優しい心と温かい目で見てください…
イーグルジャンプの皆さんに自己紹介を済ませた後にコウさんに呼ばれ青葉ちゃんと共にリンさんと共同のブースに来たのだが、ジュースのペットボトルやエナジードリンクの空き缶等のゴミがブースの半分に散らばっているのがまず先に目に付いた
きっともう半分の綺麗なブースはりんさんの領土なのだろう。
「それじゃあダブルリーフには何してもらおうかな〜」
『ダブルリーフ?…』
「二葉君も青葉ちゃんも名前に葉って漢字があるでしょ?それで二人合わせてダブルリーフだとおもうわ…」
『あぁ…なるほど』
俺達に謎の名前をドヤ顔でつけたコウさんだが、全く意味が分からずポカンとしているとその光景を見かねたりんさんが「ダブルリーフ」について説明をしてくれてようやく意味が分かった。
「な…なんだよ…意味伝わってなかったのかよ…」
「アハハ…」
「すいません八神さん…」
「ハァ…まぁいや…青葉3Dの経験は?」
ため息をつくとおちゃらけた顔が一変し、キリッとした真剣、またはプロの顔つきになった。
「すいません…絵以外の事は何も…」
「OK大丈夫!」
ガサゴソとデスクの上の書類や資料の山から一冊の本を発掘し、表紙の誇りを軽く払い青葉に差し出した。
「この参考書の1章をやるように!」
「は…はい…」
「んじゃ青葉は戻っていいよ〜」
「え…分かりました…」
不満そうな顔をして自分の席に戻って行く。
「二葉には早速仕事をしてもらうよ?」
「分かりました、それで何をすればいいですか?」
「えっとまずはこれ見て」
現在仕事で使用しているのとは別のディスプレイを立ち上げるとRPG風の街が広がり、石で出来た噴水の近くに金髪の鎧を纏った少年のキャラが立っていた。
「凄い…これコウさんが作ったんですか?」
「えへへ照れるなぁ…そうだよ!そして今動かしているPCが今作っているゲームのキャラの主人公だよ」
ゲームのコントローラーを使い、PC(プレイヤーキャラ)をジャンプさせたり様々なモーションをさせた後近くの店に入った。
「内装も細かい…本当に凄いですね…他にキャラが居なくて寂しいですが…」
「フフン!寂しいのは当然だなよ、だって二葉の最初の仕事はこの街を賑やかにする事だからね!本来なら私がキャラをデザインしてそれをモデリングして3Dキャラに残させるんだけど、二葉は全くの初心者って訳でもないから実力を見るためにキャラのデザインから初めて貰うよ」
「この街を賑やかに!…」
胸が高なった。
ずっと憧れていたゲーム制作に入社する事ができ、全キャラではないものの自分が考えたキャラをゲームに登場させる事が出来るチャンスがこんなにも早く来るとは思ってもみなかった。
「もしかして自信ないとか言わないよねぇ?」
「まさか、任せてください!それと…コウさん」
「ん、何?」
「いきなりで失礼だと思いますが!コウさんのデスク周りを片付けさせてくれませんか?」
「へ?」
「私も手伝うわ、時間かかるから帰る時に片付けるつもりだったのだけれども2人居ればすぐ片付くわね!」
大きなゴミ袋を持ったりんさんがゴミの散らばるコウさんの領土に入って来ると、コウさんは驚いた顔で俺とりんさんの顔を交互に見ている。
「べ…別に片付けなくてもいいよ!後で私がやるから!!」
「駄目よコウちゃん!今片付けるの!!大丈夫よ私と二葉君でやるからコウちゃんは自分の仕事をしていて」
「姉もよく部屋を汚すんですよ…それでこのブース見てると姉がいる様な気がして集中出来ないんですよ…」
「う…分かったよ…全く…リンが2人になったみたいだ…」
「それじゃあ私がデスクを片付けるから二葉君は床に落ちているゴミの片付けをお願いするわ」
「分かりました!」
コウさんの許可を(無理矢理)貰いりんさんと手分けして片付けていく。
「やっぱり2人がかりだと捗りますね」
「そうね!もうすぐ終わりそうね」
「ムゥゥ…」
ムスッとした顔で仕事をしているコウさんをよそにどんどん片付けを進めていくと、何か紫色のハンカチのような物を見つけコウさんに見せクシャクシャのままで渡すわけにもいかず一度広げ、畳もうとした時にこれがハンカチではない事に気がついた。
「コウさんハンカチ落ちてましたよ?…ん?…これ下着…ハァァァァァ…」
