魔法少女リリカルなのは  二人の黒騎士(凍結中)   作:孤独ボッチ

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 原作に突入しました。突入したんです。
 そういう事でお願い致します。

 ジュエルシード事件プロローグ的な話になります。


第9話 覚悟を示す者

              :ユーノ

 

 僕の名前はユーノ。スクライア氏族の考古学者…の卵。

 

 今、僕は保護管理世界・プレギエーラに来ている。勿論、発掘作業でだ。

 この世界は、滅んでしまい現在は生き物も建物も木々もない。

 一説によるとロストギアで滅んだらしい。だから、管理局が厳重に管理している。

 

 管理局が、発掘許可を出してくれる事自体が珍しい。

「ユーノ。こんな所にいたのか。族長が苛立ってるぞ」

 レダ先輩がやってきて、コソッと囁いた。

 レダ先輩は、僕に考古学の楽しさを教えてくれた人だ。

 僕は何気なさを装って、族長のいる方をチラッと見る。

『作業やれや。手をサッサと動かせや。時間ねぇんだぞ?ああ!?』

 念話を受けた訳でもないのに、族長の目が明確に僕にメッセージを送ってくる。

 僕は思わず、呻いてしまった。

 族長は決して横暴な人ではない。両親がいない僕を、一族みんなで育ててくれた。凄く優しい人だ。

 でも、仕事に関しては頑固な職人のようになる。

 管理局が指定した発掘期間は、たったの七日。

 そして、肝心のものが発掘されないまま、既に五日経っている。

 それから族長は機嫌が悪い。

「管理局め!こんな期日で何を掘れというんだ!」

 ここのところの夜の族長の決まり文句である。

 

 でも、僕には勝算がある。

 偶々、見つけた神話が記された文献・第71管理世界エウケーの神話集。

 今も研究者が神話の研究をしてるけど、何かの寓意を歴史的出来事をもとに創られた、というのが定説になっているが、僕はプレギエーラの世界の出来事を神話化したものだ、と推測している。

 実は、次元世界では文明の発達した世界が、未発達の世界に影響を与えるのは珍しい事じゃないんだ。

 古語の文字形体はプレギエーラと、エウケーの文字には類似点が見られると思う。

 行き来があった結果だと僕は思う。

 エウケー神話の〈祈りの神殿〉が崩壊した下りは、プレギエーラ消滅の原因を思わせる。

 プレギエーラの中央魔導施設は、神話であるような石造りの神殿では勿論ないが、構造も神話との類似が認められる。

 族長は、考古学的な根拠に乏しい。どれも、お前の勘みたいなもんだ。そんな事じゃ、管理局は発掘許可を出さん、と渋い顔をした。だから、僕は族長に直接交渉させてほしいと頼み込んで、三か月の間、管理局の担当に毎日日参して、熱弁を振るった。

 管理局の担当者も、にべもない反応だった。が、突然風向きが変わった。

「七日間です。こちらの指定期間中なら、発掘許可を出しましょう。こんな事は例がないんですがね」

 担当者は、苦虫を噛み潰したような顔で言葉短く説明を終え、出ていった。

 

 許可が出た事を族長に話すと、怪訝な表情で考え込んでいた。

 だが、結果的に発掘作業を開始する決定を下した。

 

 但し、滅んだ原因となったロストロギアを発掘する事が条件だった。

 

 大体、建築跡が露わになっている。流石、スクライア氏族。

 僕は文献のコピーと睨めっこしながら、場所を特定していく。

「結果を出さないと、管理局の審査が今以上に厳しくなるぞ。ユーノ」

「はい!大丈夫です。もう特定しました」

 管理局は信用が落ちた考古学者の申請は、受け付けなくなる。いや、許可を出し辛くなる。

 

