑ってるみたい。

 私は、改めてジュエルシードを集める理由を説明した。

「目的が違うから、ぶつかり合うのは仕方のない事なのかもしれない。でも、それじゃ、

それだけじゃ、嫌なの!貴女の理由を教えてほしい。あんな危ないものを集めてるのは、

どうしてなの?」

 金色の髪の子は少し考えて、口を開く。

「フェイト。フェイト・テスタロッサ」

 え?私達とは話したくなさそうだったから、もう少し時間が掛かると思ってたから、

ビックリしてしまった。

「名前…」

 伝わってないと思ったのか、金色の髪の子・フェイトちゃんが言葉少なに答えてくれた。

「うん!」

 話が出来る。そう期待した。

「でも、貴女に理由を説明する必要はない。それは変わらない」

 やっぱり、そう簡単じゃないよね。

 私は落胆を感じながら、気を取り直す。ここで、止めたら今までと同じだ。

「何度も、助けてくれたよね?」

 私の言葉に、フェイトちゃんが少し動揺したように見えた。

「今まで、言えなくて、ごめんなさい。ありがう!」

 フェイトちゃんが目を見開く。

「違う…!」

 フェイトちゃんは、絞り出すようにそう言った。

「もしかして、貴女の…フェイトちゃんの中では、そうなのかもしれないけど、私はそう

思ってる。だから、知りたいの!フェイトちゃんがどうして、ジュエルシードを集めて

るのか…」

「フェイトは、話す事ないって、言ってるだろ!」

 赤い狼が冷ややかに私の言葉を遮る。

 今までの私なら、何も言えなくなっていたかもしれない。

「それでも!私はフェイトちゃんと話すのは、諦めない!!」

 赤い狼が驚いたような気がする。

 私はフェイトちゃんから目を逸らさない。

 

 その時、爆発音が響いた。

 

 

              :飛鷹

 

 なのはが熱い思いを語っていたまさに、その時。

 空気を読まない爆発音と共に、2人の人影が降り立つ。

 ヤツとリニスだった。

 

「うん?あれ?もしかして、取り込み中だった?」

 更に空気を読まない発言だな、おい。

 そこで、ヤツはなのはとフェイトを見て、察したのか結界の綻びを勝手に修復すると、

なのは達に気にするなと言わんばかりに、手を振る。

「ああ、どうぞ、続けて続けて」

 色々と台無しな空気で、流石に続けられるか。

「いや、終わったよ」

 フェイトが終了宣言。

「終わってないよ!」

 食い下がるなのは。

「私のやる事も、貴女のやる事も変わりはしない。そうでしょ?」

 フェイトが戦闘態勢に入っている。

 それが、分かる。

「私はフェイトちゃんの理由を知りたい、知った上でやれる事をしたいんだ。貴女の為に」

 お互いが計ったように、空中に飛び上がる。

 なのはとフェイトの空戦が始まった。

 

 それが合図となり、アルフとユーノの戦闘?も開始された。

 

「いや、あれで続けろって無理だろ」

 俺はヤツに一言言っておきたかった。

「だね。流石に無理だったね」

 お互い軽口を利いているが、一切気の緩みはない。

 既に、お互いの隙を探っている。

「お前は、なのはがあのフェイトって子と話すのは、妨害しないんだな。目的を言えよ」

 ゆっくりと俺は剣を抜いた。

「君は納得しないだろうけど、私なりにフェイトに幸せになってほしいと、思ってるよ」

 ヤツは剣を構える。

「ああ、納得なんて出来なねぇな!!」

 俺は身体強化を最大に引き上げ、ヤツの間合いに踏み込む。

 剣が打ち合わされる。

 それから、何合も打ち合う。

 動と静。

 俺は大気を切り裂くようなスピードで動き、剣風でアスファルトを削り取る。

 ヤツはふわりと受け、力もなにも全て受け流してしまう。

 チッ!まるで手応えを感じない!まるで、そこにいない奴に斬り掛かってるみたいだぜ。

 まるで、約束稽古でもしてるみたいに、ヤツに刃が届かない。

 

