世の中に たえて光のなかりせば 藤の心はのどけからまし   作:ひょっとこ斎

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第27手 プロ試験 その3

 ヒカルが伊角さんと対局した翌日の日曜日。

 ヒカルはフクくんと対局。他に注目するところは和谷くんと伊角さんの対局くらいで、それ以外には上位同士の潰し合いは発生しない。

 

「ありがとうございました」

 

 外来の人に勝って周りを見ると、ヒカルも伊角さんたちも終わっていた。

 部屋にヒカルがいなかったので、ハンコを押して、部屋の外に出る。

 

「藤崎、どうだった?」

「勝てたよ。ヒカル知らない?」

「あっちで座ってるぞ」

「あ、ほんとだ。和谷くん、ありがとう。そっちはどうだった?」

 

 和谷くんはあまり浮かない顔をしていたので、負けたんだろうな、と思いつつ結果を聞く。

 

「勝ったよ。伊角さん、なんだからしくないっていうか、碁盤に意識が向いてない感じだったんだよ」

 

 勝ったのに伊角さんの心配しているとは、本当に和谷くんは人が良いよね。伊角さん、昨日ヒカルに負けたのが響いてるのかな。気になると言えば気になるけど、私ができることなんてないだろう。

 

「負けを引きずっているのは、周りから何か言っても逆効果だったりするし、様子見するしかなさそうだね」

「ああ、そうだな。自分の碁を見失っても、自分で立ち上がるしかねえよな」

 

 和谷くんは私の言葉に頷いて、挨拶をして帰っていった。

 

「ヒカル、お待たせ。どうだった?」

「ああ、危なかったけど、フクがミスしたのもあって勝てたぜ」

 

 フクくんには悪いけど、ヒカルが危なげなく勝てると思ってた。週末、ヒカルには大一番が待っているし、もし不安があるようなら取り除いてあげたい。

 

「そうなんだ。内容、聞いていい?」

「あー……そうだな、帰ったらな」

 

 一瞬、嫌そうな顔になった。あっ、これは何か、ポカをしたのかもしれない。それで佐為に何か言われたのかな。駄目なところを見つめ直すのも大事ですよ、とか何とか。

 明日美さんや周りの人に挨拶を残して、ヒカルと一緒に棋院センターを出た。

 並んで歩いていると、だいぶ目線が並行に近づいてきた。まだ少し私の方が背が高いけど、来年には抜かれちゃうんだよね。

 

「なんだよ、じろじろと」

「んー? ヒカル、背が伸びたなぁって」

「嫌みかよ、お前の方が高いじゃねえか」

「女の子の方が成長が早いからね。来年の今頃には追い抜かれてるよ」

 

 小学生の頃は、圧倒的に小さかった。中学に入ってからもなかなか伸びなかったけど、ここ数ヶ月で、一気に伸びてきた気がする。

 成長期って凄い。

 

「だといいんだけどなぁ」

 

 ふふふ、身長を気にしてるヒカルも可愛い。プロ試験は大変だけど、こうやってヒカルとずっと一緒にいる日が、永遠に続けばいいのに。

 って、現実逃避をしてもしょうがない。

 

「ヒカル、もし小さいままでも、プロになったらモテるよ、きっと」

「モテるぅ? いや、それはうざってーだけじゃんか……」

「そう?」

「なんだ、お前モテたいの?」

 

 そんなわけない。というより、ヒカルにモテたいよ。

 

「別に不特定多数にモテても、嬉しくないかな」

 

 ふーん、って興味なさそうにしてる。ヒカルの場合、フリじゃなくて本当に興味ないんだよね。一歩だけ、踏み込んでみてもいいよね?

