ダメ姉にダメ元で求婚したらなぜかオッケーして貰えた件   作:A i

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ここまで読んでくださった方々ありがとうございます。
これからもよろしくね?
第三話です。
今回は少し舜が積極的かも・・・。

うーん、もっと姉と弟のイチャイチャを書きたいのだけれど、話が進まないので仕方なしに進めています。
もっと、もっと濃いのが書きたいぜ!

でも、まあ、これでも十分に甘々にし上がっていると思うので、楽しんで読んでいただければ幸いです。


千鶴ちゃんってだあれ?

――キスってどんな味がすると思う?

 

そんな恋に恋する乙女のような疑問をふと思い出した。

 

確かあれは小学校の昼休みの時間。

 

俺が机の上に弁当を広げているときにあいつが投げかけてきた疑問だった。

そのときの俺はまだお子ちゃまで、「生臭いんじゃね?知らんけど。」と、言って適当に流したような気がする。

あのときのあいつの不服そうな顔ったらなかったな。

 

ふふっとそのときのことを思い出して笑っていると隣で眠る千里が不思議そうな顔で俺の顔をのぞき込む。

 

「・・・どうしたの?」

 

「ん?いや・・・なんでもないよ。」

 

そう言って彼女の頭をポンポンと優しく撫でてやる。

はじめは少し怪訝な目つきで見つめていた彼女も俺が優しく頭をナデナデし続けていると次第に気持ちよさそうに目を細め、もっともっととほしがるように俺の胸元に額をこすりつけ出す。

 

――いや、可愛すぎなんですけど・・・。

 

俺は元姉である千里のあまりの愛らしさに悶絶していたが当の本人はそんなことお構いなしにスリスリーとしてくる。

時折聞こえる「ん・・・。」という声が妙に色っぽく響き、頭を一撫でするたびにふわりとシャンプーの良い香りが鼻孔をくすぐる。

 

それだけでも、破壊力満点なのだが、彼女の大きな二つの果実が俺の腹部にむにゅっと押しつけられていて、それはもうね・・・気持ちいいやら柔らかいやらで最高です、はい。

 

たぶん、今の俺の顔は自分でもどん引きするぐらいにやけているのだが、幸い部屋は暗く、彼女も顔を押しつけているため気づいた様子はない。

 

しばらく、互いにそのままの格好でなで続けていると規則的な寝息が聞こえだした。

にやけているのを隠すようにして少し上を向いていた俺は顔を下に向け、彼女の寝顔を確認する。

彼女の気持ちよさそうに眠る顔を見ると、自然、笑顔になる自分がいた。

彼女の寝顔を見つめているとまた、愛しさがこみ上げてきたので彼女の額に掛かるサラサラの前髪を少しなで上げる。

 

「おやすみ、千里・・・。」

 

すやすやと眠る彼女の額に軽く唇を押し当て、キスをした。

すると、彼女の口元にうっすらとほほえみが浮かんだような気がする。

 

俺はそんな彼女の反応に満足したので、ゆっくりと彼女を起こさないように腕を回して彼女の細い体をギュッとした。

くびれた腰は細すぎもせず、太すぎもせず、ちょうど良い肉付きで回した俺の腕に心地よい柔らかさを布地越しに伝えてくる。

柔らかで、暖かで、甘美な感触に包まれているとそれはそれは安心できて、気持ちよくて・・・。

 

――まぶたが重くなってきた。

 

沈んでいく意識。

溶けていく境界線。

次第に曖昧になっていく自分の思考の中で、最後に浮かんできたモノは・・・。

 

――あいつは今どうしているだろう?

 

そんな疑問文だった・・・。

 

 

 

 

 

モゾモゾと何かが腕の中で動く感触によって俺は目を覚ました。

 

「ん・・・?なんだ?」

 

腕の中にいるのは千里。

でも彼女の顔はなぜか赤く上気し、目元も潤んでいた。

目を覚ました俺と目が合うと、「・・・ふぇ?」と惚けたように声を上げたかと思うと、一瞬で耳まで真っ赤っかになり顔を俺の胸元に埋めた。

 

「お、おい。どうした?」

 

「み、見ないで!恥ずかしいし。」

 

「え、なんで?」

 

「いいから!」

 

「お、おう。」

 

よく分からないままに俺は彼女の勢いに負けて押し黙り、窓の外を見る。

今日の天気もすがすがしいほどの晴れだった。

春特有の水色をした空に薄くたなびく白い雲が浮かんでいるのはいつ見ても風流な趣を感じさせる。

 

しばらく、彼女に言われたとおり視線を彼女から外していると首元にキュッと腕を回された。

 

