【休載中】TS吸血鬼な勇者は、全てを失っても世界を救いたい。   作:青木葵

21 / 34
確かに私は本編の投下は1週間後になると言った……!
だが、幕間が投下されないとは一言も言っていない!
という訳で、ちょっと息抜き回になります。
ゆるーく楽しんでいってください。


幕間1 ぶっしほきゅーの巻

「お、あそこに街がある」

 

 ちょうど兵糧も尽きそうだし、今日はここらでキャンプを取ろう。

 その意思をアレクとギーグの二人に伝え、野営の準備をする。

 力仕事は今の細腕ではできないので、オレは手持ち物資の再確認をしている。

 

「えーっと足りないのは灯油と非常食、か。

 あと荷紐や寝袋なんかもあった方がいいな」

「それにしても、ユウの持っている野営用品は便利なのが多いよね」

「まあ、元軍人な訳だしな。

 基本的な装備はそのまま持ってきた訳だし」

 

 とはいえ人数が増えたために買わなければならない物が多い。

 アレクの家に荷物が置いたままになっていたのは不幸中の幸いだ。

 あそこには全財産が入っていたので、拉致された時にアレを持っていたら無一文の旅だっただろう。

 

「つーか何も持たずに一人旅を続けていたお前は何者なんだよ、ギーグ」

「カカカ、旅の支度など行く先々ですればいいのだよ」

 

 コイツ、この計画性の無さでよく30年も冒険できたな……。

 本人曰く魔族連合軍の将だったというが、実力以外に信用できる要素は何もなかった。

 

「さて、オレは夕方まで街に行って物資補給してくるわ。

 お前らはここで留守番な」

「一番人に近づくのが危険なのはユウのはずなんだけどなぁ……」

「あんまり言いたくはないけど、やっぱり外見的特徴があるからね?」

 

 ギーグとかいう全身筋肉達磨は一発で検問NG。

 アレクは長耳(ながみみ)以外は普通の少年だけど、そこを万一見られたらそれだけで迫害されかねない。

 本当に、そこさえ除けは普通なはずなんだけどな。

 

「つってもオレだって弱い訳じゃない。

 ギーグと稽古つけてる時のオレの動き見ただろ?

 そこいらの一般兵相手なら余裕で帰ってくるさ」

「分かってるけど……。でも、気を付けてね」

「おう、分かってる」

 

 万一何かあった場合、風魔法と光魔法の併用でドデカイ花火を打ち上げる手筈になっている。

 アレクはともかく、ギーグの俊足ならすぐに助けに来られる。

 

「それじゃ、行ってくるわ」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「おーい、戻ってきたぞ!」

「おかえりー……ってユウ、服装変わってるね」

「おう、前までのは素人仕立てで着心地悪かったしな。

 大分傷んでたし買い替えた」

 

 そう、今のオレの服装は一新して、小麦色の短パンと半袖の服を着ている。

 その他にも胸当て、脛当て、小手など革製の防具も購入済みだ。

 また、防具ではないが防寒具として藍のポンチョも着ている。

 

「帽子も買ったんだね」

「おう、髪型を誤魔化す為に必要だと思ってな」

 

 オレの長髪は後頭部に髪留めでまとめた上から黒のニット帽で覆い隠している。

 銀髪長髪の少女として指名手配されていたら即座に捕まりかねないので、身バレ回避の為だ。

 

「これで少なくとも女って見られることはないだろ」

「何を言っておるんじゃお主は」

「えっ」

「えっ、じゃないよ。

 僕らからすると中身がアレだから男に見えるけど、外見はどう見てもボーイッシュな女の子だよ」

 

 そういえばこの顔はリリシアそっくりだったんだ。

 あまり認めたくはないけど、彼女と似ているとなればオレの顔だちもかなりの童顔のはずだ。

 ところで、幼児体型の場合は童顔という概念自体が適応されるんだろうか。

 

「ええー……、結構男物を意識して選んだつもりだったのに、無駄だったってのか……。」

「まあ大丈夫じゃろ、どうせ検問に引っかかっても話せば女子(おなご)と思われる事はないからのう」

「そうだね、ユウだもんね。

 でも、服装をなるべく男に近づけたのは正解かもね。

 街中(まちなか)ですれ違った時ならともかく、遠目だと男の子か女の子か分からないし」

「ぐぬぬぬ……。

 男扱いされてるのに、何だこの屈辱感は……」

 

 おかしい。

 暫定的かつ消去法とはいえ、チームリーダーはオレだったはずだ。

 それなのに、オレはどうしてこんなにヒエラルキーの低い立ち位置になっているんだ……。

 

「あー、色々と不条理だ」

 

 何か手立てがあるなら、男に戻りたいものだ。

 そうすれば元の高身長に戻れるし、きっと戦闘能力だって元に戻るから威厳も得られるはずだ。

 

「おお、大事な事を聞き忘れておったわ」

「何だよ」

「お主、下着は何を着ておるんじゃ?」

「男物だボケ!」

 

 カカカと高笑いしている様子から、下心は一切感じられない。

 絶対オレを揶揄(からか)うためだけに質問したな、チクショウ。

 

 チーム内ヒエラルキーは近い内に下克上してやる。

 心の中でそう誓ったのであった。

 




……おかしい!
TSっ()の新規衣装お披露目回だというのに、コヤツ、色気が一片たりとも存在しないだとッ!

あ、活動報告の方に第2章のあらすじを公開したのでよければ見ていってください。
本当はなろう同様、本編として投下するつもりだったんですが、ハーメルンでは投稿可能な文字数が1000字以上なのを失念していました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。