 跡地中央から外れた場所。

 僕はレダ先輩達と共に、発掘作業を開始する。

 三人がかりで魔法で土砂を慎重に取り除く。

 僕達は土砂が除かれた穴に突入し、貴重品を傷つけないように、細心の注意を払って掘っていく。

「ユーノの予想だと、魔力のエネルギー結晶体なんだよな?」

「はい、だから下手な衝撃を与えたら、危険です」

 祈りの神殿での祭祀は、魔力付与のプロセスと似ている。

「名前は、なんて言ったっけ?」

「僕達の共通言語に無理に直すと、イデアシード…違うな、()()()()()()()()()?」

 

 丁寧に土を取り除いていくと、丸い金属が姿を現す。

 そこからは、更に慎重に金属に穴を開けていく。火花が中に入らないように、気を使わなければならない。

 魔力エネルギー結晶体とは言っても、どんなエネルギーを吸収するか分からない。吸収するのが魔力のみとは、限らない。

 

 そして、遂に金属をゆっくり取り除く。

 中は、ほぼ石と言っていい程の土砂が詰まっていた。

 無心で、淡々と、だけど、慎重に石と土を取り除く。

 

 刷毛で土を退かしていくと、青い輝きが姿を現した。

 

「あったぁー!!見付けました!!」

 僕は思わず声を上げた。

 僕の手の中で青い宝石は怪しく輝いていた。

 スクライア氏族のみんなが集まってくる。

「これが…」

 誰かの呟きが聞こえる。

「施設の規模からいって、これだけってこたぁねぇだろ。残りも掘り出すぞ!」

 族長の指示で人員が増えた。

 結果として、二十一個のジュエルシードが発掘された。

「ご丁寧にナンバーまで振ってくれているとはな」

 レダ先輩が、ジュエルシードを見ながら笑った。

「皆さんが協力してくれたので、もうこれ以上はないと断言出来ます」

 レダ先輩は頷く。

「だろうな。今度は封印だ。やっつけちまおう」

 僕達はジュエルシード全てに封印を施し、金色の耐衝撃専用のケースに収納した。

 

 管理局へ報告後、あまり時を置かずに次元航行船が到着した。

 

 

              :バーン提督

 

 ロストロギアを、規定通りに受け取った。

 勿論、受け取ったのは部下だが。

 

 私の机の上には、()()()()()()()()()のロストロギアが置いてある。

 次元航行船の艦長であれば、造作もない事だ。船内のどこでもアクセス可能なのだから。

 一応、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 全く、あの穴掘り共も節操がないな。もう少し自重して貰いたいものだ。それか、根本的に仕事を変えるか。

 奴等がこんなものを掘り出さなければ、定年まで勤めあげる事も出来ただろうに。

 先輩も今更借りを返せとは、酷な事を言う。穴掘り共より先に、私が職を変える事になりそうだ。

 

 既に進路は言われた通りに、変更してある。後戻りはできない。

 

 私はブリッジに重い足取りで向かった。

 ブリッジに入ると副艦長が報告を入れてくる。

「艦長。今のところ問題はありません。順調に行けば定刻で本局に、到着出来ます」

 私は無言で頷くと、自分の席に腰を下ろした。

 

 何気なく時刻表示に目を向けると、もうすぐ時間だった。

 アラートが盛大に鳴り響く。

「艦長!本艦がロックオンされています。次元跳躍攻撃です!」

「回避!」

 私は当然の指示を出す。

「間に合いません!」

 次の瞬間には、凄まじい衝撃が本艦を襲った。

「状況報告!」

 私の言葉に我に返った部下が、慌てて報告する。

「操舵系、80%損傷!制御不能!」

 アラートが鳴りっぱなしだ。

 部下が不測の事態に右往左往している。

 更に、船体から爆発が起こる。艦内に悲鳴が満ちる。

「落ち着け!脱出急げ!本艦を捨てる!」

 副艦長を筆頭に部下が驚愕する。

「しかし…!」

「議論している暇はない!艦の制御が利かんのだ。いつ本艦がバラバラになるか分らんのだぞ!」

 次元の海は航路を少しでも外れれば、次元航行船でさえ地獄となる。バラバラになる可能性があるのは嘘ではない。

 

 結局は全乗員が脱出した。

 

 脱出艇の中で副艦長から、当然の報告を受けた。

「艦長…。実は保管庫からロストロギアが…消えていて、回収…出来ませんでした」

 私は言葉少なに答えた。

「犯人捜しなど、今始めるなよ。責任は私がとる」

 

 なにしろ、犯人は私だからな。

 

 

              :???