 

「ヒカルと一緒にいられたら、それでいいの」

「なんだそれ。まぁ、お前といるのは他の奴より楽だけどな」

「頑張って、一緒にプロになろう」

 

 いまいち伝わってないけど、こんな言い方じゃしょうがない。告白するのはプロになってからで、今は碁に集中しなきゃ。よそ事で気を散らせちゃったらいけない。

 

「明後日はともかく、来週末は大変だよ」

「ああ。門脇さんって人もここまで越智にしか負けてないし、奈瀬だってそうだな。連戦ってことを考えると伊角さんとの一戦より大変かもな」

 

 確かにそうかも。伊角さんとの対局より、和谷くんと越智くんとの連戦の方が大変だった。

 私が先に門脇さんと対局していればアドバイスができたかもしれないけど、ヒカルの方が先だから、私からは何も言えない。安定しているのは分かるけど、打ってみないとどんな碁を得意とするか分からないし、安易な言葉は逆効果だろう。

 

 

 家に着いて、さっそくヒカルに今日の対局内容を聞く。

 危なかったと聞いて心配していたけど、フクくんとヒカルがいつも通り早碁で打ったのと、あまり変わってない。これなら問題無さそう。

 

「ヒカルもところどころ打ち損じてるけど、フクくんがここで間違ったのが大きいね」

「あー、そうだな。俺も左辺の死活を、もうちょっと時間かけて考えりゃ良かったんだけど。久しぶりにフクと打ったから、調子良く打ってるうちに、つい」

 

 勝てたから良いようなものの、ついで負けたら悔やみきれないよ。ヒカルも分かってるみたいだし深くは突っ込まないけど。

 検討は早めに切り上げて、ヒカルと私で一局打つ。私が白石を持って打っていると、まるで佐為のような手が目立つ。盤面全体を見る力が上がってるのかな。

 

「……そこ、上手く打ったよね」

「あ、やっぱりそう思う? へへん、俺だってお前や佐為に負けっ放しじゃないぜ」

「私は塔矢くんほどじゃないし、今のところ負けてないけど、確実に勝てるってほどじゃないよ。でも、佐為には勝てないよね」

「う、そりゃまあ、勝ててねえけど」

 

 もし本気の佐為に勝てる実力があれば、私は当然、今の塔矢くんでもあっさり負けちゃうよ。

 

「でも、油断してたら負けるかもしれないだろ」

「それはそうだけど、佐為って碁で油断するような性格?」

「あー。碁では一切妥協しねえよな、こいつ」

「だよね」

 

 実際に話したことはないけど、ヒカルを通じて会話する分には、凄く真面目な性格。それに碁を打ってると分かるけど、指導の仕方も優しい。

 その一方で、碁に関する妥協は一切ない。この前、部屋に入って塔矢先生の棋譜が載った新聞が床が見えないほど散らかっていたのはビックリした。

 ヒカルがおばさんに怒られてたけど、あれは佐為が原因だったし。

 

「2目半差かな?」

「ちぇ、もうちょっとだったのに」

 

 実際、いつもより上手く打たれたというか、本当に読みが鋭かった。試合ごとに、ヒカルは上達している気がする。

 私とヒカルの対局の検討も済ませると、随分と遅い時間になっていた。わぁ、早く帰って明日の学校に行く準備もしなきゃ。

 

「和谷の言うように、碁の勉強してたら学校の勉強なんてしてらんねえよな。まあ、プロにさえなれば、卒業できりゃいいんだけどさ」

「でも、ある程度勉強しておく方がいいよ。絶対どこかで役に立つと思うし」

「えぇ、かったりぃよ」

「今はしょうがないけど、プロ試験終わったら、一緒に学校の勉強もしよう」

 

 金子さんとか、凄く頭が良かったから、また教えてもらいたいくらい。あまり接点がないから、今さらどうやって仲良くなるかが難しいけどね。

 

「じゃあ、また明日」

「おー。さっさと寝ろよ」

 

 うん。棋譜を書いたら、今日は寝ます。

 

 

 火曜日の第14戦、私とヒカルは院生下位の子に勝って、伊角さんも3連敗せず、フクくんに勝った。フクくんは相変わらずの早碁で、早々に決着がついて2人とももう帰っている。

