魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

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 今回、ギャグモドキ回になってしまいました。
 あと、1話くらいこんな感じになると思います。
 すみませんが、お付き合いを…。

 では、お願いします。


第16話 お茶会トラブル

              :美海

 

 私は今、学校に来ている。

 私の前で、3人組が話をしているんだけど。

 何故に?

 どの3人組だって?分かるでしょ?なのはちゃん達ですよ。

 あのサッカーの試合以来、感知されないくらいの弱い精神干渉魔法じゃ、抑えられなく

なったんだよ。なのはちゃん達には、申し訳ないけど鬱だ。

 今、敵同士なんだけど、一応。

 

 私はと言えば、前回の無茶の所為で収集に参加させて貰っていない。

 探しても、見付かってないけど。

 フェイトやリニスに休養を強制されてしまった。

 リニスからは何故か精霊の眼(エレメンタルサイト)の使用も禁止された。

 いや、意味が分からん。

 いやいや一瞬で治るって!治ってるって!あれの相手したら貴女達がヤバいからね!

 

 だから、コッソリとあれに嫌がらせしている。

 

 あれから、敵に感知されないように、ジュエルシードを全て私の血液中に移動させ

たんだよね。フェイトの説得に苦労したよ、ホント。

 ともあれこれで、ジュエルシードは物理的にも魔法的にも外界から遮断される。

 向こうより私の方が実体もあるし、干渉力が上だ。向こうが私達の居場所を特定するの

は難しい筈だ。現にちょっかいを一切掛けられていないからね。

 それに、念の為に化成体を一緒に連れて行って貰っている。例の鴉である。

 

 向こうは今は逃げるしかないが、こっちは攻められる。

 ジュエルシードは、元々連動させて使う事が前提となっている。

 故に、ジュエルシード同士、多少通常でもリンクはある。

 ジュエルシードは願いを叶える石。それに干渉して、私が接近している気配を発する

ようにしている。

  追う方は、ロストしない限りは休憩は自由だが、追われる方は休む事は出来ない。

 休んだとしても、いつ追いつかれるか神経を尖らせる必要がある。

 向こうもある程度は、情報を引き出せるとはいえ、私ほどではない。

 地味に嫌がらせになっているだろう。

 出来れば、見付け次第始末したいんだけどさ。

 居場所を特定して接近すれば、向こうも逃げに徹するだろうから、始末は難しい。

 ま、今は逃走ルートを絞り込んで、行く先をコントロールする事を試している。

 時間が掛かるけど、追い込んであげるよ。

 

 そんな事をツラツラ考えていると、話を振られた。

「ねぇ!今度、ウチに遊びに来ない?」

 すずかちゃんだった。

 時たま目付きが怪しいんだけど、この子。

「なのはちゃんもアリサちゃんも飛鷹君も来るんだよ!」

 そして、ユーノ君も付いてくる訳ですね?分かります。

「それと、最近仲良くなった子も来るよ!」

 ほぉら、来た。思った通りだ。…外れてほしかったけど。

「いつ?」

 私は、断る方向で訊く。

「明日よ」

 アリサちゃんが簡潔に教えてくれる。

 よし、用事があると…。

「佐伯に聞いたけど、アンタ予定ないんでしょ?」

 は!?

 佐伯さんとは、私が適当に潜り込んでいるグループのリーダー格の子だ。

 …確かに、あの子に明日は暇と漏らしたかもしれない。

 収集強制停止状態だから、つい漏らしたのかもしれない。

 精々、嫌がらせに勤しむくらいだし。

 迂闊だった…。

「佐伯達も誘ってみたんだけど、断られちゃったのよ」

 アリサちゃんがアッサリとそう言った。

 そりゃ、断るでしょ、普通。

 私達のグループは、全員中流層なんだから。

 上流階級の2人の家に、遊びになんて行けますかっての。

 気疲れするわ。なのはちゃんとは違うのだよ、なのはちゃんとは。

 一般人にはキツイわ。

 それにしても、佐伯さん。アンタ、私を売ったな。

 私はジットリとした目線を、佐伯さんに送ってやった。

 気付かない振りしてるよ。

 決めた、この先厄介事が起こったら、積極的に君を巻き込んであげよう。

 佐伯さんを呪う人間のリストにぶち込んでから、私は頷いた。

「参加させてもらうよ」

「「「やったー!!」」」

 3人が同時に喜びの声を上げる。

 

 何故に、そこまで喜ぶの?