「ちょっと二葉!!女の下着見てため息とかおかしくない!?普通は興奮とかするんじゃないの!ねぇ!?また姉か?姉の下着で見慣れてると!?私には女の魅力がないと言いたいのか!?」
下着を奪い取るやいなやキレられる。
「そうは言ってないですよ…ちゃんとすればコウさんはとても魅力的な女性になりますよっと片付け終わりました!」
「お疲れ様、ゴミ捨ては私とコウちゃんでやるから戻っていいわよ」
「分かりました、じゃあ後は任せました」
口を縛ったゴミ箱をブースの邪魔にならない所に置き、自分の席に着きイヤホンを耳にはめ音楽を聞きながらスケッチブックを開きキャラデザを始めた。
「えへへ聞いた?、私ちゃんとすれば魅力的な女性だってぇ」
「コ…コウちゃんはそのままでいいの!!」
「な…何怒ってるのリン?」
「何でもないわよ!!」
好きな事をやっている時の時間の流れはとてつもなく速く感じてしまう。
キャラデザを初めてからどのくらいの時間が過ぎたのか分からないが3人目のキャラを書き終えると肩を叩かれ、イヤホンを外し振り返ろうとした時に俺の頬に人差し指がくい込んだ。
「ひっかかった!」
「にゃにひゅるんですか…ゆんひゃん?」
「アハハごめんな!それよりうちとはじめと青葉ちゃんでお昼食べいくけど二葉君も一緒にどうや?」
「お昼?…あ…もうこんな時間だったんですか…」
時計を見ると既に正午を過ぎていた。
「いいんですか俺も一緒でも?」
「うちは気にせえへんよ?」
「私も〜」
「私もです!」
「じゃあ俺も行きます、えっとひふみさんはお昼どうします?」
鞄を肩にかけ尋ねるとゆんさん達の目線がひふみさんを見つめ、オロオロしながらこちらに体を向けた。
「えっと…私…」
「そう言えばうちひふみ先輩がお昼食べてるとこ見た事ないなぁ、一緒に食べ行きませんか?」
「えっと…あ!」
「ん?」
返事に困っていたひふみさんの目線が俺の肩にかかった鞄のキーホルダーを見つめていた。
「二葉…君…それハリネズミ?…」
「はい、ニードルで造ったんですよ」
フェルトで出来たハリネズミのキーホルダーを取り外し、ひふみさんに手渡すと食い入る様にキーホルダーを見始めた。
「へぇ二葉君器用なんやね」
「うわぁ可愛いですね!!」
「可愛い…二葉…君も…ハリ…ネズミ飼ってるの?」
「ありがとうございます!はい四葉って名前で一応そのキーホルダーのモデルの子なんですよ」
「私もお昼行く!!私もハリネズミ飼ってるの!だからハリネズミトークしよ!」
メッセのテンションで話すひふみさんを見た俺達4人は呆気にとられ、話すことも動く事も忘れただひふみさんを見ているだけだった。
そして我に返り顔を真っ赤に染めデスクに伏せてしまった。
「う〜…恥ずか…しい…」
「そんな事ないですよ?ひふみさん!」
「本当?…」
「はい!好きな事を話しているひふみさんもいいと思いますよ!良かったらキーホルダー差し上げますよ?」
「いいの?…」
「はいどうぞ!」
「ありがとう…」
ひふみさんの意外な表示を見せて貰ったお礼代わりにキーホルダーを譲るとひふみさんは早速スマホケースにつけ、嬉しそうに俺達に見せてくれた。
「ええなぁ!めっちゃ可愛いですよ」
「二葉君凄いね!」
「私も何か作って欲しいなぁ」
「時間あれば作るよ!じゃあひふみさんも一緒にお昼行きましょう!」
੯•́ʔ̋ ͙͛*͛ ͙͛*͛ ͙͛̋و ੯•́ʔ̋ ͙͛*͛ ͙͛*͛ ͙͛̋و ੯•́ʔ̋ ͙͛*͛ ͙͛*͛ ͙͛̋و ੯•́ʔ̋ ͙͛*͛ ͙͛*͛ ͙͛̋و ੯•́ʔ̋ ͙͛*͛ ͙͛*͛ ͙͛̋و
色々な会話を楽しんだお昼休みが終わり、また仕事に取り掛かる午後。コウさんはディレクターに呼び出され席を空けている。
息抜きでリフレッシュ出来たらしく一段と仕事が捗り、早くも4人目のキャラデザが完成した。
「そう言えば…青葉ちゃん戻ってくるの遅いですよね?…」
「確かに遅いなぁ」
「何か…あったのかな?…」
「青葉ちゃん迷子になったとか?…」
お手洗いに行き既に数十分経っだが戻って来ない青葉ちゃんを心配していると、りんさんからメッセが届いた。
[お仕事お疲れ様です。コウちゃんに社員証の写真は撮って貰った?朝頼んでおいたのだけれど?]