 そして3敗の和谷くんと1敗の越智くんは、越智くんに軍配が上がった。ヒカルが勝った直後に、越智くんがハンコを押しに来ていた。何か少し話していたけど、何にでも首を突っ込んでウザがられても困るし、自重しておく。

 席の方に目を向けると、碁盤の前でうなだれている和谷くんの姿。ヒカルに目配せをして、一緒に和谷くんのところに近づく。

 

「和谷くん」

「藤崎か。いい感じに打てたと思ったんだけどな。終盤、細かい碁になって、半目差で負けたよ……」

 

 うわ、それは悔しいよね。半目差っていうのは、本当にほんの僅かな差でしかない。ちょっとした揺らぎで勝ち負けが変わる。それでも、負けた事実は覆らないのが勝負の常。

 これで和谷くんが4敗。本田さんも4敗で、伊角さんが3敗。

 私とヒカルが全勝で、1敗ラインに明日美さん、越智くん、門脇さんの3人が並んでいる。

 このあたりが現状で合格できる可能性がある範囲だと思う。

 とはいえ、私を含めて1敗までの5人が全員落ちていく可能性は極めて少ない。

 

「俺は残っている上位は進藤くらいだからな。他力本願だけど、上位でうまい具合に潰し合ってくれたら可能性はあるし、諦めちゃいねーよ」

「うん。でも俺だって、簡単には負けねぇさ」

 

 和谷くんの一番の長所は、この前向きさだと思う。人間、負けた直後とかは駄目なところに目が行きがちだけど、和谷くんは違う。楽観的というわけでもないのに、良いところを探すのは本当に凄い。

 

「藤崎と進藤、俺はこれから森下先生の研究会に行くけど、お前らはどうする?」

「え? いや、俺はいいよ。あかりは?」

「私も遠慮しとく。和谷くん、しっかり先生に稽古つけてもらって」

 

 あ、今のは上から目線で、ちょっと嫌みっぽかった。

 

「ごめん。今のは感じ悪いね。私はヒカルと打ちたいから、時間がなくて森下先生のところには行けないんだ」

「あはは、分かってるよ。別にそんなの気にしねえって。お前らはそうやって2人で打ってるのが1番だろうからな」

 

 ひらひらと手を振って、部屋を出て行った。

 そういえば、明日美さんの姿が見えない。もう帰ったのかな。同じく院生女子の佐々木さんに聞くと、さっき慌てて帰っていたとのこと。用事でもあったのかな。

 後で電話してみようかな。

 

 

「ごめんね。対局が終わってたら声をかけようと思ってたんだけど、あかりちゃんも進藤も、まだ対局中だったから」

「ううん。何か急ぎの用事だったの?」

「うん、まあ」

 

 歯切れが悪い。気になる。怪しい。

 

「……明日美さん、もしかして彼氏ができた?」

「えぇ!? いや、塔矢くんはそんなんじゃないよ!」

「へぇ」

 

 やっぱり塔矢くんと会ってたんだ。研究会の日でもない、プロ試験の直後に。

 でも、彼氏かどうか聞いて否定したってことは、付き合ってるわけじゃないか、隠したがっているか。

 

「うーん、もうしょうがないか。でも、誰にも内緒にしてくれる? それこそ、進藤にも」

「うん。じゃあやっぱり?」

「何がやっぱり? 違うよ、想像してるのと全然違う。塔矢くんにね、かなりしっかり指導碁を打ってもらってるの」

 

 それは確かに予想外。……とまでは言わないかな。ここ最近、明日美さんの碁が凄く上達している。石の筋がしっかりしてきたというか。

 それでいて、攻撃的な場面ではしっかり攻めていた。そうか、塔矢くんの碁に少し似ていたんだ。

 

「それは勉強になるね。塔矢くん、教え方上手いの?」

「うん、凄く上手い。それとね、院生のレベルを確認したいからって、越智にも1回だけ教えに行ったみたい。客観的に教えただけって言ってたけど、どんな碁を打ったのかな」

 