 剣術だけじゃ、ヤツに届かない。魔法も使っていくが、ヤツの左手で流されるか

いなされる始末。

 右で斬り、左で防御。余裕であしらわれている。

「ブラスト」

 近距離で、ステイしていた魔法を放つ。

 ただのブラストじゃない。かなり魔力を籠めて巨大化した火玉だ。

 ヤツは少しも動揺を見せずに、魔力の燐光を放ちアッサリ躱す。

 巨大火玉はアッサリとヤツを通過していく。

「だから、隙を作らないと、大技は当たらないよ」

「ああ、そうだよな!」

 俺は、放たれたブラストに仕込んだ術式を解放する。

 巨大な火玉が分裂し、大量の火玉に変わり奴に殺到する。

 前回のアドバイス、活かしてやったぜ。

 回避出来る量じゃない。なにしろ逃げ場がないくらい火玉を造ったからな。

 これは、烈火の炎で主人公がやっていた技だ。

 原作・ストレイトジャケットじゃ、こんな事当然出来ない。

 だが、この世界じゃ、術式をキチンと組めれば可能だ!

 完全に、火玉が通過した事で、ほんの僅かに背に隙が生まれた。

 避けられないだろ?

 全弾直撃。

 まだ土煙で視界が利かない中、俺は剣を手に既に間合いに踏み込んでいく。

 魔力弾を展開と共に斬り掛かる。

 まだヤツは、そこにいる。

 俺は剣を振り抜く。

 だが、凄い音と共に剣が弾き返される。

 土煙が晴れて、ヤツが姿が視認出来るようになる。

 ヤツはなんの動揺もなく、平然と立っていた。

「うん、魔法が必要な攻撃だった」

 俺に喜びはない。

 まだ、対等な場所に俺は立ってないからな。

 

 再び、仕切り直しになると思った時だった。

 何かが、胎動するような鼓動を感じた。

 

 

              :なのは 

 

 空中に飛び上がり、そのまま空戦を始める事になった。

「フェイトちゃん!」

「黙って!」

『プラズマランサー』

 フェイトちゃんが雷の槍を一杯に展開して、放つ。

 私はラウンドシールドで防御しながら、避けられるものは避ける。

『アクセルシューター』

 私も魔力弾を展開し、反撃しながら近づいていく。

 今回はフェイトちゃんの後を、私が追う形になる。

 

 フェイトちゃんの後を取っても、すぐに引き剥がされてしまう。

 でも、前よりは食い下がる事が出来る。

 それでも、フェイトちゃんの空中機動は凄いの一言だ。

 設置型のバインドを予想位置に仕掛けても、躱されてしまう。

 こっちはまだ全然ダメみたい。

 まるで、テレビで見たスポーツカーが、パイロンを縫って走ってるみたいだ。

 それより動きが速いし、激しいけど。

 接近戦に持ち込まれないように、弾幕を張るけど、フェイトちゃんは雷の槍で

迎撃しながら、スルスル近付いてくる。

『サイズフォーム』

 デバイスが鎌の形態に変わる。

 そして、フェイトちゃんの身体が魔力光で輝く。

 来る!?

『ソニックムーヴ』

 眼で捉えられないくらい加速して、私の目の前に現れる。

 鎌が振るわれる直前。

『フラッシュムーヴ』

 私も一瞬でフェイトちゃんの背後を取る。

 私もレイジングハートとフェイトちゃんの高速機動魔法を研究した。

 フェイトちゃんみたいに、かなりの距離を移動する事は出来ないけど、短距離なら

私もフェイトちゃんのスピードに、対抗出来るようになった。

 私はレイジングハートを打ち込む。

 フェイトちゃんは特に驚く事なく、私の杖を受け止める。

 デバイスが打ち合わせれ、ギリギリと嫌な音を立てる。

 お互いに魔力で強化されている為、魔力がスパークする。

 魔力刃が、私にドンドン近付いてくる。

 シールドで魔力刃を受け止め、シールドに魔力を注ぎ続ける。

 そして、シールドを敢えてオーバーフローさせる。

 爆発により、強引にお互いに距離を取る。

「貴女、滅茶苦茶しますね」

 フェイトちゃんが眉間に皺を寄せながら、そう言った。

「実力が足りなきゃ、無理くらいはするよ」

 フェイトちゃんが少し怒ったような顔をした。

 一応、怪我しない程度に爆発させている。魔法の防御があるのが、前提だけど。

 衝撃波を利用して距離を取る魔法だから。

 全く未完成の魔法だから、レイジングハートは止めた方がいいって止めたけど。

 安全は一応考えてるんだよ?

