テイルズオブベルセリア~True Fighter~ 作:ジャスサンド
「業魔から別の業魔になった?」
霧が薄れ姿を露にした魔人にベルベットは困惑する。
人から業魔になった現象には見慣れているが、業魔からまた異なる姿になるなどお目にかかったことのない現象だ。
魔人-ジャグラーはナターシャ業魔の亡骸から太刀を引き抜き、刀身にへばりついた血を自らの手のひらで撫で落とす。
赤く染まった掌に目を落とし無言のまま佇むジャグラー。
見つめていた手を下げ、自身の周りの業魔に目を合わせると
「ああああっ!!」
業魔たちに斬りかかる。
心臓に当たる部位を貫き、引き抜いた勢いを殺さず、絶命の瞬間を見届けもせず、次の業魔に狙いを定めて刃を下ろす。
狂ったような叫びを上げている者とは思えない、無駄なく適切に急所を切り裂く。
「ジャグラー…」
次々とかつて共に過ごした仲間たちを切り捨てていく友。
その惨状をガイアは立ち尽くして眺めるしかできなかった。
「今の内に離れるわよ」
「駄目だ。まだ間に合うジャグラーを-ぐうっ!」
ジャグラーの元へ駆け寄ろうと身を乗り出したガイアの腕をベルベットは掴み、力任せにグルリと振り向かせると、腹に自らの膝を食い込ませる。
「ベルベッ-」
ガクリと項垂れ、意識を飛ばすガイア。膝から崩れ落ちるその体をベルベットは持ち上げ、肩に担ぎ上げた。
このままハリアを離脱しようと足を踏み出した時、後ろを振り返る。
激情の赴くまま
その姿がどことなく以前にも同じようなことをやってしまった誰かと被る。
ベルベットは目を反らし、ハリア村を去った。
「業魔が全滅している?」
それから少ししてベルベットを追跡してたオスカーが部下を引き連れて、ハリア村内へ踏み込んだ。
彼の視界が捉えたのは数多くの業魔たち、それらが全て赤黒くどろりとした液体を散らして息耐えている光景。
「村の住民が一人もいませんね。これは一体?」
「彼らが業魔となったのだろう。しかし誰がこの業魔を?あの女業魔か」
業魔の亡骸を見下ろしながら村を進んでいくと中心にあたる位置で太刀を下げて、立ち尽くしている業魔を捉えた。
その業魔は気配に気付くとオスカーたちの方を振り向く。
「よぅ久しぶりだなぁ。オスカー」
「何者だ?何故僕を知っている」
「おいおい、悲しいなぁ。昔散々手合わせした仲だろう。まぁ仲が良いとは言い難いような付き合いだったが」
「手合わせだと?…まさか、ジャグラー?」
「正解。忘れてなかったようで嬉しいよ」
「業魔になってしまったのか…」
オスカーは愕然とした。
死んだものと思われていた仲間が業魔となった。その事実が生存を祝う喜びを押し潰した。
「君がやったのか」
「ああ」
「理由はなんだ?」
「…気に食わなかった。それだけだ」
「それだけの理由で殺したというのか」
「何故怒る必要がある?よかっただろ、手間が省けて」
静かな怒りを心の内に留めオスカーは剣を抜刀し、構える。
「ほぉやる気か?」
「生きてくれていたことは嬉しい。だがそのような姿になっては倒すしかない。対魔士として業魔を理に反する者を見逃すわけにはいかない」
「昔と変わらないな。悪い癖だぞオスカー、できもしないことを軽々しく口にするものじゃあない」
「やってみなければわからない!」
交錯する二つの刃。鳴り響く金属音。
砂を蹴って飛び込んだオスカーがジャグラーと肉薄する。
一振り、二振りと剣を振り回すオスカーだがジャグラーは悠々とした態度で刀身を体スレスレでかわす。
剣で受けたのは最初の一撃だけで、それ以外は手元に引き寄せようともしない。
-遊ばれている
必死さの欠片もなく、積極的に攻勢に出ようとしないジャグラーの所作からオスカーは直感した。
