RWBY~俺は死にません~   作:傘花ぐちちく

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あらすじ
 気がついたら子供の体になって素っ裸のまま森の中に放り出された主人公。色々と人として大事なものを投げ捨てながら何とか3年弱生き延びて村に到着した彼は、このレムナントの世界の住人として、ハンターとして生きていくことに決めたのであった……。


一学期
一話ムラク・アルヘオカラ


 

 

 人間は塵より生まれ出で、このレムナントの大地に立った。

 

 人々は生の喜びを知り、次に恐怖に慄いた。

 

 レムナントで生きる限り、人々は残酷な怪物――グリムの脅威から逃れることは出来ない。

 

 人類は戦うための手段を持たなかったが、彼らに与えられた知恵はすぐにその選択肢に気づいた。

 

 彼らは牙と爪の代わりに武器を創造し、振るう力を自然のエネルギーから受け取ったのだ。

 

 そう、人が生まれたる(ダスト)から。

 

◆◆◆

 

 ヴェイル王国西の飛行場から、ビーコン・アカデミー行きの便が飛び立つ。ダストで動く四枚羽の飛行機は陸地を瞬く間に離れ、西に広がる海を眼下に収めつつ東のビーコンへ舵を切った。

 

 ヴェイルの高名なアカデミーであるビーコン。そこに入学する彼らは危険と死が隣り合わせの世界で、人類の守護者である『ハンター』となるための知識と技術を学ぶのだ。

 

 ハンター見習い達を乗せた船は期待と不安が入り混じり、彼らに未来の勇敢な自分の姿を想像させるのには十分な刺激であっただろう。

 

 当然、卵を乗せた船が激しく揺れ動く筈もなく、快適な旅を生徒に――

 

「うぅ、っぅぅうう」

 

 ――船酔いに弱い青年を除いて、提供した。

 

「おぇ……ぺっぺ。ぎもぢわるぅ……」

 

 ジョーン・アークはトイレでぼやく。

 

 鏡に映る青い目はリバース(ゲロ)で随分と疲れており、彼は口を洗ったついでに顔も濡らし、ぺたっと貼り付いた髪の毛を整える。

 

 ――ちょっとだけ漏れ(・・)たけど、服に付いてないからいいか。

 

「水だ。……大丈夫か?」冷たいボトルがジョーンの頬に押し付けられる。

 

「ああ、ありがとう……」

 

 ジョーンはボトルを受け取ると一気に半分ほど飲み下し、喉のゲ○を洗い流した。彼は顔を慌てて拭いて、親切な男に礼を言おうと顔を向ける。

 

「デケェ……」

 

 ジョーンが視線を上に向けて感嘆の声を漏らす。

 

 それもその筈だ。水のボトルを差し出したのはジョーンよりも頭一個分大きな男。首の筋肉ははち切れんばかりに膨れ上がり、隣りに居るだけで妙な暑苦しさと圧迫感を感じる。首から下は殆どがゴツゴツとした甲冑に覆われているのも息苦しさに拍車を掛ける。

 

 彼は老人の様な白髪で、黄色い目も相まってジョーンはタカのような印象を受けた。

 

「船酔いか? ああ俺はムラクだ、よろしく」

「お、おう」

 

 ジョーンはムラクの差し出した鋼鉄の手を握り返し、何となくだが苦手意識を抱える。ああ女神様、こいつは俺が関わらないタイプの人間だよ、と。だがちょっとだけかっこいいと思ったのは内緒だ。ちょっとだけ。

 

「誰に話しかけたら良いもんか迷ってたら、お前がゲーゲー吐いて居たから面倒見ついでにこうして水を持って『お友達になりましょう?』と言いに来たわけだ。横にならなくて大丈夫か?」

「ああ……えーっと、そのー、それはトイレで言う事か? 親睦を深めるなら、もう少し広い場所で話そうと思うんだが……な、アハハ……」

 

