もう何年も続け日課になった筋トレを終え、目覚まし時計がなる前に止める。
そして汗で濡れた上着をぬぎ上半身裸のままバスルームへ向いシャワーを浴び汗を流し、数日前の事を思い出す。
まさか俺がゲームに興味を持った[フェアリーズストーリー]の新作を僅かだが、作らせて貰っているなんて思いもしなかった。
まぁその他諸々色々印象深い入社日初日で、チームのメンバーが俺以外女性と言う事や下着姿の女上司がいる会社だった。
「なんか…よくよく考えたら凄いよな…俺の職場…」
お湯で濡れ垂れた髪をかき上げ、オールバックにした状態でバスルームから出て髪を乾かす。
「やぁ二葉君おはよう」
髪が乾きドライヤーのコンセントを抜くと、リビングから黒いリボンの付いた下着姿の姉が頭を掻きながら出てきた。
「おはよう、姉さんもシャワー浴びる?」
「あぁ汗をかいてしまったからね、ん?二葉君また筋肉が付いたんじゃないか?」
「そうかな?」
左肘を曲げ力こぶを作り姉に見せると軽く叩いたり揉んだりして確かめているが、擽ったく姉の手から逃れる為距離を開けた。
「悪戯が過ぎたようだ…すまない、でも確かに筋肉は付いたようだね」
「擽ったいだけだから気にしないで、そう言う姉さんだって腹筋が綺麗に割れてるじゃないさ?」
下着姿故に見える腹部は女性では珍しく、綺麗にシックスパックに割れている。
「アハハそうなんだよ…少々鍛え過ぎたかもしれない…友人からはバルメなんてあだ名をつけられてしまったよ…」
「プッ…バルメッ…でも姉さんに合ってると思うよ?黒髪だし筋肉質だしナイフ戦得意だし」
「ウム…だから否定出来なかったよ…そう言えば最近二葉君は銃を握ったかい?」
「忙しくて最近は…久々にサバゲーやりたいなぁ…」
「私もだよ…会社のサバゲー仲間も忙しいようで全く出来ていないんだよ…二葉君の会社にはサバゲーをやっている人はいないのかい?」
「ん〜」
姉にそう言われキャラ班+モーション班のメンバーを思い浮かべるが、皆サバゲーはやっていないと思う。
「やっている人は居ないんじゃないかな?」
「それは残念だね…休みが合ったら私の仲間と一緒にサバゲーをしないかい?」
「おぉ!!いいね!楽しみにしてるよ!それじゃ朝食を作ってくるよ」
「あぁよろしく頼むよ」
「了解であります!少佐殿」
「ウム任せた!」
スチャ__(⌒(_'ω')_┳━──スチャ__(⌒(_'ω')_┳━──
「ごちそうさま〜美味しかったよ二葉君」
「お粗末さまでした、はい珈琲」
「ありがとう……ぷはぁ〜」
朝食が載っていた食器を片付け砂糖とミルクたっぷり入った珈琲をテーブルに置くと、熱くない事をいい事に一気に飲み干した。
「ゆっくり飲みなよ姉さん…」
「そんなにゆっくりはしていられないんだ、実は早朝会議がある事を今思い出してね…もう出ないといけないんだ」
「早く急いで姉さん!!はいバック!!必要な書類はファイルに挟んであるよね?後マドレーヌ焼いたから食べてね」
残像が残りそうな早さで何時もより早い出勤の姉にバックやオヤツのマドレーヌを渡す。
「ありがとう、私のミスなのに二葉君を急かさせてしまって…すまないね 」
「気にしなくていいよ」
何時もの様に姉を玄関まで見送る。
「じゃあ行って来るよ」
「うん行ってらっしゃい、気を付けてね」
「あぁ二葉君も出勤時は気を付けるんだよ?」
子供の時の様に頭に手を載せ優しく撫ではじめるが、顔が熱くなり恥ずかしさのあまり下を向いてしまう。