 

 

              :アルハザードの魔法使い

 

 相も変わらず、粘着質な女だ。

 追跡の気配の正体は分かっていても、反応してしまう。

 ゆっくり力を取り戻す事は、出来ないようだ。

 向こうは、こちらを休ませないつもりだ。

 だが、私も徐々に記憶がハッキリし出した。

 

『彼女の眼を誤魔化したいなら、存在を誤魔化してはいけない。()()()()()()()()()()()()」          

 あの方はそう仰っていた。

 今こそ参考にすべきだ。

 今段階だと、回収が辛いが、あそこに落ちた玩具を頼るか。

 そして、今ある玩具の情報を隠蔽し、バラ撒く。

 勿論、発動し易いように細工する事も忘れてはならない。

 奴はそういう点では甘い。私より優先するだろう。

 

 早速、行動に移す為、私は移動を開始した。

 

 

              :フェイト

 

 レクシアがマンションに来たんだけど、用件が問題だった。

 

「明日は、ちょっと、出掛けなきゃならなくなってね」

「どうしたの?」

 最近、彼女は怪我をした。

 すぐ治るのは分かったけど、リニスと相談して少し休んで貰う事にした。

 今までは学校という教育機関に通いながら、終わったらそのまま、収集をずっと手伝って

くれたんだもの。私も何かと休まされたし、レクシアだって休養が必要だと思ったんだ。

 前回のイレギュラーや白い魔導士の子達の事があったけど、収集自体はいいペースできてる。

 それに残りのジュエルシードの所在も、大体は分かっている。

 分かってないのも、幾つかあるけど。

 かなり、難しいけど。上手くすれば、予想より早く終わる。

 もし、収集の関係だったら、休める時に休んで貰わないと。

「ユーノ君…分かるかな?私達と収集で対立?してる子達の友達に誘われちゃって」

「え!?どういう事!」

 いきなりの内容にビックリしてしまった。

「実はね。学校一緒だったりするんだよね。まあ、正体はバレてないけど…」

 レクシアは、言い辛い内容に、いつもより話のテンポが悪い。

 それ、早く言ってよ…。

 

 それにしても、レクシア達ってここら辺に住んでるんだ。

 学校の説明を聞いたから、そういう事だろうと思う。

「まあ、意味なく嫌がったりすると、勘繰られる可能性もあるしね。非常に気が進まないけど、

明日、行ってくるよ」

「……」

 言葉の割には、そんなに嫌そうじゃない?

 なんかモヤモヤする。

「確かに、レクシアから私達まで辿られた嫌だし」

 なんか尖った嫌な言い方になってしまった。

 でも、言葉は止まらなかった。

「じゃあ、いってらっしゃい。バレないようにね」

 私はレクシアから顔を背けた。

 きっと今の私は嫌な顔してると思うから。

 窓側にあるソファーに座り、外を見る。

 

 重い溜息と共にレクシアが、私の傍にきて両腕を掴んで立ち上がらせる。

 え!?何!?怒ったの?

「買い物行くよ」

 え!?どうして!?

「どうせ、見付からないし、今日はフェイトも休み」

 

 

 レクシアはこっちのお金は持っているかとか、確認して私を外に連れ出した。

 でも、いいのかな…収集もしないで、こんな事して。

「効率的じゃないよ。気分転換も大事。そして、フェイトは思い詰め過ぎ」

 レクシアはそう言って、私を連れ出した。

 私達は顔や髪型を少し魔法で変える。

 この辺にあの子達が住んでいるらしいから、必要だよね。

 手を引かれて、街に出掛ける。

 収集以外で、街に出た事なんてなかったから、新鮮に感じる。

 

 そう言えば、母さんとこんな風に出掛けた事があったっけ。

 まだ、母さんが研究所で働いていた頃だ。

 沢山の服やおもちゃを買って貰ったっけ。

 あの頃の母さんは、優しい笑顔を浮かべる人だった。

 ジュエルシードが集まれば、きっとあの頃の母さんに戻ってくれる。

 

「顔上げて歩かないと、危ないよ?」

 レクシアの声で我に返る。

 いつの間にか、下を向いていたみたいだ。

『〇〇〇〇、チャンと歩かないと危ないわよ?』

 母さんにも、そう注意されたっけ。

 気を付けないと。

 次の瞬間、言いようもない違和感を感じた。

 

 なんで、名前が聞こえなかったんだろう?いつもはハッキリと思い出せるのに…。

 

