魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

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 美海の話となります。
 彼女の活躍のさせ方、難しいんですよね。
 動かしやすくはあるんですけど。

 原作、一話序盤の話です(おぉい!)


第10話 落下する光、集まる者達

              :夢

 

 ベルカ時代のいけ好かない方の母上が、私の前に座っている。

 断っておくが、好感の持てる母上は今生の母上を指す。私に母が複数いた訳ではない。

 兄妹みんな、母親が違っていたから、いたと言えば間違いではないのだろう。

 だが、赤の他人だ。

 

「よいですか、アレクシア。女は殿方に見初められてこそ、価値があるのです。まして、貴女は王家の女。そのうち、どこかの騎士爵の元に嫁ぐでしょう。

 貴女は残念ながら絶世の美女になる事はないでしょうが、可愛らしい容姿はしています。貴女のような女が好みだ、という殿方もいらっしゃいます。その中から力のある殿方を選ぶのですよ」

 あまり話した事もない母上が、大真面目で小児に言ったセリフである。現代日本だったなら、物議を醸すだろう。つまり、ロリスキーな変態探せって事かい。死んでよし。

 

 ベルカでは、強力な魔導騎士には爵位を送る風習があった。それが騎士爵である。完全な名誉のみで一代だけの領地しか付かないが。

 婚姻によって、強い男の血を取り入れて金もウハウハという狙いである。

 強力な騎士の忠誠を保つ為、各国は金を惜しまないのである。騎士爵の方はそのまま重鎮となる目もある。

 私の場合、小国の第五王女。どこぞの王族や貴族に嫁ぐなど、有り得ないレベルである。

 

 私の容姿は、PARA-SOLの谷田部 美海とこの時から同じだった為、正直将来はスリムな体型になると思っていた。まあ、実際は小柄は同じでも、結構身長にしてはプロポーションはよかったけど。チャラ男の趣味か?私も、前世では美海はマイエンジェルだったクチだが。

 TSして意識は女になったが、男としての記憶がある為、ウホッいい男とはならないし、逆にタイが曲がっていてよ…の百合にも興味が出なかった(アレは違ったか)。

 生涯を通して性欲が希薄だった。

 故に、こういう話は精神的にキツイものがある。

 私だけしか王族がいない訳じゃないから、いいやと無視したが。

 

「貴女は、どうやらあの愚か者の血を濃く継いでいるようね。失望しました。もう顔を出す必要はないわ」

 無視して戦闘訓練三昧になった私に、母上が言った言葉である。

 私も母上との会話は、精神的に辛かったので助かった。

 

 因みにあの愚か者とは、父上・アーヴェント王の事である。

 うちの国は聖王連合の選定王家の一つだが、聖王を輩出した事はうん百年くらい遡らないといけない。

 つまり、ここのところ聖王がうちの王家から出ていない。

 理由は単純。聖王の条件が、()()()()()()()()()事だからだ。

 当然、私は持っていない。兄妹の誰ももっていない。

 

「アーヴェント?ああ、あのうらぶれた小国の事か」

「貴殿の国土には、何人の騎士爵がおりましたかな?」

「おいおい、騎士爵に領地などやったら、自分達が住む場所を騎士爵から借りる事になるではないか」

 ゲラゲラゲラ(爆笑)。

 これが、うちの国の他国評である。

 だからかな、父上は矢鱈と虹彩異色に拘った。子供が生まれる度に、期待して裏切られた。子供に愛情など湧く筈もない。

 

 あれ以来、母上とは生涯話す事なく私は死んだ。当然、父上とも疎遠のまま、葬儀にも出席していない。

 

 私は転生者で、あの段階で歳は食っていたから、大丈夫だった。

 

 でも、フェイトちゃんは辛いだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

              :美海

 

 深夜にも関わらず、私は飛び起きた。

『どうしたんです?美海』

 リニスが念話で声を掛けてくる。貴女ちゃんと寝てる?