「お、おい。なんだよ?」

 

「み、見た?」

 

「な、何を?」

 

「え・・・いや、見てないなら良いんだけど・・・。」

 

「そんな見られたら困る顔してたか?いつも通りただだらしなかっただけだけど。」

 

「いつも通りだらしないって何さ!だらしなくないよ、私。ちょっとにやけてただけで・・・ってばっちり見てんじゃん!?」

 

「ああ、なに。その顔のこと?別に良いじゃん。見てもさ。すげえ可愛いとしか思わなかったし。」

 

「う・・・うう。なんかそう言われると嬉しくてなんも言えない自分に腹が立つ。」

 

「ちょっとむくれた顔も可愛いよな。」

 

「もう舜!可愛いっていうの禁止!」

 

「はーい。」

 

「まったく・・・。」

 

しばらく、そっぽを向いていた千里だったが、横目にチラチラと俺のことを気にしているのが見えて逆に愛らしさを感じてしまう。

うーん、昨日から俺ってばでれすぎだな・・・。

でも、感情はコントロールできないので大目に見てほしい。

誰に言い訳してるんだ俺は・・・。

 

依然むすっとしてそっぽを向いている彼女だが首元に巻き付けた腕はそのままだったので俺は腰に両腕を巻き付けだっこの要領で抱き起こした。

 

「わわわ。何すんの?」

 

俺はあぐらを掻き、慌てる彼女をすっぽりと脚の間に収めると、想像以上にピタッとはまった。

至近距離で見つめ合う形になる俺達。

珍しく、俺の方が彼女を振り回せていることに密かな充足感を抱いていた。

 

でも、彼女にはそれがどうも気にくわないらしくムスッと頬を膨らませて言う。

 

「なんか、今日の舜、生意気だ。」

 

「えー。何でだよ。別に普通だと思うけど。まあ、でもそうだとしたら千里が今日、妙に可愛いことが原因だな。恨むなら自分のかわいさを恨め。」

 

「なーによそれ。ホント今日は生意気だなあ。」

 

悪態をつきながらもほんのり頬を染める彼女に俺はまた口元が緩み出す。

ゆるんだ顔をしているのは俺だけではなく彼女もむろんだらしなく口元を緩めている。

えへへ、えへへ、と互いの顔を見てにやける姉弟。

端から見ると絶対ヤバい光景だがそんなこと俺達にはもはや関係なかった。

 

――でも、さすがの俺たちも一線だけは守っている。

 

最近は性に対して非常に軽々しい輩が増えているようだが、俺たちはあくまで清きおつきあいをする。

理由はいくつか挙げられるが、やはり一番大きなモノは俺たちが体裁上は姉弟だと言うこと。

婚約してからならば何も問題は無いだろうがそれまでは問題大ありだ。

いろんな人に心配や迷惑をかけるのは俺たちの本意ではない。

それに、俺たちもできるだけ祝福される形で結婚するのが望ましいので、やはりそう言った軽はずみな事は少なくとも結婚してから、という話になったのだった。

 

――でも俺はまだ十七歳。結婚できる年齢になるまでにあと一年もある。

 

正直に言って、めちゃくちゃつらい。

 

でも、これもすべて俺たちの円満な結婚生活ためだと思えばこそ、この苦しみさえ愛しく思える。

そんな気がしていた。

 

と、言うわけで、俺たちのこの朝の風景はただ、ただ添い寝していただけ。

添い寝するだけならセーフだろう・・・たぶん。

そう思って、俺たちは添い寝していたのだが、約束した初日から結構ヤバい。

想像以上に千里が可愛いので、我慢できなくなりそうになっている。

 

今も、至近距離で見つめ合う俺たちだったが、だんだんと距離が縮まり、鼻同士がツンツンとふれあっている。

千里の甘いと息が唇に当たりくすぐったい。

彼女も俺の吐息が当たるとピクッと肩を揺らして反応している。

ほんの数センチ顔を前に近づければ唇が重なる・・・。

 

――そんなときだった・・・。

 

ガチャリ!バン!

