is…飛び道具は剣より強し 作:一夏立場下降推進委員会副委員長
鎮西八郎
平安時代に活躍したある人物の異名である。
その名を現代において授かる中学生がいる。
彼の名は相澤 仁。
弓道の全国大会において、中1.2.3年と全学年で優勝。
圧倒的な正確さと時には的を貫通するかと思うほどの威力と速度の弓。
また、直線的な軌道はもちろん、山なりの軌道をとっても的にあてるなど卓越した技術も持ち合わせている。
そんな彼が今どこにいるかというと……
「相澤くん…?えーと、こめんね。相澤って名字はあい「ざ」だから相川さんの次の2番なの……自己紹介お願い出来るかな…?」
とある女子生徒多数:男子生徒2の学園にいた。
「はい。後山田先生?そんなに自分にへりくだらなくて大丈夫ですよ?
えーと、2番目と呼ばれてる相澤 仁です。一応中学生の時は弓道をやっていて、全国大会で優勝してます。弓道に関わらず武道全般にある程度関心があるので、そっち方面なら…ってここ女子校だからあんまり居ないかな?まあ、よろしくお願いします。」
少し間をおいて……
「「「キャーーーーーー!!!!」」」
「体よし!顔良し!たぶん性格よし!!」
「弓道!かっこいい!!クール系!!」
「私を責めて!鬼畜に!そして、反抗出来ないくらい調教して!!」
一部変態もいるが、いろいろ溜まるはずの女子校。
女子校に居る男子教師はたとえ冴えなくても何故かモテるという理論が実証された。
そして、また、すぐに一人目の順番となった。
「織斑くん…………織斑一夏くん‼」
「はい!」
ぼーとしていた一人目は急に名前を呼ばれ、反射的に大声を出してしまった。
「ご、ごめんね‼今、自己紹介をしていて、『あ』から始まって、今『お』の人の番だから自己紹介してほしいんだけど…」
(この先生もう少し自信を持ったらいいのに…貫禄は…出るかわからないけど。)
クラスは微妙に期待を込めて織斑を見る一方、仁は見当違いな事を考えていた。
この担任、山田麻耶は童顔…悪く言えば子供っぽい。そして天然。
また、頑張り屋さんだが、逆にそれが空回りしてしまうなどちょっと可哀想な人である。
そのせいか、よく生徒から舐められる。よく言えばフレンドリーに絡まれてるとも取れるが、本人はそれについて凄く悩んでいる。
「えーと、織斑 一夏です。」
「以上です!」
ドデッ
何処かの新喜劇のように上手に女子生徒はこけた。
パシーン!!
今度は鈍い音がした。
「アダッ!!」
「全く…お前は自己紹介もでき「げっ!関羽!!」誰が三国志の英雄だ。『バンッ!』「うぎゃっ」」
「「「キャーーーーーー!!!!」」」
「千冬様よ!!千冬様!」
「私、お姉様に会うためにやって来ました!練馬から!」
「私は船橋から!」
「私なんて群馬からです!!」
「私はお姉様のためなら死ねます!」
「私はお姉様とならレズプレイ大歓迎です!どうですか今夜一晩を熱い夜に!」
「……まったく、よく毎年毎年これだけの馬鹿者が集まるものだ。それとも何か?私のクラスにだけ集中させているのか?」
「きゃぁあああああ♪千冬様、もっと叱って‼罵って‼」
「でも、たまには優しくして‼」
「でも、つけあがらないように躾して‼」
千冬の発言によりヒートアップする生徒達。
おいてけぼりをくらう仁。
千冬に叩かれたところがまだ痛い一夏。
「静かに!!」
千冬の一括により静寂を取り戻したクラス。
「君達には、これからISの基礎知識を半年で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいな?良いなら返事しろ、良くなくても返事しろ」
「「「「はい!!」」」
「はぁ…それにしてももう少しマシな自己紹介は出来ないのか?貴様は?」
「そんなこと言ったって千冬姉…『バコッ!!」ウグァ!!」
「織斑先生だ。馬鹿者。」
「あれ?織斑君って千冬様の弟?」
「かもかも!名字一緒だし!」
「ということは織斑君と結婚したら千冬様の妹…?グフフフフ…既成事実作成…」
「もういい。とりあえず席につけ、織斑。
後、同意なしで弟に手を出したら…分かっているな?」
「クッ。ここは戦略的撤退しかないわね…私だって命が惜しい。」
この学園の女子生徒は何処かおかしい。
キンコンカンコーン
丁度チャイムが鳴り休み時間にはいる。
「仁!宜しくな!あ、俺剣道やってたんだぜ!」
「えーと織斑君だったね?よろしく。」
仁はいきなり馴れ馴れしく接してきた一夏に若干ひきながら握手を求める。
「おう!よろしく!俺のことは一夏ってよんで大丈夫だぜ!」
握手をする二人。
「ん…?織斑君本当に剣道やってるの…?手から剣道経験者の特有のマメとか感じないし…」
「ああ、剣道は小学生の低学年の時に辞めたんだ。でも、関係ないだろ?同じ武道の経験者なんだし。後一夏でいいって言ってるだろ?」
果たして小学生低学年までしか経験してない人と中学生、つまり直近までやっていて尚且つ全国大会3連覇という偉業を達成した人を同列に語って大丈夫なのだろうか?
「えーと、でも小学生のそれも低学年までなら“やってた”というより“かじってた”じゃ…?」
「そんな揚げ足取るようなこと言うなよ!男らしくないぜ!!」
「んー、自分もあまりそう言う線引きに興味はないけど、そこの篠ノ之さんと比べたら…」
「箒!!あれ?何で箒が剣道をやっているって知っているんだ?」
「女子剣道の全国大会で3連覇。武道っぽいの何かしらやってる人ならたぶん誰でも知ってるよ?」
「そ…そうなんだ…箒凄いな…」
「ああ、ありがとう織斑…」
「そ、そうだ!幼馴染で積もる話もあるからさ!屋上で話そうぜ!」
仁と話してる途中なのに女の子をナンパし始める一夏。
「いや、いい。“織斑”と話すことはない。
それより、今は相澤と話したい。」
「そ、そうか…それじゃ3人一緒に話そうぜ!あと箒も昔みたいに一夏と呼べって!」
(まったく…織斑の奴め…せっかく相澤と二人きりで話す機会が…空気の読めない奴め。何で幼い頃こいつに淡いながらも恋心を抱いていたのだろうか…)
その後、箒と仁は剣道や弓道について話し合い盛り上がった一方、一夏は疎外にされた感じがして尚且つ何度言っても"一夏”と呼んでくれなくて少し悲しかったとか。
キンコンカンコーン
そして、チャイムが鳴った。
各々着席して授業の準備をする。
(むふふ…仁に剣道を教える代わりに弓道教えて貰えることになった…しかも二人きりで!!)
箒はルンルン気分。
(箒さん…はまだ馴れ馴れしいか。篠ノ之さんと武道の話で盛り上がって、結果剣道と弓道の教え合いをする事になった!きっと有意義な時間になるぞ!)
仁は仁で嬉しく思いながら授業の準備。
(クソ…何なんだよ。俺も参加していいじゃん!何が「織斑君は多分ついていけないから来ない方がいいよ…怪我するかもだし…」だ。ついていけないって思うなら基礎から教えてくれたらいいじゃんか!)
一夏は自分の厚かましさに気付かず一人憤慨していた。
キングダム等々で弓が城の壁にめり込む描写があります。
主人公はこのくらいの事を出来る…と思って頂くくらいが丁度いいです。