チート転生を断ったら、日替わりでチート能力を届けられるようになった   作:おもちさん

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第7話  おうちを さがそう

 これは、夢だな。

 オレは目の前で繰り広げられる出来事が、現実でないことを理解できていた。たまに「これは夢の世界だ」って気づくことあるよな。

 そんで、今がまさにそれ。

 

 場面はどこかの部屋だな。

 石造りの部屋はそこそこ広くて、柱には細かな装飾が施されている。バカ高そうな絨毯が敷かれ、部屋の隅には大きな壺だか花瓶だかがあり、それぞれ結構な値が付きそうだ。

 恐らくここの主人はそれなりの身分の人物だろう。

 

 その部屋には二人の男が向き合っていた。薄暗さのせいか、顔までは確認できない。お互いが武器を手にして向け合っていることから、戦闘の最中なんだろう。序盤戦ではない事を弾ませている肩が物語っている。

 

 

ーー魔人王、お前もここまでだ! このまま斬り殺してやる!

 

 

 向かって左側の男が叫んだ。なんつうか、主人公タイプっぽい。正義感にまみれてそうな声が響き渡った。向かって右側の男が皮肉交じりに笑う。

 

 

ーーお気楽なもんだ。オレを殺せば終わりだと思ってるのか。

 

ーー何を言っている、お前さえ居なければ魔人はお終いだ。そして人間の勝利だ!

 

ーーお前も殺されるぞ。間違いなくな。

 

ーーな、何を言っているんだ。どうしてオレが殺されなくちゃならないんだ。

 

「起きてー、朝だよー!」

 

ーー・・・からない・・・のか、・・・前を許す・・・ないだろう。

 

「起きてってばー。もう陽が高いんだからさー」

 

ーーそん・・・はない。・・・言うな・・・!

 

「おっはよーおっはよー! イタタタ、痛い痛い!」

 

 

 謎の声に引っ張られるように、オレは夢から覚醒した。

 クソッ、あの話の続きが気になる。肝心なところが汚されて読めない、古本の小説を読んだような気分だ。

 目を開けると右手が何かを握りしめていた。がっちりとアイアンクローを決めているが、相手はきっとレイラだろう。睡眠を邪魔されて反射的に技をかけてしまったようだ。

 

 

「離して、メッチャクチャいったいコレ! 顔が面長になっちゃう!」

「おはよう、いい朝だな」

「ええそうね。ついさっきまではね!」

 

 

 レイラは朝っぱらからご機嫌斜めだ。こんな清々しい朝を迎えたのに、人生損をしているぞ。

 

 

「さて、じゃあ街の外に移動しますかね」

「外に行くって、何する気?」

「そりゃお前、この街の周辺で住めそうな所を探すんだよ」

「え、じゃあなんでセントラル・ミレイアに来たの?」

「何って、下見だけど」

「下見?」

 

 

 首を90度といって差し支えないくらい大きく傾げている。どうでもいいが、こいつの仕草は大体あざとい気がする。ナチュラルにやってんなら別にいいが、男受けを考えてわざとやってんなら腹立つな。

 もしそうなら説教だ。ケツビンタもついでに付けてやる。

 

 

「もし今後お金を手にいれる機会があったら買い物するだろ? そのとき品揃えの良い街の近くに住んでた方が便利だろ? 昨日はその店構えとかを調べてたんだ」

「お金を手にいれる機会って……働く気はないんでしょう?」

「ないの」

「ねぇー、何かやろうよー。そんだけ強いんだから討伐とかいいじゃないさー」

「やんないの」

「じゃあ他に何してるつもり?」

「寝っ転がったり、ボーッとしたり、アリさん眺めたり」

「ねえ、本当に18歳なの?!」

 

 

 クレーマー女を無視して街の外へ向かった。

 街の防壁を抜けた辺りで女神からの今日のスキルが届いたが、スキル名が「ウハウハ大富豪」だった。説明を見る気すらおきん。金はないが困ってはいねえっつの。オレはな。

 

 さて、ちょうどいい寝ぐらを探しますかね。街道から逸れて森に入り、手頃な場所を探し始めた。

 とりあえず川や湖の近くがいい、水は必須だからな。果物のなる木や、天然で生えてる根菜とか見つかるとさらに良い。そんな所に使えそうな廃屋とかあればいいんだが……。

 

 まぁそんな都合のいい話はないか。

 見つかったのはせいぜい木の実くらいで、他に収穫は今の所無い。川付近は街道に近いから避けたいが、他に水場は見つかっていないしどうしたものか。

 つうかオレたちいっつも木の実食ってんのな。小動物の気持ちが今ならわかる。

 

 

「なんもねえな、完全に空振りってやつだな」

「こんな不毛なことしないでお金を稼いで……あら?」

「何だ、今の音……動物か?」

「もしかしたらウサギとかかも! よっし、今日の晩御飯!」

 

 

 レイラが音の出所に向けて杖を構えた。早くもこの生活に慣れ始めたのか、動物を狩る気満々だ。お嬢様育ちのくせにアマゾネスみてえだな。

 草むらからソイツは飛び出してきたが、動物ではなかった。

 燃えるような赤い髪をした10歳くらいの少女だ。特徴的なのはその真っ赤な頭と、色素を全て吸い取られたような白い肌、そしてボロボロの服だ。

 

 その少女を見ていると……なんだろう。

 初対面のはずなのに、どこか懐かしさを覚える。

 オレは降って湧いたような親近感を前にして、小さなとまどいを感じていた。


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