ダメ姉にダメ元で求婚したらなぜかオッケーして貰えた件   作:A i

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一話です。
ストーリーよりも千里姉の描写に力入れてます。
こんなダメダメな姉なら私もほしい・・・!
そんな自分の願望が多々入っていますがどうかおつきあい下さい!

楽しんでいただければ幸いです。


突然の・・・・・。

俺は十和田 舜、高校二年生だ。

 

残念ながら、彼女はいない。

自分としては顔も性格も恵まれた方だと思うのだが、これまでそういった色恋沙汰とは無縁の生活を送ってきてしまった。

 

そろそろ、何か青春らしい甘酸っぱい思いをしてみたいと考えはする。

けれど、現実問題としては、なかなかそう上手いこと行かない。

 

――要因はいくつか思い当たるのだが、一番大きなものは分かりきっていた。

 

トントン、と小気味良い音を立てながら俺は二階へと続く階段を上がる。

登り切ると右手に俺の部屋があり、その奥にもう一枚ドアがあった。

そう長くない木目の廊下を数歩、歩くとそのドアの前にたどり着く。

 

ドアには『千里のお部屋♡』と書かれたプレートが垂れ下がっていた。

 

コンコン、と軽くノックして『千里姉ー。』と呼んでみるが何も返事がない。

はあ。

俺は大きくため息をつきドアを開けた。

 

中は一言で言うと、女の子の汚部屋。

一面、ピンクを基調とした壁紙で覆われてはいるし、女の子特有のいい匂いもフワッと漂っている。

しかし、如何せん整理整頓ができなさすぎるのだ。

ドアを開けた今も何かが後ろで挟まって開ききることがないし、下着やら脱ぎ捨てられた私服やらが床一面にとっちらかり猥雑の一言。

 

――好きな女の子の部屋がこんなだったらたいていの男は幻滅するぞ。

 

俺は本日二度目の大きなため息をつきつつ、なんとか、足場伝いにベッドにまでたどり着いた。

 

「おい、千里姉。起きろって。朝だぞ。」

 

――呼びかけるが返答はナシ。

 

「おーい・・・起きろよー。」

 

そう言いつつほっぺをプ二プ二と突っつくが「んー・・・」とうなるだけ。

 

――今日は一段と手強いな。

 

そう思った俺は最終手段を敢行した。

 

「秘技、布団剥がしの術!」

 

ガバッと勢いよく布団を引っぺがした俺の目に驚きの光景が飛び込んできた。

 

「・・・・・・っ!」

 

「うーん、舜・・・。寒いよ・・・。」

 

眠そうに眼をこすりながら起き上がる千里姉。

 

「おはよう、舜。」

 

ニコッと眼を細めて笑う彼女は自分の姉とは思えないほどに可憐だった。

 

――でも、今の俺はそれどころではない。

 

俺は一歩二歩と後ずさりする。

千里姉はうん?と不思議そうに首をかしげ。

 

「舜、どうしたの?」などとのたまう始末。

 

頭痛を感じ、こめかみを押さえた。

 

――なんでこんなにこの姉はあほなんだ・・・。

 

なおも不思議そうに首をかしげる彼女にピシッと人差し指を突きつけ、俺は大きく息を吸い込み言い放った・・・。

 

 

 

 

 

 

「なんで全裸なんだよぉぉぉおおおお!!!」

 

「ほえ・・・?」

 

 

ポカンと口をあけ、あどけない顔で俺を見つめるこの少女は俺の一つ上の姉、十和田千里。

見た目はこの通り、かなりの美少女。

寝起きで髪がポワッと広がっていたり、メイクも全くしていないすっぴんなのにこのかわいさは身内ながらホント反則だと思う。

 

だけど、そんな美少女である彼女だが、これまでの朝の行動や部屋の様子、なんといっても今の彼女の格好を見て貰えれば彼女がどんな女性かおわかりであろう。

 

――そう、この女は完全に生活力ゼロのいわゆる、『ダメ女』なのだ。

 

具体的に言うと、この部屋を見ても分かるとおり部屋の整理はダメ。

勿論、料理なんてできっこないし、洗濯機もろくに回すことができなかった。

更に、貞操観念と言う言葉をどこか遠い世界に置き忘れたのか、男である俺の前ですらこの通り、全裸・・・。

 

――これで貧相な体つきとかなら良いんだが全く逆だから困る・・・。

 

彼女の白く透き通るような肌はきめが細かくなめらかで朝日を受けてしっとりと輝く。

首元はほっそりとしており、鎖骨もしっかりと浮き出るほどに肩周りや二の腕は細くしなやかだ。

そんな全体的に細く華奢な体つきである彼女だが、神の恩恵なのかなんなのか、普通やせ気味の女性ではあり得ないほどバストやヒップにはしっかりとお肉がついており、世の女性誰もがうらやむパーフェクトボディを湛えていた。

