ダメ姉にダメ元で求婚したらなぜかオッケーして貰えた件   作:A i

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第六話です。
サブタイトルに特に意味はないです、はい。

今回も特に劇的な展開はなく、のほほんと進みます。
次話からは少し、ギアを上げていくと思いますので、あまり期待せず、ぽえーと気楽にお読みください笑

まあ、気が向いたらご感想くださいね?

ではどうぞ。


DEAD OR LOVE

ムニムニ、と柔らかな感触が頭に伝わってくる。

何かの上に俺は乗っているようだ。

それにすごくいい匂い・・・。

 

特にこの隙間から漂う甘酸っぱい香りがたまらなく俺の脳髄を刺激する。

俺は目を閉じたまま、鼻をその隙間に潜り込ませて大きく息を吸い込んだ。

 

「スウー。」

 

「ひゃんっ・・・!」

 

甘く可愛らしい声が俺の鼓膜を揺らす。

 

ひどく俺を惹きつける甘い声だった・・・。

しかし、俺は未だ覚醒していない意識のせいでぼんやりとしてしまって、声の主にぴんとこない。

うーん。この声の主は誰だ・・・・?

判然としない意識の中、俺はモゾモゾと動いた。

 

「しゅんー。おまたから鼻離してよぉ。さすがに恥ずかしいってばー。」

 

「・・・・・・。なに!?」

 

彼女の言っていることを頭で理解すると同時に俺は跳びはね、すぐさま土下座の体勢に移行。

俺は彼女の足下に頭をすりつけて言った。

 

「スミマセンでした!」

 

「いやあ、舜も大胆だねえ・・・。」

 

ちらりと顔を上げて彼女の顔を伺うと、えへへと照れくさそうに笑う彼女の姿が映る。

俺は彼女の平和なその顔を見ると、デレッと口元がだらしなく緩むことを抑えられず、にやけてしまう。

やっぱり千里はかわいい・・・・。

 

デレデレしている俺を見た彼女は口元を隠し、少し引き気味に言う。

 

「うわあ。舜、変態さんみたいな顔してるよ?」

 

「え・・・・・。うそ?」

 

「ホント。そんなに私のおまたいい匂いだったの?」

 

「え!?いやあ、あのいい匂いではありましたが決してわざとではなく不可抗力というかなんというか・・・。」

 

俺がしどろもどろになって応えているといっそう怪訝な目つきになる彼女。

信じていない、と言うより恥ずかしいからそうしているという雰囲気だった。

 

そんな彼女は口元にあった手で自分の胸元を隠すようにかき抱き、上目遣いで一言。

 

「・・・舜のエッチ。」

 

 

ずきゅーん。

 

俺は胸を見えざる弾丸によって打ち抜かれました。

ケホ、可愛すぎて死ねる・・・。

 

上目遣いとそのしおらしいポーズは反則だろ?

こんなの無理、ダメ。

俺が霊体だったら軽く三回は成仏してるぞ、マジで。

霊体じゃないから、胸の奥がキュッと締め付けられるような痛みだけで済んでるけども・・・。

いや、病気じゃないからね?勘違いするなよ!

 

俺は切なく痛む胸元を抑えながら、聞く。

 

「ってことは、俺、千里の膝枕で寝てたって事か?」

 

「うん。そうだよ?私の膝枕だけでも相当貴重なことなのに舜ったら途中でモゾモゾ私の股間をまさぐりだしたからホント驚いたよ!」

 

「やめて!もう言わないで!恥ずかしいからやめて!」

 

「まあ、・・・全然嫌じゃないんだけどね?」

 

「それもやめて!恥ずかしいの!それはそれですっごく恥ずかしいから!分かっててやってるだろ、千里。」

 

「あはははは。たっのしいー!!」

 

「楽しくないわ!」

 

ケラケラと笑い転げる彼女を嘆息混じりに見つめていると、俺はリビングのソファーで寝ていたのだと気づく。

 

「あれ?俺さっきまでお風呂場にいたのになんでこんなところで寝てたんだ?」

 