 私は素早く窓を開く。

 上空から、二十一個の煌めきが海鳴りの街に降り注いだのが、見て取れた。つくづく第六感を鍛えておく事の重要性を、再確認させられる。精霊の眼(エレメンタルサイト)で確認出来た事は大きい。

 

「妙なものが空から降ってきたね」

 正体モロに知っているけどね。流石にうろ覚えでも、それくらいはね。

「妙なもの?」

 念話で会話する必要がない為、小声で話すとリニスも合わせる。

「多分、魔力エネルギー結晶」

「!?それって、ロストロギアじゃないですか!」

 小声で叫ぶという芸当を披露するリニス。

 流石に、この不思議の街・海鳴でも魔力エネルギー結晶が、空から降ってくる事はないわ。

「さて、放っておくのは、流石に不味いからね。すぐ出るよ」

『久しぶりに、我の出番もあるかしれませんな』

「ない事を祈るよ」

 リニスは既に人型になっている。

「では、参りましょう。美海」

 私は無言で頷くと、自分そっくりの化成体を作成する。

 本当は使い魔を造る技術で、動物に機械を埋め込み、古式魔法を掛けるのが化成体である。しかし、私はこの世界のいい意味で自由度が高い事を利用して、自在に土を使って形を造り、術式を小型の機械の代わりにしたのだ。そこには、体を動かす術式も組み込んでいる。司波 達也の技術とこの世界にサンキュー。当然、鍛錬した成果でもある。

 

 私は騎士甲冑を纏い、窓から飛び出す。リニスも私に続き、外から窓の鍵を閉める。

 滅茶苦茶遠いところから、時の庭園探すより楽だよ。

 私は早くも一つ発見する。

 場所は、因縁かリニスを助けた公園だった。

 

 公園に降り立つ。

「リニス。結界構築、人除けで」

「分かりました」

 リニスが結界を張る。

『ふむ、まあよかろう』

 バルムンクが結界を見たのか、鷹揚に頷く。

 リニスはムッとしたようだが、シリアスな場面である事を考慮して口喧嘩はしなかった。

 人除けの結界で十分だ。

 被害なんて出す前に片付けるからね。どっちにしろ。

 

 ジュエルシードが落ちていたのは、よりにもよって砂場だった。

 子供が遊ぶ場所のど真ん中に落ちるとか、アンタ狙ってるの?

 砂場に近付くと、まさに狙ったようにジュエルシードが輝き出す。

 まるで封印などさせない、とばかりに砂を吸収し、サンドゴーレムのような姿をとる。

「オオオオオォー」

 生まれたてでご苦労さん。

「四の剣、風花乱舞」

 私が名付けたオリジナル技って訳じゃないからね。ベルカに()()()ってところがあるんだよ。そこの技だよ。この技の習得は、正真正銘私の努力です。特典じゃありませんよ。

 剣聖操技は私の特典だからオリジナル?だけど。

 血の中から取り出した剣を構え、サンドゴーレムとの間合いを詰める。

 ゴーレムは意外な事にボクシングスタイルだ。

 巨大な岩のような拳が、私に迫ってくる。

 おお!なかなかいい動きだね。

 拳を僅かに体をずらすだけで、避ける。両腕から繰り出される嵐のような拳を、スルスル避けて懐に入り込んでいくが、相手も気付いて後ろに跳ぼうとする。

 

 が、跳べなかった。

 

 私もただ避けてただけじゃないんだよね。私の剣から強烈な冷気が漏れ、地面を走りゴーレムの脚と地面を凍結させていたのだ。

 

「じゃあ、お疲れ」

 冷気を纏った剣が高速で、文字通り乱舞する。

 ゴーレムも、腕を振り回して当たるまいとするが無意味だ。

 相手の拳ごと剣は斬り砕きながら、本体にも斬撃が襲い掛かる。切り裂いた先から凍り付き、砕け散る。

 相手の攻撃を無効にするほどの冷気の暴風が、ゴーレムを氷の粒にした。

 

 夜のダイヤモンドダストだね。

 

 青い菱形の宝石が落ちて、私の手の中に納まる。

 私はそれを握りしめ、封印処理をする。

 封印完了。

 私の血の中に収納する。

「お見事でした。でも、そんなもの血液中に入れて、大丈夫なんですか?」

「私の血液中だから安心なんだよ。外部から一切遮断してるから、封印を破られるような事もないし」

 リニスはまだ心配そうだが、私は安心させられる切り札を出した。

「バルムンクだって私が許可を出さないと、デバイスの制御ができないんだよ?この程度のロストロギアじゃ、私をどうにか出来ないよ」

 リニスは何やら複雑そうな顔だが、一応納得したようだ。

 

「まあ、それより次、行くよ」

「はい」

 結界を解除して、移動する。移動時は奇門遁甲術を使用しながらだ。遁甲術は相手の意識を逸らす、あるいはあるものに集める事が出来る。センサーすらも感知出来ない。

 

