魔法少女リリカルなのは 二人の黒騎士(凍結中) 作:孤独ボッチ
そういう事でお願い致します。
ジュエルシード事件プロローグ的な話になります。
:ユーノ
僕の名前はユーノ。スクライア氏族の考古学者…の卵。
今、僕は保護管理世界・プレギエーラに来ている。勿論、発掘作業でだ。
この世界は、滅んでしまい現在は生き物も建物も木々もない。
一説によるとロストギアで滅んだらしい。だから、管理局が厳重に管理している。
管理局が、発掘許可を出してくれる事自体が珍しい。
「ユーノ。こんな所にいたのか。族長が苛立ってるぞ」
レダ先輩がやってきて、コソッと囁いた。
レダ先輩は、僕に考古学の楽しさを教えてくれた人だ。
僕は何気なさを装って、族長のいる方をチラッと見る。
『作業やれや。手をサッサと動かせや。時間ねぇんだぞ?ああ!?』
念話を受けた訳でもないのに、族長の目が明確に僕にメッセージを送ってくる。
僕は思わず、呻いてしまった。
族長は決して横暴な人ではない。両親がいない僕を、一族みんなで育ててくれた。凄く優しい人だ。
でも、仕事に関しては頑固な職人のようになる。
管理局が指定した発掘期間は、たったの七日。
そして、肝心のものが発掘されないまま、既に五日経っている。
それから族長は機嫌が悪い。
「管理局め!こんな期日で何を掘れというんだ!」
ここのところの夜の族長の決まり文句である。
でも、僕には勝算がある。
偶々、見つけた神話が記された文献・第71管理世界エウケーの神話集。
今も研究者が神話の研究をしてるけど、何かの寓意を歴史的出来事をもとに創られた、というのが定説になっているが、僕はプレギエーラの世界の出来事を神話化したものだ、と推測している。
実は、次元世界では文明の発達した世界が、未発達の世界に影響を与えるのは珍しい事じゃないんだ。
古語の文字形体はプレギエーラと、エウケーの文字には類似点が見られると思う。
行き来があった結果だと僕は思う。
エウケー神話の〈祈りの神殿〉が崩壊した下りは、プレギエーラ消滅の原因を思わせる。
プレギエーラの中央魔導施設は、神話であるような石造りの神殿では勿論ないが、構造も神話との類似が認められる。
族長は、考古学的な根拠に乏しい。どれも、お前の勘みたいなもんだ。そんな事じゃ、管理局は発掘許可を出さん、と渋い顔をした。だから、僕は族長に直接交渉させてほしいと頼み込んで、三か月の間、管理局の担当に毎日日参して、熱弁を振るった。
管理局の担当者も、にべもない反応だった。が、突然風向きが変わった。
「七日間です。こちらの指定期間中なら、発掘許可を出しましょう。こんな事は例がないんですがね」
担当者は、苦虫を噛み潰したような顔で言葉短く説明を終え、出ていった。
許可が出た事を族長に話すと、怪訝な表情で考え込んでいた。
だが、結果的に発掘作業を開始する決定を下した。
但し、滅んだ原因となったロストロギアを発掘する事が条件だった。
大体、建築跡が露わになっている。流石、スクライア氏族。
僕は文献のコピーと睨めっこしながら、場所を特定していく。
「結果を出さないと、管理局の審査が今以上に厳しくなるぞ。ユーノ」
「はい!大丈夫です。もう特定しました」
管理局は信用が落ちた考古学者の申請は、受け付けなくなる。いや、許可を出し辛くなる。
跡地中央から外れた場所。
僕はレダ先輩達と共に、発掘作業を開始する。
三人がかりで魔法で土砂を慎重に取り除く。
僕達は土砂が除かれた穴に突入し、貴重品を傷つけないように、細心の注意を払って掘っていく。
「ユーノの予想だと、魔力のエネルギー結晶体なんだよな?」
「はい、だから下手な衝撃を与えたら、危険です」
祈りの神殿での祭祀は、魔力付与のプロセスと似ている。
「名前は、なんて言ったっけ?」
「僕達の共通言語に無理に直すと、イデアシード…違うな、
丁寧に土を取り除いていくと、丸い金属が姿を現す。
そこからは、更に慎重に金属に穴を開けていく。火花が中に入らないように、気を使わなければならない。
魔力エネルギー結晶体とは言っても、どんなエネルギーを吸収するか分からない。吸収するのが魔力のみとは、限らない。
そして、遂に金属をゆっくり取り除く。
中は、ほぼ石と言っていい程の土砂が詰まっていた。
無心で、淡々と、だけど、慎重に石と土を取り除く。