「何故しかけてこない!遊んでいるのか!」
「言っただろう。お前と俺では勝負にならない、ならせめてゆっくり楽しもうと思ってな。お前でも気晴らしくらいにはなるだろう」
「ふざけるのも大概にしろ!」
その一言にオスカーの沸点は一気に上がった。
感情と力に任せて上段で構え、振り降ろす。
ジャグラーは涼しい顔でその一撃を片手に握った太刀で止め、がら空きになった腹部を蹴りつける。
「やっぱりこんなものか」
咳き込むオスカーを一瞥してジャグラーは太刀に邪気を集約させる。
「蛇心流奥義新月残波!」
「ぐわあああ!」
闇の気が形となった斬撃。漆黒の三日月を無防備に受けたオスカーの体は紙くずのように軽く吹き飛ぶ。
何度も転がり回り、砂を頭いっぱいに被ったオスカーは痛みに足掻きながらジャグラーを見上げる。
「じゃあな」
「待て、ジャグラー…!」
「帰って姉弟ごっこでもしてろ。負け犬」
太刀を下げて遠ざかるジャグラーにオスカーは手を伸ばす。まだ戦えるという意志の表れであったが、目前の相手は見向きもしない。
結果その手が届くことはなく、ただ虚空を掴むだけ。
自らに視界に傷付いた手を映しただけだ。
「オスカー様!ご無事ですか!」
「すぐに治療致します!」
「くそぉ!!」
砂浜に打ち付けた拳に悔しさが込み上げる。随伴の対魔士が自らを気遣う声など意識に入らない程の悔しさが
ベルベットのように不意打ちで遅れを取っただけならまだ傷は軽くて済んだ。油断したという一応の言い訳も立つ。
だが真っ向から挑んだ真剣勝負で一太刀も入れることなく大敗を喫した。それも自分から仕掛けておいてだ
言い知れぬ敗北感がオスカーを襲った。
「また負けた…また私は業魔に勝てなかった。なんと情けない…これではアルトリウス様に、姉上に顔向けができない…」
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イズルトの港、バンエルティア号の前でロクロウたちは未だ姿を見せないベルベットとガイアを心配していた。
「遅いな」
「そう身を案ずることもあるまいに。いくら数が上回っているにしてもあやつらに限って普通の業魔相手によほどはなかろう」
「珍しいな。お前からそんな言葉が出るなんて」
「あやつらに行く先にはまだまだ面白いことが待っておろうにこんな中途半端なところで終わってもらっては困るからのう」
「帰って来たよ!」
ロクロウとマギルゥがそんなやり取りをしている内にベルベットが彼らの元へ歩いてくる。
その背中には彼女におぶられてる形でガイアもいる。
「ベルベット、ガイアはどうしたの?もしかして怪我してる?」
「気絶させただけよ。すぐに回復が必要な傷はないわ」
「気絶させたってお前何したんだ?」
さらっとぶちまけられた物騒な一言にロクロウが反応する。
「ジャグラーは、村の人たちはどうなったんですか?」
「…わかりきったこと聞かないで」
一瞬だけ暗い顔になりつつもあっさり突き放した言い方だった。
しかしそれでもエレノアが事の顛末を察するには充分すぎた。
「それよりアイゼン、教えて穢れって何なの」
ガイアの体を近場の樽置き場に置いてベルベットはアイゼンに訊ねる。
「あんた、聖隷の禁忌を破るつもり?」
熟考するアイゼンにグリモワールが釘を刺す。
どうやら彼女はベルベットたちの知りたい秘密を知っているようだ。その秘密を話す行為が聖隷にとってどんな意味を持つのかも
「こいつらには知る権利がある」
「そう。好きにしなさい」
だがアイゼンが揺るがないのを見ると簡単に引き下がった。
グリモワールの承諾を得たアイゼンは聖隷の禁忌をベルベットたちに語る。