 更なる息苦しさでもう一度吐く前に、ジョーンとムラクは軽く話をしながら景色を望める船底に戻った。

 

 連続して空いた座席にジョーンが横たわると、その隣にムラクも座る。ムラクはゴテゴテとした鋼で覆われており、若干だが船の揺れとともにギィギィ鳴っていた。

 

 残念ながら、ジョーンの顔は親睦を深める前に青くなっていた。

 

「いや、君みたいな親しみのあるやつに会えて良かった。ジョーン、これから一緒のクラスになれるとサイコーなんだが、ズバリどんな娘が好みかまずは話し合おうじゃ……ジョーン?」

「悪い、少し静かにしてくれぇ……」

 

 実際、それはジョーンの悲痛な叫びであった。

 

 気さくでいい奴なのだろうが、今この暑苦しい金属男と話すのだけは勘弁願いたかった。主に吐き気で。

 

「ああ、悪かった。俺とお前の仲だ、何かあったら呼んでくれ。そこら辺できれいな景色でも堪能しているよ」

「おぇ……っぷ」

 

 ムラクは少しだけ寂しそうに肩を落とすと、窓の方へ足を一歩踏み出して何か(・・)に滑った。

 

「うおっ!?」

 

 滑って転倒しそうになったムラクは、自分が踏んだ何かに心当たりがあったので、

 

「やばいっ」ともう片方の足で踏ん張ってギリギリ耐えた。ゲ○まみれになるのは回避できたようだ。

 

 しかし、ムラクの巨体――特に人よりも長い足は目一杯横に広げられ、不幸なことに近くにいた赤いマントの少女の(かかと)を後ろから蹴飛ばしてしまう。

 

「きゃっ!」

 

 黒と赤が混じった髪の少女は予期せぬ衝撃にひっくり返り、彼女を蹴り飛ばした脚の上に倒れ込む。

 

「ルビー!」

 

 隣に立っていた長い金髪の少女が、女の子――ルビー・ローズの手を引っ張り上げると小さく唸る。

 

「ちょっとあんた、どういうつもり! 人の妹蹴飛ばすなんて!」

「あー、ヤンお姉ちゃん。喧嘩だけはやめてね」

 

 姿勢だけを見ればムラクのポーズは完全に黒である。彼は慌てて立ち上がり、頭をヤン・シャオロンとルビーに下げた。

 

「本当に申し訳ない、ゲ○に滑って転びそうになったんだ」

「……空の上で滑るなんて才能あるよ」

 

 ヤンが憐れみの視線を投げかけ、一歩下がる。だが彼女は元々陽気で面倒見の良い性格らしい、先程の事を水に流してムラクに話しかける。

 

「アタシはヤン、こっちが妹の……ほら、名前くらい言いなって」

 

 ヤンがルビーの背中を押すと、ルビーは二歩下がる。

 

「どうも、わたしルビー、よろしく……」

 

 人見知りなルビーはやや遠慮がちに言う。

 

「これは丁寧にどうも。ムラク・アルヘオカラです。お怪我はありませんか?」

「わたしは大丈夫、それよりその甲冑みたいなのって……」

 

 赤いマントに黒いドレスの少女、ルビーが汚物の付いてしまったムラクの甲冑を興味有りげな目で見つめる。ハンター見習いが持ち運ぶ仰々しい物は武器ではないか、という武器マニアのルビーらしい推測――これほど目立つ鎧なら誰でも分かるだろうが――事実それは的中していた。

 

「ほう、お目が高いな」

 

 ゲロを拭き取ったムラクは全身を覆う甲冑を見せつけるようにフロントダブルバイセプス――両腕でガッツポーズを作り前面を強調するポーズ――を一瞬だけ決めた後、

 

「うわぁ……」ルビーが引いて、

「そういうのちょっとムリ……」ヤンが酷評する。

 

 片脚を上げて武装を説明し始める。

 