 

「予定通りです」

 彼女は私の秘書であり、我が子のようなものだ。

「ふむ、そうか。それは重畳」

 私は、研究の手を止めずに答えた。

「よろしかったのですか?あの御仁に協力を依頼して」

 彼女が、何を言わんとしているかは分かる。

「大丈夫さ、彼が私を裏切るように、私も彼を裏切る、お互い承知の上さ。それでも、あの御仁は成し遂げたいのさ。平和をね」

 あの正義は狂気の産物だ。実に私好みだよ。面白い。

 彼の観察もまた重要な研究だ。私の将来の子供達を、輝かせる一助になるかもしれないからね。

 

「さて、仕込みが済んだからね。我が親愛なる友人に連絡を取るとしよう」

 

 

              :プレシア

 

「どういうつもり?」

 私は、ウィンドウに映る軽薄な笑みを浮かべる男に、開口一番そう言った。

 この男は、私の目的を知っている。そして、今態々それの鍵になる情報を、アッサリと話した。

「随分酷い言い草だねぇ」

 私は、この男の頭脳は認めているが、人格は全く信じていない。

 まして、慈善事業など絶対しない。今じゃ、私もそんなものしないけれどね。

「魂胆を言いなさい。私の目的の邪魔にならなければ、好きにすればいいわ」

 男が苦笑いする。相変わらず作り物染みた表情だ。

「警戒させてしまったかな。目的は単純だよ。里帰りだ」

「里帰り?」

 思わず鼻で嗤ってしまった。

 貴方にそんな感傷があるとでも?

「正確に言えば、アルハザードにあるデータだね」

 ようやく、マシな理由が聞けたわね。

「何故、貴方が自分で試さないの?」

「私は賭け事は嫌いでね。自分の命をチップに博打をする気はないよ」

 だから、私の命をチップにするという事ね。

「君自身、時間が無いんじゃないかと、心配になってね」

 私の死病も承知の上での話、という訳ね。

 

 ならば、訊いておく事は一つだ。

「アルハザードは、今も存在するのね?」

「君は、自分が調べ上げた事に疑問を持つのかい?勿論、存在しているよ。()()()()()()()

 

 結局は時間が無い。

 私はあの男の話に乗るしかない。

 

 私は通信回線を繋ぐ、この時の庭園にいる子に。

 ようやく、役に立つ時が来たわね。

 我慢が報われてよかったわ。

 

 

「私のフェイト。お願いがあるの」

 

 

               :ユーノ

 

 結果を見事に出した事で、発掘作業の延長が認められた。

 自分の考えが当たっていた事も嬉しい。

 でも、僕が一族に貢献出来た事が、もっと嬉しかった。

 

 恩返しがしたい。

 

 いつしか、僕の中での目標になっていた。立派な考古学者になって、スクライア氏族を穴掘りなんて呼んでいる人達の認識を変える。それこそが一番の恩返しになる。僕はそう考えている。

 今回の事で、みんなが笑顔でよくやったと褒めてくれた。

 確かに、今回は焦り過ぎたかもしれない。でも、今度は族長も納得するような根拠を示す。

 

 僕は、族長のテントに発掘計画の見直し案を持って、向かった。

 テントの前まで来ると、小声で話し声が聞こえてくる。

「何!?それで、ロストロギアは!?」

「恐らく、通過中の世界に落ちたんだろう」

 え?それってもしかして、ジュエルシード?