「あーそれはねえ。舜が倒れちゃってから、私とお母さんでソファーに運んできたんだよ。感謝してよね!」

 

「ふーん、そうなのか。ありがとうな・・・って気絶したのは千里が俺にアッパー喰らわすからじゃねーか!」

 

「てへぺろ?」

 

「じゃねーよ!」

 

「あははは、ごめんごめん。私もやり過ぎたって思ってるよ。」

 

「うん。反省してくれ。」

 

腕組みしながらそう言うと、千里がニヤリと片頬を上げて言う。

 

「あれえ?でも、私だけが悪いのかな?なーんか誰かさんが今にも浮気しそうになってたせいだと思うんだけど・・・?」

 

「スミマセンでした!」

 

本日二度目のスライディング土下座。

こればっかりは俺が全面的に悪いと言わざるを得なかった。

求婚して一日目にして他の女の子に骨抜きにされかけるという、なんとも情けない童貞こと俺です。

だって千鶴、めちゃくちゃ可愛かったんだもん・・・くすん。

 

心の中で涙を溢して言い訳していると、前方から圧倒的なプレッシャーを放つ千里がいる。

ありゃ?この子、エスパー?

 

「な、なに?千里。そんな怖い顔して・・・。」

 

「舜。今私以外の女の事考えてたでしょ?」

 

「なんでわかんの!?」

 

「やっぱり。というかその考えてた相手、千鶴ちゃんでしょ?」

 

「なんでわかんの!?」

 

さっきより二割増しぐらいの声で言う。

すると、彼女は心底呆れた、というような仕草で言う。

 

「はあ。舜、昔からわかりやすすぎるからね・・・。ホントおバカなんだから。」

 

「うう・・・・。」

 

俺は何も言い返せずうなるだけ。

しかし、千里はそんな俺をみてフッと優しく笑う。

 

「でも、舜。私も千鶴ちゃんのこと気に入っちゃったから気持ちは分かるよ?あのことっても可愛いもんね?それにすっごく良い子だし・・・・・。」

 

「うん・・・・。」

 

「実はさっきね、私、千鶴ちゃんに宣戦布告されちゃったの。」

 

「え!?」

 

宣戦布告!?なに戦争でも始めちゃうの?

この二人なら街の一つや二つではきかないぞ・・・ごくり。

 

「なーんか、失礼な事考えてない?」

 

ゾクリとするような冷たい声で聞いてくる千里があまりにも恐ろしい。

俺はプルプルと情けなく首を振りながら応える。

 

「い、いいえ、か考えておりません、総督!」

 

「なんかその言い方引っかかるんだけど・・・・まあ、いいけどさ。」

 

ふうー、と一つ大きく息を吐き、俺の目をまっすぐ見つめてくる千里。

 

「で、話をもどすと、さっき私千鶴ちゃんから、舜争奪戦の宣戦布告を受けたのよ。」

 

「え・・・・。なにそれ?どこの戦争?」

 

「いいえ。どこの侵略戦争でもなく、あなたを奪い合う、戦争よ!」

 

「えー・・・・・。」

 

この家族の悪いところなんだよ・・・・。

作家にゲームクリエイターとクリエイティブな方々がそろっているこの家族。

すぐにゲームとかフィクションみたいに現実でも遊んじゃうんだよね・・・・。

争奪戦とか今日日小学生でも言わねーぞ・・・・。

 

俺は彼女たちのそんな子供らしい無邪気な行動に苦笑しつつ言う。

 

「まあ、争奪戦してくれてもかまわねーけど、俺は千里が好きだぞ。」

 

「えへへ~。分かってるよ。でも、あと一年結婚するまであるわけじゃない?その間に何が起きるかなんて誰にも分からないでしょ?それに私は学校行ってないし・・・・。千鶴にとっては学校は独壇場な訳じゃない。」

 

「ま、まあそうだけど・・・・。」

 

