ダメ姉にダメ元で求婚したらなぜかオッケーして貰えた件   作:A i

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第八話です。
ようやく、男友達が出現。
ここまで女の子に囲まれていた舜ですがようやくそのハーレムから少し抜け出します。
うーむ、今回は千里姉はあまり出てこないので、ちょっと物足りない・・・。
しかし、まあ楽しんで貰えるよう精一杯書いたので読んでみてください。

感想、評価、お気に入り、待ってまーす。


腐れ縁と余った机

俺の学校である開明高校は少し高めな偏差値以外、校風もスポーツも特に秀でることのない平凡な高校。

だけど、一点だけ少し変わった点がある。

それは・・・・。

 

――なんと三年間、一度もクラス替えがないことだ。

 

大抵、高校と言うのは進級に伴ってクラス替えがあり、だからこそ春は出会いと別れの季節なのだと思うのだが、うちの高校ではそれが異なる。

一年の時に同じだったクラスメイトと三年間いっしょのクラス。

気にくわない野郎がいようが、気になる人がいようが関係なく、この高校三年間をともにしなくてはならない。

 

これは生徒からすさまじく不評なのだが、なぜか学校側は意固地にこの制度を変える様子がなく、なんでも、校長先生曰く、「確固たる友情は長い時間をかけることで育まれる。」のだそう。

まあ、言わんとすることは分かるのだが・・・、でも、思春期真っ盛り、青春ど真ん中な高校生の俺達には少し味気なく感じてしまうのは仕方ないことだろう。

 

とまあ、そういうことで進級初日である今日、すでにこのクラスの奴らは俺からすると全員知っている顔だった。

そして、担任も替わらず、飯室かすみ先生。

今日には珍しい、スパルタ熱血教師だ。

さっきも俺は先生からありがたいお説教(肉体的)をいただき、ホントありがたい限り・・・・ガクブル。

 

先ほどぶん殴られた頬をさすりさすりして椅子に腰掛けていると、話しかけてくる男子生徒がいる。

 

「いやあ、舜。お前も災難だったなあ、さっきは。」

 

ニヤニヤと嫌みな笑いを浮かべて話しかけてくるこいつは、俺の中学からの腐れ縁である榊原斗真(さかきばらとうま)。

パーマの掛かった茶髪に、着崩した制服、度の入っていない伊達めがね。

この見た目からも分かるようにこいつはかなりチャラい。

チャラい奴は基本的に苦手とする人種なのだが、しかし、なぜかこいつのことは憎めず、高校にきてまで俺はこいつとつるんでいた。

 

俺は背もたれにどかっと身を預けて額を押さえて言う。

 

「なんで、遅刻しただけで鉄拳制裁なんだ。世の中理不尽すぎるだろ・・・?」

 

「ははは、お前はかすみちゃんのお気に入りみたいだからなあ。愛の鞭だろ、たぶん。」

 

「俺は飴が大好物なんだが。」

 

「そうか、ならこれをやるよ?」

 

そう言って斗真はポケットからくちゃくちゃになって見るからにヤバそうなリンゴ味の飴を俺に渡そうとする。

 

「いや、いらねーよ!こんなきたねーの!」

 

「そうか?おいしいんだけどな。」

 

ぱくっとその飴を口に入れ「うん、うまい。」と頬を押さえる斗真。

なんかやけに仕草が乙女チックでキモい。

女子からは斗真のこういう仕草も『斗真君、こんな可愛い仕草もするんだ、キュン!』みたいな感じに映るんだろうが男の俺からするとホント気持ち悪いの一言に尽きる。

まじでキモい。

 

俺は彼のキモさ加減を表現するべくウヘーと下唇を突き出し、低いトーンで言った。

 

「お前のそういう感じキモいよな?マジで。」

 

すると、それを聞いた斗真はフフンと勝ち気そうに鼻を鳴らして言う。

 

「分かってねーのな、お前。女子って言うのはこういう仕草にきゅんとくるんだよ。」

 

「やっぱりお前のそれ計算だったのか・・・。中学の頃はなかったのにおかしいと思ってたんだよ・・・。」

 

はあ、と大きくため息をつく俺。

だが、斗真も負けじと大きなため息をつき、大仰に手を広げ首を横に振る。

 

「はあー。やれやれ、分かってねーなあ。舜よ。」

 

「何がだよ?」

 

聞くと、少しためを作っていかにもカッコつけた感じでこいつは言った。

 

「モテっていうのはある日突然振ってくるもんじゃない、自らの手でつかみ取るモノなんだぜ?」

 

キランと白い歯を輝かせて親指をグッと立ててくる斗真。

こいつホントどうかしてるんじゃないか?