 

――だけど、このダメ姉今まで彼氏ができたことが一度もない。

 

容姿の良さだけなら、当然男子から注目の的だったのだが、中身を知るとやはり誰も近づかなかった。

彼女曰く、「私には舜がいるし別に良いの」だそう。

もちろん、そんなことを言われて嫌な気はしないのだが、弟としては姉のことを思うとそれなりに心配してしまう。

まあ、照れくさくて普段はこんなこと絶対口にはできないが、できることなら千里姉には幸せになってもらいたい。

そのためなら自分はできる限りのことをしていこうと思っていた。

 

・・・・・・まあ、今は幸せ云々の前に、まずはこのお馬鹿に服を着せることだな。

 

俺は部屋を見渡し、とりあえず着られそうな服をいくつか拾いポンポンと放り投げる。

下着も放り投げると彼女の頭の上にパサッという音を立てて落ちた。

 

「舜。・・・まさかこのパンツ、私の頭に履かす気?」

 

ニヤッと笑いかける千里姉に俺は額を押さえて言う。

 

「・・・っちげーよ!とりあえずそれ履け。あと、上も着ろ!」

 

「えー・・・。」

 

「えー、じゃない!」

 

「はーい。」

 

シブシブ着衣していく姉。

ホッと詰めていた息を吐き出し、俺は窓の外を見て、できるだけ先ほどの光景を忘れようと試みる。

 

――良い天気じゃ。

 

流れゆく霞のような白い雲をボーと眺めていたら、何か騒がしい事に気づく。

どうやら、千里姉が何か俺に訴えているようだった。

なので、俺はゆっくりと視線を窓から彼女へと向けたのだが・・・。

 

「・・・・・なんでまだ着てないんだよ!」

 

なぜかこれだけの時間があって未だにパンツしか身につけていない彼女に俺はいらだち混じりに叫ぶ。

だが、彼女にも言い分はあるようで『だってだって・・・』と手足をばたつかせる。

俺は本日三度目の大きなため息をつきつつ『なんだよ・・・』と話を聞いてやると、彼女は露骨に眼を輝かせた。

 

「だってだって・・・ブラとか久しぶりすぎてどうやって付けたら良いかわかんないんだもん!だから・・・舜!これ着けて!」

 

――考えること数秒。

うん、この子は完全にバカ、という結論にいたり、俺は叫ぶ。

 

「・・・できるわけないだろうがぁああ!!」

 

「へ・・・?なんで?」

 

心底分からんという顔の千里姉。

 

しかし、彼女のなかではもう決まり切ったことなのか、ベッドの上で上手に反転してその綺麗な背中を俺へと向けた。

流し目で俺を見つめつつ言う。

 

「ほら。こっち向いてあげるからこれ、着けてよ。」

 

淡いピンク色をした柔らかな質感のブラを俺に渡してくる。

なんだこの、いかにも女の子っぽい下着は・・・。

俺がそうやって渋っていると、早く!とそれを更に突き出してきた。

 

なので、俺はええい、ままよ!とひったくるようにそれを受け取りホックになっている部分を持つ。

まあ、これまでも何度かこんなことがあったので着けるのは初めてではないのだが、いつまで経っても慣れることがない。

 

俺は彼女の背後まで数歩近寄り、眼下に彼女の綺麗な背中を望む。

浮き出した肩甲骨や肩のライン、お尻にかけてのなだらかな曲線など全ての均整が取れていてしばし見とれてしまった。

屈むと、セミロングに切りそろえられた髪の毛からフワッとシャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。

チラッと顔を見ると、彼女は眼をつむり、口元には穏やかな笑みを浮かべ、なすがまま、されるがままの状態。

俺は生唾をゴクリと飲み込み、ブラを持つ手を彼女の体の前へと回す。

後ろから彼女のことを抱きすくめる形になり、意識してしまうが、無心を心がけなんとか理性を保っていた。

ゆっくりと彼女の膨らみに布地を合わせていく。

ピクンと体を硬直させた彼女だったが腕を上げ、ブラひもを通しやすくしてくれる。

その隙にサッとひもを後ろへ通し、ホックを取り付けた。

 

俺は額に浮かんだ汗をぬぐい、大きく息を吐いた。

 

「ふー・・・これでいいか?」

 

そう聞くと、彼女は少し具合を確かめるようにブラを引っ張ると『うん』と一つうなずく。

 

「うん、ありがと。さすが舜だね?」

 