「でしょ?なら、このまま何もしないでただ一年間待っているだけだと私も舜争奪戦に敗れる恐れがあるわけ。」

 

「うーん・・・・そうかなあ。」

 

「あら?どの口が言っているのかしら?さっきものの数十分前に浮気しそうになっていた方はどなたでしたっけー?」

 

「ごめんなさい!俺でした!恐れありました!」

 

さっきのこと完全忘れてた・・・・。

自分の浅はかな記憶力に愕然としつつ千里に謝りまくる。

 

でも、こんな争奪戦しなくてもいいんじゃあ・・・・。

 

そんな俺の思考を読んだかのように千里が口を開く。

 

「ええ、そうよ。この争奪戦は本当なら舜の手によって消滅させることができる。」

 

「だ、だよな。」

 

「でも、舜。あなたそんなことできないでしょ?千鶴との縁を切って赤の他人のように過ごすなんて。」

 

そう。

最も、千里との結婚を優先するのであれば彼女と一切会わず遊ばず、にするのが一番手っ取り早く確実な手段だ。

しかし、俺は彼女と今のところかなり良好な友達関係を続けていたし、今後も続けていきたいと思っている。

千里の唯一の友達にもなってくれるかもしれないしな・・・。

 

俺はそんなどうしようもなく矛盾した思いに葛藤していたが、やはり自分の素直な気持ちを口にすることにした。

 

「うん。俺は千鶴とできればこのまま友達でいたい。」

 

「ふふふ。やっぱりね。」

 

「ごめん。」

 

「いいよ。だってそうじゃなきゃ舜じゃないもんね。ここで縁を切るなんて言ってたら逆に恋も冷めちゃってたかも?」

 

「そうか。」

 

「うん。そうだ。」

 

まっすぐに見つめてくる千里のまなざしがふわりと柔らかなモノになる。

俺はなんだか救われた感じがして肩の力がフッと抜けたように感じた。

 

でもこれで、なんで争奪戦なんていうまどろっこしい手法をとったのかが理解できた。

 

そして、理解できたと同時に感謝の気持ちがふつふつと心を充たしていき、どうにかしてこの感謝を表したい衝動がわき起こった。

 

言葉だけではたりないこの気持ち・・・・・。

 

それをすべて語ることは言葉ではできない・・・・。

 

ならば・・・・。

 

 

「千里。」

 

「ん?」

 

「ありがとう。」チュッ

 

俺はそう言って、彼女のつるりとしたおでこに口づけをした。

ゆっくりと唇を離すと、顔を真っ赤に染めた千里の整った顔が目の前にあり、心臓がどきりと跳ね上がる。

しばらく、彼女の色っぽいその顔を見つめる。

時折しばたく長いまつ毛や潤んだ瞳に俺の心は逸る。

ぷるり、とした彼女の唇が目に入り、そこに吸い付きたい欲求がどうしようもないほどに湧き上がって来た。

 

良いよな?キスしても…。

 

そんな意味を込めた視線を千里に投げかけると、小さく頷く彼女。

それを見るともう我慢できなくなり、顔を近づけた。

 

「熱いわねー!お二人さん!」

 

「うわ!」「きゃっ!」

 

俺たちの顔があと数センチの距離にまで近寄っていたその時、すぐ横あいから明るい声が聞こえ、俺たちは二人揃って叫び声をあげた。

 

もちろん、その声の主は恵さん。

 

なんつー、タイミングなんだよ…。

 

俺が不満アリアリの顔で睨むと恵さんが意地悪そうな笑みで返す。

 

「あら?舜、どうしたの、その顔?なんか不服そうだけど?」

 

「別に、なんもない」

 

「あははー。可愛いわねー舜。」

 

「おい、やめて!頭くしゃくしゃすんのやめて!」

 

ワシャワシャワシャー、とすごい勢いで俺の頭を撫で回す恵さん。

肩に禁断の果実がムニムニ当たってるんですが!?

俺の視線がグイグイそちらに引っ張られているのをどうにかこうにかセービング。

千里のおっぱいを見るにとどまる。

 

はい、どちらにしろバカですね、わかってるから言わないで!