「…社員証…あっ」
オフィスに入った時はりんさんが、お昼から戻って来た時にはゆんさんが扉を開けてくれたから気にしなかったが社員証がないとオフィスの扉が開かない事を思い出し、急いで中から扉を開けるとやはり扉の前で体育座りをして半泣きの青葉ちゃんを発見した。
「うぅ…二葉ぁさん…」
「アハハ…青葉ちゃん発見…よしよし泣かない泣かない」
「二葉君どうしたの!?急いでブースから飛び出て行ったけど?」
血相を変えてブースから飛び出てきたりんさんに事情を伝える。
「社員証がなくて入れなかったって…」
「はぃ…そうなんですよぉ…」
「全く…予定通りに行ったためしがないよ…って何してるのリン?二葉と青葉まで?」
この状況を作りだした張本人が何も知らず、不満をボヤきながら現れた。
「ねぇコウちゃん!社員証の写真を撮ってって朝お願いしたよね?」
「あ…い…今から撮ってきまーす!!」
「ちょ!コウさんどこ行くんですか?」
「強く引っ張り過ぎですよ八神さん!!」
「まぁまぁすぐ分かるよ、リン〜カメラ借りてくよ〜」
りんさんの威圧に堪らず逃げ出したコウさんに腕を引かれ、誰もいない壁の白い部屋まで連れて来られた。
「ここなら明るいから照明いらないから綺麗に撮れるでしょ?、んでどっちから写真とる?」
俺と青葉ちゃんは互いに顔を見合わせる。
「どうする青葉ちゃん?俺から撮ろうか?」
「それでお願いします…」
「分かった、コウさん俺からでお願いします」
「んじゃそこに立って…撮るよ〜……はい終わり、次青葉そこに立って」
コウさんに指示された場所に立つと2〜3回シャッター音がなり難なく俺の社員証の写真撮影が終わり、青葉ちゃんの番になった。
「ねぇ服装は一応自由なんだけどさぁ…なんで学生服なの?二葉は私服だよ?」
「やだなぁスーツですよこれ、社会人の基本じゃないですか!いやぁ服装選びに時間が掛かりそうなので…」
((み…見えない…))
「なら青葉ちゃん、これが正しいスーツの着方だよ」
ビジネススーツのリボンを解き、襟元を正す。
「あ…ありがとうございます…」
((うわッ…童顔だからスーツ似合わない…あれ?なんかいけない事をしている気がするんだけど…))
「まぁいいや、撮るよ〜」
「青葉ちゃん〜こっち向いて」
「ちょ!?2人の心の声が聞こえましたよ!?」
頬を膨らませ機嫌が悪くなるがカメラを向けた瞬間姿勢を正し、カメラ目線になる所を見るとやはり女の子だと言うのを実感する。
「よしッと2人ともお疲れ様〜後は完成を待つべし!!」
2人の写真を撮り終えオフィスまで送って貰った後、コウさんは社員証を作りにオフィスから出ていった。
「これで扉の前で開くまで待たなくてすむね」
「本当あの時はどうなる事かと思いましたよ…」
「扉の前でいい子に待っている青葉ちゃんは犬みたいで可愛いと思うなぁ…人懐こい所も犬みたいだし、番犬青葉ちゃんいや、忠犬青葉ちゃんかな?」
「私犬ですか!?…二葉さんってたまに意地悪な所ありますよね…」
「お!2人ともお疲れさん〜一緒にお茶にせえへん?」
キャラ班のブース近くまで来ると、ゆんさんがティーポットを持って顔を出していた。
『お茶?』
ブースの中ではカラーボックスにテーブルクロスが敷かれ、その上にティーポットやキャラハンの人数分のティーカップが置かれていた。