 途中、魔法戦闘の気配がしたが、すぐ消えてしまった。

 多分、タイミング的にユーノ君だろう。一応探したが、ジュエルシードの思念体もユーノ君も見当たらなかった。

 ユーノ君に関しては、その場所から血の匂いが微かにする。

 魔力の残滓を元にユーノ君の捜索を開始する。

 森の奥にフェレットが倒れていた。

「使い魔…いえ、人間?でしょうか」

 リニスがフェレットを見て言う。

「人間だろうね。情報を見ると」

 精霊の眼(エレメンタルサイト)で見た情報を告げる。

「そう言えば、種族によっては、動物にトランスフォーム出来るものもいるとか、聞いたような気がします」

 多分、それかな?でも、何故フェレット?

 何はともあれ、傷の手当てをしないとね。私は拳銃型デバイスをユーノ君に向ける。

 

 コアデータより変更履歴遡及を開始。

 

 復元時点を確認。

 

 復元開始。

 

 完了。

 

 ユーノ君が()()()()()()()()()

 

 魔法科高校の劣等生の魔法・再成である。

 最高峰の治療魔法と言っていい。無傷の状態のデータをフルコピーして、上書きするという魔法だ。

 この世界にエイドスは確認出来ない。代わりに確認出来るものが、人の情報が収納されているコアである。

 原作では二十四時間データを遡る事が可能で、対象が感じた痛みが時間に応じて、濃縮されて追体験するデメリットがあった。私は特典でデメリット破棄を願ったが、世界の修正の所為で痛みは濃縮されないまでも、痛みはそのまま追体験する事になった。

 

 ユーノ君が気が付いて、慌てて起き上がる。

「あれ!?傷が!?ジュエルシードは!?」

 パニックになっているユーノ君に声を掛けてやる。

「落ち着きなよ」

 声を掛けられて、初めて私達に気付いたようだ。不用心だね。

「貴女達が助けてくれたんですか?」

「まあね」

「ありがとうございます」

 ユーノ君は、礼の言葉とは裏腹に苦い表情だ。

「で?事情を聞かせて貰える?」

 

 ユーノ君からの事情説明は、次元航行船が襲撃で落ちて、迷惑な事に地球の海鳴にピンポイントでジュエルシードが落ちたと。世界中に散らばるなら分かるけど、なんで海鳴に狙って落ちるの?ユーノ君は自分が発掘したものだから、何が何でも自分で見付けたいとの事。なんか思い詰めてて、危ない感じだね。

 

「話を聞いた上で言うよ?君はこんな事はやめるべきだね」

 私はバッサリと言った。

「それは…!」

 承服しかねる、と顔全体に表れている。

「誰かに、お前の所為だから自分で回収してこい、って言われたの?」

「そんな!!そんな事誰も言っていません!!」

「だったら、君を大切に思っている人の為にも、もうやめなさい」

 ユーノ君は戦闘に向いていない。正直ジュエルシードを全て回収するなど、到底出来るものではない。

「でも、僕はそれでも…!」

「すぐに納得しろって言っても、出来ないのは分かるよ。だから、戦うのはやめなさい。私達の目的に差し障りがない限りは、協力するよ」

「目的?」

「そりゃ、目的があるでしょ」

 私は、回収したジュエルシードを一つユーノ君に放った。

 ユーノ君は慌てて、飛んできたジュエルシードをキャッチした。

「これ!?」

「君の泊まる先は紹介するよ」

 泊まる場所を言った時のユーノ君の顔は、心底情けなさそうだった。

「今夜は、うちに泊めるけど、悪いけどその記憶は消させて貰うよ」

「え!?何でですか?」

「顔を隠してる段階で察してよ」

「……」

 

 結局はバルムンクの反対でユーノ君は眠らせておく事になった。

 曰く。

『主は、まだお相手を決めておられない。どこの馬の骨か分からぬ男を連れていけるか!』

 リニスはそのセリフを聞いて、生暖かい目を私に向けてきた。

 ええ、そうですよ。過保護なんですよ、うちの聖剣は。

 折衷案を飲ませるのに、苦労した事だけは言っておきたい。

 