恥ずかしげもなくこんなこと言うなんて・・・・。

 

俺が呆れて物も言えないでいると斗真は、一応進学校として名の通るうちの学校にはあまり似つかわしくない、偏差値低めな雑誌を取り出して俺に衝きだしていった。

 

「と、この本に書いてあったのさ!」

 

「おまえ、それだまされてんぞ。」

 

と忠告する俺だが斗真は・・・。

 

「俺はやるぜ!」

 

うぉおお!と吠えて聞く耳を全く持っていなかった。

そんな斗真の様子に俺は今日何度目か分からぬため息をついた。

 

もう皆さんおわかりだろう、こいつの正体。

そう!こいつの正体は。

 

――見た目だけリア充の残念野郎なのだ。

 

まあ、でも、残念野郎と言ったが、別にモテないわけではない。

むしろモテまくっている。

一月に一回ぐらい、女子から告白されるのだからモテていることは間違いないし、リア充には違いないのだが・・・。

なんか如何せん内面が残念なのだ。

 

今ですらモテているのに、「俺はモテに命をかけているから手抜きは許せないのさ。」などとうそぶき、未だに訳の分からない雑誌の恋愛テクニックを活用してくるし、基本的にポッケに飴ちゃんやらなんやらが体温で溶けてくちゃくちゃになったモノがある。

見ためがいいから許されているが、普通の奴がやっていたらどん引きされているであろう事は予想に難くない。

 

しかし、斗真のそういう抜けているところがあるからこそ俺はこいつとうまくいっているのだろうし、クラスの奴もこいつをよく慕っているのだろうと思う。

 

ま、だからといって基本的にウザイ奴っていうのは変わらないんだけどな・・・・。

 

うぉお!と叫んでいる斗真だったが飯室先生が教室に入ってくると飛ぶように自分の席に戻り着席する。

ビビりまくっている彼の姿に俺は苦笑していると、飯室先生から鋭い視線が突き刺さる。

 

いや、笑うのも禁止とか、きつすぎでしょ・・・。

 

そんな世の理不尽をかみしめながら、俺たちはこのあとの始業式へと向かったのだった・・・。

 

 

 

「いやあ、長かったなあ。校長の話。」

 

「そうだな。長すぎた。」

 

俺と斗真は二人並んで始業式の会場から教室へと帰っている。

 

校長の話が長すぎることについて延々文句を言いながら帰っていたのだが、後ろからトーンという衝撃を受け俺はたたらを踏んだ。

 

「うぉっと!」

 

「どーん!!」

 

いてて、とつぶやきつつ振り返るとそこにいたのは金髪ツインテールでおなじみの千鶴ちゃんだった。

 

ぶつかられた俺よりも先に斗真が反応する。

 

「おはよう。逢坂さん!今日も今日とて可愛いね!」

 

「おはようございます。榊原君。お世辞は結構ですので死んでくださいね?」

 

「え!?俺死ぬの?」

 

「いえ。任意です。」

 

驚きをあらわにする斗真ににっこりとほほえみかける千鶴。

ポカンとしていた斗真だったが。

 

「なら、死なない方を選ぶよ、間違いなく!」

 

と叫んだ。

ああ、コワコワ。逢坂さんやっぱりはんぱないわ、とか言って震えている斗真を尻目に俺は千鶴と話し出す。

 

「よお、千鶴。どうしたんだ?」

 

「別に、特に用はないわよ、悪い?」

 

「いや、悪くはないんだが・・・。それにしても斗真に当たり強すぎだろ?二年目なんだしもう少し優しくしてやれねーの?」

 

「うーん・・・・・無理ね。考えただけで死にそうになるモノ。」

 

「ぐはあ!」

 