「胡散臭い許可に、次元航行船の襲撃…やっぱり裏があったか」

 族長が溜息交じりに呟く。

「だがアード。許可を出された以上、やらないなんて選択肢はなかったろ」

 アードとは族長の名前だ。という事は相手は補佐のジェドさんだろう。

「あの子の懸命な気持ちを、台無しにしたくねぇ。ジェド、折を見てユーノにはそれとなく注意しとけ」

 

 僕は目の前が、一気に暗くなっていくのを感じていた。

 手に持っていた発掘計画書類が、滑り落ちる。

「ん!?誰かいるのか?」

 僕はそのままテントに背を向けて、走り出す。足が縺れて上手く走れない。

 何度も転ぶ。

 

 自分達が発掘したものが、悪用される。しかも、ロストロギアが。

 それが惨事を招けば、発掘した者の責任も問われる。法的な問題ではない。恐ろしいのは、世論である。発掘許可に問題はなかったのかから始まり、瑕疵がないか粗探しが始まる。発掘者に責任はなくとも、有形無形の独自制裁が下される。

 次元世界の古代遺産発掘は、危険物を多く含んでいるケースがある。

 それを踏まえ慎重にやるべきだったんだ。

 でも、僕は焦ってしまった。

 だから、餌に飛び付いてしまった。

 思えば、族長も許可など下りる筈もないと高を括っていたんだと思う。でも、許可は下りてしまった。申請しておいて、やめますとは言えない。

 これは、とんでもない不名誉に発展するかもしれない。

 穴掘りなどと言われても、スクライア氏族は発掘品の悪用など決してさせなかった。それが誇りだった。

 

 僕は、その誇りに泥を塗ってしまった…。

 

 走りながら、涙が出てきたが、そんな事に構っている暇はない。

 まずは管理局で、落下予想地点は聞き出す。

 

 ジュエルシードは、僕が必ず全部回収してみせる!悪用なんて絶対にさせない!

 

 

               :美海

 

 毎度恒例の時の庭園探し。

 

 私は無人世界にいる。

 センサーに感知されないように細心の注意を払う。()()()

 精霊の眼(エレメンタルサイト)で、無人世界上の次元の海を注視する。

 時の庭園は当然移動済み。寧ろ、常に移動している。

 こりゃ、あれだね。在り来たりな喩えだけど、砂漠の砂の中からダイヤの小粒を見付けるようなもんだ。しかも、その小粒は風で砂と一緒に移動してるときた。

 原作開始まで、ダメかな。

 

「どうですか?美海」

 リニスが訊いてくるが、返答は同じです。ごめんなさい。

「いないね」

 リニスは私に気を使ったのか、明るい声を出す。

「まだ時間はあります!気長に探しましょう!」

 しかし、私はリニスの気遣いに乗る事が出来なかった。嫌な情報が見えるよ。

 う~ん。そろそろ原作開始するのかな?

「どうしたんですか?」

 私が眉間に皺を寄せているのを、不思議に思たのかリニスが訊いてきた。

「時の庭園が、スピードを上げて移動してるみたいなんだよね」

「私達の追跡がバレたんでしょうか?」

 事の重大さにリニスの表情も険しくなる。

「そりゃないでしょ。周回遅れもいいところなんだから」

 私は精霊の眼(エレメンタルサイト)を切る。

 

「でも、嫌な感じだね」

 私の言葉にリニスは不安そうだった。

 

 ごめん、リニス。プレシアが何かやる前に押さえるの、無理だと思う。

 私はそっとリニスに心の中で謝罪し、目を閉じた。

 

 約束通り、フェイトちゃんは助けるから、許して。

 

 




 ユーノ回ともいうべき話です。
 ユーノが、ただのマスコット淫獣ではない、という事を示すための話です!
(ユ:ちょっとぉ!!)
 
 転生者の特典は飛鷹が最後の一つ、レアスキルが明かされた段階で、この場で纏めようと思います。
 恥ずかしい話。投稿だけで精一杯…。
 頑張りますので、お願い致します。

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