刷毛で土を退かしていくと、青い輝きが姿を現した。
「あったぁー!!見付けました!!」
僕は思わず声を上げた。
僕の手の中で青い宝石は怪しく輝いていた。
スクライア氏族のみんなが集まってくる。
「これが…」
誰かの呟きが聞こえる。
「施設の規模からいって、これだけってこたぁねぇだろ。残りも掘り出すぞ!」
族長の指示で人員が増えた。
結果として、二十一個のジュエルシードが発掘された。
「ご丁寧にナンバーまで振ってくれているとはな」
レダ先輩が、ジュエルシードを見ながら笑った。
「皆さんが協力してくれたので、もうこれ以上はないと断言出来ます」
レダ先輩は頷く。
「だろうな。今度は封印だ。やっつけちまおう」
僕達はジュエルシード全てに封印を施し、金色の耐衝撃専用のケースに収納した。
管理局へ報告後、あまり時を置かずに次元航行船が到着した。
:バーン提督
ロストロギアを、規定通りに受け取った。
勿論、受け取ったのは部下だが。
私の机の上には、
次元航行船の艦長であれば、造作もない事だ。船内のどこでもアクセス可能なのだから。
一応、
全く、あの穴掘り共も節操がないな。もう少し自重して貰いたいものだ。それか、根本的に仕事を変えるか。
奴等がこんなものを掘り出さなければ、定年まで勤めあげる事も出来ただろうに。
先輩も今更借りを返せとは、酷な事を言う。穴掘り共より先に、私が職を変える事になりそうだ。
既に進路は言われた通りに、変更してある。後戻りはできない。
私はブリッジに重い足取りで向かった。
ブリッジに入ると副艦長が報告を入れてくる。
「艦長。今のところ問題はありません。順調に行けば定刻で本局に、到着出来ます」
私は無言で頷くと、自分の席に腰を下ろした。
何気なく時刻表示に目を向けると、もうすぐ時間だった。
アラートが盛大に鳴り響く。
「艦長!本艦がロックオンされています。次元跳躍攻撃です!」
「回避!」
私は当然の指示を出す。
「間に合いません!」
次の瞬間には、凄まじい衝撃が本艦を襲った。
「状況報告!」
私の言葉に我に返った部下が、慌てて報告する。
「操舵系、80%損傷!制御不能!」
アラートが鳴りっぱなしだ。
部下が不測の事態に右往左往している。
更に、船体から爆発が起こる。艦内に悲鳴が満ちる。
「落ち着け!脱出急げ!本艦を捨てる!」
副艦長を筆頭に部下が驚愕する。
「しかし…!」
「議論している暇はない!艦の制御が利かんのだ。いつ本艦がバラバラになるか分らんのだぞ!」
次元の海は航路を少しでも外れれば、次元航行船でさえ地獄となる。バラバラになる可能性があるのは嘘ではない。
結局は全乗員が脱出した。
脱出艇の中で副艦長から、当然の報告を受けた。
「艦長…。実は保管庫からロストロギアが…消えていて、回収…出来ませんでした」
私は言葉少なに答えた。
「犯人捜しなど、今始めるなよ。責任は私がとる」
なにしろ、犯人は私だからな。
:???
「予定通りです」
彼女は私の秘書であり、我が子のようなものだ。
「ふむ、そうか。それは重畳」
私は、研究の手を止めずに答えた。
「よろしかったのですか?あの御仁に協力を依頼して」
彼女が、何を言わんとしているかは分かる。
「大丈夫さ、彼が私を裏切るように、私も彼を裏切る、お互い承知の上さ。それでも、あの御仁は成し遂げたいのさ。平和をね」
あの正義は狂気の産物だ。実に私好みだよ。面白い。
彼の観察もまた重要な研究だ。私の将来の子供達を、輝かせる一助になるかもしれないからね。
「さて、仕込みが済んだからね。我が親愛なる友人に連絡を取るとしよう」
:プレシア
「どういうつもり?」
私は、ウィンドウに映る軽薄な笑みを浮かべる男に、開口一番そう言った。
この男は、私の目的を知っている。そして、今態々それの鍵になる情報を、アッサリと話した。
「随分酷い言い草だねぇ」
私は、この男の頭脳は認めているが、人格は全く信じていない。
まして、慈善事業など絶対しない。今じゃ、私もそんなものしないけれどね。
「魂胆を言いなさい。私の目的の邪魔にならなければ、好きにすればいいわ」
男が苦笑いする。相変わらず作り物染みた表情だ。
「警戒させてしまったかな。目的は単純だよ。里帰りだ」
「里帰り?」
思わず鼻で嗤ってしまった。
貴方にそんな感傷があるとでも?
