魔法少女リリカルなのは 二人の黒騎士(凍結中) 作:孤独ボッチ
焦り過ぎに、反省しております。
これからは、これ以上に投稿の間隔が伸びるかもしれません。
:ユーノ
河川敷で二人と別れ、僕は一人でジュエルシードを探す。
協力者は見付けたいが、全体に向けてメッセージを送るのは、まだ早いと思う。
彼女たちの目的の人物が、聞いてしまう恐れもあるし。
幸いというか、彼女のお陰で魔力も回復しているし、傷も治りよく寝たので、頭もスッキリしている。
僕は返してもらったレイジングハートを使い、広域サーチを行う。
フェレットではなく、人の姿で歩きながらジュエルシードを探す。
服はバリアジャケットを、この世界で違和感がないものに変える。
しかし、おかしな事に一つも見付からない。
幾らなんでもおかしくないかな。
未発動のジュエルシードなら、遠い距離なら感知出来ない可能性があるけど。
でも、僕は街中を歩き回っている。こんなにも見付からないものなんだろうか?
それとも、彼女達の目的の人物か彼女達自身が、既に集めた後なのかな?
日が大分傾いてきた。
薄暗い中、歩いていた時だった。
『注意して下さい!!』
僕も気付いた。
何かが接近してくる。
『思念体です!!』
向こうから近付いてきた!?
僕は、周囲に被害が飛び火しないように、すぐに結界を張った。
:飛鷹
夕暮れ時になり、かなり日も傾いてきた。
そろそろ、制服姿での捜索は、補導対象になりそうだ。
リスティ刑事に話は通してあるけど、流石にね。
ユーノの捜索が暗礁に乗り上げた為、ジュエルシード捜索を試みるも、失敗。
なのはに広域サーチをやって貰う案もあったけど、意外にもスフォルテンドに反対にあった。
『仮免許を取ったばかりの人間に、F1のレーシングカーを与えて、都内を走り回ってこいって言ってるも同じ』
とか言ってた。ミシェル・ヴァ〇ヨンじゃあるまいし、無理だろと納得。
ん?なんか違わないか?
俺も把握してなかったけど、スフォルテンドは俺用にチューンアップされていて、他人には使い辛いらしい。 こんなところで、俺ってば転生者なんだと実感するよ。
という訳で、俺がサーチしたんだが、それがコテンコテン(ダメだった)。
素直にジュエルシード発動を、感じ取った方が建設的かもな。
そんなこんなで、もう遅い為なのはを家に送っていく事になった。
「やっぱり、難しいね」
なのはは落胆しているようだ。ほぼ、無駄足に近いからな。
「ま、地道にやっていくしかねぇだろ」
俺は敢えて気軽にそう言った。
それでも、成果がなかった訳じゃない。なのはが自分の魔力を薄く延ばして、サーチの真似事をやれるようになったのだ。まだ、サーチャーの形は取れないが、デバイスなしで自前の魔力操作だけで、やったにしては初心者として上出来だろう。
そんな事を話しながら歩いていると、街灯が明かりを灯し出した。
やべぇ。あの二人に殺されるかもしれん。誰かは語るまでもないだろう…。
遅くまでデート、なんて取られかねないからな。小学生だぞ?ないだろ、普通。
俺の冷や汗に、なのはは気付いていない。
気を抜いていた罰か。
突然、結界が張られたのだ。
「「!!」」
二人同時に反応。流石にこれは、俺でも分かるからな。
「飛鷹君!」
「ああ!」
一緒に走り出そうとするなのはを、俺は止めた。
なのはは一瞬、キョトンとした顔して止まる。
「なのはは、このまま帰れ。送ってやれなくて悪いけど」
「え!?どうして!?」
なのはは怒り気味だ。
「俺はロボット騒ぎの時に、ミスをした。お前を巻き込んじまった。…高町 なのはが普通の女の子でもよかったんだよな…。だけど、俺は安易に魔法をやっちまった」
