チート転生を断ったら、日替わりでチート能力を届けられるようになった   作:おもちさん

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第25話  アンケートはおふざけ厳禁

 

ドンガに言われたからか、それとも魔人王の記憶とやらがそうさせるのか。

住民たちがここの暮らしをどう思っているのか気になり出した。

そんな訳でイリアに作らせたのがアンケート用の木箱だ。

付属のアンケート用紙には予(あらかじ)め「良いところ」「悪いところ」「何かひとこと」の形式自由の質問3項目を設置しておいた。

これである程度みんなの考えがわかればいいんだがな。

 

 

ーー設置後の翌朝。

箱を確認してみると、意外にも多くの回答が寄せられていた。

ざっと見て10枚近く入っていることから、一日もしないうちに半数以上のヤツらが書いてくれたみたいだ。

早速確認してみよう。

 

今はみんな作業に出てる時間だから、部屋には誰もいない。

申し分ないタイミングだな。

 

オレは『イリアが片手腕立て伏せをしながら作ったテーブル』に箱を置き、『イリアが物真似100選を披露しながら作った椅子』に腰かけた。

気づいてはいけない、アイツの異常性を自覚してはいけない。

 

 

さて、記念すべき一枚目。

ちょっとドキドキするな。

最初のアンケートは綺麗でしっかりとした文字で書かれていた。

それだけで教養の高さと意思の強さが感じられるな。

 

 

ーーーーーーー

「良いところ」

再建が始まったばかりだが、富が公平に分配されている。仕事量も適正値のためか、不満を耳にすることがない。この調子で進めてほしいと思う。

 

「悪いところ」

部門によって、作業の進行スピードに差が生まれ始めている。人員の分配に問題があるかもしれない。

 

「何かひとこと」

取り立ててない。引き続き頑張ってほしい。

 

ーーーーーーー

 

お、意外と好評価じゃん。

作業の割り振りについては相談が必要だろうな。

 

さて、お次はどんなもんかな?

二枚目はなんというか、読みにくい。

独特な癖字で、書体が妙に丸く、文末にはイラストの様なものが描かれている。

なんとなく見当がついてしまったが……まあいい、読むぞ。

 

 

ーーーーー

「良いところ」

毎日のびのびと暮らせること。父親の顔を見ないで済む生活って素晴らしい!(ニコォ)

 

「悪いところ」

アイリスちゃんばかり構ってズルいと思う。もっと私の相手してよ(エーン)

 

「何かひとこと」

今度デートに行こうよ、景色の良い場所見つけたんだぁ(キラキラ)

 

 

ーーーーーーー

 

レイラじゃねえか!

匿名で書くものに「私の相手」とか書くな。

しかも全部自分の話だし、日記かよ。

これは無効票だこの野郎。

 

気を取り直して次。

今度はゆったりとした流れるような字で書かれているな。

これを寄越した人物はノンビリ屋なのか、字が上手いだけなのか。

 

 

ーーーーーー

「良いところ」

あなた様を見ているとムラムラします。

 

「悪いところ」

魂の底からムラムラします。

 

「何かひとこと」

今度ひと晩どうです?

ーーーーーーー

 

……ゴォォオッ。

 

オレは指先に火を灯して怪文書を焼き払った。

最高権力者にセクハラするんじゃねーよ!

達筆で書かれている分、異常性が増してんぞ。

 

 

それから中身を改めていったが、特に目立った意見は見られなかった。

毎日楽しいとか、生きるべき場所を見つけたとか、そんな内容ばかり。

 

そして最後の一枚。

そらには細かい字で余白にびっしりと書き込まれていた。

また怪文書かと思って警戒したが、そうではないらしい。

余分な言葉を省くとこんな内容になるか。

 

 

ーーーーーー

「良いところ」

毎日が楽しくて、充実していて、みんな優しくて、もう幸せです!

 

「悪いところ」

何もありません!!

 

「何かひとこと」

これからもっともっと勉強して、タクミ様のお役に立てるよう頑張ります!

ーーーーーー

 

 

なんとなく、手紙の向こう側に満開の笑みを見たような気がする。

そっか、そんなに楽しいか。

オレは回収したアンケート用紙を手近な袋にしまい、箱を設置場所へと戻した。

 

外に出ると数々の作業の音や、掛け声が飛び交っていることに気付く。

確かに暗い音色じゃないなと、ボンヤリ思った。

 

ーー夕暮れ時。

帰宅したアイリスには姫抱っこ、レイラにはケツビンタで迎えた。

二人とも理解が追い付いていなかったが、因果応報だ。

アンケートの内容に触れたら納得してくれたがな。

 

ただ一人、イリアを除いては。

少し首を捻りつつ、柔らかく抗議をしてきた。

 

 

「陛下、私には何もご沙汰が無いようですが?」

「何いってんだ。アンケートに答えたヤツだけにだって」

「ええ。既に返答済みなのですが」

「ん? それらしきものは何も無かったが……!!」

 

おい、お前まさか。

あの怪文書はイリアが書いたのか?!

 

オレは超人メイドの腹の内に悪寒が走った。

コイツが本気で襲ってきたら、撃退することは難しいかもしれない。

だが落ち着け、あれは無記名のアンケートだ。

どうか、オレの思い過ごしでありますように!


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