「私達のチームの男子は君だけなの…」
「え…」
その言葉を聞いた瞬間に自分が描いていた社会人ライフが音を立てて崩れていった。
「まじかどうしよおとこひとりとかやばまじやばあーおわったおわったわハブられるおとこひとりとかハブられるんじゃね」
「二葉さんが壊れた!?」
「お、落ち着いて二葉君!!皆いい人達だから大丈夫よ!」
「えらい賑やかやなぁりんさんこないな所で何してるんですかぁ?」
「ヒッ!?」
突然聞こえた女性の声に思わず変な声を出してしまった。
「…落ち着いて二葉君…あら飯島さん今日は早いのね?」
「はい…妹がうちの布団でおねしょしまして…二度寝できん状態に…」
「朝から災難ね…」
「ほんまえらい事になっとったんですよ…所でその二人は誰なんです?」
「今日から私達と同じキャラ班で働く新入社員よ、先に自己紹介しちゃいましょうか」
「え!?新人さん!?」
青葉ちゃんと二葉君を交互に見ると、青葉ちゃんは少し緊張していてもちゃんと飯島さんの方を見ているが、問題の二葉君は完全に背を向けてしまってる。
(ん…ここはまず青葉ちゃんの自己紹介をお手本として見て貰いましょう)
「青葉ちゃん最初に自己紹介頼めるかしら?」
「あ、はい分かりました!今日からキャラ班でお世話になります涼風青葉です!」
「ほら!次は二葉君の番よ!!」
「ちょ!?待っ…ドワッ!!」
青葉の自己紹介が終わり未だに背を向けたままの二葉肩を持ち、力いっぱい引いて正面を向かせた。
「さぁ頑張って!!」
「ウグ…」
りんさんと青葉ちゃんに応援の眼差しをうけ、逃げる事が不可能と諦めて自己紹介をする事にした。
「スーハー…」
深呼吸を数回繰り返しクリーム色の髪を左右で二つに結い、緑色のリボンを付けた飯島と言う女性を見つめた。
「俺も今日からキャラ班でお世話になる高坂二葉です!よろしくお願いします!後堅苦しいのが苦手なので二葉と呼んでください!!」
『…』
勢い任せの自己紹介を終えると沈黙が辺りを包んだ。
(おぉぉぉぉぉッ…何だこの沈黙…やっちまったのか)
「えっ…」
「え?」
「えぇぇ!?」
謎の沈黙タイムを終わらせたのは意外な事に飯島さんの方で、鞄から手鏡を取り出し髪型や服装を確認し始めた。
「アカン!新人さんに男子居るんやったらもう少しお洒落してきたのに…変な所ないよなぁ?」
「あ…あれ?」
「ね!大丈夫でしょ?」
「はぁい…」
意外なリアクションに呆気にとられショルダーバッグが肩からずり落ちそうになるが、かけ直し冷や汗を拭くのと同時に飯島さんの身だしなみチェックが終わったようだった。
「あの!うちも青葉ちゃんと二葉君と同じキャラ班の飯島ゆんいいます!分からない事があったら遠慮なく聞いてな!あ、私の事はゆんって呼んでな…うちも堅苦しいのが苦手やから」
少し童顔なゆんさんの笑顔を見て、心が少し楽になった気がする。
「自己紹介も済んだ事だしそろそろ中に入りましょうか青葉ちゃん二葉君ついて来て、序に中を案内するわね」
『はい!』
「そう言えば二葉君は何で自己紹介の時にあんなにガチガチに緊張しとったん?」
「そ…それは…」
「プッ、あっはははッハブられるてんな事する訳ないやん!他の班のメンバーは皆優しい人やから安心しいや?」
数分前社内をゆんさんとりんさんに案内してもらっている最中ずっと緊張していた理由を尋ねられ、根気に負け理由を包み隠さず話していまい今に至る。
「うぅ…だって女性しかいないキャラ班に男1人だけって…絶対ハブられるじゃないですか…」
「それやるんは学生までやと思う…うちは異性が居った方が女性とは別の意見とか聞けるって思っとるし、男っ気が無かったから二葉君入って来て嬉しいよ!勿論女の子の青葉ちゃんも大歓迎よ!」
「ありがとうございますゆん先輩!本当良かったですね二葉さん!」
「本当良かったよ…」
「フフ、さぁ着いたわよ!ここが私達のオフィスよ!」
りんさんが社員証で扉を開け俺達がこれから働くオフィスが目の前に広がり、キャラ班のブースに案内してもらった。
「それでここがキャラ班のブースで、ここが二葉君の席でこっちが青葉ちゃんの席ね」
「あ、うち二葉君の隣りや!分からん事あったら何でも聞いてな!」
指定された自分の席に着くと、少し遅れてゆんさんが右隣りの席に座わった。
「頼りにしてます!青葉ちゃんは俺の真後ろの席かぁ」
「話せる人が近くでよかったですよぉ」
「二葉君達は何かのむ?」
りんさんがブースの入口から顔を出し、安心した笑っている。
多分俺の事を気にかけてくれていたんだと思う。
「うちは大丈夫です」
「じゃあ私はオレンジ…」
(まて青葉!もう社会人何だからここは珈琲でしょ?)