恥ずかしいから、あまり大きな声ではなかったが、ハッキリ伝えた。
全くもって、黒歴史化してるよ。
あの時、感触として、実は俺一人でも勝てたかもって思ってた。
でも心のどこかで、どうせもうすぐ魔導士になるんだし、いいかって思ったんだ。
「飛鷹君…」
訓練に付き合い、友達になって思う。
俺はなのはを、キャラクターとしてしか、見れてないんじゃないのか。
踏み台を、まだ脱してないんじゃないのかって。
だから、今度は間違えないように、自分自身で出来る事をやると決めたんだ。
態々原作通りに初心者を、巻き込む必要はないだろう。
なのはは一人の人間なんだから。
俺のミスに対する後悔を、なのはは分かってくれたのか黙っている。
「だからさ、頼む。俺一人でやらせてくれ」
立ち尽くすなのはに背を向け、俺は走り出した。
バリアジャケットを展開する。
ここからが、俺のホントの戦いって事だ。
結界は閉じ込める目的のもので、入り込むのは難しくなかった。
そこで見付けた。
ユーノ・スクライアを。ジュエルシード思念体を。
ユーノはピンピンしていた。なのはの話じゃ原作以上の大怪我だったみたいだが。
ユーノはバリアジャケット姿で、レイジングハートを構え、思念体と対峙している。
思念体は原作通り、黒い塊に顔が付いてる奴だ。
「
俺はすぐさまユーノを飛び越えて、思念体を斬り付けた。
「グオォ!?」
纏う魔力ごと斬られた事に驚いたみたいだな。
だが、みるみる斬られた部分が、復元していく。そして、体が一瞬膨らんだかと思ったら、黒い砲弾を大量に放出する。
回避すると、ユーノが避けきれねぇ
「ディフレイド!!」
俺は左手を前に突き出し、魔法のシールドを展開する。
これは、物理的な攻撃を防ぐだけでなく、炎の熱や冷気なども遮断する優れモノだ。
凄い音を立てて、砲弾が盾にブチ当たる。
『油断するな!!』
スフォルテンドが、いつになく真面目な声で注意を促した。
盾に弾かれた砲弾、障害物にめり込んだ砲弾が、意思を持つように、俺とユーノを襲う。
『ホーミングだ!!』
「見れば、分かるって!!」
盾で防げるものもあるが、幾つか盾を迂回し、俺とユーノに砲弾が迫る。
「なろ!!」
俺はユーノを引き倒し、地面に伏せさせると、盾でユーノを護りつつ、剣で砲弾を斬り落とす。
「海波斬・漣!!」
これは、アバン流刀殺法・海の技。スピードを重視した斬撃を放ち、炎などの普通は斬れないものを斬る事が出来る技で、俺はこれが連撃出来るようした。それが、漣である。これは原作にないものだ。ただの連撃だけどな。
衝撃波の剣閃が縦横無尽に走り抜ける。
「グルル!!」
自分の身体を縮めたり、へこませたりしながら、思念体も攻撃を幾らか躱したが、無傷とはいかない。
体が幾つか黒い靄になって切り裂かれていく。
「グオォォ!!」
思念体が、まだ無事な砲弾を操りながら、今度は触手を伸ばし鞭のように振るう。
俺は、シールドバッシュの要領で、触手を跳ね飛ばす。
「マナバレット・バラージ!!」
これは純正ミッド式魔法で、なのはのアクセルシューターみたいなもんだ。
残った砲弾を魔力弾で打ち抜き、思念体を包み込むように打ち込む。
直撃寸前、
細かく分かれたおかげで、思念体は三つとも全弾直撃を避けている。
「しつこい!!」
いっその事、ヴォルテックスで片を付けるか?
「ああ!逃げます!!」
ここまで、目まぐるしい戦闘で、口を挿めなかったユーノが初めて喋る。
思念体はいっそ清々しいほど、逃げに入った。
三方向に別れ、逃げ出す。
劇場版の方の流れじゃねぇか、これ!!って事はアイツ、三つくらいジュエルシード取り込んでるのか!?