「いや、これぐらい自分でやってくれ。こっちの身がもたねー。」

 

「ええー?ホントは触りたいんじゃないの?もみし抱いてくれてもいいのにー。」

 

「あほか!」

 

ケラケラと屈託なく笑う彼女。

このダメ姉だけはホントに・・・・・・。

 

俺はもう呆れて物も言えなかったから、ポリポリと頭をかきつつ部屋の外へ向かって歩き出す。

 

すると、背中に彼女の声が掛かった。

 

「あれ?どこ行くの?」

 

「飯、作るんだよ。だから、上になんか着てから下、降りてこい。」

 

「うん、分かった。じゃあ、おいしく作ってね?」

 

「わーてるよ。」

 

俺は適当に返事を返し、部屋を後にした。

 

 

 

今まで見てきたモノがいつもの十和田家における朝の光景。

そして、もうおわかりであろう。

俺、十和田舜がなぜ、青春の二文字から縁もゆかりもない生活をすることになっているのか。

 

――そう!このダメ姉の世話を焼いていると恋愛している時間がないのである。

 

朝は言わずもがな、夕方、夜とほぼすべての時間ダメ姉に掛かりっきり。

しかも、驚くことに自分もその生活を苦に感じていない。

 

感覚が麻痺しているのだろう。

 

――これは非常にまずかった。

 

苦に思っているのならまだしも、思っていないと言うことはこの現状を打破するに足るだけの原動力がないということを意味する。

なので、このままだと俺には一生彼女ができないことになってしまうし、こじらせると姉と結婚するなんてことを言い出してしまうかもしれない・・・。

 

――しかも、姉だと言ってきたが本当のところはいとこである

 

まあ、お互いに幼少期から同じ屋根の下で暮らしていたためあまりそんな意識もないが事実としてはそうなので法律上もお互いの結婚は認められることになる。

 

ならなぜ、俺達はいとこのくせに同じ屋根の下なのかというと、俺の両親は世界的にも名の知れたデザイナーで世界をあちこち飛び回っている。

その仕事の特性上、一ヶ月同じ場所にとどまることがなく、多忙を極めており、そんな環境で子供を育てるのには当然無理があった。

なので俺は三歳ほどにまで成長すると日本に在住していた父方の弟さん夫婦の家に預けられ、そのまま十四年ほどこの家にやっかいになり今に至る、というわけだ。

 

なので、俺達は名字も同じ十和田だし顔つきも似ている。

 

そして、本当の姉弟よりも仲良しだという自負もある。

 

だけど、結婚はさすがにまずいだろう・・・。

そりゃあ、俺は千里姉の事嫌いじゃないし、できたら嬉しいとは思うけど・・・。

でも世間は許してくれないだろうしな。

姉弟で結婚なんて・・・。

 

いや、べつに本当にするわけじゃあないし、そんなに真剣に考える必要もないんだけど・・・。

でも、考えちゃうよなあ・・・。

 

そんなことを考えていると気づかぬうちに朝食を作り終えていた。

どうやら、オートモードになっていたらしい。

恐ろしいな、俺の体。無意識に飯を作れるなんて・・・。

できた朝食をテーブルへと運んでいるとガチャリとリビングのドアが開く。

 

のそりと緩慢な歩き方で登場する千里姉。

感心なことにもう全裸ではなく、今はグレーのスウェットのようなだぼっとした服を上下着ている。

 

――おい、あの格好ならブラいらねーんじゃねーの?いや、知らんけど・・・。

と少し気になる点はあったもののちゃんと服を着ているため大目に見る。

 

――やばいな、大目に見る基準が低すぎる・・・。

 

自分の甘さに呆れながらも、どこか気に入っている自分に苦笑した。

 

――それにしても、本当にだるそうに歩くよなあ・・・。

 

のっそのっそと歩き、テーブルへと着く彼女をほほえみ混じりに眺め、先ほど作ったサラダを運び終えると俺も席に着く。

 

目の前にいる彼女は俺を見るとえへへ、とだらしなく笑った。

俺はデレッとしてしまいそうな口元を必死に引き締め、手を合わせる。

彼女も俺に倣い手を合わせたのを見てから『いただきます』をした。

 

カチャカチャと箸を動かす音が響く。

テレビでも付けようか、と腰を浮かせると突然、彼女が話しかけてきた。

 

「ねえ、舜・・・。」

 

俺は浮きかけていた腰を再度椅子へと戻し、聞く体勢を作る。

 

「なんだ・・・?」

 

なにやら声のトーンがいつもの軽いノリではなく真剣だったので居住まいを正した。

 

「舜ってさ・・・・・・」

 

「うん・・・。」

 

「・・・・・童貞?」

 

「へ・・・・?」

 

「いや、だから、童貞かって聞いてんの。」

 

「な!?なに言ってんだよ、千里姉!?」

 

この姉は朝から何言ってんだ?