「そもそも業魔病なんて病気は世界に存在しない。人間は元々誰もが業魔になる。心に抱えた穢れが溢れればな」
「穢れとは一体?」
「理性では抑えきれぬ負の感情、人の心が本質として抱えている業じゃよ」
「知っていたのか」
「魔女じゃからのう」
いきなり訳知り顔で代わりに説明したマギルゥにアイゼンは微かに驚く。
アイゼンの言葉に馴染みの台詞を返してマギルゥは口を開く。
「穢れは誰もが持つ心の闇。それが理性の許容量を越えれば化け物になる。お主らにも心当たりがあろう?」
マギルゥの言う通りここにいるベルベット・ロクロウはそれぞれ方向性は違えど人として間違った思いの強さから業魔となった。
当人らも自覚はあるのかマギルゥの説明をすんなり受け止めていた。
「そんな事実が知れ渡れば民衆は大混乱になる。だから聖寮は業魔病という仮病を作って広めた」
「嘘です。開門の日以前に業魔はいなかった」
「本来業魔も聖隷も特別な才能『霊応力』のない人間には見えない存在だった」
「並みの人間には突然凶暴化しただけに見えたんじゃよ。その異常さは悪魔憑きや獣人化などと呼ばれて伝わったがな」
エレノアから発せられた反論をアイゼンとマギルゥが真っ向から叩き潰す。
これまでの流れを聞いてロクロウは気になっていたことがあった。
「なんで急に見えるようになったんだ?」
「人間全体の霊応力が増加されたからだろうが理由はわからん。同じく降臨の日を境に聖隷まで人間に見えるようになった」
「きっとアルトリウスが絡んでる」
降臨の日に何があったのか。ベルベットはそれを知る数少ない人間だ。
ベルベットが業魔となった日。
そしてライフィセット・クラウが義兄アルトリウスの剣に刺し殺された日でもある。
「でも、病気でもなければ村人が一斉に業魔化するなんてあり得ません」
業魔化が病気のせいであると信じたい様子のエレノア。
彼女が否定の言葉を上げた時、ライフィセットは頭の中に古文書の一文を思い起こす。
「『八つの首持つ大地の主は七つの口で穢れを喰って』喰魔は人が出す穢れを吸収してカノヌシに送る。なのに僕たちが地脈点から
「坊は賢いの~そう、吸収されなくなった穢れが溢れたのじゃ」
「つまりあたしのせいか」
揶揄するマギルゥから告げた現実にベルベットは力なく返す。
「ねぇ、どうしたの?皆怖いよ」
眠るガイアの膝や頬をツンツンつついていたモアナの無邪気な声が重い空気によく響く。
「おかげで古文書の記述が信用できることがわかったわ。地脈点から全ての喰魔を引き剥がす。カノヌシの力を削ぎ、覚醒を阻止するために」
「でも喰魔を奪ったら人間がどんどん業魔になっちゃうんじゃ…」
「やらなきゃアルトリウスを殺せない」
「真実を知ってなお進むか、いいだろう」
自らの起こす行動に伴う犠牲。
それを突きつけても揺るがない決意の炎をベルベットは瞳に灯していた。
イズルトを離れ、海の上を走るバンエルティア号。
その一室でエレノアは悶々としていた 。
(業魔化が人の負の心が原因だと言うなら人と業魔の違いは…)
モアナが羅針盤に興味深そうな目を注ぎ、ライフィセットが彼女にわかりやすい説明をしている。
聖隷と喰魔がああも笑い合っている。そこに互いを別の生き物として区別している視点はない。
悩み苦しんでいるとガイアが部屋に入ってきた。
「ガイアもう起きて平気なの?」
「ああ。別に大した怪我をしたわけじゃない」
ありがとう、と自らを気遣うライフィセットに言うとエレノアの隣に座ると
「ごめん」
「え?」
「止められなかった…」
言葉を口にした本人ですらも驚くほど声に力が感じられなかった。
代わりにその分の力が口に加算され唇を強く噛み締める。
目を合わせるのが怖くて合わせた両手を見つめて、エレノアからどんな言葉が来るのか畏怖しながら待つ。
