魔法少女リリカルなのは 二人の黒騎士(凍結中) 作:孤独ボッチ
彼女の活躍のさせ方、難しいんですよね。
動かしやすくはあるんですけど。
原作、一話序盤の話です(おぉい!)
:夢
ベルカ時代のいけ好かない方の母上が、私の前に座っている。
断っておくが、好感の持てる母上は今生の母上を指す。私に母が複数いた訳ではない。
兄妹みんな、母親が違っていたから、いたと言えば間違いではないのだろう。
だが、赤の他人だ。
「よいですか、アレクシア。女は殿方に見初められてこそ、価値があるのです。まして、貴女は王家の女。そのうち、どこかの騎士爵の元に嫁ぐでしょう。
貴女は残念ながら絶世の美女になる事はないでしょうが、可愛らしい容姿はしています。貴女のような女が好みだ、という殿方もいらっしゃいます。その中から力のある殿方を選ぶのですよ」
あまり話した事もない母上が、大真面目で小児に言ったセリフである。現代日本だったなら、物議を醸すだろう。つまり、ロリスキーな変態探せって事かい。死んでよし。
ベルカでは、強力な魔導騎士には爵位を送る風習があった。それが騎士爵である。完全な名誉のみで一代だけの領地しか付かないが。
婚姻によって、強い男の血を取り入れて金もウハウハという狙いである。
強力な騎士の忠誠を保つ為、各国は金を惜しまないのである。騎士爵の方はそのまま重鎮となる目もある。
私の場合、小国の第五王女。どこぞの王族や貴族に嫁ぐなど、有り得ないレベルである。
私の容姿は、PARA-SOLの谷田部 美海とこの時から同じだった為、正直将来はスリムな体型になると思っていた。まあ、実際は小柄は同じでも、結構身長にしてはプロポーションはよかったけど。チャラ男の趣味か?私も、前世では美海はマイエンジェルだったクチだが。
TSして意識は女になったが、男としての記憶がある為、ウホッいい男とはならないし、逆にタイが曲がっていてよ…の百合にも興味が出なかった(アレは違ったか)。
生涯を通して性欲が希薄だった。
故に、こういう話は精神的にキツイものがある。
私だけしか王族がいない訳じゃないから、いいやと無視したが。
「貴女は、どうやらあの愚か者の血を濃く継いでいるようね。失望しました。もう顔を出す必要はないわ」
無視して戦闘訓練三昧になった私に、母上が言った言葉である。
私も母上との会話は、精神的に辛かったので助かった。
因みにあの愚か者とは、父上・アーヴェント王の事である。
うちの国は聖王連合の選定王家の一つだが、聖王を輩出した事はうん百年くらい遡らないといけない。
つまり、ここのところ聖王がうちの王家から出ていない。
理由は単純。聖王の条件が、
当然、私は持っていない。兄妹の誰ももっていない。
「アーヴェント?ああ、あのうらぶれた小国の事か」
「貴殿の国土には、何人の騎士爵がおりましたかな?」
「おいおい、騎士爵に領地などやったら、自分達が住む場所を騎士爵から借りる事になるではないか」
ゲラゲラゲラ(爆笑)。
これが、うちの国の他国評である。
だからかな、父上は矢鱈と虹彩異色に拘った。子供が生まれる度に、期待して裏切られた。子供に愛情など湧く筈もない。
あれ以来、母上とは生涯話す事なく私は死んだ。当然、父上とも疎遠のまま、葬儀にも出席していない。
私は転生者で、あの段階で歳は食っていたから、大丈夫だった。
でも、フェイトちゃんは辛いだろう。
:美海
深夜にも関わらず、私は飛び起きた。
『どうしたんです?美海』
リニスが念話で声を掛けてくる。貴女ちゃんと寝てる?