 

と勢いよく部屋の扉が開いた。

俺たちは抱き合っている体勢のまま固まって、視線を向ける。

 

すると、入ってきた人影は今この姿を見られたくない人ランキング第一位の人だった・・・。

 

「たっだいまあ!舜、愛しの母さんが帰ってきたぞ、よ・・・。」

 

目が見開かれ、語尾にいくにしたがって声が段々と小さくなっていく。

もう手遅れだと判断した俺はせめて、どうにかごまかせないかとさわやかに言った。

 

「お帰り!恵さん!」

 

「お帰りじゃないわよ!あんた達何してんの!?」

 

「ですよね!?」

 

こうして、俺たちのイチャイチャタイムは終わりを告げた。

 

俺たち二人はフローリングの床に正座して座り、正面で仁王立ちして阿修羅のごとく恐ろしい顔をした恵さんを見上げている。

恵さんが一つ大きなため息をつき、低い声で俺たちに聞く。

 

「で、どういうことなの?舜。」

 

千里は身を乗り出して俺のために弁解しようとした。

 

「ち、違うの!お母さん。舜は別に悪くなくて。」

 

「千里は黙っていなさい。」

 

「むうー。」

 

一蹴されてむくれる千里。

 

「俺が説明するよ、千里。」

 

「しゅんー。」

 

甘えるような声でこちらを見上げてくる彼女の頭を俺はポンポンと軽く叩き、笑顔を見せてやる。

すると、心配そうだった彼女の顔も少しばかり和らいだ・・・。

 

俺はそれを確認した後、再度恵さんに向き合う。

 

この人妻の色香ムンムンの女性は十和田恵。

千里の母親だ。

 

千里の顔立ちやスタイルの良さは母親譲りのモノであると一目で分かる。

四十代前半にさしかかっているとは思えないほどの肌つやに艶やかな栗色のロングヘアー。

整った目鼻立ちなんかを見ていると若かりし頃は相当おモテになられたことをうかがわせる。

 

彼女はいわゆるキャリアウーマンで、大手のゲーム会社に勤めており、なんとあの『ヌギバト!』の開発担当だったらしいのだ。

だからこそ、家のリビングにはゲームがたくさん並んでいるし、その中でも取りやすい位置に『ヌギバト!』が置いてあるため俺たち姉弟はついついやりこんでしまったのだった。

 

あのよく分からんゲームを制作するだけあって、いつもの恵さんは明るく、元気な方なんだけど・・・。

 

「で、どういうことなのかしら?千里となんであんな抱き合ってたの?」

 

ひえー、めっさ怖いです。恵さん。

腕組みして、強調された胸も凶悪きわまりないぜ・・・ゴクリ。

 

おそらく、今までの俺ならばこんなコワ可愛いお姉さんに睨まれたら、当然、速攻DOGEZA☆だったろう。

だが、今の俺はひと味違う。

 

――これからは千里を守るべき立場になるんだ。

 

俺は深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

 

ここでの一言が俺たちの行く末を決めるかもしれないと思うとさっきから動悸が止まらない。

でも、それでも、俺は恵さんのまっすぐな瞳からただの一度も目をそらさずにいられた。

 

――ここでそらしてしまっては俺たちの交際のすべてが嘘になってしまいそうだから・・・。

 

俺は確固たる意思を宿した瞳を恵さんに向けて言葉を紡ぐ。

 

「俺たち、来年、結婚します。」

 

「・・・・・。」

 

「絶対彼女を幸せにするので俺に千里さんをください!」

 

「ええ!良いわよ!今日はお赤飯ね!」

 

「え・・・!そんなあっさり?」

 

「あたりまえじゃない。舜ならオーケーよ。」

 

「じゃ、じゃあ、なんであんなに怒って・・・?」

 

「別に怒ってないよ?あれはあなたの覚悟を試すための演技。」

 

「えー!なんだよそれ。俺めちゃくちゃ怖かったのに。」

 

「ふふふ。そうでしょうね。でもだからこそあなたの覚悟は伝わってきた。舜になら千里を預けてもいい、って本気で思えたのよ。その上で聞くけど、何か問題でも?」

 