真剣に聞いて損したぞ・・・・。

姉はお茶の入ったグラスを軽く回すような仕草をしながら続ける。

 

「いやあ、だってさ、私、舜に彼女いたことみたことないし、お姉ちゃんとしてはやっぱり心配にもなるわけですよ。」

 

「あー、なるほど・・・。でも、それを言うなら俺も千里姉の事心配だけどな。千里姉も彼氏いたことみたことないし。」

 

それを聞いた彼女は少し驚いた顔をした後、穏やかな笑みを浮かべ言う。

 

「私は良いのよ。舜がいればそれで。」

 

「なんだよそれ・・・。」

 

「でも、舜には私、幸せになってほしいし・・・。だから心配なの、舜のこと。」

 

「さようですか・・・。」

 

はあ、やっぱり似たもの姉弟だな俺達って。

さっきまで俺が考えてた事と全く同じ事を千里姉も考えていたなんて・・・。

胸の奥が暖かい。

 

――でも、俺のこと心配してんなら、まずはブラぐらい自分で着けろよなあ・・・。

 

もう少しまともになってくれたら俺も安心できるんだけど・・・。

俺は彼女のほっぺについたお米を取ってあげながら言う。

 

「心配してくれんのは嬉しいんだけど、千里姉はまず、もう少し生活力を上げないとな。ほれ、米付いてるぞ。」

 

「んっ。・・・・・善処します。」

 

「その言い方、絶対やらんだろ?」

 

「えへへ//」

 

ほっぺを押さえ、照れたように笑う彼女に俺は苦笑するしかなかった。

 

――しかし、こんな彼女でも小説家兼脚本家なのだから驚きだ。

 

しかも、そこそこ業界では名の通った作家だというのだから世の中ホント分からない。

 

こんなだらしないやつがちゃんと仕事しているのか?と思って一度彼女の執筆風景を覗いたことがある。

どうせいつも通りダラダラやっているのだろうと高をくくって・・・。

 

――でも、全然違った。

 

そんな嘗めた考えを彼女に抱いていたことを俺は恥じ入った。

 

――圧倒的だった。

 

彼女の執筆している後ろ姿だけで俺は圧倒された。

かじりつくようにしてノートパソコンに向き合い、稲妻のようなスピードで書いては消し、書いては消しを繰り返す姿は俺の想像や幻想の遙か上を行く集中力と意思を感じさせた。

俺は覗いたことを少し後悔した。

日頃世話を焼いている彼女よりも、どこか自分の方が真っ当かつ偉いモノだと勘違いしていたのだ・・。

 

ボーとそんな物思いに更けていると、心配そうにおーいと手を振ってくる姉の姿が見えたので『悪い悪い・・・』と謝る。

 

「悪い悪い・・・で、なんだっけ?」

 

「むー。もう、全然話聞いてないんだから。」

 

ふくれっ面になっても千里姉は可愛かった。

 

「ごめんごめん。で、なんだっけ?」

 

「だから、舜は彼女ほしいのかって聞いてんの!」

 

「え・・・?そりゃ、ほしいけど・・・。」

 

そこまで応えると彼女の眉がハの字に曲がり、いかにも悲しそうな表情になったので「でも・・・!」と切り出す。

 

「でも・・・!俺は彼女ができなくてもいいかなって思ってるよ?」

 

「・・・え。なんで?」

 

涙目でそう聞いてくる彼女。

俺はそんな彼女にニッと笑って言った。

 

「だって、彼女ができなくても千里姉がいるでしょ?」

 

「~~~~~~!なに言ってんのよ!舜!」

 

耳まで真っ赤にして両手で顔を押さえる彼女。

めっさ可愛いんですけど・・・!

姉のあまりのかわいさに俺は吐血しそうになっていると彼女は上目遣いにモジモジとしてこちらの様子を控えめに探っている。

そんな様子も可愛くて可愛くて。

 

――ダメだ、俺。我慢できない・・・。

 

そう思ったときには口が動いていた・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

「なあ、千里姉。」

 

「・・・・うん?」

 

「・・・・・・・俺と結婚してくれ。」

 

「・・・・・・はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、俺達は結婚することになった。

 

 

 

――あれ?これどうなんの?

 

 

 

次話に続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?

こんな姉はほしくないですかね?
いや、ほしいでしょう!?

いや、まあ、個人の感想なので強制はしないですけど、共感してくれたら嬉しいなあ、と思います。

あと、感想くれたら嬉しいです!
次話もヨロシクお願いします。

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