「可愛いカップ!いただきます!」
「ありがとうございます!あ、クッキーありますけど食べます?」
『食べる!!』
鞄からクッキーの入った丸い缶を取り出し、即席のテーブルに置いた。
「どうぞ食べてください」
缶の蓋を開けひふみさん達が覗き込むと、一斉に目が輝きだした。
「凄い…可愛い…」
「色々な形がありますね!」
「うわぁ美味しそう!!」
「これ何処で買ったん?」
「これ俺の手作りなんですよ、雑貨屋で可愛い缶を見つけてね!クッキーを入れてみました〜」
「二葉君…器用…なんだね、美味しい…」
「ん!!ホンマや!」
「美味しい!!」
「凄い!美味しいですよ」
各々クッキーを食べ始め口に合うか不安で様子を覗っていると、全員の口に合った様で安心する。
「ありがとうございます!ゆんさんの淹れてくれた紅茶だって美味しいですよ!」
「ホンマ!ありがとう!」
今日の出勤だけでひふみさん達との距離が物凄く縮まった様に感じる。
「二葉〜青葉お待たせ〜社員証出来たよ」
「お!ありがとうございます」
「ありがとうございます!なんか本当は入社した気分ですよ!」
「いや…もう入社してるから…と言うか休憩は確かに大事だけど終業前だって事を忘れないでね?あ、後私にもクッキー頂戴」
「はいどうぞ」
「ありがとう…ん!美味しい!…それでダブルリーフは何処まですすんだ?」
疲れた脳に糖分を補給している顔で、進捗状況を聞いてくる辺りはやはりプロだと言う事を実感させられる。
「えっと…私はここまでです」
「どれどれ…お!早いじゃん!!二葉は?」
参考書の付箋の挟まっている部分を開くと予想外に進んでいる事に驚いている
「4人のキャラデザが終わってます」
「4人も!?」
今度はスケッチブックを開き俺の描いたキャラを真面目な顔つきでチェックするコウさんは、正直下着姿の時より魅力的だと感じてしまう。
俺が描いた4人のキャラは若い神父に煤塗れの武器屋の娘、体格がやたらいいがドレスを着たオネイな男性の防具屋にオッドアイで無愛想な顔つきの女将で主人公が多く関わるであろう人物を主に描いてみた。
「いいね!特にオネイの防具屋は特に面白いよ!青葉ももう少ししたら仕事をふるから!2人とも頑張って!」
『はい!』
「所で今作っているゲームって何なんですか?」
「そう言えば私も知らないです…」
「あれ…あ、うち言ってなかったわ!?」
「私も忘れてた…」
「え!?知らないでこのキャラ描いてたの!?…まぁ私も言ってなかったけど…それでこのゲームの名前は[フェアリーズストーリー3]だよ」
『フェアリーズ…ストーリー3!?…』
「毎度おなじみ次回予告のコーナーです!皆さんこんにちは司会の二葉です!、いきなりですが今日のゲストさんの登場です!」
「皆さんこんにちは!!イーグルジャンプのモーション班!篠田はじめです!」
「はじめさんって戦隊モノが好きなんですよね!」
「後は魔法少女も好きだよ!!二葉君は好きな魔法少女アニメとかキャラとかいる?」
「俺は魔法少女〇どか☆マ〇カの〇倉〇子ですかね?」
「二葉君…それ鬱な方だよ…ガチな方だよ…私そのアニメトラウマ何だよなぁ…残夏さん何か辛そうだからもう終わりにするね…次回魔法もナイフも歓迎会もあるんだよ…みてね…」
「あぁ!?はじめさんのテンションが!?てかタイトル名がだんだん適当に!?」