コテンと首をかしげて不思議そうに見つめてくる恵さん。

 

~~~!千里そっくりでめちゃくちゃ可愛いんですけど!?

頬を緩めてデレていると背筋に悪寒が走る。

ゾクッとして横に視線をスライドさせると千里の冷たい視線が突き刺さっていた。

 

「う・・・な、なにかな・・・。千里。」

 

「今、お母さんのこと可愛いって思ったでしょ?」

 

「い、いや・・・そ、そそんなことないぞ?」

 

「嘘。」

 

「はい。思いました。」

 

「むう。」

 

嫉妬してふくれる千里も問題無く可愛いです、はい。

俺が千里のふくれたほっぺをつつくか否かを真剣に悩み出していると、クスクスという笑い声が聞こえた。

 

「いやあ、舜。好きな女のこの前では別の女を褒めることは厳禁だぞ?それが例え実の母親であってもだ。」

 

「えー・・・。」

 

俺の困り顔が大変気に入ったようで恵さんはあはは、と笑った。

だって母親だよ?そんなの好きになるわけないじゃん?いや、それいったら、普通は姉もそうですね、はい。

言い訳しては論破してを繰り返す、という哀しき一人遊びをしていると、恵さんが目尻にたまった涙を払い落としつつ言う。

 

「ふー・・・。笑った笑ったー。」

 

「まあ、喜んでくれたみたいでよかったですけど。」

 

「いやあ、でも、あれだね。この年になっても可愛いって言って貰えるのは嬉しいね。」

 

「そ、そうですか。まあ、でも千里には敵わないですよ?」

 

「あはははは。」「舜!?」

 

恵さんは大爆笑。千里は慌てて叫ぶ。

俺もそんな様子に笑いがこみ上げてきて声をあげて笑ってしまった。

 

「もう・・・。二人とも笑いすぎなんだから・・・。」

 

と小声で愚痴を言っていた彼女だったが笑い続ける俺たちにつられて彼女も笑い出し、十和田家は 明るい笑い声に包まれたのだった。

 

 

 

 

 

その後、朝食を三人で食べている。

終始笑顔で食べ進めていた俺たちだったが、ふと思い出したかのように恵さんが一言。

 

「あれ?でも舜、あなたって許嫁いなかったっけ?」

 

ピキッという音が響き、見ると千里の箸が折れていた。

こめかみには血管が浮き出している。

 

――不味いぞ。

 

俺は焦りつつ否定する。

 

「い、いや。そんなのいないですって。」

 

「えー。そうだったかなあ。なんか昔、嫁を自称していたちっちゃい女の子がいた気がするんだけど・・・。」

 

「いないですよ。そんなの・・・。」

 

「あー!思い出した!千鶴ちゃんだ。あの中学上がる頃に私立の学校にに行った子よ。」

 

「う・・・。」

 

「どういうこと?舜?」

 

にっこりと笑っているのにどうしてこんなにも冷たい声が出るの・・・不思議!女の子って!

俺が答えに窮してしどろもどろになっていると千里は更に顔を近づけ、俺を問いただす。

 

「ねえ・・・ねえねえねえ。」

 

「あー・・・。あの、でも昔のことだし。あいつも忘れてんじゃないかな・・・あは、あはははは。」

 

「あははは、じゃない!」

 

「う、はい。スミマセン。」

 

「もう、舜は私のモノなんだから。」

 

「モノなのかよ・・・。」

 

「なにか不満が?」

 

「いえ、ナイデス。」

 

「よろしい。」

 

千里は今度こそ柔和な笑みを浮かべてくれた。

よかった、と安堵しているのもつかの間、彼女がなぜか口をすぼめて、目を閉じる。

 

「なあ、千里?」

 

「うん。なに?」

 

「恵さん見てるんだけど、ガン見なんだけど。」

 

「それが?」

 

「えっと、だから・・・。」

 

「なによ、私とじゃ嫌って言うの?」

 

「そうじゃないよ!」

 

「なら、はやくして!この口の形疲れるんだから。」

 

「うー・・・ままよ!」

 

恵さんがウヒャア!と楽しげに声を上げたが、もうどうにでもなれ!と思いっきり彼女の魅惑的な口元に吸い付く。

ムチュー、という擬音がふさわしいキスだった。

ウヒャア、ひゃあ、うわー、と恵さん大興奮。

パシャパシャと何枚もカメラに収めている。

 

恥ずかしすぎてサッサとやめたかったのだが、千里が両手で俺の顔を押さえつけていて離れることができなかった。

 

「んー!んーんんー・・・っぷは!死ぬかと思った・・・。」

 

あまりのキスの長さに俺は酸欠を起こし、空気を求めてあえぐ。

そんな死にそうな俺に対して、千里はうっとりと目を潤ませて満足げな表情をしていたし、恵さんは俺の横に来て肩にポンポンと手を置き「グッジョブ!」と言ってきてマジでうざかった。

 

 

数回大きく息をして呼吸を整えてから、俺はキッと恵さんを睨む。

 

「その画像消してくださいよ。」

 

「えー・・・。これとか綺麗に撮れてると思うんだけどなあ。」

 

「・・・・っ!む、むむむ・・・・・・これあとで焼き増ししてください・・・。」

 

「承り!」

 

