Side一誠
「アコ、ローナ!」
ローナからの緊急連絡を受けて俺は即座に現場へと駆け付けた。
「マスター!ルトちゃんが…」
アコが泣きそうな顔で肩から血を流した金髪ツインテールの堕天使の少女の手を握っている。
「すぐに治療するから安心してくれ」
「う、うん!…」
俺はアコがルトと呼んだ少女にダ・カーポをかけ治療する。
「傷は塞いだ。
…して其処で転がっている奴は?」
「ルトちゃんの友達を攫っていっちゃったおじさんの味方してルトちゃんを傷付けたおばさん。
だからアコがブレスで思いっ切りブッ飛ばしてやったの!」
「おおう…」
なんて脳筋…だがそれだけアコも相当な怒りを感じていたのだろう。
気絶している堕天使の女を回収する。
「なら詳しい事は屋敷でこの子が目覚めてからだな」
「分かった」
俺達は少女を抱え屋敷へと戻り件の少女が目覚めるのを待つ。
「んん?…此処は?…」
傷の回復が早かった為か三十分足らずで彼女は目を覚ます。
「ルトちゃん、よかったぁ~!」
「あ、AKOさん!?ウチは確か…」
彼女が目を覚ますとアコは嬉しそうに熱いハグをする。
「こらこらアコ治療直後なんだから程々にな。
ルトだっけ、具合はどうだい?」
「え、えっと御陰様で…ウチを助けてくれたのは貴方っす…ですか?」
「ああ、俺は一誠・ブリュンヒルド。イッセーと呼んでくれ。
それで…まだ詳しい事は聞けてないんだ。
何が起きたのか聞かせてはくれないかい?」
「ミッテルトで良いです…」
アコをたしなめながら俺は堕天使の少女ミッテルトに問うが彼女はこの件に本来関係は無い俺達を巻き込めないと思っているのか話すのを躊躇っているようだった。
「今回の件には既に間接的に関係無い一般人も被害に遭ってしまっている。
このまま黙って見過ごす訳にはいかないんだ。
少なくともアコとローナは俺が言わなくても奴等の殲滅へと向かおうとしていただろうしな」
「…分かりました」
俺がそう言うとミッテルトもその事を思い出してようやくあの堕天使が企てている恐るべき陰謀について語り出す。
「…という訳っす…」
「やはりか…」
ミッテルトの話によるとこうだ。
先日、俺があの廃教会に送り届けた少女のアーシアに宿っている回復の神器をあの神父の皮を被っていた男堕天使が狙っていて堕天使の上層部を騙し用意周到にその神器を強引に摘出し己の物にする為の儀式を実行しようとしている事を…。
神器は宿った人間の魂と結び付いている。
下手にそんな事をすればその人間がどうなってしまうかなんて分かっている筈なのにだ。
アーシアの神器を狙ったのは恐らく出世願望から来たものだろう。
たったそれだけの事でまだ人生が長い少女の尊き命を奪う事など許される筈が無い。
だが一刻も早く彼女を救出せねば危ない事は明白である。
「話は分かった!ならば偵察した後すぐに奴等の殲滅に動く!
各自迎撃準備を!」
「「ええ!」」
ミッテルトの話を聞いてすぐに俺は召喚獣を廃教会へと向かわせ嫁達にそう告げるのだった。
その頃、Side成也
「悪魔の屑共をチョンパ~!」
「ぐあああ!?…」
悪魔の依頼を受け依頼人の家を訪れた成也。
そこでS級はぐれ神父であるフリード・セルゼンと遭遇し戦うが成也は全く歯が立たず逆にズタボロにされていた。
それもその筈、レイナーレの時は油断していた所を狙った為に成也は苦労しなかったが今相対している相手はふざけてはいるが油断も隙も無いフリードである。
半ば脅しの様な言葉をドライグにかけ赤龍帝の籠手を覚醒させ、転生悪魔に成っただけの慢心している成也では到底勝てる見込みなどなかったのだ。
「?…」
ふと成也はそろそろ本来ならば聞こえてくる筈である第三者の声が聞こえてこない事にようやく疑問を感じる。
「オイ、フリードォ!アーシアはどうしたぁ?!」
「アーシアたんですかぁ~?どうして屑の悪魔であるチミがアーシアたんの事を知っているのかが疑問っすけど此処にはいないですぜ?」
「どういう事なんだよそりゃあ!?…」
「何でも~儀式を早める理由が出来たとの事で~俺っち達の上司が既に連れていきやしたぜ」
「んなっ!?…」
フリードの返答に成也は絶句するしかない。
最早原作となにもかもが違い過ぎている…真逆自分がレイナーレをレイプしかけた事で大幅に狂ってしまったのか?
考えても答えは出て来ない。
答えは支極単純なのであるがレイナーレやアーシア、これから出てくるであろうヒロインを犯す事しか頭に無い成也では真相に辿り着ける筈が無かった。
「大丈夫!?成也」
はぐれ神父が紛れていた事を察知し大分遅れてリアス達が転移して駆けつけてくるが成也はアーシアの事で頭が一杯だった。
「Wa-O!悪魔の団体さん!ぐふふ!」
「部長達に手出しはさせないよ!」
「テメエ、騎士か!」
嬉々としてリアス達に襲い掛かるフリードを「騎士」の転生悪魔である木場 祐斗が応戦する。
「部長!此方に多数の堕天使が向かって来ていますわ!」
「ここは一旦撤退するしかないわね…すぐに…」
「…」
「女王」である姫島 朱乃の堕天使接近の知らせを受けてすぐにリアスは転移し撤退しようとしたがふと成也の様子が可笑しい事に気が付く。
「部長!…俺、ちょっと教会に行って来ます!…」
「ちょっと成也!?馬鹿な真似は…」
止める間も無く成也は飛び出して行ってしまう。
「子猫、祐斗!すぐ成也を追って!」
「「分かりました!」」
成也の突拍子もない行動に呆気にとられるリアスだったがすぐに子猫と祐斗に命令し成也を追わせる。
「もう何なのよ!?…」
「部長、私達は撤退を!」
朱乃に促されリアスは成也達の心配をしながら転移していくのだった。