衝撃貫通型加速(アクセルピアシング)アーマー――【ヴークゥ・フン】だ。点の破壊力を拳と脚で発揮するんだが、それをサポートするのが背中についた四門のジェット……バーニアだ」

「わぉ……重くないの? すごく使いにくそうだけど」

 

 地面を蹴り上げる脚部の機構と、打撃の威力を高める為の衝撃を放つハンマーパーツ、全体的にゴツゴツと尖っておりその分鉄が使われている。

 

 ルビーも初めて見る形態の武器だ。普通のハンターはこんなものを着て戦ったりはしない。ついでに言えば射撃もできそうにない。

 

 そもそも、武器は個人の身体能力やセンブランス(特殊能力)に合わせてあるので、万能性が必ずしも必要なわけではない。尤も、あるのと無いのとでは天と地ほどの差があるだろうが。

 

 あれこれと説明するとドン引きされそうだったので、ムラクは語りたい衝動をグッと堪えて簡単に表現した。

 

「慣れれば楽だ、ぶっ飛べば下手な大砲よりヤバい」

「へぇー、随分とブッ飛んでるわけだ」

 

 ヤンが感心したようにコンコンと表面を指で叩く。

 

「勿論、そこら辺のパイロットより飛んでるぜ」

「それどういう意味?」

「飛べるんだよ。こうやって……アチョー!」

 

 ムラクは軽く演舞をして、重さを感じさせない機敏な動きを見せ、ひょうきんに笑ってみせる。スッと止まると、ルビーに向き直った。

 

「それでルビー、君の武器は何だい?」

 

 ムラクが尋ねるやいなや、ルビーは待ってましたと腰の後ろに下げたものを展開、大鎌を披露してスラスラと説明しだす。

 

「この子は【クレセント・ローズ】、大口径狙撃鎌(ハイキャリバースナイパーサイズ)で、見ての通り自由に変形できるの。ペラペラペラペラ――――」

「おぉ……エクセレント! これを扱うには骨が折れそうだ」

「うん、骨ごとイケるよ。スッパリとね」

 

 ムラクはルビーだけは怒らせないよう心に刻んだ。

 

「それで、ダンテライオンの君は一体どんな武器を使うんだい?」

「それアタシに言ってる?」ヤンが微妙な顔をする。

「勿論。見たところガントレットだけど……」ムラクが言葉を濁す。

 

 ムラクは母親の機嫌を伺う子供のような表情で、悪意はない。ヤンは未来の友達の為、ビーコンに着いてすらいないのに人見知りのルビーに友達が出来るかもしれない、あわよくばルビーにドンドン知り合いが出来て人生ハッピー大成功! という事を期待していた。

 

 ムラクは若干武器オタクの気質が混じっているようだが、それはルビーにも似たようなところがある。

 

 ヤンは可愛い妹の為に一肌脱ぐことを決め、自分の武器【エンバー・セリカ】を構えてみせた。

 

◆◆◆

 

 暫く三人でお喋りに興じていたが、ムラクは腹の音を盛大に鳴らし、そそくさとその場を離れる。

 

(朝食をテキトーに済ますんじゃなかった……ブロンド髪のあんなに可愛い子(ヤン・シャオロン)の前で格好悪い所を見せちまったぜ)

 

 簡単に言えば一目惚れである。

 

 彼は二リットルも水が詰まった水筒にプロテインを三人分は注ぎ、シェイクして一気に飲み干した。

 

 ムラクのエネルギー消費量は相当大きなものである。分かりやすく言えば、ヨコヅナより高くて重いから一日七食は食べないと身体が持たないのだ。

 

 空腹を満たした彼は、今更戻るのもアレだし……とニュースを見て時間を潰していた。コミュ障である。

 

『ローマン・トーチウィックの情報を――』

 

 ムラクはスクロール――薄型スマホよりもスマートで軽くてコンパクトな画期的製品――に入ったゲームで暇を潰そうと考えていたが、オタクだと思われたくはなかったのでやめた。