「私のことなら大丈夫です。それにあなたが謝ることじゃありませんから」
「それは-」
それは違う、と言おうとしたがその先が出なかった。どんな言葉を出せばいいのかすぐに浮かばなかった。
「きゃあああああ!」
「モアナ?」
モアナの叫びに思考を中断させてガイアもエレノアも駆けつける。
「モアナどうしたの!」
「怖い、モアナの顔怖いよぉ」
モアナの前にある姿見。
そこに映る虚像を見て三人は気付いた。モアナは今初めて喰魔となった自分の姿を知ったのだと
「こんな顔やだよぉ…お母さんに嫌われちゃう」
「モアナ、見て」
しゃがみこんでおもむろに上着に手をかけるエレノア。
ボタンを外していくその様子を見て彼女の意図を見抜いたガイアは真っ先にライフィセットの後ろに回り込んで目を手で覆った。
「うわっ、ガイアどうしたの?」
「悪い。ちょっとしばらくこのままにさせてくれ」
そう言うとガイアはエレノアとモアナに視線を移す。
上着を脱いだエレノアがモアナに自分の胸元…そこに刻まれた切り傷を見せていた。
「すごいキズ!どうしたの」
「大きくて怖い傷でしょう。私の体にも怖いところはあります。モアナは私が怖い?」
「ううん、怖くないよ。それより大丈夫?痛くないの?
」
「ありがとう。全然平気よ」
モアナの優しさに心に温もりを感じなからエレノアは服を着直して立ち上がる。
「エレノアはモアナのこと怖くないの?」
「私を心配してくれるあなたを怖いものですか。私もおガイアもライフィセットも、あなたのお母さんも…」
(ノア…)
優しい口調でモアナを諭すエレノアの顔をガイアはまじまと見つめる。
そうしていると
「ガイア、もういいかな?」
「…あ、すまない」
目を塞いでいたのをすっかり忘れていたガイアはその言葉でようやく手を放す。
耳は塞がれていなかったのでさっきの会話を聞いていたライフィセットは目をぱちくりさせてエレノアに訊ねた。
「その傷は業魔に?」
「小さい頃私が生まれた村も業魔に襲われました。傷付いて動けなくなった私を母は自分を囮に逃がしてくれたんです…強く生きて、それが母の最期に私に残してくれた言葉でした」
「じゃあグランとは」
「ええ、母を亡くして一人になった私は身寄りのない子どもたちを保護している修道院に修道女見習いとして預けられました。そこの神父と今のお母さんが知り合いでその縁で私は彼の家族と一緒に」
そこで言葉を切るとエレノアはモアナと向き合う。
「私もモアナと同じです。本当のお母さんは今は離れ離れです。でもお母さんはずっと私の近くで見守ってくれている…そう信じています」
「モアナのお母さんも?」
「ええ、あなたがいつでも笑顔でいてくれるように離れたところにいても願っているはずです。だから悲しい顔をしていたらお母さんも心配してしまいますよ」
「…わかった。モアナもう泣かない。お母さん心配させたくないもん」
否定もせず、にっこり笑顔でその言葉を受け入れるモアナ。
しかし彼女の笑みとその心はエレノアの表情に陰を作り、胸を締め付けた。
モアナをダイルやベンウィックたち海賊に任せて、ベルベットたちは揃って甲板にいた。
古文書の記述に関してグリモワールが話があるとのことで集められたのだ。
そして彼女は確認した。古文書の二番目の歌詞を覚えているか、と
「『御稜威につながる人あらば不磨の喰魔は生えかわる。緋色の月の満ちるを望み、忌み名の聖主心はひとつ、忌み名の聖主体はひとつ』だよね」
文面を読まずにスラスラと歌詞を言うライフィセットの優秀さにグリモワールはご満悦といった様子で、皆の顔を柵の上から見渡す。