 

俺が鼻の下を伸ばしに伸ばしているとそれを気に入らない千里が俺の腕を引っ張り恵さんから抜け出すことに成功。

しかし、引き込まれた先に千里の豊満な胸。

ムニューと腕にあたり、大きな塊がいびつに変形しているのが見える。

もう!右も左も危なすぎ!

ホントこの二人は危険生物に国は指定すべきだぞ、マジで。

 

千里は俺の腕を取ったまま、キッと鋭い目つきで恵さんを睨んだ。

 

「もう!お母さん、舜困ってるから!」

 

「なによー、千里。私、舜のこととったりなんてしないわよ?」

 

「そういうことじゃなくて!変になれなれしくすると舜の変態性が暴走するかもしれないでしょ!?」

 

「おい。待て待て。それはおかしい。俺は無罪だ!」

 

「へえ・・・・・。あんなにお母さんのおっぱいで鼻の下伸ばしてたのに・・・?」

 

至近距離でにこりと笑う彼女の顔は整いすぎてるぐらいに整っているのになぜか恐怖しか感じない・・・。

 

「いやあ・・・・伸ばしてないぞ・・・・。」

 

ついーと視線をそらしつつ、醜く悪あがきを敢行。

しかし、彼女がそんなことを許してくれるわけもなく・・・。

 

「うそ。」

 

ジーと至近距離で睨んで来る。

もう!無理!

 

「はいはい!伸ばしてました!ついでに言うと、千里のおっぱいもがっつり見てました!」

 

「やっぱりね・・・・・ほーんと舜はスケベなんだから。」

 

「うう。」

 

俺は何も言えず身を縮こませている。

そんな俺に千里は・・・・。

 

「まあ・・・・私にならエッチなことしても良いんだけどね?」

 

と、上目遣いでそんな事を言って俺を惑わしてくる小悪魔ぶりを発揮してくる。

一瞬、いいんだ、と嬉しく思ってしまったが、よく考えると、そういうことは結婚してから、と決めていることを思い出す。

 

「イヤイヤ、ダメだろ!?」

 

「えへへ、冗談冗談。」

 

ぺろっと舌を出して笑う千里。

俺は彼女のそんなチャーミングな仕草にいちいちときめきを感じてしまう。

だれか俺を殺してくれー!

内心、そんなことを思うぐらいには可愛すぎて悶えていた。

 

 

「熱々ですなあ・・・・。」

 

そんな声がソファーの横から聞こえ、見るとそこにはとんでもなくニヤニヤした恵さんがいる。

 

また、なにかちょっかいをかけてくるのかと思いきや、フッと優しく微笑み、立ち上がる。

 

「あれ?どうしたんですか?恵さん。」

 

「いやあ、さすがにこれ以上お二人のお邪魔をするのは悪いと思ってさ。」

 

「はあ。」

 

恵さんのあまりの変わりように生返事を返してしまう俺。

そんな俺の様子を嬉しそうに見た後、ひらひらと手を振りリビングから出て行く恵さん。

 

「まあ、明日から学校だからほどほどにな、二人とも・・・。」

 

そう言って本当に出て行ってしまった。

 

なんだか、急に静かになって取り残された感が俺たちに広がる。

俺は困って、千里の方を見ると、彼女も同じように見つめてくる。

 

「どうする?この後。」

 

「うーん、どうしよっか・・・・。」

 

「とりあえず、遊ぶか!」

 

「そうだね!」

 

こうして、俺たちはリビングで日付が変わる時刻までヌギバト!に興じ、死ぬほど疲れて次の日をリビングのソファーで二人して迎えたのだった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたかね?
ようやく、学校編が始まります。
ここまで長かった・・・・。
力尽きそうになりながらなんとかここまで来たので、続きもがんばります!笑
お気に入り100はまだまだ先の話になりそうですけど・・・・泣。
でも、なんとかがんばりますので応援ヨロシクね?

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