その時、逃げ道を塞ぐようにピンク色の光が思念体三体を打ち落とす。
「な!?」
思念体の前に立ちはだかったのは、なのはだった。
「どうして、来た!!」
俺はなのはに厳しく問い質す。
「違うよ!!飛鷹君!!」
なのはは決然と魔法を得た時のように、迷いがない目をしていた。
「これは、私自身が望んだ事…。飛鷹君、あの時に言ったよね?そう在りたかったからだって!!」
それは、すずかの屋敷で盟友になった時、士郎さんに訊かれた事だった。
「君は、どうしてそこまで強くなろうと思ったんだい?」
士郎さんはジッと俺も見詰めてそう言った。
「ほらっ、俺、男じゃないですか。憧れみたいなもんで、大した理由じゃないですよ」
俺はそう答えたが、士郎さんは納得しなかった。
「君には、なのはの魔法の訓練をして貰うんだ。君の強さは、生半な憧れで手に入るものじゃないだろう。誤魔化さないでほしい」
厳しいね。
その時に答えたのが。
「ホントに大した理由じゃないんですけどね。…そう在りたかったからですよ」
だった。
俺はヒーローに憧れた。漫画やアニメの世界にしかいなかったけど。
絶対的強者が存在する二次小説にハマった。
そして、アニメでは高町 なのははヒーロー、いや、ヒロインだった。まさに、絵に描いたような存在だ。
どんな大敗を喫しようと、立ち上がり勝利を掴む。護るべき人をキッチリ護り抜く。
だから、俺はなのは贔屓だった。
特典さえあれば、俺もヒーローになれると思っていた。二次小説のオリ主みたいに。
でも、そんなの間違いだった。俺にはあの子みたいな輝きはない。
問題は変えられないもの。
心だ。
「私は嬉しかったの!不謹慎だけど、私も誰かを護れる力があったんだって!
もっと小さい頃は、誰かを失う事が怖くて、私は震えるだけだった。
だから、少しでも強くなりたいって思った。
でも、武術をどんなに頑張っても、多分私はお父さんやお兄ちゃん、お姉ちゃんに敵わない。
飛鷹君が私にもあるって言ってくれたの!護る為の力が、理不尽を打ち抜く力が!
だから!私にも護らせて!」
どんなに才能を貰おうが、この子の心には敵わない。
全く、幾つだ俺は。俺の勝手な感傷なんざ、こんなに簡単に打ち抜いてくれる。参ったね。
俺もいい加減学習能力がないらしい。
一人の人間として見ようって決めたのに、今度は勝手にあの子の行く道を、決めようとしてたらしい。
「そうだな。俺の詰まんねぇ意地じゃないよな、大切なのは。
じゃあ、一緒に大切な人達を護れる自分になろうぜ!」
ヒーローになれない俺でも、この子の背中ぐらい、護れる自分でありたいと思う。
「うん!!」
:なのは
「なのはは、このまま帰れ。送ってやれなくて悪いけど」
私達は手掛かりを見付けた。
飛鷹君は、危険が迫っているのに、突然そんな事を言った。
「え!?どうして!?」
何で、そんなこと言うの?
「俺はロボット騒ぎの時に、ミスをした。お前を巻き込んじまった。…高町 なのはが普通の女の子でもよかったんだよな…。だけど、俺は安易に魔法をやっちまった」
あの時の事?でもそれは、私が無理を言ったからで、飛鷹君に悪い事なんてない。
今まで、飛鷹君がそういう事を、気にしていた素振りはなかったけど…。
でも、飛鷹君は後悔していたんだ。
飛鷹君は、普段の態度では分からないけど、自分の心のホントの部分は話さない子だと、友達になって分かった。
「飛鷹君…」
私には、分からない。踏み込めない部分。
「だからさ、頼む。俺一人でやらせてくれ」
そう言って、飛鷹君は物凄いスピードで走り去っていった。
私は立ったまま、動けないでいた。
私はもっと小さい頃、お父さんがお仕事で大怪我をした。
小さかった私は、何も出来なくて、家族はみんな忙しくなった。
私は一人でいる事が多くなった。
家族と一緒でも、みんな疲れていて、私は何も言えなかった。我儘なんて言えない。
みんなお父さんが心配だった。死んじゃうんじゃないかって。
私は怖かった。怖くて、様子を見に来てくれたおばあちゃんに、しがみ付いて震えていた。
結果的に、お父さんは助かったけど。私は大切な人を失う恐怖を、初めて感じた。
それを振り払うように、私は武術を始めた。お兄ちゃん達がやっていたっていうのもあるけど。
誰かを助けられる、護れるようになりたかった。
でも、現実は上手くいかない。武術は護身の域を出なかった。本格的に教わっても、お父さん達のようにはなれないと感じていた。無駄だなんて思わない。思わないけど…行く先が見えなくなっていた。
そんな時だった。
「君には魔法の才能がある」
私にも、誰かを助けてあげられる力がある。嬉しかった。
私自身も救われた気がした。
このまま、帰っていいの?このまま帰ったら、私は飛鷹君の友達じゃなくなるじゃないの?
ただ震えていただけの自分と、何が違うの?