私は素早く窓を開く。
上空から、二十一個の煌めきが海鳴りの街に降り注いだのが、見て取れた。つくづく第六感を鍛えておく事の重要性を、再確認させられる。
「妙なものが空から降ってきたね」
正体モロに知っているけどね。流石にうろ覚えでも、それくらいはね。
「妙なもの?」
念話で会話する必要がない為、小声で話すとリニスも合わせる。
「多分、魔力エネルギー結晶」
「!?それって、ロストロギアじゃないですか!」
小声で叫ぶという芸当を披露するリニス。
流石に、この不思議の街・海鳴でも魔力エネルギー結晶が、空から降ってくる事はないわ。
「さて、放っておくのは、流石に不味いからね。すぐ出るよ」
『久しぶりに、我の出番もあるかしれませんな』
「ない事を祈るよ」
リニスは既に人型になっている。
「では、参りましょう。美海」
私は無言で頷くと、自分そっくりの化成体を作成する。
本当は使い魔を造る技術で、動物に機械を埋め込み、古式魔法を掛けるのが化成体である。しかし、私はこの世界のいい意味で自由度が高い事を利用して、自在に土を使って形を造り、術式を小型の機械の代わりにしたのだ。そこには、体を動かす術式も組み込んでいる。司波 達也の技術とこの世界にサンキュー。当然、鍛錬した成果でもある。
私は騎士甲冑を纏い、窓から飛び出す。リニスも私に続き、外から窓の鍵を閉める。
滅茶苦茶遠いところから、時の庭園探すより楽だよ。
私は早くも一つ発見する。
場所は、因縁かリニスを助けた公園だった。
公園に降り立つ。
「リニス。結界構築、人除けで」
「分かりました」
リニスが結界を張る。
『ふむ、まあよかろう』
バルムンクが結界を見たのか、鷹揚に頷く。
リニスはムッとしたようだが、シリアスな場面である事を考慮して口喧嘩はしなかった。
人除けの結界で十分だ。
被害なんて出す前に片付けるからね。どっちにしろ。
ジュエルシードが落ちていたのは、よりにもよって砂場だった。
子供が遊ぶ場所のど真ん中に落ちるとか、アンタ狙ってるの?
砂場に近付くと、まさに狙ったようにジュエルシードが輝き出す。
まるで封印などさせない、とばかりに砂を吸収し、サンドゴーレムのような姿をとる。
「オオオオオォー」
生まれたてでご苦労さん。
「四の剣、風花乱舞」
私が名付けたオリジナル技って訳じゃないからね。ベルカに
剣聖操技は私の特典だからオリジナル?だけど。
血の中から取り出した剣を構え、サンドゴーレムとの間合いを詰める。
ゴーレムは意外な事にボクシングスタイルだ。
巨大な岩のような拳が、私に迫ってくる。
おお!なかなかいい動きだね。
拳を僅かに体をずらすだけで、避ける。両腕から繰り出される嵐のような拳を、スルスル避けて懐に入り込んでいくが、相手も気付いて後ろに跳ぼうとする。
が、跳べなかった。
私もただ避けてただけじゃないんだよね。私の剣から強烈な冷気が漏れ、地面を走りゴーレムの脚と地面を凍結させていたのだ。
「じゃあ、お疲れ」
冷気を纏った剣が高速で、文字通り乱舞する。
ゴーレムも、腕を振り回して当たるまいとするが無意味だ。
相手の拳ごと剣は斬り砕きながら、本体にも斬撃が襲い掛かる。切り裂いた先から凍り付き、砕け散る。
相手の攻撃を無効にするほどの冷気の暴風が、ゴーレムを氷の粒にした。
夜のダイヤモンドダストだね。
青い菱形の宝石が落ちて、私の手の中に納まる。
私はそれを握りしめ、封印処理をする。
封印完了。
私の血の中に収納する。
「お見事でした。でも、そんなもの血液中に入れて、大丈夫なんですか?」
「私の血液中だから安心なんだよ。外部から一切遮断してるから、封印を破られるような事もないし」
リニスはまだ心配そうだが、私は安心させられる切り札を出した。
「バルムンクだって私が許可を出さないと、デバイスの制御ができないんだよ?この程度のロストロギアじゃ、私をどうにか出来ないよ」
リニスは何やら複雑そうな顔だが、一応納得したようだ。
「まあ、それより次、行くよ」
「はい」
結界を解除して、移動する。移動時は奇門遁甲術を使用しながらだ。遁甲術は相手の意識を逸らす、あるいはあるものに集める事が出来る。センサーすらも感知出来ない。
途中、魔法戦闘の気配がしたが、すぐ消えてしまった。
多分、タイミング的にユーノ君だろう。一応探したが、ジュエルシードの思念体もユーノ君も見当たらなかった。
ユーノ君に関しては、その場所から血の匂いが微かにする。
魔力の残滓を元にユーノ君の捜索を開始する。
森の奥にフェレットが倒れていた。
「使い魔…いえ、人間?でしょうか」
リニスがフェレットを見て言う。
「人間だろうね。情報を見ると」
「そう言えば、種族によっては、動物にトランスフォーム出来るものもいるとか、聞いたような気がします」
多分、それかな?でも、何故フェレット?