「わかってるよぉ…もう子供扱いしないでよ…俺もう21だよ?…」
「姉の私にしたら君は何時までも可愛い弟だよ、さて弟の可愛い顔を見れたし行ってくるよ」
頭から手を離しニッコリと笑いながら手を振り会社に向かって行った。
「全く姉さんは…さて俺も準備しないとっとその前に」
エプロンを外しリビングに戻り、ソファーの横にあるケージの布を捲った。
「おはよう四葉」
何もいない様に見えるケージに左手を入れ少し待つと、小さな木の家からハリネズミの四葉がノソノソと出てきて俺の左手を舐め始めた。
「アハハ擽ったいよ、はいゴハンだよ」
餌が載った小さな皿をケージの中に入れ、四葉の頭を軽く撫でた。
「おっと…そろそろ俺も出ないと、それじゃ行ってきます四葉」
「チュー」
挨拶をして再び布を被せ今度は自分の支度を始めた。
「さて忘れ物はないな…」
数分後、普段より多い荷物を持ちイーグルジャンプへ向った。
「見てみて青葉ちゃん!!ムーンレンジャーの新しいステッキだよ!!ボイスが20種類も録音されてるんだ!!」
出勤早々はじめさんが玩具の魔法のステッキを嬉しそうに見せつけて来た。
「へ…へ~凄いですね…」
(ムーンレンジャーってネネっちが見てたやつだよね?…私はあんまり知らないけど…)
「おはようさん〜なんやはじめ、えらくテンション高いな?」
「おはようございます〜本当だはじめさんテンション高い」
「おはよう…」
「あ、おはようございます!ゆん先輩、二葉さん、ひふみ先輩!」
出勤の途中でひふみさんとゆんさんに生き合い、一緒にオフィスまで来るとはじめさんが玩具のステッキを振り回してはしゃいでいた。
「あ!見てよムーンレンジャーの新しいステッ……あ!?」
振り向き勢いよくステッキを振った瞬間、はじめさんの手からステッキが抜けひふみさん目掛け飛んできた。
「ひふみ先輩危ない!!」
「え?…」
「間に合え!!」
ひふみさんに当たる前にバックから取り出したトレンチナイフでステッキを弾き、ひふみさんへの直撃を防ぐ事が出来た。
「ひふみさん大丈夫ですか?…って何で皆さん怯えていらっしゃるんですか!?」
先程よりも俺との距離を開け、顔を真っ青にし震えていた。
「二葉…君…な…何でナイフ?…」
「せ…せや…そないな物騒な物をなんで持っとるんや?」
ひふみさんとゆんさんの言葉に頷く青葉ちゃんにはじめさん。
(まさか皆さんこれ本物だと思っているのか…)
「あ…あのですね…これゴム製の玩具なんですよ?サバゲーで使うんですよ!!デスク周りに飾る為に持って来たんですよ」
刃の部分を曲げ偽物で危険ではない事を伝える。
「なんだぁ偽物だったんですか」
「本当びっくりしたよ…」
「偽物…よかった…さっきは助けてくれてありがとう…」
「本物を持ち歩いていたら犯罪ですよ…どういたしまして…ん?」
「二ヤァ〜」
席に付くためキャスター付きの椅子を引くと、既に先客が座っている、又は寝転んでいた。
「ニャンコだぁ」
荷物を置き小型犬くらいに肥えた猫を抱きかかえる。
「君は何処からきて誰のニャンコなんだい?人懐こいから誰かのニャンコだと思うけど…」
「可愛い猫ちゃんですね!」
「おや?こんな所にいたのかもずく」
『うわ!?』
俺と青葉ちゃんの間に見知らぬ赤い眼鏡をかけた女性が立っていた。
「柔らかい女の子の腕に抱かれるのもいいが…たまには筋肉質でたくましい男子の腕に抱かれてみるのもいいかも知れないね」