 

 退屈な時間というものは実に貴重だ、とムラクが噛み締めて――友達が全くいない儚さに嘆いていると、

 

『ファウナスの市民権を得る抗議活動はホワイトファングの乱入によって中止に――』

 

 大きなガラス窓に投射されたニュースは突如として途切れ、レモン色の髪をした女性が投影される。

 

 グリンダという名前で、ビーコン・アカデミーの誇る優秀な教師の一人だ。

 

 ムラクは記憶の片隅で薄っすらと覚えがあった――ルビーやヤンに関しても同様である――ものの、特に詳しいという訳ではなかった。何せ彼にとってRWBYという作品、レムナントという世界は十年以上前のものである。風化した記憶のカケラで、実際にその世界に生きている以上空想の産物と同じような処理(忘却)がなされている。

 

 彼は確かに自分のことを異物だと認識していたが、この残酷なレムナントの大地で生活し、そこに芽吹く命を己の目で見ながら生きてきたのだ。今更ウダウダと何かを言うことはないが、まさか自分がルビー達と同じ学年であるとは露ほども考えていなかった。

 

 生徒は投射されたグリンダの周囲に集まり、彼女の短い話を聞く。

 

 彼ら見習いハンター達はそれがある種の合図であり、何かを知らせるものだと気付いた。

 

「わお、ビーコンだ!」

 

 誰かが叫ぶと皆一斉に窓際まで駆け寄り、行先のビーコンを見ようと外を覗き込んだ。

 

 ルビーとヤンも眺めており、ムラクも興味本位で窓を覗き込む。

 

「ほー、こりゃ絶景だ」

 

 崖の上に建ったアカデミー。都市を横断する大河川の門扉に建てられたその学校は(まさ)しく砦であり、守護者を育成する建物としては最適であった。その背後に聳える大陸間通信タワー『CCT』の眺めも最高だ。

 

 ここは、グリムに対する防御の最先端にあると言っても過言ではない。技術と意思が詰まった場所なのだ。

 

「いいね、マジサイコー」

 

 ムラクは自分の血が騒ぐのを感じていた。

 

◆◆◆

 

 入学式は観客席付きのメインホールで行われた。ムラクと同じ新入生らしき人が随分な数集められると、壇上に二人の人間が上がる。

 

 一人はグリンダで、もう一人は歳を取った男性。灰色の髪とサングラスが特徴の――オズピン教授だ。彼がマイクの前まで来ると、耳鳴りのような反響音が会場中に響く。

 

『手短にいこう』

 

 オズピン教授が言うと、近くの男子生徒二人が「こういう話が短くなる訳がない」と囁きあっていた。

 

『君たちは知識を欲している。己に磨きをかけ、新しい技術を手に入れる為に。……そして卒業し、人々を守るために人生を捧げるだろう』

 

 彼は新入生達の目的意識が薄くなっているだろう、という事を話した後で、それを解決するに足りる知識を授けることを約束した。

 

 オズピン教授のスピーチが終わると、今度はグリンダがマイクの前に立ち、

 

『今夜、皆さんは舞踏場に泊まります。明日から訓練が始まるので、準備しておくように。……では解散』と言った。

 

 全員がざわざわと騒がしくなると、ムラクはどうしたものかと頭を悩ませる。知り合いの居ない中で眠るのはゴメンだ――と思っていると、先程の男子生徒二人がムラクに話しかけてきた。

 

「やぁ、君。意外と手短だったとは思わないか?」

 

 キザな茶髪の男と、年に対して――おそらくは十七歳――小さな男がムラクの前に来る。

 

「思うね、コンバットスクールだと寝る奴が居たぜ」ムラクが返事を返す。

 

「総合的に考えて、スクールのボンクラ教師共よりは余程優秀なハンターであるみたいだな」小さい男が尊大な態度でオズピン教授を評価していた。

 