何はともあれ、傷の手当てをしないとね。私は拳銃型デバイスをユーノ君に向ける。
コアデータより変更履歴遡及を開始。
復元時点を確認。
復元開始。
完了。
ユーノ君が
魔法科高校の劣等生の魔法・再成である。
最高峰の治療魔法と言っていい。無傷の状態のデータをフルコピーして、上書きするという魔法だ。
この世界にエイドスは確認出来ない。代わりに確認出来るものが、人の情報が収納されているコアである。
原作では二十四時間データを遡る事が可能で、対象が感じた痛みが時間に応じて、濃縮されて追体験するデメリットがあった。私は特典でデメリット破棄を願ったが、世界の修正の所為で痛みは濃縮されないまでも、痛みはそのまま追体験する事になった。
ユーノ君が気が付いて、慌てて起き上がる。
「あれ!?傷が!?ジュエルシードは!?」
パニックになっているユーノ君に声を掛けてやる。
「落ち着きなよ」
声を掛けられて、初めて私達に気付いたようだ。不用心だね。
「貴女達が助けてくれたんですか?」
「まあね」
「ありがとうございます」
ユーノ君は、礼の言葉とは裏腹に苦い表情だ。
「で?事情を聞かせて貰える?」
ユーノ君からの事情説明は、次元航行船が襲撃で落ちて、迷惑な事に地球の海鳴にピンポイントでジュエルシードが落ちたと。世界中に散らばるなら分かるけど、なんで海鳴に狙って落ちるの?ユーノ君は自分が発掘したものだから、何が何でも自分で見付けたいとの事。なんか思い詰めてて、危ない感じだね。
「話を聞いた上で言うよ?君はこんな事はやめるべきだね」
私はバッサリと言った。
「それは…!」
承服しかねる、と顔全体に表れている。
「誰かに、お前の所為だから自分で回収してこい、って言われたの?」
「そんな!!そんな事誰も言っていません!!」
「だったら、君を大切に思っている人の為にも、もうやめなさい」
ユーノ君は戦闘に向いていない。正直ジュエルシードを全て回収するなど、到底出来るものではない。
「でも、僕はそれでも…!」
「すぐに納得しろって言っても、出来ないのは分かるよ。だから、戦うのはやめなさい。私達の目的に差し障りがない限りは、協力するよ」
「目的?」
「そりゃ、目的があるでしょ」
私は、回収したジュエルシードを一つユーノ君に放った。
ユーノ君は慌てて、飛んできたジュエルシードをキャッチした。
「これ!?」
「君の泊まる先は紹介するよ」
泊まる場所を言った時のユーノ君の顔は、心底情けなさそうだった。
「今夜は、うちに泊めるけど、悪いけどその記憶は消させて貰うよ」
「え!?何でですか?」
「顔を隠してる段階で察してよ」
「……」
結局はバルムンクの反対でユーノ君は眠らせておく事になった。
曰く。
『主は、まだお相手を決めておられない。どこの馬の骨か分からぬ男を連れていけるか!』
リニスはそのセリフを聞いて、生暖かい目を私に向けてきた。
ええ、そうですよ。過保護なんですよ、うちの聖剣は。
折衷案を飲ませるのに、苦労した事だけは言っておきたい。
フェレット形態で眠らせたユーノ君をリニスに託し、思念体の捜索を試みたけど。
「思念体になると、痕跡消せるの?」
痕跡が
「相手はロストロギアです。何が出来ても不思議ではありません」
未発動のジュエルシードを、追えるだけでも収穫か。
「でも、ユーノの事ですけど。美海の家においてあげる事は出来ませんか?」
バルムンクが私の中で騒いでいるが、ちょっと黙ってて貰う。
流石にユーノ君の滞在先に関しては、リニスとしては思うところがあるのだろう。