「あ、葉月さんおはようございます」
「ござい〜ます」
「おはようございます…」
ひふみさん達の顔見知りと言う事は少なくとも部外者ではないようだ。
「あぁおはよう、君が新しくうちに来た社員の高坂二葉君に涼風青葉君だね?」
「はい…」
「そうです…」
「私はディレクター兼二葉君がたくましい腕で抱き上げている猫のもずくの飼い主の葉月しずくだよ」
「ディレクターって事はここの一番偉い…」
「こんな所に居たんですか葉月さん!!」
俺の言いかけた言葉を遮るように大きな声を出したと思われる色黒の女性が、明らかに不機嫌な顔をしてキャラ班のブースに入ってきた。
「う…うみこ君…」
「さぁ行きますよ!!これから会議なんですから」
「わ…分かったから!!引っ張らないで!」ディレクターである筈のしずくさんの腕を掴み早歩きでオフィスから出ていったが、ペットであるもずくは俺が抱き上げられたままだった。
「ディレクターって実は偉くないのかな?てかもずくちゃんどうしよ?」
「さ…さぁどうなんでしょう?…とりあえず預かっておきましょうか?」
「だね、もずくちゃんしずくさんが戻って来るまで俺の膝の上でお留守番してよっか」
「ニャーン」
本人?本猫?の了承をもらい、椅子に座りもずくを膝に載せ銃を飾り仕事を始めた。
(^_ _^)♪(^_ _^)♪(^_ _^)♪(^_ _^)♪
「ん〜…」
「…」
仕事を始めてから数時間後。
悩みがこもった唸り声を何度もあげ、全く作業が進んでいないと思われる青葉ちゃんに誰も声をかけないと言う事は、きっと彼女から出ている深刻過ぎるオーラのせいで声をかけずらくなっているようだ。
(今青葉ちゃんがやってる作業ってコウさんが描いたキャラをモデリングして3Dキャラに残す作業だよな…凄く悩んでいる様だけど…)
((物凄く声をかけずらい…))
「あ…あの…二葉さん」
「ん?え!?な…何?青葉ちゃん」
話しずらいオーラを出していた本人から声をかけられて驚かない人間がいるだろうか?
答えは多分否。少なくとも俺は驚く。
「あの可愛いキャラってどうしたら出来ますか?」
「可愛いキャラの作り方?…」
俺の膝の上に寝ているもずくちゃんを床に寝かせ、青葉ちゃんの隣に行き状況を把握する。
「そう言う事か…説明より実際に見てもらおうかな」
自分のデスクの棚からスケッチブックを取り出し、白紙のページに少女の絵を描き青葉ちゃんに見せる。
「ねぇ青葉ちゃんこの絵どう思う?」
「えっと…可愛いです!」
「アハハありがとう、それでどの辺が可愛いかな?」
「えっと…えっと…絵が…可愛いです…」
「そうなるよね〜それじゃ…これは?」
先程の絵にサイドテールや雪の結晶の形のヘアピンを描きたし、再び青葉ちゃんに見せる。
「サイドテールやヘアピンも可愛い…あ!!ありがとうございます!」
「どういたしまして♪」
悩みを無事解決し、またもずくちゃんを膝に載せ仕事の続きを始める。
「少し遅くなっちゃいましたが、高坂二葉君と涼風青葉ちゃんの新人歓迎会を行います!乾杯!!」
『乾杯ぃ!!』
リンさんの乾杯の音頭の後に皆でグラスを合わせ乾杯をし、俺と青葉ちゃんの新人歓迎会が始まった。
「今日は会社のおごりだから皆好きなだけ飲んで食べてね!!」
『はーい』
「と言う事で肉喰うぜ!!」
「あ!そんなに肉を持ってかないで下さいよ!八神さん!!」