 

 その時、何かが胎動するような鼓動を感じた。

 私達は弾かれたみたいに、そっちを向いた。

 

 

              :リニス

 

 私が参戦すると、あっと言う間に戦闘の均衡が崩れるので、美海からは基本的に

サポートに徹するように言われている。

 別に私が、ジュエルシードを回収してもいいんですけど。

 それでは、フェイトの為にもならない、という事だった。

 美海は、フェイトが迷う時間を作りたいみたいですね。

 

 そんな事を考えながら、それぞれの戦いを観察していると、封印された筈のジュエルシード

から、胎動するような鼓動が響いた。

 その時、私はある事に気付き、周りを見回す。

「これは!?」

 そう言う事ですか!ここは発散された魔力で満ちている。

 それを吸収したんですね。

 これが美海の言うアレの細工!厄介な事を!

 これでは、封印する為でも魔力を当てれば、暴走しかねない。

 

 再度の発動に気付いたフェイトとなのはが、封印すべく動く。

「ダメです!フェイト!!」

 私も止めるべく飛び出す。

 しかし、フェイトとなのはは、既にジュエルシードを挟んでデバイスを打ち合わせて

しまった。

 

 その瞬間、ジュエルシードが禍々しいまでの光を放つ。

「「あっ!!」」

 光の強力な破壊力に2人のデバイスが、無数の亀裂が走る。

 2人共、同時に吹き飛ばされてしまう。

 フェイトはどうにか、打ち付けられる事は回避しましたけど、なのはは地面に打ち

付けられる。

 衝撃でアスファルトが削れて土煙を上げる。

 

 ジュエルシードが、更に力と輝きを増す。

 なんて、強力な力…。

 結界内に地震のような振動が、発生し始めた。

 

 

              :飛鷹

 

「なのは!!」

「フェイト!!」

 奇しくも俺達の声が重なる。

 なのはが抉れたアスファルトの中から這い出して来る。

 なのはは多少のダメージはあるようだけど、無事のようだ。

 俺はホッとした。

 

 ジュエルシードは強力な力を放出している。

 やべぇ。すっかり夢中になって忘れてたぜ!

 このジュエルシードは、封印後に再発動して次元震を起こすんだった!!

 しかも、俺とヤツという2人のイレギュラーの存在、なのは・フェイトの原作以上の力の

所為か、原作より激しいぞ!?

 これも、二次小説にありがちな展開じゃねぇか!

 まさか、俺がその轍を踏むとはな!

 

 悔しさに歯噛みしていると、ヤツが声を掛けてくる。

「悪いけど、一時休戦でいい?」

 声に深刻さがねぇな、おい!

「言われなくても、続けられねぇよ!」

 

 ヤツは特に何も言わずに、拳銃型デバイスを光の柱に向ける。

 

 

              :美海

 

 私はジュエルシードにシルバーホーンを向けて、魔法を放つ。

術式解散(グラムディスパージョン)

 ジュエルシードに刻まれたアレの術式に干渉して、消そうと試みる。

 が、上辺だけの魔力が掻き消えたのみ。

 ファランクスやレンジ・ゼロと同じか!?

 となると、魔力を拡散させて、ジュエルシードを直接抑え込むしかない。

「一応、訊くけどアレ、どうにか出来る手段ある?」

 飛鷹君は眉間に皺を寄せる。

「あるには、ある。だが、時間が掛かる」

「どのくらい?」

「…5分だ」

 沈黙が流れる。勿論一瞬の事だ。

「魔力の拡散、任せていい?」

「やってやるよ!」

 飛鷹君はヤケクソ気味だね。

 話し合いが終了したところで、対応開始しようとした時。

 フェイトとなのはが再度、突撃しようとしていた。

「フェイト!」

 リニスが準備してくれていたようで、フェイトを抱き止める。

「リニス!?」

「フェイト。アレは任せて!」

 私はフェイトに声を掛ける。フェイトは頷いてくれた。

 が、間に合わなかった人もいるようだ。

「なのは!よせ!」

 飛鷹くぅぅぅん!!頼むよ!!なのはは君の担当なんだからさ!!

 なのはは、ジュエルシードに手を伸ばしていた。

 飛鷹君も飛び出していたけど、間に合わない。

 私は自己加速で限界まで強化してから、身体技能でなのはを止める。

 なのはには、いきなり私が目の前に現れたように見えただろう。

 ギリギリのところで止めたが、ジュエルシードの光が刃のように襲ってくる。

 魔力の籠った腕で光の刃を跳ね除けるが、私の防御を抜いて斬り付けられる。

 クッ!こっちはバリオンランスみたいだね。

 血飛沫が飛び、なのはの顔に掛かった。

「レクシア!!」

「大丈夫だから!!」

 私は手でフェイトを押し止める。

「君は大丈夫?」

「は、はい」

 なのははガクガクと頷いた。

 悪いね。上手く助けられなくて。怖い思いさせちゃったかな。

「下がってて、私と彼でやる」

「すいません」

 意気消沈しているなのはに、私は額を指で弾いてやった。

「痛っ!」

「言葉の選択が違うよ」

 なのはがハッと気付いた。

「あ、ありがとうございます!」

「よくできました」

 近付いてきていたユーノ君に、なのはを任せる。

 