ピシッと敬礼ポーズでウィンクする恵さん。

なんでアラフォーの癖してそんなポーズが似合うんだよ・・・。

それにしても、あの写真は綺麗に撮れていた。

宝物にしよ・・・。

 

心の中でそう決めて、もう一つ気になっていることを聞く。

 

「恵さん。」

 

「ん?」

 

「なんで俺に許嫁もどきがいること知ってたんですか?」

 

「えー、だって、千鶴ちゃん、よく家に遊びに来てたじゃない?そのときに嬉しそうに話してくれてたのよ『舜は私のフィアンセだー』ってね?」

 

「くっ・・・忘れてくれ。」

 

「ダメダメ。忘れなんかしないよー。こんな面白そうな話はなかなかないからね?」

 

ニヤリと笑う彼女だが、俺は全然笑えない。

なぜなら、横でメラメラと燃える熱気を感じているので、ええ。

 

「舜。」

 

「はい!」

 

「もちろん、好きなのは私だけだよね?そうだよね?」

 

「う、うん。もちろん。」

 

「なら、良いんだけど。」

 

「でも、舜。」

 

「ん?」

 

「あんたの通ってる高校って確か、千鶴ちゃんと同じじゃない?中等部からエスカレーターだし、あそこ。」

 

「ええっとー。」

 

なんなんだよ!恵さん掘り返すなよ!もう。

 

「どういうこと?舜。」

 

「えっとー」

 

「どういうこと?」

 

「はい、確かに、俺の高校には千鶴がいます。」

 

「なんで、早く言わないわけ?」

 

眉間にしわがとてつもない深さで刻まれており、それはもう恐ろしや・・・。

 

「というより、名前呼びなんだ?その千鶴ちゃんとは。」

 

「ま、まあ。そう呼べってあいつが言うし。」

 

「はあ!?呼んじゃダメでしょ?」

 

「え、あ、はい。そうかもです。」

 

「そうでしょ?」

 

「はい。でも、俺、千里と結婚するって昨日メールしといたし、大丈夫だよ。たぶん。」

 

「え・・・。メールで?」

 

「う、うん。だめ?」

 

「いいえ。むしろ、もっと送ってやりなさい!さっきのキスショットも送ってやればその千鶴とかいう訳の分からない女もさすがにあきらめが付くでしょう?」

 

「い、いやいやいや。さすがにそれは無理!」

 

「何でよ?」

 

「恥ずかしすぎだ!」

 

「恥ずかしいのと、私と結婚するのどっちが良いのよ?」

 

「そりゃ、結婚だけど。でもそれってどっちにしても写真送ることになるよね?」

 

「チッ、ばれたか。」

 

「いや、ばれるよ。」

 

親指の爪をかみつつ悔しさをあらわにする千里。

うーん、なんか今日の千里、あんまり可愛くないぞ、なんでだ。

怖さの方が勝ってる。

 

女の嫉妬にはくれぐれも気を付けろ、などと聞いたことがあるが確かにこれが発展して行けば殺人事件なんかも起きうるかもしれん。

気を付けなくては・・・。

 

と考えていると、ピンポーンというインターホンの音が聞こえた。

 

今日は日曜日。

こんな朝早くから宅配が?と疑問に思っていたが何度もピンポンピンポン鳴らすので「はいはい。ちょっと待ってください。」と大きめの声で言いつつ玄関へと向かう。

 

鍵を開け、ガチャリとドアノブを回した――。

 

「結婚ってどういうことよ!舜!」

 

「うお!」

 

何かが飛びついてきた反動で、ドスンと尻餅をつく俺。

 

「いたた。なんだってんだ、一体。さっきの声といい、この重みといい・・・。」

 

俺は目をつむったまま手で上に乗っかった物体をどかすべく軽く握る。

 

「ひゃんっ・・・!」

 

「ひゃん?」

 

妙な叫び声と手のひらに伝わるこの柔らかな感覚。

まさか!

 

――目を開くとそこには目元を潤ませ、顔を赤らめた千鶴がいた。俺の手は彼女の胸をもみしだいている。

 

このままではマズイっと思い俺はニコッと笑顔で言う。

 

「よお、千鶴。元気にしてたか?」

 

「元気にしてたか?じゃないわよ!早く手を離しなさい!この変態!」

 

「ぶぐほっ!」

 

やはりごまかせはせず、彼女の平手打ちによって大ダメージを喰らう俺。

 

そこに千里が現れる。

 

「あー!もしかしてあんたが千鶴?」「ってことはあなたが千里ですか?」

 

『『あ?』』

 

メンチを斬り合う二人。

 

彼女たちの間にパチパチッと何かがスパークしているように思える。

ああ、なんでこんなことに・・・。

俺は天を仰ぎ、ため息をつきつつ、つぶやいた。

 

「はあー、勘弁してくれー。」

 

こんな感じでようやく、このドタバタコメディーの幕が上がるのであった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
ちょっと展開早すぎましたかね?
まあ、それもご愛敬。
次話からはもっと濃いのをゆっくり書いていきますのでヨロシク!

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