 くすくすと笑いを漏らしながら、明日美さんが教えてくれる。

 越智くんと塔矢くん……。確かに、2人とも意地っ張りで、どんな指導碁になるのか見当も付かない。

 

「それと、塔矢くんは不思議なことを指示してきたのよね。あかりちゃんにも意見を求めたいけど、ごめん、来週の進藤との試合が終わってからでいい?」

「うん。もちろん。塔矢くんと秘密にしようって言ってたんだよね、根掘り葉掘り聞いちゃってごめんなさい」

「ううん、大丈夫。別に秘密にしたかったわけじゃないから。ただ、やっぱり私だけずるいって我ながら思ったから」

 

 ずるい? 明日美さんが?

 

「元々塔矢先生の研究会に行ってたのは、あかりちゃんなのに。塔矢くんが教えるにしても、あかりちゃんを教えずに私だけっていうのはね。塔矢くんに聞いたら『藤崎さんには僕の指導なんか不要だから』って言われちゃったんだけどね」

 

 そう、なんだ。それは、喜んでいいのかな。

 そして、明日美さんの現状でずるかったら、小6の終わり頃からずっと佐為に打ってもらっている私は、もっとずるい。

 

「もっと聞きたかったけど、今は他人を気にしてる場合じゃないって言われちゃってね。確かにそうだと思ったし、待っていても合格枠は降ってこないし、塔矢くんに迷惑をかけることになってでもつかみ取りたいって思ったの」

「うん、それがいいと思う。勝つのが大事だからね」

 

 私とヒカルにとって強敵なのは間違いないけど、もし明日美さんと一緒に合格できたら、それは凄く嬉しい。

 ヒカルと私。そして、和谷くんと明日美さん。特に親しくしている人だけでも、3枠に入らないんだから、本当に狭き門なんだよね。

 私が全勝でいることが信じられないくらい。

 

「じゃあ、また金曜に。本当に言わないでね?」

「うん、ヒカルにも言わないし、金曜も知らない顔しておく。安心して」

 

 電話を置いて、少し考える。塔矢くんは、明日美さんを応援してるのも確かだと思うけど、きっとそれ以上にヒカルを気にしている。

 小6の時に2度、指導碁もコテンパンにやられたのも忘れるわけがない。きっと聞きたくて仕方ないはず。あの碁は何だったのか、と。そして横で見ていた私にも、何を知っているのか聞きたいはず。

 いつか、ヒカルが塔矢くんに言う日は来るのかな。

 

 

 そして土曜日。ヒカルと門脇さん、伊角さんと越智くんの対決。

 門脇さんは、鼻の形が少し特徴的な顔立ち。女の子を見る時、鼻の下が伸びている時があったりするけど、強いのは確か。棋力だけで言えば伊角さんと同じくらいかな。大人だけあって、負けを引きずらないところとか、調子の波が少ないのが長所だと思う。越智くんに負けた後も、飄々としていたし。

 その越智くんは、碁盤を挟んで伊角さんと向かい合っている。何か話しているけど、伊角さんが珍しく睨んでいる。あそこ大丈夫かな。ちょっと心配。

 

「よろしくお願いします」

 

 時間がきた。まずは自分の対局に集中しなきゃ。今日は外来の人と対局だけど、相手はあまり勝ち星が稼げていない。実際に対局してみても、ちょっと力が劣る感じがする。院生の下位と同じか少し弱いくらい。

 そのまま、危ない場面も特になく、順当に勝利を収めた。

 周りを見ると、越智くんと伊角さんも、ヒカルと門脇さんもまだ対局中だった。まずは越智くんと伊角さんの対局を見に行く。地を重視する越智くんに対して、深く荒らしに行く伊角さん。力強く踏み込んでいて、あの左辺の白は一見取れそうで取りに行くとしのげる良い手。少し見ていると、越智くんは左辺に手を入れて、案の定しのがれていた。これで、大勢は決したかな。