一足先に鍋の肉をさらっていくコウさんに続き、はじめさん達も鍋に手をつけ始める。
「そう言えば青葉ちゃん一人目のキャラOK貰えたんだってね、おめでとう!」
「二葉さんのアドバイスのお陰ですよ!相談してなかったらきっとまだOK貰えませんでしたよ…」
「俺はただやり方を教えただけで、答えを出したのは青葉ちゃんの力だよ」
「そうだと嬉しいです…」
酒を飲みつつ肴をつまみ、左隣に座る青葉ちゃんの頭を撫でる。
「な〜に二人だけで話しとるんやぁ」
歓迎会が始まってからまだ時間が経っていないと言うのにほろ酔い状態になったゆんさんが顔を近づけ、青葉ちゃんとの会話に乱入してきた。
「ゆんさん顔近いです…」
「もう酔ってるんですか!?」
「ん〜まだ酔っとらんよ〜青葉ちゃんはまだ未成年だからお酒飲めへんけど二葉君はうちと同じ21やろ?お酒のんでる?」
「ち…ちゃんと飲んでますよ?」
「ん〜それホンマにお酒か?」
疑うゆんさんに酒の入ったグラスを見せるといきなりグラスを奪われ、中身を一気に飲んでしまった。
「あ!?ゆんさんそれ度数高いですよ!?」
「んく…んく…うちはもう大人や!こんくらい飲め…」
「ちょ!?ゆんさん!!」
お酒を飲み干した瞬間ゆんさんの顔が一気に赤くなり、フラフラしながら俺の膝に倒れてしまった。
「スースー…」
「寝ているだけみたいですね…」
「だね…びっくりしたよ…」
「二葉は何%の飲んでたの?」
「確か39%」
「39!?結構高いの飲んでるね!!意外と二葉強いんだなぁ」
「青葉ちゃん!!後輩は上司にお酒をつぐものれす!!」
ダンっと中身を飲みほされたグラスをテーブルに強めに置き、呂律が回っていないリンさんが反対の手に持ったビール瓶を青葉ちゃんに差し出した。
「うわ…リンも酔ってるよ…」
「えっと…上手くつげるかな…」
「…青葉ちゃんビールをつぐ時は泡を3、ビールを7を目安にするといいよ…」
「泡を3でビールを7ですね!ありがとうございます!」
「いえいえ〜っと…皆さん俺注文しますけど、序に何か頼みましょうか?」
「私はまだビールあるから大丈夫」
「ありがとう二葉君、私も大丈夫だよ〜」
「あ…あの…二葉…君…注文…お願いします…」
「もりたけぞうですね?飲み方がストレートにロック、炭酸割がありますけどどうします?」
「えっと…そのまま…で」
「分かりました!すいませんー注文お願いします」
「ありがとう…」
「はい、ただ今!」
クゥーッ!!”(*>∀<)o(酒)"クゥーッ!!”(*>∀<)o(酒)"
「ぶっちゃけ話ししよーぜぇ」
『え?』
新人歓迎会開始数時間後、酔ったコウさんが飲み会の王道のネタを持ち出した。
「なぁ二葉、この中で彼女にするなら誰ぇ?」
「ん〜正直選べないですね、皆さん魅力的な女性ですし」
「えへへ…魅力」
「八神さんが純粋に照れてる…と言うかリンさんまでダウンしたよ…」
「あのすいません…もう時期閉店時間となりますので…」
「もうそんな時間かぁ、二次会来る人いる〜?」
「ひっふミーン!!」
「はーい!次回予告始まるよー」
「…」
「ふ…二葉君…せ…せめて何か言って…」
「いやぁ流石ですひふみさん!可愛いですよ!」
「うぅ…恥ずかしい…」
「なんかひふみさんの新たな一面を見た気がします!」
「お…大袈裟…だよ」
「そんな事ないです!次は何をしてもらおうかな〜」
「う〜…次回、二次会はしみじみと…見て…ね」