「さて、やろうか!」

「応!」

 飛鷹君が、光の柱の魔力を制御して拡散を開始する。

 光の柱から刃のような攻撃が加えられるが、飛鷹君は剣で叩き落としながら拡散作業を

並行して行っている。うん、器用だね。

 それでも、既に傷だらけだけどね。

 私が拡散を担当すれば、いいという話だが、私がやる訳にはいかない。

 今回の場合は、直接手でジュエルシードに触れる必要がある。

 でないと、最悪時間切れで、次元断層に発展する危険性が高い。

 だが、この高密度の力の柱に手を突っ込むのは、危険過ぎる。普通なら。

 

 アレの狙いは、私ごとこの世界を消す事だろうが、私を舐めるなよ。

 

 自己修復術式がある私なら、出来る。

 

 私は魔力を高密度で腕に纏わせ、圧縮により薄い膜でも張っているように見えるぐらいに。

 そして、残像すら残さないスピードで、光の柱に突き込んだ。

 すぐさま、腕がバラバラになりそうになる。

 だが、この程度の痛み、屁でもない!!

「「レクシア!!」」

 フェイトとアルフの悲鳴のような声が響く。

 大丈夫、信じて!

「っ!…主!!」

 リニス。今、危なかったね。本名言いそうになったでしょ?

 

 腕の1本くらい、くれてやる!!

 

 ボロボロの右手がジュエルシードを掴んだ。

「あああああぁぁぁぁぁーーー!!!!」

 次元断層すら引き起こしかねない力を、抑え込んでいく。

「ウオォォォォーーーーー!!!!」

 飛鷹君も血塗れになりながらも、拡散し私の分の抵抗も排除し続ける。

 

 光の抵抗が弱まり、薄くなると同時に()()()()()()()()

「っ!!!」

 チェックメイト。

 脂汗が噴き出るが、私はニヤリと笑った。

 

 爆ぜた後には、ジュエルシードは残されていなかった。

 私の血の中に収納されたのだ。

 

 私も堪らず膝をついた。

 飛鷹君も尻餅をつくように座り込む。

 お互いの荒い息遣いのみが、聞こえる。

 

「レクシア!!」

 フェイトが駆け寄って来るのが、分かる。

 到着と同時に、包み込まれるような温かさを感じる。

 抱き締められているようだ。

 ただね。痛いから、手加減して。

「ああ!レクシア!?どうしよう…!!治療を!!」

 落ち着いて、とは言う余裕がない。

 自己修復術式がオートで作動する。

 傷など、初めからなかったように消える。

 

 ふぅ。あ~、痛かったわ、久しぶりに。

 幻肢痛はまだ、感じるけど。用法間違ってる?気にしないで。

 

 まだ、パニック状態のフェイトを落ち着かせる為、右手でフェイトの頭を撫でてやる。

「ほら、大丈夫だから、心配しないで」

 フェイトはようやく落ち着いて、戻った腕を見ると涙を浮かべた。

「心配…するよ…当たり前じゃない」

 そのまま涙を流し、私を強く抱き締める。

「うん、そうだね。ごめん」

 泣くフェイトの背を優しく叩きながら、落ち着かせる。

 

「あ、あの…」

 なのはが遠慮がちに声を掛けてくる。

 それにいち早く反応したのが、フェイトだった。

 強烈な怒りの籠った表情で、なのはを睨み付けた。

「あっ…」

 なのはは俯いてしまった。

 

 飛鷹君はなのはの手助けで、起き上がりユーノ君の治療を受けつつ、こちらを窺って

いる。ユーノ君も気にしているようだ。

 

