チート転生を断ったら、日替わりでチート能力を届けられるようになった   作:おもちさん

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第19話  5人ではじめる独立戦争

数日経ってからリョーガが戻ってきた。

なぜかシスティアを連れて。

別に呼んで来いなんて頼んでないんだが。

 

 

「スイマセン、タクミさん、ただいま戻りました。お取り込み中の様でしたら改めます」

「只者じゃないとは思ってましたが、まさかあなた様が魔人王だったなんて! 人間界はもう大騒ぎですよー?」

 

 

オレはというと、レイラに膝枕されながら二人を出迎えていた。

何故かアイリスと交代制になったこの膝枕だが、レイラの方はいくらか居心地が悪い。

恐らくコイツの腹の中にある、打算だとか不純な部分が気になってしまうからだろう。

オレはこれ幸いと身を起こした。

 

 

「んで、首尾はどうなんだ?」

「ハイ、例の檄文ですね。『グレンシルはいただいた、ここを返して欲しくば百億円もってこい。ーー魔人王』という文面の。確実に一般人にまで広まりましたが、円なんて単位この世界でも通用するんでしょうか?」

「そこは気にする所じゃない。魔人王がかつての領土を占拠したって事が伝わればいいんだ」

「スイマセン、理解が遅くて。そちらは問題有りません、現にこうしてここにいらっしゃる訳ですし」

「それそれ。なんでここに居んだよ?」

 

 

利用しろとは行ったが連れて来いなんて命令は出してないぞ。

システィアも平然とした顔してるし。

一体向こうで何があったんだよ。

 

 

「ええと、あの檄文を拝読してたら心を打たれちゃってですねー。ついつい量産して街中にペタペタと貼ってたら衛兵に捕まりかけてですね……」

「当たり前だ、バカかよ」

「魔人王の手下扱いされちゃって、リョーガさんと一緒に逃げてたんです。そこで話を聞くうちにピンっと来るものがあってですねー。ひょっとしてタクミさんと私は切っても切り離せない縁で繋がってるんじゃないですか?」

「ふざけんな、そんな繋がり一刀両断にしてやる」

「フム、おもねってもダメと……フムフム、色気の問題か? 次はより露出の高い服で迫ればあるいは……」

 

 

前回会ったときのように、虚ろな顔をしながら左手の形を変えつつ、ブツブツ呟いている。

あるいは、じゃねーよ。

つうか商人のクセに最低限の機転も利かねぇのかよ。

出来るオンナ風な見た目に騙されちまったな。

 

 

「身一つでここまで来ちゃいました! 養ってください。こう見えて役に立つオンナですよ?」

「はぁ、わーったよ。キチンと働いてもらうからな」

「お任せください。モノの管理から夜のお相手まで何でも申し付けちゃってください!」

 

 

もういい、シカトしとこう。

話半分くらいが調度良い。

ひとまず、建築に必要な資材数の計算と、それの管理でもやらせておくか。

それ以外についてはおいおい考えよう。

 

 

翌日の事。

高台の方からこちらを窺う集団が現れた。

5人程度の武装した小集団で、全員騎乗している。

おそらくコモゾークあたりの偵察だろうな。

 

オレは手頃な石を手に取り、ヤツラの足元に投げつけてやった。

それだけで馬の足元の土が盛大に弾け、しばらくの間隊列が乱れた。

これでオレの敵意は伝わっただろう。

スゴスゴと退散していった偵察隊は、次には軍を連れてくるハズだ。

 

しかし、思ったより敵の動きが早かったな。

せめて家と外壁くらい建てて見せつけたかったが、まだ家一軒が建ったのみだ。

その狭い家に、オレもケツじじいも魔人少女も残念魔術師も変な商人も顔怖おじさんも、みんな揃ってザコ寝。

見栄でも実用の面でも街の再建が急がれた。

 

 

さらに翌日。

今度は300近い軍隊のお出ましだった。

殆どが歩兵だが、装備の整った正規軍だ。

舐めてかかると面倒な事になりそうだ。

オレは後ろに控えていたアイリスとドンガに声をかけた。

 

 

「二人ともよく見ておけ。今日が魔人王の復活の日だ」

「タクミ様、派手にいきましょう。他のみんなの希望になるように」

「再臨した魔人王様のお力、お手並み拝見といこうかの」

 

 

オレは頭上高くに右手を向けた。

 

「穿て、炎龍!」

 

龍をかたどった炎が天高く舞い上がっていく。

ここまでは前回と大差ない。

今度はここが違うぞ?

 

「弾けろ!」

 

オレは開いた手を握りしめつつ叫んだ。

すると龍は赤い球状に様変わりし、赤い閃光を放ちながら爆発した。

 

光が強いためか、みんな手を顔の前にかざしている。

爆心地点から相当離れているにも関わらず、地上に降り注いだ熱量は凄まじいものだった。

まるで突然南国に吹っ飛ばされたような錯覚を覚えるほどだ。

 

 

光が収まると、辺りは静寂が支配していた。

敵も味方すらも唖然となる稀有な状況。

今は一応戦闘中だと思うんだがな。

算を乱した敵が一人、また一人と逃げ始め、最終的には全軍が壊走した。

今のは挨拶代わりだ、次は死ぬ準備をしてから来い。

 

 

「やったぁ! ニンゲンどもを撃退できました!」

「はぁ、これでもう私も人間世界に帰れないかもなー」

「レイラ、もし戻りたいなら魔人王にさらわれたと言って帰れば……」

「絶対にいーやー! あそこにだけは帰らないからね!」

 

 

そ、そうか。

あの親父には色々と問題が有りそうだが、娘にここまで拒否られると可哀想に見えてくるな。

 

 

ちなみにその夜、珍しいことに女神からギフトが送られてきた。

 

【いつでも美女枕】っていう、念じればいつだって好みの女精霊に膝枕してもらえるってスキルだ。

交換条件として、魔人王の力とオレのチートスキルを返せとの事。

 

コイツは心の機微がわからないバカなのか?

そういやバカだったな。


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