 額に手が当てられる。

 気が付くと、レクシアの手が額に触れていた。

「今、考え事もお休み。もっと考える余裕がないほど、振り回そうか?」

 揶揄うみたいに、レクシアはニヤリと笑った。

 心が少しだけ軽くなった。

 

 デパートで服を見る事になった。

 いろんな服が沢山ある。子供服の専門売り場。

「フェイトなら、何着ても似合うだろうけど、まずはサイズだね」

 そう言うと、私の手を引いて店員さんのところへ向かった。

 店員さんにサイズを測って貰い、私に合うサイズの服を教えて貰う。

 あれでもない、これでもないと次々と試着した。

 といっても、身体に服をあてるだけだけど。

 結構時間を使って、フロアを一周してしまった。

「うん、それだね」

 選んだのは、フリルと花の刺繍があるワンピース。

 可愛いけど、動き易いし、丈夫そう。

 フリルも花の刺繍も派手じゃないけど、キチンと服を引き立てていた。

 意外な事に、服はレクシアが買ってくれた。

 私は必死に断ったけど、レクシアは譲らなかった。

 それで、今度は私が選んで、レクシアの服を1着買うと約束した。

 なんでも、レクシアはお金をあまり使わないらしい。

「こういう時こそ、使い時でしょ?」

 そう言っていた。

 

 帰りにカフェに寄って、ケーキとお茶を注文したんだけど、レクシアに視線が集中していた。

 理由は、レクシアは紅茶を頼んでたんだけど、所作が洗練されていて、気品があったからだ。

 それに比べて、レクシアの服はあまりにも適当で、途轍もない落差を周りは感じたんだと思う。

 それは、私も感じた。場所にもだけど。

 やっぱり次は私が彼女の服を選ぼう。

 

 辺りがすっかり暗くなって、マンションに戻ったらリニスが仁王立ちしていた。

 帰宅が何の連絡もなく、遅れた事を怒っているらしかった。

「主。説明はご自分でなさって下さいね」

 リニス…なんか怖い。

「了解」

 レクシアも神妙に頷いた。

 

 そして、その日はリニスに引き摺られレクシアは帰って行った。

 そう言えば、私、聞かれた割にお金使わなかった…。

 

 

              :美海

 

 そして、時間は無情にも流れ、次の日。

 私は待ち合わせの場所に突っ立っていた。

 

 フェイトには、今日の事で何故か拗ねられた。

 いくら休んでいいと言ったとはいえ、遊び呆けていると思われたようだ。

 月村邸に行く事が決まったその日は、収集を休ませ、街に一緒に買い物に出掛けた。

 気分転換を存分にして貰い、機嫌を直して貰い、ようやく今日の日を迎えた。

 別に行きたかった訳じゃないけどさ。

 これじゃ、まるで拗ねる彼女を宥める男の図だよね?なんか間違ってない?

 そして、更に謎だったのは、リニスも拗ねていた。

 

 待ち合わせ場所は、バス停である。

 どのバスに乗るかは、携帯で連絡があった。

 携帯番号まで、渡してしまった…。

 考えると深みに嵌りそうなので、思考を切り替える。

 

 目的のバスが到着したので、乗り込むとなのはちゃんと彼女のお兄さんが一緒に乗っていた。

 2人共窓際って。

 海沿いだから、景色がいいのは確かだけど、お兄さん、なんでアンタも窓際なんだ。

「あ、綾森さん!」

 なのはちゃんは元気一杯に手を振った。

 いや、見えてるから。

「バスの中は、静かに」

 私は流石に挨拶を返した後、一言注意した。

 これは、聖祥の送迎バスではない。

「にゃ!?ごめんなさい!」

 分かってます?言ってる事…。

 呆れていると、お兄さんが苦笑いしつつ、私に謝る仕草をした。

 ああ、そういう子なんですね。

 私は、なのはちゃんの1個前の席に座り、同じく到着まで景色を眺めた。

 

 バスを降りて、歩く事数分、月村邸に到着した。

 誘拐騒ぎの時に、家は確認してたけど、改めて見ると大きい家だね。

 ベルカ時代に城に住んでた私が、言う事じゃないけど。

 

 チャイムを鳴らすと、メイドが姿を現した。

 随分と懐かしい存在だ。

「いらっしゃいませ。恭也様、なのはお嬢様」

 メイドが完璧な礼で迎える。

「綾森様でいらっしゃいますか?初めまして。メイド長のノエルと申します」

「綾森 美海といいます。本日はお招き頂きありがとうございます」

 私も礼をして、挨拶した。

 別にノエルさんに呼ばれた訳じゃないけど。

 挨拶も終わり、中に案内される。

 