ろうかの隅の方で身もだえている斗真。

通りすがりの人が気味悪がって避けていくのもお構いなしの全力リアクション。

こういうところが俺は好きなんだけど、隣をみると千鶴がうへえ、と口を歪めて辟易しているのが分かる。

うーん、やっぱり女子と男子の感性は相容れることなどないのかも。

まあ、俺も女子高生が可愛いと思うモノのセンスはどうかしていると思うしお互い様なのかもしれないな。

 

そんな風に男女における価値観の違いについて深く考え込んでいると、ふと、突然に聞いておかなくてはいけない事を思い出した。

 

斗真に向けていた視線を戻し、千鶴に聞く。

 

「あ、そういえばさ。」

 

「うん。なに。」

 

「なんか教室に一つ余分な机があったんだけど、なんか知ってる?千鶴。」

 

先ほども述べていたとおり俺の高校はクラス替えがなく、基本的にクラスメイトの人数が変更されることはない。

なので、机が一つ余るなんて事は本来あり得ないのだ。

当然、今日は登校初日と言うこともあって、休みはゼロ。

遅刻さえも俺しかしていないという有様。

去年のクラスメイトを全員覚えている俺が言うのだから間違いない。

 

だから、この現象は俺にとって不可解きわまりなく、もし誰も知らないのであればなにか心霊現象のようなモノであるとしか考えられないし、もしそうであったら俺は三日三晩加持祈祷しなくてはならなくなる。

 

思考がだんだんと悲壮なモノになっていくのを感じながら千鶴の発言に耳を傾ける。

すると、彼女はあごに人差し指をソッと添え、少し考えるそぶりをしながら話す。

 

「うーん・・・。それが、私も不思議だったんだけど、誰も知らないのよねえ。誰の机なんだろう。」

 

「まさか・・・やっぱり幽霊なのか?」

 

「いやいや、違うでしょ!それはさすがに。だって私さっき始業式が始まる前にかすみ先生に聞いたもん。」

 

「な!?飯室先生はなんて言ったんだ!?」

 

俺はくい気味に彼女に詰め寄った。

しかし彼女は至って冷静に応える。

 

「いやあ、それがなんか曖昧な言い回しで・・・『いずれ分かるさ』みたいな感じだった。」

 

「なんだそれ・・・。」

 

「わかんない。」

 

一つ多い机の謎に二人して頭を悩ませていると、さっきまで悶え苦しんでいたそぶりはどこえやら。

斗真がいつものトーンで話に入ってきた。

 

「俺が聞いたところによると、なーんか上級生が留年して俺たちのクラスに来たんじゃないかっていう噂だぜ?」

 

「おい、それマジでかよ・・・。」

 

「うーん、まあ情報源がそれほど信頼できるわけじゃないからアレだけど・・・、でも、かすみちゃんが言いづらそうにしていたのもそれで納得がいくだろ?」

 

「うん、確かに。そうかもね、榊原君。」

 

「だろ?」

 

ふふーん、と鼻を鳴らして得意げになる斗真。

仕草や挙動はいちいち鬱陶しいが説明の論旨は通っていて、なんか気にくわない。

ま、でもこいつこんな感じだけど、成績は常にトップクラスだし・・・ムカツクぜ!

 

心の中で軽やかに斗真をディスっていると、気づいたら自分たちのクラスに到着していた。

 

千鶴はパタパタと早足になり。

 

「それじゃあ、二人とも。またね?」

 

とフリフリ手を振って自分の席へと戻って行ってしまう。

 

すると、露骨に斗真は「嗚呼、逢坂さんが遠くに行ってしまう・・・。」と残念さを押し出していた。

 

実を言うと、俺はもう少し斗真としゃべっていたかったのだが、後ろから飯室先生の殺気を鋭敏に察知し、何食わぬ顔で席に着くと、今日のロングホームルームが始まった・・・・。

 

 

 

「じゃあな。」

 

「うん、また明日。」

 

バイバイー、と手を振り小さくなっていく千鶴の後ろ姿を見送り俺は残りの家路を自転車に乗って帰る。

斗真とは残念ながら家の方角が真逆でいっしょに帰ることができないのだが、千鶴とは途中まで同じ道を通るので一年の頃からこうしていっしょに帰ることが多かった。

 