なにしろ、そこはリニスもお世話になってるからね。
その名も槇原動物病院。
先生は責任感の強い人だ。
これで、ユーノ君がうっかり死んだりする事はないだろう。
リニスにも言えないけど、これから問題のフェイトちゃんが来る。
これ以上の肩入れは出来ない。
ユーノ君と行動を共にするのは、ユーノ君への裏切りと同じだ。
無責任に全面協力の約束は出来ない。だから、目的に障りがない限りと付けたのだ。
ユーノ君は頭がいいから、察してくれただろう。
場合によっては、フェイトちゃんにジュエルシードを、一時的に預ける事も考えられる。
それをユーノ君は承知しないだろう。どんな目的か分からないままではね。
だから、ジュエルシードをせめて一つ渡したのだ。
原作ではユーノ君の思いは、詳しくは語られなかったけど、話してみて無茶をやったのは、それなりに理由があるのも分かる。正直分かりたくなかった。
だって、私は今回、フェイトちゃんの味方だから。
誰かの思いを護るという事は、他の誰かの思いを踏み躙る行為だ。
運命の赤毛少年の義父も似た事を言ってたけどね。
因みに、レイジングハートの存在は忘れてないよ。ちゃんと回収したよ。
ジュエルシードはレイジングハートに収納した。
後でレイジングハートの記憶領域も細工しないとね。
この夜の成果は、取り敢えず発動前の一つを何とか回収した。
家に帰り、ジュエルシードを調べる。
術式に歪みが見られる。恐らく、整備もせずに使い過ぎだ。これじゃ、おかしくもなるだろう。
呆れと共にジュエルシードを見ていると、リニスが言った。
「それも、ユーノに渡さないのですか?」
「他を探す資料にするよ」
私はサラッと嘘を言った。
血の中に収納する。
ユーノ君は、リニスが使っている籠に寝かせている。リニスが今夜は私のベットで寝る事になる。
いい加減、寝ようと窓に近付いた時だった。
魔力反応。なのはちゃんでも飛鷹君でもない。しかも、転移反応だ。
そこには、高層ビルの屋上に立つ女の子。オレンジ色の大型犬(狼らしいけど)
早過ぎる!原作はよく覚えてないけど、フェイトちゃんは途中から参戦だった筈だ。
こんなほぼ開始と同時に来るなんて。
まあ、私と飛鷹君というイレギュラーがいるんだから、変化はあって当然だけど。
これは、面倒な変化だ。下手をすれば、彼女と話をする為に、戦わなければならないかもしれない。
ジュエルシードを交渉材料にして、プレシアと話す予定だった。向こうも集め出すと、ぶつかるかもしれない。
「リニス。一つ聞くけど。フェイトちゃんって、金髪美少女でバリアジャケットは黒、戦斧のデバイス持ってる?」
リニスは怪訝な表情で頷く。
私はリニスに触れて、私の観ているものを観せる。
「フェイト!?アルフ!?」
すぐに向かうのは、控えて貰った。作戦を練り直す必要があるから。
リニスは渋々、承知してくれた。
多分、今会っても揉めると思うから。
私は呪われているのか。
その夜、私はユーノ君がジュエルシード思念体にボコられている夢を見た。
怪我治したのに、何してんの?
それはそうと、なのはちゃんにレイジングハートは渡るんだろうか?
このままいけば、フェイトちゃんに関わらないのかな?
いや、飛鷹君がいるしな。
私は、全部を明日の朝に投げる事にした。解決にならないけど。
次回はなのはちゃん、飛鷹の話になる予定です。
あと、ここで弁解を一つ。
美海はユーノに死んでもらいたくなくて、ああしています。
それは分かってあげて貰えれば。
さて、なのはちゃんにレイジングハートは渡るのか!?