 向こうから、何やら見覚えのある人が近付いてくる。

 金髪の態度の大きいメイドだった。

「おお、恭也になのはか。またお嬢に呼ばれたのか?ご苦労なこったな」

 態度の大きいメイドの視線が、私に向く前にノエルさんが動いた。

 流れるような動きで、金髪メイドの体勢を崩すと、抵抗しようとした力を利用し、投げ飛ばす。

 金髪メイドは、大きな弧を描いて飛んで行った。

 端の壁に激突し、沈黙する。

 やるね。

「見苦しいところをお見せしました。申し訳ありません」

 今の風景がなかったかの如く、ノエルさんの態度は変わらない。

 高町家は苦笑いしている。いつもの事のようだ。

 

 負傷者を出しながらも、私達は応接室に辿り着いた。

「恭也!それになのはちゃん、いらっしゃい!…綾森さんだったわよね?私は、月村 忍です。

すずかの姉ですよろしくね」

 私は無難に挨拶した。

 

 忍さんはなのはちゃんのお兄さん・恭也さんを連れて、別室に行くようだ。

 まあ、これ以上の詮索は野暮だろう。

 あと、すずかちゃんの後にいる人はファリンさんというらしい。ノエルさんの妹らしい。

 人外多いな、ここ。

「なのはちゃん、いらっしゃい!綾森さんも、来てくれてありがとう!」

 すずかちゃんが嬉しそうに言ってくれるが、取り敢えず言いたい。

 なんだ、この猫の数は。

 

 

              :飛鷹

 

 俺とユーノはすずかの家に到着した。

 

 お茶会とは、優雅な催しだ。

 俺には、大凡似合わない。

 ユーノとはいえ男が一緒であるから、少し気が楽だ。

 ユーノよ。お互いこの難局を乗り切ろうじゃないか。

 

 毎度お馴染みのジュエルシード発動日だが、日付は今のところ同じだが、ジュエルシードの

発動の仕方が違う。第3勢力?が絡んでいる所為か。

 あれから、研鑽をなのはと共に積み上げ続けている。

 が、アイツが傷を負うような相手だ。どうなるかは分からない。

 そうなったら、ベストを尽くすだけだが。

 

 ノエルさんの案内で、応接室に向かう途中、ヤンキーメイドにガン飛ばされたり、ヤンキーが

飛んだりしたが、概ね平和に目的地に辿り着いた。

『飛鷹。ここでもサーチしてるの?』

 ユーノが念話で訊いてくる。

『友達の家だからな。念の為さ』

 俺達はすずか・アリサの歓迎を受けて席に着く。

 傍にいたファリンさんも、最早顔見知りだから軽く挨拶する。

 

 ユーノが大モテだった。猫に。人間形態なのに。

 猫はユーノに群がっている。

 あるものはひたすら猫パンチ。あるものはよじ登り、噛みついている。

 あるものは跳び掛かっている。

 大人気である。

「ちょっ!?飛鷹!助けてよ!」

「ここは飼い主に、助けを求めるべきじゃねぇか?」

 俺は正論を言ってやった。

 すずかは慌てて止めに入っているが、追い付かない。

 やっぱり、動物は本能で分かるのかもしれない。

 ユーノがフェレットだと。

「いや!違うから!僕は人間だから!!」

 ユーノが恐るべき読心術を見せた事に、恐怖すら感じる。

 迂闊な事は考えられん。

 

 そのカオスの最中。本日の主賓が到着したようだ。

 

 

              :なのは

 

 応接間に到着して、私と綾森さんは用意してあった椅子に座る。

 私の席は猫に占拠されてたけど、ちょっと退いて貰う。

 それと、なんかユーノ君が大変な事になっている。

 綾森さんは、横で猫に襲われているユーノ君に無反応。

 大変なユーノ君に普通に自己紹介して終わり。

 

 なんかまだ、心を開いて貰えてない感じ。

「なのはお嬢様、綾森様、お茶はどうなさいますか?」

 ノエルさんが訊いてくる。

「お任せします!」

 ノエルさんにお任せした方が美味しいからだ。

「紅茶なら、何でも。お任せします」

 綾森さんって紅茶党なのかな?