「そう、それについて話したかったの。『選ばれし者によってカノヌシと喰魔が甦る』って私たちは解釈したんだけど、どうにも生え変わるって言葉に引っかかってね…で、考え方を変えてみた」
「カノヌシに選ばれた誰かが喰魔をつくるのではなく、カノヌシが喰魔になる誰かを選ぶ…としたら?ここはどう読める?」
グリモワールは古文書の『御稜威に通じる人あらば喰魔は生え変わる』の部分を指差して言う。
「カノヌシの力に適応した人間が喰魔に生え変わる…」
「モアナ!?…まさかそんな」
「全より個を優先するような連中よ。そういうことを平然としてたところで何も不思議じゃない」
驚くエレノアにベルベットがあっさり突き付ける。
「つまり聖寮は人間を喰魔にしているわけか。カノヌシの口として利用するために」
「いやクワブトのことを踏まえると喰魔にするのは何も人間とは限らなさそうだ」
「穢れを送れさえすれば喰魔にする口は何でもいいということか…」
話をまとめるロクロウにガイアとアイゼンが捕捉する形で言う。
「しかも生え変わるではなくあえて生えかわるという言葉にしている。生え変わると生え替わる、二つの意味にとれるようにしてると思う」
「生え替わる、代わりができる…喰魔を消してもまた新しい喰魔が生まれる」
「それなら不磨、不滅という意味にも説明がつくわね」
「よかったのう。善より子を優先して」
マギルゥはベルベットを茶化すように言うが、実際モアナを殺しておかなかったのは正解だった。
モアナの代わりに生まれるであろう喰魔を探す手間が省けたのだから。
「カノヌシの口の数は決まっている。数を減らさなければ次は生まれない。つまり俺たちは七体の喰魔を地脈点から引き剥がした上で聖寮に奪還も殺害もされないように守らなければならない」
アイゼンの出した結論にベルベットたちは再度成し遂げようとしている事の難解さを思い知る。
「他に後もうひとつ気になることがあるのよ。一番目の歌詞にある『四色の光を授かりし戦士』これだけが何を指しているのか皆目見当もつかなくてね」
「四色の光を授かりし戦士…あ!それって」
「あら、そっちの方には心当たりがあるわけ?」
「うん、グリモ先生。もしかしたら僕たちその戦士に会ってるかもしれない」
ライフィセットが知っている戦士、と聞いてベルベットとロクロウは同じ姿を想像した。
「まさかあの巨人のこと?」
「ああ、あり得るかもな。いつもピカッて現れるし光の戦士って呼んでもピッタリ合う」
「詳しく聞かせてくれる?」
「僕たち前が何度も会ったことがあるんだ。赤い巨人と青い巨人に」
ライフィセットはグリモワールに巨人との出会いを説明する。
ヘラヴィーサから始まり、ブリギット渓谷、ロウライネの遺跡、イズルトで自分たちが怪獣と戦っているとどこからか光と共に、赤い巨人が助けに来て力を貸してくれたと。
そしてイズルトでもう一人、青い巨人とも遭遇したとも
「へぇ、赤と青二人の巨人ねぇ。聞いたところでは確かに特徴は数え歌の光の戦士に似ているわね」
「もし予想通り巨人がその光の戦士なら今度会った時話をしてみるか?会話ができるかわからんが意思の疎通はできたんだ。話くらい聞いてくれるだろう」
「どうかしら。まだ味方ってはっきり決まったわけじゃない」
「そうかな?僕はあの巨人は味方になってくれると思うよ。いつも助けてくれるし、怪獣を倒さないでって僕の願いを聞いてくれたし」
「私もライフィセットと同じ意見です。ベルベットは見ていないと思いますが、彼はヘラヴィーサの時倉庫の火災を鎮火し、被害を最小限に止めてくれました。人間の味方として考えるには充分な判断材料ではないですか?」
ライフィセットとエレノアは今まで目にした赤い光の巨人の行為から好意的な意見を口にする。