「珈琲のブラックで!」
「青葉ちゃん大人だねぇ、俺はオレンジジュースでお願いします」
「わかったわ、少し待ってて」
「え?」
「ん?」
青葉ちゃんに驚いた顔でガン見された。
「いえ…何でもないです…」
(大人でも珈琲飲まない人いたんだ…)
「リン〜私も珈琲〜っていな…い…」
気の抜けた声と共にブースの入口にりんさん以外の下を履いていない女性が現れ、俺と目が合い動きが止まった。
「ちょ八神さん!?」
「パ…パ…パンツゥ!?」
「キャャャャャッ!?な、何でキャラ班に男がいんのよ!!」
「二葉君!!」
「二葉さん!!」
「へ?」
『見たら!!「アカンよ!!」いけません!!』
「グォ!?」
ゆんさんと青葉ちゃんからでタックルをくらい椅子から押し倒され、 顔に何かが覆いかぶさり目の前が暗くなりいい匂いが鼻を擽った。
「何の騒ぎって!?こうちゃん二葉君がいるからスカート履いて!!」
「もう見られたよりん!!何でキャラ班のオフィスに男子がいるんだよ!?あぁもう!スカート取って!!」
「新入社員の中に男性社員がいるからちゃんとした服装をしといてって何回も言いました!ほら早く履いて!」
(俺が状況を掴めないまま話が進んでいく…)
事故とは言え女性のパンツを見てしまった為、謝罪をしようと思い顔に覆いかぶさった物をどけようと手を伸ばした瞬間にピクンと動いた。
「ヒャンッ!?ちょ…ちょっと二葉君脇腹を触ったアカン!!擽ったい!」
(この覆いかぶさっているのはゆんさんか)
「じゃあ離れてください…眼鏡くい込んで痛いんですよ…」
「ま…まだ駄目や!八神さんがスカート履くまで待ってなぁ」
「頑張ってください二葉さん!!」
(すぐ近くで青葉ちゃんの声がする…まさか青葉ちゃんも乗っかってるのか…)
「スーハー」
「んんッ…ってコラ!」
「いてッ…」
仕方なく退かすのを諦めやたら息苦しくなり、深く息を吸うと何故か頭を軽く叩かれた。
「大きく呼吸するの禁止や!」
「息苦しいんですけど…かなり…それと凄いいい香りがします」
「匂いを嗅ぐのも禁止や!!」
「イテッイタタッ…」
今度は2回叩かれてしまった。
「飯島さん青葉ちゃんもう大丈夫よ、どいてあげて」
「わかりました」
「はい、全く八神さん!次は気を付けてくださいよ?」
りんさんの言葉を合図に顔にへばりついていたゆんさんがゆっくりと離れていき、そこで俺の顔に押し付けられていたのが胸だった事に気づいた。
「…二葉君のエッチ…」
そう言い残しゆんさんは席に戻った。
「二葉さん大丈夫でしたか?」
「大丈夫だよ、ちょっと目と鼻が痛いけど…」
(小さい様に見えて結構なかなかモノをお持ちで…)
青葉ちゃんは近くで俺の具合を見てくれている。
「どうしようりん!!下着見られたぁオカズにされたらどうしよ…」
「オカズって…こうちゃんがそんな格好をしているからでしょ!」
駄々を捏ねりんさんに泣きつく子供の様な女性に近づき、謝罪の意味で深々と頭を下げた。
「事故とは言え失礼な事をしました、本当にすいませんでした」
「二葉君は悪くないのよ?こうちゃんがだらしがないのがいけないのよ?」
「それはそうだけどさ…オカズにしない?…」
涙目で睨まれ質問の回答を迫られる。
「オカズ?」
「青葉ちゃんは知らなくていい事だよ…その点は大丈夫ですよ…見慣れているので…」
『見慣れてる!?』
先程からすましていたゆんさんも含めたキャラ班の女性4人の声が重なり、視線が俺に突き刺さった。
「ふ、二葉君!?見慣れとるってどないな意味!?」
「二葉さんまさか!?」
「二葉君…そんな…」
「俺のだらしがない姉がですね…家にいる時は下着姿なんですよ…否が応でも見慣れてきますよ…」
「二葉君のお姉さん?…」
「はい、姉です」
4人全員が安堵のため息を吐いた。
「ハァ…何か馬鹿馬鹿しくなってきた…もういいや…こっちこそごめんね、私はキャラ班リーダーの八神こうよろしくね」
気持ちを切り替え真っ直ぐ俺と青葉ちゃんを見つめ、先に自己紹介をしてくれた。
「高坂二葉です!よろしくお願いします!」
「涼風青葉です!よろしくお願いします!」
「有名な専門校卒業生か即戦力…とまでは言わないが、少し厳しめでやらせてもらうよ?」
「戦力として活躍できるように頑張ります!」
俺と目を合わせ期待を込めた笑顔をで首を縦にふった。
「青葉は高卒だよね?私も高卒でここに来たんだ」
「本当ですか!?」
「うんだからまずは基礎から固めて色々な知識を学ぶ事から始めようか、分からない事は私やりん達に聞いて」
「はい分かりました!」
「今回から次回予告を担当する二葉です、毎回登場人物とローテーションでゲストに呼び駄弁りながら次話の予告をします!記念すべき1回目のゲストはこの方!」
「皆さんこんにちは!原作NEW GAME!の主人公涼風青葉です!よろしくお願いします!」
「青葉ちゃんは見た目はあれだけど…歴とした社会人なんですよね!」
「うぅ…そんなに幼く見えますかぁ?」
「俺が駅長さんなら切符を買おうとする青葉ちゃんに子供料金案内しちゃうレベルかな?」
「あ…それされた事あります…」
「あれ青葉ちゃん何で隅っこですわってるの?…あ!残夏さんだ!!え、なんですか?青葉ちゃんがやばいから終わりにして?…分かりました!次回!イーグルジャンプ攻略中級そしてラスボス戦」
「展開早くないですか?二葉さん…」
「あ、青葉ちゃん戻ってきた…まぁ細かいことは気にしないで!」