「かしこまりました。ファリン、手伝って」

 すずかちゃんの傍にいたファリンさんが敬礼する。

「了解です!お姉さま!」

 

 場所を中庭に移して、お茶会を再開した。

 ファリンさんが猫にじゃれつかれて、お茶の乗ったトレイをひっくり返しそうになったり

しながらも、無事にお茶を飲む事が出来た。

 猫も一緒に付いてくる。ユーノ君に。

 でも、家の中みたいに襲い掛かったりしなかった。

 理由は不思議なんだけど、綾森さんだった。

 

 ユーノ君が、付いてくる猫に引き攣った顔をしていた時に、綾森さんが口笛を鳴らすと

猫達が一斉に綾森さんを見たんだよ!なんか凄い。

「折角、天気がいいんだから、みんなで遊んだら?」

 穏やかな表情で綾森さんが言った。

 ああいう顔も出来るんだって、みんな驚いたと思う。でもそれ以上に、驚く事があった。

 猫達がユーノ君に何もしなくなったの!すずかちゃんでもダメだったのに!

「え!?何それ!?魔法か、何か?」

 アリサちゃんが驚きの声を上げる。

「違う」

 綾森さんが若干呆れたような顔をしてた。

「じゃあ、何よ!」

 アリサちゃんが恥ずかしかったのと、呆れられたのに怒り気味だ。

「動物に聞き取りやすい音で、注意を引いただけ。あとは月村さんの躾じゃない?」

 綾森さんは、そう言って紅茶を一口。

 全員が驚いた。だって、一連の動作が物凄く優雅だったから。気品?っていうのかな?

 私服の残念感も、物凄く目立つけど。

「あ、あの!私にも今の出来る?」

 すずかちゃんが、一番早く立ち直って話し掛ける。

「出来るよ」

 短い返事の後、すずかちゃんはやり方を熱心に聞いていた。

 

 そこから、綾森さん私服の話題へ移っていった。

「アンタもっと服装に気を使いなさいよ!」

 アリサちゃんが一番熱心に言い続けてるけど、綾森さんは関心がないみたい。

「別にいいよ、これで」

 と繰り返している。

 綾森さんの格好って、一番手に取りやすい場所にあったのを着たって感じだから。

 色合いとか、一切考えてないみたい…。

 アリサちゃんを援護すべく、私とすずかちゃんも説得に参加していた時だった。

 

 魔力の波動が漣のように広がった。

「「「!!」」」

 ジュエルシード!?こんなに近くに!?すずかちゃんの家の中なのに!

 

 

              :美海

 

 魔力の波動には気付いていたが、私は無反応を貫いた。

 当然だけどね。

 3人は思いっきり反応してた。一応、私は一般人扱いですよ。変な人に見えますよ。

 少し考えようよ。

 

 飛鷹君が、発動と同時にその地点を結界で封鎖。

 結構器用な事出来るんだね。

 

『レクシア!ジュエルシードが発動したよ!』

 フェイトから念話が入る。

『うん、分かってるけど。残念だけど間に合わない』

 精霊の眼(エレメンタルサイト)で観る限り、なのはちゃん達なら余裕で封印可能なヤツだもん。

『私も今は動けないし、後で貰えばいいし今は譲っていいよ』

 フェイトは、飛鷹君には勝てない。その事は本人に言って聞かせているし。

 フェイトの出動を止めたと同時に、3人が席を慌ただしく立つ。

 

「ごめん、ちょっと」

 なのはちゃんが席を立つ。

「ああ、俺達は庭でも見物してくるかな」

 飛鷹君がなのはちゃんをフォローする。

「そ、そうだね」

 ユーノ君は慌ててそれに乗っかる。

 すずかちゃん・アリサちゃんは事情が分かっているみたいで、頷いた。

「うん、分かったよ。大きい石とかもあるし、気を付けてね」

「なのはは、ちょっと抜けてるとこあるしね」

 2人の方が演技派ですな。

 3人は庭を見に行った筈なのに、走って行った。建前どこいったの?なんだかね…。

 

 それにしても、アレはやり方を変えてきたか。

 発動し易くしたジュエルシードで目晦ましして、時間を稼ぐ気か。

 ま、いいでしょ。手持ちをバラ撒いたなら、遠慮なくそれを拾えばいい。

 行きつく先は想定内。その時に始末しよう。

 

 

              :飛鷹

 

 ジュエルシード発動と同時に、俺が発生地点に遠隔で結界を構築。

 俺達はジュエルシードのところへ急ぐ。

 綾森は不審そうな様子だったが、何も言わなかった。

 ツッコミ入れるほど親しくないしな。

 