 フェレット形態で眠らせたユーノ君をリニスに託し、思念体の捜索を試みたけど。

「思念体になると、痕跡消せるの?」

 痕跡が精霊の眼(エレメンタルサイト)で見てもブッツリ途切れている。

「相手はロストロギアです。何が出来ても不思議ではありません」

 未発動のジュエルシードを、追えるだけでも収穫か。

「でも、ユーノの事ですけど。美海の家においてあげる事は出来ませんか?」

 バルムンクが私の中で騒いでいるが、ちょっと黙ってて貰う。

 流石にユーノ君の滞在先に関しては、リニスとしては思うところがあるのだろう。

 なにしろ、そこはリニスもお世話になってるからね。

 

 その名も槇原動物病院。

 

 先生は責任感の強い人だ。()()()()()()()()()()()()()()

 これで、ユーノ君がうっかり死んだりする事はないだろう。

 

 リニスにも言えないけど、これから問題のフェイトちゃんが来る。

 これ以上の肩入れは出来ない。

 ユーノ君と行動を共にするのは、ユーノ君への裏切りと同じだ。

 無責任に全面協力の約束は出来ない。だから、目的に障りがない限りと付けたのだ。

 ユーノ君は頭がいいから、察してくれただろう。

 場合によっては、フェイトちゃんにジュエルシードを、一時的に預ける事も考えられる。

 それをユーノ君は承知しないだろう。どんな目的か分からないままではね。

 だから、ジュエルシードをせめて一つ渡したのだ。

 

 原作ではユーノ君の思いは、詳しくは語られなかったけど、話してみて無茶をやったのは、それなりに理由があるのも分かる。正直分かりたくなかった。

 

 だって、私は今回、フェイトちゃんの味方だから。

 誰かの思いを護るという事は、他の誰かの思いを踏み躙る行為だ。

 運命の赤毛少年の義父も似た事を言ってたけどね。

 

 因みに、レイジングハートの存在は忘れてないよ。ちゃんと回収したよ。

 ジュエルシードはレイジングハートに収納した。

 後でレイジングハートの記憶領域も細工しないとね。

 

 この夜の成果は、取り敢えず発動前の一つを何とか回収した。

 

 家に帰り、ジュエルシードを調べる。

 術式に歪みが見られる。恐らく、整備もせずに使い過ぎだ。これじゃ、おかしくもなるだろう。

 呆れと共にジュエルシードを見ていると、リニスが言った。

「それも、ユーノに渡さないのですか?」

「他を探す資料にするよ」

 私はサラッと嘘を言った。

 血の中に収納する。

 ユーノ君は、リニスが使っている籠に寝かせている。リニスが今夜は私のベットで寝る事になる。

 

 いい加減、寝ようと窓に近付いた時だった。

 魔力反応。なのはちゃんでも飛鷹君でもない。しかも、転移反応だ。

 精霊の眼(エレメンタルサイト)で、感知した方角を探る。

 

 そこには、高層ビルの屋上に立つ女の子。オレンジ色の大型犬(狼らしいけど)

 

 早過ぎる!原作はよく覚えてないけど、フェイトちゃんは途中から参戦だった筈だ。

 こんなほぼ開始と同時に来るなんて。

 まあ、私と飛鷹君というイレギュラーがいるんだから、変化はあって当然だけど。

 これは、面倒な変化だ。下手をすれば、彼女と話をする為に、戦わなければならないかもしれない。

 ジュエルシードを交渉材料にして、プレシアと話す予定だった。向こうも集め出すと、ぶつかるかもしれない。

 

「リニス。一つ聞くけど。フェイトちゃんって、金髪美少女でバリアジャケットは黒、戦斧のデバイス持ってる?」

 リニスは怪訝な表情で頷く。

 私はリニスに触れて、私の観ているものを観せる。

 

「フェイト!?アルフ!?」

 

 すぐに向かうのは、控えて貰った。作戦を練り直す必要があるから。

 リニスは渋々、承知してくれた。

 多分、今会っても揉めると思うから。

 

 

 私は呪われているのか。

 その夜、私はユーノ君がジュエルシード思念体にボコられている夢を見た。

 怪我治したのに、何してんの?

 

 それはそうと、なのはちゃんにレイジングハートは渡るんだろうか?

 このままいけば、フェイトちゃんに関わらないのかな?

 いや、飛鷹君がいるしな。

 

 私は、全部を明日の朝に投げる事にした。解決にならないけど。

 

 

 

  

 




 次回はなのはちゃん、飛鷹の話になる予定です。
 
 あと、ここで弁解を一つ。
 美海はユーノに死んでもらいたくなくて、ああしています。
 それは分かってあげて貰えれば。

 さて、なのはちゃんにレイジングハートは渡るのか!?

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