「成る程、俺はムラク、よろしくな」

「僕はエレファンスさ」とキザな奴。

「フン、ナヴィーだ。馴れ合いはせんぞ」と体格の小さい男。

 

 ムラクは話しかけられた事が妙にむず痒く、よく口を回して若者特有の会話を楽しんだ。

 

◆◆◆

 

 ムラクは早速、気取り屋のエレファンスとチビのナヴィーという友人ができてご満悦であった。

 

 トレーニング施設、シャワールーム、丘陵に近い立地、広い食堂と図書館、名門であるビーコン・アカデミーの名に相応しい設備の充実ぶりは、ムラクがこれからの生活は明るいものに成るであろうと確信するに足るものだ。

 

 唯一の不満があるとすれば、それは食事の回数であった。学費を払えば食堂の営業時間の限り食べ放題なのだが、昼休みは一回だけで間食の時間が無いのだ。

 

 なので、彼は初日だと言うのに新しい友人に引かれる程度の量を食べなくてはならなかった。七回を三回に収めるのはやや厳しいものがあったが、プロテインのおかげもあって無事に済んだ。

 

 そしてもう一つ、ムラクは寮生活においてツァーリ・ボンバ級の爆弾を抱えていた。

 

 夜半。舞踏場に集められた新入生は皆ぐっすりと眠りについており、起き上がった二百二十六センチの男――ムラクを見つめる者は居ない。

 

 彼は水がなみなみと注がれたバケツを小脇に抱え、トレーニング用の格好で一人、夜のアカデミーを駆ける。三つ編みの長い白髪が尾のように伸び、彼の後を追いかける。

 

 極力誰かにバレないよう、水を零さないよう裸足で疾走する。多少の不信感は持たれても構わないが、知られるのだけは絶対に避けたかった。

 

 巨大な大陸間通信タワーの光と欠けた月の光、立ち並ぶ寮の灯だけが彼を照らしている。

 

 ムラクは目的を果たせそうな場所を走りながら探し、石畳を蹴って出来るだけ建物がなく遮蔽の多い場所を目指した。

 

 暫く走って、街路樹が立ち並び茂みの生い茂る場所を見つけると、周囲に目がない事を確認してから飛び込んだ。土がむき出しになった所で、夜行性の虫達が彼と反対方向に逃げ始めた。

 

 ムラクはバケツの水を手の平の器二杯分掬うと、土の上に()いて子供が泥団子を作るように泥をこね始める。

 

 それを『一口サイズ』にすると、いくつも並べては繰り返す。ムラクの前に現れた虫は即座に潰され、泥団子の中に『具材』として放り込まれた。

 

 ムラクはバケツの水を八割程使うと、泥団子を口の中に詰めて咀嚼し始める。五~六個程食べては水を飲み、また泥を食べて水を飲み、時折茂みの枝と葉を口に詰めて同じように飲み込み、『食事』をとっていた。

 

 ピチャ、ピチャ。ギチィ。ガギャリ。

 

 泥を食べる度に不気味な水音が鳴る。昆虫は死ぬ間際にギィギィと泣いて、噛み砕かれると枝を折るような音を立てる。葉は毟られる度に茂みを揺らし、心臓の弱い者が通りかかれば卒倒するだろう。

 

 誰がどう見ても異常でしかない食事風景、だがこれはムラクにとっては必要なことであり、生きていくために週一回は泥を食べなければならなかった。

 

(絶対にバレてはいけない……。俺のセンブランス、《再生と抵抗》は死の間際から復活する度に「耐性」を授ける……サイ○人みたいなモンだ)

 

 彼は二百二十センチ近い身長と百九十キロ弱の体重、その殆どを筋肉と高密度の骨で構成しているが、文字通り『人間離れ』しているのだ。

 

 彼が復活の度に得た耐性は、彼を死から遠ざける様な強靭な肉体を授けたが、そのために必要な栄養分を土や昆虫から摂取しなければならない。

 