「じゃが青い方はどうする?赤いのはともかく青いのは儂らの話に耳を傾けてくれるかの?」
「何が言いたいの?」
「よーく思い出してみよ。イズルトで青いのが怪獣を倒した時のことを。あやつが立てた波に危うく儂らは飲まれかけたのじゃぞ?赤いのが防壁を張ってくれたからよかったものの、青いののせいで儂らは死にかけるところだった」
青い巨人は怪獣パズズを倒してくれた。しかしその際に起きた爆発のせいで津波が生じ、イズルトの村に押し寄せた。
赤い巨人がいなければマギルゥの言うようにどうなっていたかわからない。
それを認めつつもライフィセットは擁護の声を上げる。
「でもそれは…青い巨人だって怪獣を倒すので一生懸命だっただろうし」
「あの戦いぶりで周りが見えない程てこずっていたようには思えんかったがの。儂には周りのことなぞ端から眼中になかったように思える」
「マギルゥは巨人が私たちに力を貸してくれるとは思えないと考えているのですか?」
「少し違うの。あくまでも青いのに関しては、と言ったまでじゃ。赤いのの方にはまだ可能性はあるのではないか?まぁ、どうするかはお主らに任せるわ。儂はただ暇潰しができればなんでもよい」
そう言うだけ言ってマギルゥは無言を決め込んでいる者たち、ガイアとアイゼンを目の端に収め見定めるような目付きを相手に悟られぬよう送る。
「一度ならず何度も目の前に現れたんでしょう?しかもあなたたちが怪獣と戦ってる時に限って…偶然にしては運命的すぎるわ」
「言われてみれば確かに、オレたちが怪獣に苦戦してる時にだけいつも現れるよな」
「もしかしたら案外近くで儂らのことを監視しておるのかもしれんな~」
そう言ってマギルゥは無言を決め込んでいる者たち…アイゼンとガイアを目の端に収める。
見定めるような目付きを相手に悟られぬよう送る。
「監視って、そんな」
「いや案外冗談とは言えない話かもな。グリモワールの言った通り巨人が現れるのは決まってオレたちが怪獣を相手にしている時だ。しかもグリモワールは会ったことがないのにオレたちは四回も出くわしてる」
「偶然で片付けるには不自然ね。タイミングも回数も」
「ですがあれだけの大きな巨人ですよ?近くにいたら気付かないのは不自然では?」
「姿がいつもああとは限らんぞ。光になって現れたりするように日頃は別の姿をとっているやのも…例えば空気であったりそこいらの犬であったりあるいは、人間だったりの」
またもマギルゥからガイアへ向けられる目線。
お前の隠し事なぞお見通しと、真っ向から注がれる視線をガイアは特段驚いた様子もなく顔色を変えずに受け止める。
「とにかく推測でしかわからないものより今は確実にできることをやるしかない。地脈点を探して喰魔を聖寮から守る、そうしていればそのうち巨人にも遭遇するできるわ。今までだって会おうとしてたわけでもなく会えたんだから」
「だな。こっちから探すより向こうからひょっこり現れてくれるのを待った方が楽そうだ」
「また何かわかったら知らせてあげる。先が見えなくなったらその時にまた話し合えばいいんじゃない?」
まずははっきりとわかっていることから片付ける。今回はそれでひとまず議論に終止符を打った。
光の戦士とは何なのか、カノヌシとどんな関わりがあるのか、自分たちの力になってくれるのか
その謎が解き明かされる時はまだもう少し先のことになる
他の作者さんの作品見て文章表現の勉強してるけど自分の文章にすごく自信がない…どうしたらもっと上手く書けるのかなぁ、と悩んでおります。
いい文章書けるようになりたいなぁ
話は変わりますが私はタイタスさんに心を奪われました。(唐突)
知性派で筋肉ボディで紳士的な言動…おまけに可愛げもある。なんなんだこの魅力たっぷりな力の賢者