これは、私自身が選んだ事。
目指すべきは、私の身体能力を強化した魔法。魔法の力がある今なら分かる。あの魔法は美しかった。体に負担を掛けないように、気を使った優しい魔法だった。
辿り着くべきは、躊躇なく誰かを助けに行ける実力と心。
「ごめん。飛鷹君。帰れないよ」
私は結界に向かって、全力で走った。
強化魔法は一度目にしてる。それを真似てみる。
似ても似つかない不格好な魔法。でも、普通に走るより遥かに早く駆け抜けていく。
結界の境界が見える。
お願い!通して!
祈るように、目をギュッと閉じて境界を走り抜ける。
違和感があって、目を開けるといつもと同じ風景なのに、どこか違う景色が広がっている。
人がいない。街がまるで水の中に沈んだみたい。
魔法による戦闘は、もう開始していた。
攻守は目まぐるしく変わっている。
下手な手出しは、飛鷹君や茶色い髪の子を危険に晒す。
『なのはは砲撃型だからな。距離を取って、隙を見て砲撃するのが基本だな』
飛鷹君との訓練での会話が頭に浮かぶ。
後ろから、支援砲撃すると、今の私だと誤射するかもしれない。
なるべく、被害が出なさそうな場所…。
私は、飛鷹君を追い越しすようなコースで走った。
側面から砲撃する。
そのつもりで走っていると、黒い塊が飛鷹君の攻撃の直撃を回避し、三つに別れて逃げていこうとする。
逃げちゃう!
瞬間的に閃く。ロケットだ。
私は魔力を練り上げ、一気に自分の斜め下に叩き付ける。
私の身体が一気に吹き飛んでいく。
「ふぇぇぇ~!!」
これは怖いの!!
なんとか空中で体勢を整え、魔力で体を護り、着地する。着地すると言うより、落下したって言った方がいいけど。心臓がバクバク言っている。無茶だったかも…。
でも、価値はあった。
黒い塊三つ。視界に入っている。
『まずはイメージする事かな?』
飛鷹君の声が浮かぶ。
イメージ。あのロボットに撃った光を三つに分ける。
魔力を練る。一点に集中して、三方向に同時に射撃する。
外せない!!当たって!!
「ディバイ~ン、バスター!!」
三つの光が三方向に同時に伸びていく。私は砲撃の反動で、後ろにひっくり返る。
すぐに立ち上がると、見事に黒い塊に三つとも、無事に命中した。
「どうして、来た!!」
飛鷹君の厳しい怒鳴り声が響く。
でも、私も譲れないの!
私は思っている事を、全て飛鷹君に叫んだ。飛鷹君の心に届くように。
飛鷹君は顔を顰めた後、苦笑いで言った。
「じゃあ、一緒に大切な人達を護れる自分になろうぜ!」
伝わった。今、多分私はホントに飛鷹君の友達になったんだ。
「うん!!」
やっぱり、基本は大切だね。
あのロボットの時は、立てなくなったのに、今はまだ余裕がある。
飛鷹君が茶色い髪の子を抱えて、私の隣に立つ。
黒い塊は私の攻撃で、墜ちたけど、同時に姿を隠してしまった。
私が喋ってる間に…。ごめんなさい。
「大丈夫です。今のところ結界に反応がありません。結界内にいますよ」
「そいつは朗報だな」
茶色い髪の子は、何かに気付いたように私に話し掛けてくる。
「あの、貴女はデバイスは持ってないんですか?」
「うん。先生が厳しくて、まだ要らないだろうって」
茶色い髪の子は、考え込むように黙り込む。
決心したように、私に言った。
「よかったら、これを使ってください」
差し出されたのは、赤いビー玉みたいなデバイス。
私は、飛鷹君に尋ねるような視線を送る。
「俺個人は、あまり勧めたくないけどな。なのは自身はどうしたい?」
「私は、今、必要だと思う」
私自身の魔法は、かなり不格好で魔力がまだ少し拡散しているみたい。上手く収束出来ていない。
今は実戦。デバイスの助けが必要だと思う。
飛鷹君は外人の人みたいに、肩を竦めた。
私は茶色い髪の子に向き直って言った。
「借りるね」
でも、茶色い髪の子は真剣な表情で言った。
「いえ、差し上げます」
「「え(は)!?」」
デバイスって、確か物凄く高いって言ってたよね?