 皮膚は岩石のように硬く、弾性と柔軟性がある。

 

 肉体はオーラと呼ばれる生命エネルギー――身につければ盾になる力――が無くとも、弱いグリムなら決して負けない程にタフである。病原菌等にも耐性があり、内蔵も頑丈だ。

 

 オーラ量も文字通り十人前。莫大な量を抱えており、お陰でコンバットスクールでは負け無しだった。ハンターとしての必須技能であるオーラ操作は、彼のセンブランスとは関係なく長けていたが。

 

 その代償として――否、当然の帰結として、土も水も昆虫も毒でさえも喰らわなければならない。普通の食事でさえも大量に食べなければならない。栄養分を過剰だと思えるほどに摂取しなければならないのだ。

 

 ムラクは――人々に恐れられる事や迫害される事だけは絶対に避けたかった。

 

 誇り高い、人類全ての守護者たるハンターが畏怖や嫌悪のこもった目で見られるなど、ハンターになる為に今まで鍛錬に堪えてきたムラクにとって最大の屈辱であった。

 

「よし、口は洗った、泥も葉もついてない、汗を拭いたように見せかけるタオルも用意した、周囲には誰もいない、手も拭いた」

 

 一つ一つ、導火線がバレていないか慎重に確認すると、人がいないことを確認して茂みから出て、今度はゆったりと歩いた。初めての場所で、自分の最もデリケートな任務を遂行できた事が大きな喜びなのだ。

 

 レムナントの空に浮かぶ砕けた月だけが見ている。ムラクは新しい世界に生きる喜びを、月を見る度に噛みしめるのだった。

 

 

 




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※個人的考察ポイント1「ビーコンまで、ルビー達はどのような経路で来たか?」
 ヴェイルの商業区「西」から飛行機でヴェイルのビーコンまでと予想。ビーコンのある都市は世界地図見ると横長で、その距離を一気にパッチ島から飛んでくるとは考えにくい……それに近いなら乗り物には乗らないのでは?ということで都市西部からやって来たとこの二次創作では判断しました。
 Youtub○本編S1E1の「シグナルが見える!」というセリフがあり、尚且つ船内でヤンと再開するシーンがありましたので、離陸直後の飛行機でヤンとバッタリ会って、上からシグナルアカデミーが見えた……と判断。
 商業区の根拠はローマンに襲われた(S1E1)ダストショップの位置が商業区であり(英語版wikiヴェイルの項目参照)、何らかの理由でルビーはそこにいたと推測できるため。
 如何せん時間の軸が曖昧なのでこの二次創作はそういう設定で通しました。

※漏れた……ゲロが床に散ったの意味
※なんでヤン姉と仲良く話してるんだ(怒)……コミュ強ですし、同じビーコン生だから仲良くしようという心理が働いた説。初手謝罪とゲロのお陰でもある
※ジョーンのゲロのタイミングがずれてます
※武器これ、何か知ってる……多分あってます
※ペラペラペラペラ……めwwwっwwwちwwwゃwww喋wwwっwwwてwwwるwww という感じの表現
※ヨコヅナ……スモウ・レスラーの頂点。大体150キロはある
※随分な数の生徒……S1E3では教授の演説時に人影が映っていますのでそこから大まかに百人前後かな~、と予想しました。この二次創作では
※「スクールのボンクラ共よりは……」という台詞……教師も玉石混交だろうが、アタリの割合がグッと高いことを期待している。話一つでここまで印象が変わるとは、チョロイ
※大陸間通信タワー……大陸同士での通信を可能にする施設。大気圏外ではダストが働かないため、レムナントの人類は宇宙進出を果たしていない。高さと存在を主張したかった名前。
※オーラ……波紋とかフォースとか、そういう感じの特別な力。ハンターの必須技能。研ぎ澄ませることでセンブランスという個人に特有な力を発生させることも出来る。
※ダスト……火とか氷とか雷とかいう属性のあるエネルギー。取扱い注意。

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