「フェイト。どんなにベストを尽くしたって、報われない事もあるよ。彼女もフェイト

も自分の出来る事を精一杯やろうとした。それだけだよ」

 なのはを睨み付けているフェイトの顔を、こちらに向けさせて語り掛ける。

「それに、フェイトだって止められなかったら、同じ事をしてたんじゃないの?」

 そう言うと、フェイトの顔がさっきまでと違う意味で赤くなった。

「ごめん…」

 私は下を向くフェイトの顔を上げさせた。

「それは、私にじゃなくて、あの子に言ってあげて」

 フェイトは気まずそうに、なのはを見る。

「ごめん。八つ当たりだった…」

 なのはは慌てて首を横にブンブン振る。

「私こそ、迷惑かけちゃったし、怪我させちゃったから、…その…ごめんなさい」

 ペコリと、なのはは頭を私に下げた。

「じゃあ、この件これで終わり」

 

 お互いに損害が多かった為、ジュエルシードは今回は私達のものになり、こちらの

撤収をあちらが見送るという、実に平和的な幕引きになった。

 

 

              :飛鷹

 

 今回の件が終了し、リスティ刑事に俺は謝らないといけなかった。

 折角、見付けてくれたのに回収出来なかったからな。

 謝る俺にリスティ刑事は、無事で何よりと言ってくれた。

「私としては、危険性を知れただけでもよしとしてるよ。回収されただけでもよかった

とすべきだろう」

 悪用される可能性を考えてない訳ないから、これは気を遣って貰ったという事だろう。

 どうやら、こっちでもかなりの地震となって、影響を出していたようだ。

 危ねぇな。今、思い返しても冷や汗が出るぜ。

 

 俺の傷はといえば、ヤツが治してくれた。

 回復魔法も凄腕で、俺の傷もなのはの傷まで治していった。

 全く、分かっていたつもりだが、とんでもない奴だ。

 

 だが、決戦は近いだろう。

 ヤツが、どういう幕引きを狙っているのか知らないが、俺は俺に出来るベストを尽くす

だけだ。もう、ここまでくれば、助けられるだけ助ける、それしかねぇだろ。

 

 いざとなったら、レアスキルを最初から、発動状態で臨むしかねぇかもな。

 とんでもなく、危険だが。

 

 それにしても、ユーノが気になる事、言ってたな。

 

「あれは…失われた筈の…自己修復術式。どうして彼女が…」

 とかなんとか。

 

 詳しい事は後日だな。俺もなのはもいい加減、帰らねぇとキツイ。

 

 

              :アルバザードの魔法使い

 

 ヤツは化物か?

 

 これで始末出来れば、と思っていたんだがな。

 私にとって、こんな世界に価値などないからな。せめて、ヤツと一緒に消えるくらいの

役に立ててやろうとしたんだが、ダメだった。

 

 次元干渉型のアレを最大出力で暴走させた筈だが、無効化された。

 あんな事は、我らの世界の高位の存在でも、容易な事ではない。

 身体の欠損がある程度治るとはいえ、アッサリ片腕を捨てる決断をする。

 ヤツもまた、心が壊れている。

 

 まあ、いいだろう。

 時間稼ぎは万全。

 もう、目的地に到着している。

 

 かの地で待つぞ。

 

 

 

              :リンディ

 

 時空管理局・次元航行艦アースラ艦内。

 ようやくパトロール任務も折り返し地点。

 今まで順調に来てるわね。

 珍しく、担当事件もなく、パトロールなんて滅多にあるものじゃないわ。

 

 私は抹茶に角砂糖2つとミルクを注ぐ。

 これが私の一番美味しい飲み方だ。残念ながら受けが悪いのよね。

 どうしてかしら?

 

 自室でのんびりしていると、私の目の前でウィンドウが開き、エイミィから通信が届く。

『艦長。本局より緊急連絡です』

 あ~。やっぱりそういう事になるのね。

 緊急。嫌な響きだわ。

「繋いで頂戴」

『了解しました』

 ウィンドウが切り替わり、レティの姿が映し出させる。

 彼女は同期で親友と言っていい人物だ。そして、やり手でもある。

『リンディ。折角のパトロールだけど…』

「どんな事件なの?」

 私はサッサと話を促す。

 レティは苦笑いする。

『事件の詳細は、暗号データで既に送ってあるわ』

 そこまでの事件という事ね。

『今回の事件は、下手をすると次元断層に発展する恐れがあるわ』

 その言葉に、私は顔が強張るのを感じた。

「了解!ただちに現地へ向かうわ。で、場所は?」

 未曾有の大災害の恐れ。多くの次元世界も飲み込みかねない大事件。

 

『97管理外世界よ』

 

 

 




 ようやく、ここまで来ました。
 美海視点が多くなってしまった…。
 
 戦闘描写に悩みを感じ、リリカルなのはの小説版を購入してしまった。
 まだ、読んでませんが…。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。