飛鷹君は言いたい事が分かったのか、頷いてくれる。
「その代わり、僕に協力して頂けませんか?勿論、危険な事です。断って頂いても構いません。
でも、お願いします!僕に力を貸してください」
茶色い髪の子の表情は必死だった。
「大切な事なんだね?」
私は訊いた。
「はい…」
私は飛鷹君を見ると、諦めたように頷いてくれた。
私が決めた事に付き合ってくれるって事だよね?
「あんな危険な事が、他に起きるって事だよね?」
茶色い髪の子が苦々しく頷く。
なら、今回はこの子が結界を張ってくれたけど、次は間に合わないかもしれない。
でも、人手が増えれば、被害が少なくなるかもしれない。
「分かったよ。後で事情を聞かせて?」
茶色い髪の子が、驚いたように顔を上げる。
「ありがとうございます」
涙交じりに、茶色い髪の子がお礼を言う。
茶色い髪の子が、魔法陣を展開する。
「レイジングハート。新規使用者設定。魔力波長登録。バリアジャケットイメージ形成」
レイジングハートが赤く輝くと、私の身体に光が当てられる。
『登録完了しました。よろしくお願いします、マイマスター』
「あっ、はい!お願いします」
私は思わず頭を下げた。
「なのは。状況が状況だ。セットアップ急いどけ」
飛鷹君の言葉に、私は頷いた。なんだか、ドキドキするな。
私はレイジングハートを翳して叫ぶ。
「レイジングハート!セ~ト・アップ!!」
ピンク色の魔力光が溢れ出す。
バリアジャケットのデザインを考えたけど、いい考えが浮かばなかった。
だから、聖祥の制服を参考にした。
杖も飛鷹君が持っているファンタジー小説の、魔法使いが持っていたものをイメージする。
光が収まり、目を開けると私は白い魔導士になっていた。
「デザイン、それにしたのか」
飛鷹君が、反応の薄い言葉を言う。
聖祥の制服が基本だから、馴染むよ。
「早速だが、あの黒い塊…」
「ジュエルシードの思念体です」
「その思念体を探さないとな」
その言葉に反応するように、結界の一部が衝撃音と共に凄い光を放つ。
「って、探す必要はないみたいだな。結界はどれくらいもつ?」
「三つに別れたままなら、暫くは」
飛鷹君は私達に振り返る。
「それじゃ、役割分担だ。前衛は俺、後衛はなのは、封印も担当してくれ。それで…?」
茶色い髪の子が、自分の名前を言っていない事に気付く。
「僕の事はユーノって呼んでください」
ユーノ君か。なんか女の子みたいで可愛い。
「じゃあ、ユーノは遊撃を頼む」
「遊撃、ですか」
飛鷹君は、ユーノ君が攻撃魔法を使ってほしいと、勘違いしている事に気付き訂正する。
「危ない方を適時支援してくれ」
ユーノ君は、勘違いした事が恥ずかしそうだ。
「はい、分かりました」
まずは、飛鷹君が結界を破ろうとする思念体に、斬り付ける。
「海波斬!」
思念体の身体が半分ほど、切り裂かれる。
「グゥォォォ!!」
身体半分を一気に斬り飛ばされて、思念体は悲鳴のような咆哮を上げる。
思念体は素早く振り返ると、反撃しようとする。
「ストラグルバインド!」
そこにすかさずユーノ君が魔法で拘束する。
「なのは!今だ、封印!」
飛鷹君の合図。
レイジングハートが力を貸してくれる。私にも封印する事が出来る。
「封印するは、忌まわしき器!ジュエルシード、封…」
最後まで言い終える前に、黒い影が二つ私に向かって飛んでくる。
『残りの思念体です』
私は咄嗟に飛び退く。
私がいた場所が、二つの爪痕を残す。
『アクセルフィン』
私の足から、ピンク色の可愛い羽が現れる。
私の身体は風に乗るように、空中に舞い上がり、思念体の追撃を回避する。
うわっ!デバイスって、こんな事までサポートしてくれるんだ。
便利過ぎる!飛鷹君がデバイスが早いって言ってた意味を理解した。
こんな至れり尽くせりじゃ、魔法は上達しないよね。
「ハッ!探す手間を省いてくれて、ありがとよ!」
一体は、まだユーノ君が拘束している。
飛鷹君は残り二体のうち片方に狙い、剣を振るう。
斬るのではなく、剣の腹で叩き付けて、もう一方の移動先を予測し、打ち出す。
見事に命中し、思念体が呻き声を上げる。
「魔力には、こういう使い方もあるんだぜ!」