友達が多いわけではない、俺にとってこの帰り道はとても貴重な思い出になっているので、できるだけいっしょに帰れる日は千鶴といっしょに帰ることにしていた。

 

俺は『十和田一号』にまたがり、キコキコこぎ続ける。

行きしなとは偉い違いだ。

 

ゆるく吹き抜ける暖かな春風が俺の頬を撫でていく感触を楽しみながら、俺はゆっくりと家に帰宅したのだった。

 

 

家に帰ると、自転車を駐車場の小さなスペースに止め、鍵を取り出す。

 

カチャカチャと鍵を差し込み、扉を開けた・・・。

 

ガチャリ

 

「ただいまー。」

 

パタパタパタ

玄関の奥から軽やかな足音が聞こえる。

 

リビングの方の扉から現れたのはなんとエプロン姿の千里の姿だった・・・。

 

「おかえりなさい、あ・な・た?」

 

「おい、どうしたんだ。その格好?」

 

明らかにうわずった声で俺は聞くと、彼女はふふふ、と優しく微笑みまるでワルツでも踊るかのように一回転してみせる。

あまりにも華麗な動きに見とれていると、彼女は上目遣いにこちらを見つめ。

 

「どうかな・・・?」

 

と聞いてくる。

俺は数秒フリーズしてしまったがなんとか持ち直し、応えた。

 

「・・・・・お、おう。似合ってるぞ。」

 

「えへへ~。ホントに?」

 

「ああ、めちゃくちゃ可愛い。」

 

「にゃはあ~・・・・・。」

 

俺の言葉を聞くともうなんかヤバい薬でもやってるんじゃないか、と疑うくらい、とろけた顔になる千里。

足も内股になって少しプルプルと震えているのがなんとも扇情的だ。

 

俺は靴を脱いで玄関にあげると、千里は我に返りサッと両手を前に差し出す。

 

「ど、どうした?千里?」

 

「舜、鞄、持つよ?」

 

「お、おう。ありがとう。重くないか?」

 

「平気。余裕よ?」

 

「そ、そうか。」

 

「あ!これもやっとかなくちゃ。」

 

なんか慌ててそう言うと、彼女は俺の前に傅いて言う。

 

「舜、ご飯にする?お風呂にする?それとも・・・わ・た・し?」

 

「千里にするぜ!」

 

「きゃあ!」

 

俺はもう我慢できなくて彼女の肩を思いっきり抱き、彼女の頭をワシャワシャーと撫でまくる。

 

「うにゃあー。舜ー。」

 

「もう!千里はなんだこんなに可愛いんだ!」

 

「うはあん!可愛いだなんて!」

 

キャッキャと歓びをあらわにする彼女につられて俺も我を忘れて頭を撫でまくっていると・・・・。

 

 

「あらあ・・・舜も結構大胆なのね?けだものよ?」

 

という声が上から降ってくる。

 

「うわあ!脅かさないでくださいよ!恵さん。」

 

「ホントだよ!お母さん!良いところだったのに。」

 

「うふふ、ごめんね?つい、悪戯したくなっちゃって。」

 

ぺろり、と小さく舌を出すチャーミングな恵さん。

うーん、これで四十を超えているというのは信じられんな・・・。

 

「舜クン、なんか変なこと考えてない?」

 

にっこりスマイルで俺を睨む恵さん。

うそ!この親子は勘がよすぎる!

 

俺は冷汗を垂らしながら首を振る。

 

「いやいや、なんも考えてないですよ!」

 

「そ。なら良いんだけど。今日は私がご飯作ってあげたから早く手を洗ってリビングに来なさい。二人とも。」

 

「はーい。」

 

二人してそう返事をし、洗面所へ向かう。

 

「あれ?ならなんで千里エプロン付けてるの?」

 

恵さんが料理したなら着る必要なんてないはずなのに。

 

聞くと、千里は自分の頭にコツンと拳を当て。

 

「えへへ。」

 

と可愛くほほえむ。

うん!この子に料理ができるはずなかったよね!俺知ってたもん!

 

知っていたとは言え、なんだか少し残念な気持ちになりつつ俺はリビングへと向かったのだった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
学校編、が本格的に始まってきたので、少し投稿スピード上げてみてますがいつまで続くか・・・。
感想くれたら嬉しいです。
待ってまーす!

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