「正確に言えば、アルハザードにあるデータだね」
ようやく、マシな理由が聞けたわね。
「何故、貴方が自分で試さないの?」
「私は賭け事は嫌いでね。自分の命をチップに博打をする気はないよ」
だから、私の命をチップにするという事ね。
「君自身、時間が無いんじゃないかと、心配になってね」
私の死病も承知の上での話、という訳ね。
ならば、訊いておく事は一つだ。
「アルハザードは、今も存在するのね?」
「君は、自分が調べ上げた事に疑問を持つのかい?勿論、存在しているよ。
結局は時間が無い。
私はあの男の話に乗るしかない。
私は通信回線を繋ぐ、この時の庭園にいる子に。
ようやく、役に立つ時が来たわね。
我慢が報われてよかったわ。
「私のフェイト。お願いがあるの」
:ユーノ
結果を見事に出した事で、発掘作業の延長が認められた。
自分の考えが当たっていた事も嬉しい。
でも、僕が一族に貢献出来た事が、もっと嬉しかった。
恩返しがしたい。
いつしか、僕の中での目標になっていた。立派な考古学者になって、スクライア氏族を穴掘りなんて呼んでいる人達の認識を変える。それこそが一番の恩返しになる。僕はそう考えている。
今回の事で、みんなが笑顔でよくやったと褒めてくれた。
確かに、今回は焦り過ぎたかもしれない。でも、今度は族長も納得するような根拠を示す。
僕は、族長のテントに発掘計画の見直し案を持って、向かった。
テントの前まで来ると、小声で話し声が聞こえてくる。
「何!?それで、ロストロギアは!?」
「恐らく、通過中の世界に落ちたんだろう」
え?それってもしかして、ジュエルシード?
「胡散臭い許可に、次元航行船の襲撃…やっぱり裏があったか」
族長が溜息交じりに呟く。
「だがアード。許可を出された以上、やらないなんて選択肢はなかったろ」
アードとは族長の名前だ。という事は相手は補佐のジェドさんだろう。
「あの子の懸命な気持ちを、台無しにしたくねぇ。ジェド、折を見てユーノにはそれとなく注意しとけ」
僕は目の前が、一気に暗くなっていくのを感じていた。
手に持っていた発掘計画書類が、滑り落ちる。
「ん!?誰かいるのか?」
僕はそのままテントに背を向けて、走り出す。足が縺れて上手く走れない。
何度も転ぶ。
自分達が発掘したものが、悪用される。しかも、ロストロギアが。
それが惨事を招けば、発掘した者の責任も問われる。法的な問題ではない。恐ろしいのは、世論である。発掘許可に問題はなかったのかから始まり、瑕疵がないか粗探しが始まる。発掘者に責任はなくとも、有形無形の独自制裁が下される。
次元世界の古代遺産発掘は、危険物を多く含んでいるケースがある。
それを踏まえ慎重にやるべきだったんだ。
でも、僕は焦ってしまった。
だから、餌に飛び付いてしまった。
思えば、族長も許可など下りる筈もないと高を括っていたんだと思う。でも、許可は下りてしまった。申請しておいて、やめますとは言えない。
これは、とんでもない不名誉に発展するかもしれない。
穴掘りなどと言われても、スクライア氏族は発掘品の悪用など決してさせなかった。それが誇りだった。
僕は、その誇りに泥を塗ってしまった…。
走りながら、涙が出てきたが、そんな事に構っている暇はない。
まずは管理局で、落下予想地点は聞き出す。
ジュエルシードは、僕が必ず全部回収してみせる!悪用なんて絶対にさせない!
:美海
毎度恒例の時の庭園探し。
私は無人世界にいる。
センサーに感知されないように細心の注意を払う。
時の庭園は当然移動済み。寧ろ、常に移動している。
こりゃ、あれだね。在り来たりな喩えだけど、砂漠の砂の中からダイヤの小粒を見付けるようなもんだ。しかも、その小粒は風で砂と一緒に移動してるときた。
原作開始まで、ダメかな。
「どうですか?美海」
リニスが訊いてくるが、返答は同じです。ごめんなさい。
「いないね」
リニスは私に気を使ったのか、明るい声を出す。
「まだ時間はあります!気長に探しましょう!」
しかし、私はリニスの気遣いに乗る事が出来なかった。嫌な情報が見えるよ。
う~ん。そろそろ原作開始するのかな?
「どうしたんですか?」
私が眉間に皺を寄せているのを、不思議に思たのかリニスが訊いてきた。
「時の庭園が、スピードを上げて移動してるみたいなんだよね」
「私達の追跡がバレたんでしょうか?」
事の重大さにリニスの表情も険しくなる。
「そりゃないでしょ。周回遅れもいいところなんだから」
私は
「でも、嫌な感じだね」
私の言葉にリニスは不安そうだった。
ごめん、リニス。プレシアが何かやる前に押さえるの、無理だと思う。
私はそっとリニスに心の中で謝罪し、目を閉じた。
約束通り、フェイトちゃんは助けるから、許して。
ユーノ回ともいうべき話です。
ユーノが、ただのマスコット淫獣ではない、という事を示すための話です!
(ユ:ちょっとぉ!!)
転生者の特典は飛鷹が最後の一つ、レアスキルが明かされた段階で、この場で纏めようと思います。
恥ずかしい話。投稿だけで精一杯…。
頑張りますので、お願い致します。