飛鷹君のシルバーの魔力が、竜巻のように二体を巻き込む。
「ユーノ!そっちも纏めるぞ」
「え!?あっ、はい!」
残り一体も、飛鷹君の魔力の竜巻に飲まれる。
「「「グオォォォォ!!」」」
思念体が脱出しようとしているみたいだが、それを一切許さない。
「なのは!封印!!」
私は頷いて、集中する。
「レイジングハート!」
『準備完了しています!カノンモード』
杖の形状が変わる。まるで、大砲の砲口みたい。
練り上げられた魔力が、術式により収束していく。
「ジュエルシード、封印!!」
杖から凶暴なまでの魔力の奔流が、思念体に殺到する。
撃った瞬間に、やはり砲撃の反動で後ろにひっくり返ってしまう。
三体に直撃し、光が三つ纏めて一つに圧縮されるように、黒い塊が消えていく。
「「「グァァァ!!」」」
断末魔の悲鳴のように、辺りに思念体の咆哮が響いた。
バッシュ!という音を立てて、黒い塊は消失した。
代わりに、その空間には青い菱形の宝石が浮かんでいた。
「やったな、なのは」
飛鷹君が私の手を取って、立たせてくれる。
「うん!!」
私達は二人で、予め決めてあったみたいにハイタッチした。
戦いが終わり、ジュエルシードを回収しようと、ジュエルシードに目を向けた時だった。
『御命…し……』
宝石から何か、黒いものが滲んで消えた。
ゾッとするような声だった。何を言ってたの?
いつの間にか、達成感なんて吹き飛んでいた。
何か得体のしれない悪寒が、少しの間止まらなかった。
こうして、私達はジュエルシードを、レイジングハートに回収した。
:飛鷹
回収したジュエルシードは、たったの一つだった。
どういう事だ?三つ取り込んだから、三つに別れたんじゃないのか?
それに、なのはの聞いたっていう声。
ここでも、嫌な感じだぜ。
俺達は、近所の公園に場所を移している。
そして、ユーノから事情を聞いた。
ほぼほぼ原作通りといった感じだな。
ただ一点、違う点があった。
原作では輸送中の事故って言ってたが、ユーノはハッキリと襲撃に遭ったと言っていた。
それと、ユーノは転生者と思しき人物に、助けられていたらしい。
黒いバリアジャケットを纏った人物で、顔は隠していたらしい。それと使い魔を一人。
どうも、特徴を聞くとリニスっぽい。どういう経緯で、そうなったんだ?
おまけに、敵対するかも発言をしていたらしい。全く、何考えてるんだ。
あと、なのはは凄い食いつきだったが、敵対するかもの下りで萎れていた。
因みに、リスティ刑事には親父経由で報告済みだ。
「危険な事は、十分承知の上で、改めて協力してくれませんか」
必死に頭を下げて、頼み込まれて俺もユーノに協力する事にした。
それにしても、俺を追ってくる時の話を聞いたけど、なのはの無謀な行動には肝が冷えるわ!
何やってんの!?死ぬの!?
勿論、厳重に注意したけどな。
なのはは萎れてたけど、猛省して貰わないと困る。
あのスフォルテンドすら、呆れて何も言えなかったくらいだ。
いつもは皮肉くらい言うんだけどな。
ユーノは俺の家で預かる事になった。
何故かって?俺はユーノが処刑されるところなんて、見たくないからだよ。
なのはは、うちで預かってもいいなんて言ってたけどな!
「ユーノは仮にも男だぞ。なのはの家は不味いだろ」
そう言って納得して貰った。
ユーノは、仮にもってなんだって怒ってたけどな。
親父に許可を求めたら、OKしてくれた。
こうして、俺はジュエルシード回収に、P・T事件に脚を突っ込む事になった。
:???
彼の目覚めはよろしくなかったらしいね。
随分、アッサリと撤退してしまった。
「お知り合いは、どうでした?」
「寝惚けているようだったよ。まあ、彼も流石に目が覚めたと思うけどね」
まあ、何百年も
本番はここからだ。
じっくり観察させてもらうよ。
飛鷹の疾と海波斬の違いは、疾は魔力のシールドも切り裂く事が出来るが
海波斬は無理という違いがあります。
さて、第一話終了…ではありません。
賢明な皆さんなら、疑問を感じたのではないかと思います。
美海やフェイトは何やってたの?と。
次回はこの回の裏サイド的な話になります。