 顔を上げると、明日美さんと目があった。ハンコを押しているので、勝ったみたい。

 

「あかりちゃーん、勝てたよ」

「おめでと。ヒカル見てくるね」

「あ、私も行く」

 

 ぼそぼそと無声音で会話して、ヒカルの方へ向かう。実は、さっきからかなり厳しい顔をしていたから、邪魔になっても悪いと思って行きにくかったんだよね。ただ、集中していたら周りは関係ないし、邪魔そうなら離れればいいかな。

 盤面を見ると、五分というには、ヒカルがハッキリと悪い。ヒカルの石、繋がりが絶たれているところが少しあって、無駄になっちゃった手が散見される。

 これは後から化けさせる手も混ざっているんだろうけど、門脇さんに上手く打たれて、有効に生きなかったんだろう。このまま行けば負けてしまうけど、だからといって、この盤面から取り返せる手が思い浮かばない。

 

「……負けました」

 

 かなり巻き返したけど、ヨセに入って、コミを含めて7目半ほど差がついていた。

 ヒカル、凄く悔しそう。あとで、できるだけフォローして、明日の試合に向けて気持ちを切り替えられるにしなきゃね。

 気がつくと、明日美さんが離れた場所で、和谷くんと話していた。気を遣ってくれたのかも。

 

「ヒカル、お疲れ様」

「あー。門脇さん、強かったぜ」

「うん、途中からだけど見てた。後で、序盤の流れも教えてくれる?」

 

 石の形でだいたい分かるけど、聞いてみると結構思っているのと違ってたりもする。

 ああ、と頷きを返してくれたところで、門脇さんが戻ってきた。

 

「おや、こちらの嬢ちゃんはお友達?」

「うん」

「こら、ヒカル。はい、藤崎あかりです」

「うん、名前も碁の強さも、よく知ってる。今まで無名なのが不思議なくらいだ。こっちの進藤君も相当強いけどね」

 

 相当強い、か。言い返したい気もするけど、今の時点で言えないし、私が言うことでもない。

 ヒカルもぐっと堪えている。負けた後じゃしょうがないけど、とりあえず帰ろっか。

 

「では、お先に失礼しますね。ヒカル、行こっ」

「おい、あかり」

 

 なんだよ、勝手だなって言われたけど、ヒカルには言われたくない気がする。

 かなり自由に動いてるよね。

 

「……佐為のやつ、今日の負けは実力というより、ちょっと調子に乗っていたんじゃないかって言うんだよ」

「へえ?」

「地味だけど堅実な一手を打つべきタイミングで、無理な手を打ってたって。帰ってから、ちょっと検討するから、一緒に考えてくれよ」

「うん、もちろん」

「明日は奈瀬との対局だし、あまり悠長にしてらんねえけど、とりあえず負けた理由はハッキリさせたいからな」

 

 ヒカル、負けたこと自体は悔しそうだけど、引きずっている感じではない。良かった、これなら大丈夫そう。

 

「碁の勝負は、気の持ちようが大事だよね。変に硬くなったり勝ちを意識しすぎると、普段通り打てずに負けちゃったりするし」

「そうだな。普段通り打つのって、難しいな」

 

 今日のヒカルの負けも、勝ちたいって気持ちが前に行きすぎたから。普段通り打っていれば勝てたと言い切るわけじゃないけど、あんな言い方はされなかったと思う。

 

「ヒカル、明日美さんは強敵だけど、頑張ろう」

「おう、連敗したくねーし、勝ってやるさ」

 

 そして、ヒカルといつも通り打って、だいたいいつもと同じ時間にヒカルの家を出た。

 あえて普段通りの行動にしようと声をかけあったりしていない。いつもより気合いを入れていると失敗するし、意識しないように「いつも通り」と言い続けるのも、いつも通りじゃない。

 本当に心って難しいね。

 いつかヒカルに告白する日は、私は冷静でいられるのかな。プロ試験より緊張しそうな気がする。


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