 到着した先に見たのは、俺にとって既知の光景だった。

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 なのはとユーノは呆然としてる。

「え~と、これは…」

 ギャグにしか見えんわな。今までがシリアスだったし。

「子猫の大きくなりたいっていう願望が、正しい形で叶えられた結果じゃないかな?」

「ええっと…。と、取り敢えず元に戻さなないと!」

 なのはが気を取り直して、セットアップする。

 俺もユーノもバリアジャケットを構築する。

 

「よし!俺とユーノで動きを止めるぞ!」

「うん!任せて!」

 ユーノが頷く。

「なのはは封印を頼む!横槍が入る前に肩を付けるぞ!」

「うん!…そうだね」

 なのはは、フェイトの事情を訊きたかったんだろう。

 でも、ユーノの事情もあって歯切れが悪くなったってとこだろう。

 

 ユーノが先制でバインドを発動しようとした時だった。

 猫がユーノを捉えた。

 ユーノは、巨大子猫に少し怯んでしまった。

 ユーノも見た目、凶悪な思念体なら容赦なくいけたろうけど、外見はまんま子猫だしな。

「にゃ~」

 大音響の鳴き声と共に、凶悪な猫パンチが炸裂する。

「うわ~!!」

 ユーノに直撃した。

「ユゥゥゥノォォォォー!!」

「ユーノ君!?」

 ユーノはヤンキーメイドの比ではない距離を飛ばされて行った。

 

 あれから、俺が猫の注意を引き、なのはが直接バインドで拘束し、そのまま穏便に封印処理

を行った。子猫は元気一杯、すずか達の方へ駆けて行った。

 

 これ以上の戦闘描写?ないよ。

 不運だったな、ユーノ。

 ユーノを助けに向かった俺達だが、ユーノは酷く落ち込んでいた。

 まあ、元気出せ、ジュエルシードが今回は手に入ったんだからな。

「ごめん。あれぐらいで、躊躇するなんて油断したよ」

 いや、アレは俺でも怯むと思う。大きいけど可愛かったし。

 お前は悪くないさ。きっと。

 

 なのはの慰めで、どうにかユーノは立ち直ったとさ。

 

 

              :フェイト

 

 彼女達がジュエルシードを封印した日の夜。

 レクシアは私達のマンションに来ていた。

「決闘?」

「その通り」

 レクシアが彼女達のジュエルシードを奪う算段を話してくれた。

 アルフが今日の事で疑念を持ったからだ。

 実は白い魔導士達と通じているんじゃないかって。

 プランは、単純だった。

 それで、乗ってきてくれるかな?

「乗ってくるから安心して。向こうは貴女の事情を知りたいんだから。それにこっちも手持ちの

ジュエルシードを賭ければいい」

 私の疑問を感じ取ってくれたみたい。

「決闘は、最後だよ。向こうとこちらしか、ジュエルシードを持っていない状態の時にやる。

それで総取り出来る」

 こちらは労力も減らせる。うん、なるほど。

 アルフも渋々ながら納得してくれた。

「フェイトが負けなければ、これでコンプリート」

 私はムッとした。

「負けないよ。あの子、まだ魔法を使うようになって日が浅いもの」

 私だって、毎日収集だけやってる訳じゃない。

 向こうが訓練するように、私も努力を怠っていない。差なんかそうそう埋まらない。

「まあ、なんにしても、それまでに貴女の考えた答えを聞かせて?」

「私の結論は何も変わらないよ」

 そう、変わる訳がない。

 私の名前を呼ぶ母さんの声が、思い出せなくても。

「そう…」

 レクシアはそう言うと、私から背を向けて夜空を窓から見上げた。

「それでも、考えるのは止めないで。貴方の為に」

 

 レクシアの背が、なんだか寂しそうで、私は不安を感じた。

 

 

 

 




 子猫回潰そうかと考えましたが、折角二次小説に手を出したんだから
 書こうと決めました。
 必然的に、実力が上がったなのはと飛鷹君がやるんだから、子猫じゃ
 アッサリ終わるのは仕方ないかと…。
 だから、フェイトを出しませんでした。
 流石に飛鷹君の相手はさせられません。

 あと、美海が猫に言う事をきかせていましたが、あれにも一応理由が
 あります。それが明かされるのは、後になります。

 次回は、温泉です。サービスカットは…出来るのか?

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