Side一誠
「今の所はあの堕天使やグレモリーに動きは見られないか…」
先日アーシアを送り届けた廃教会に何時の間にか居た神父の皮を被ったあの堕天使の男が何らかの企みを主導している事に気付いた俺は調査に出た。
リアス・グレモリーの方は堕天使の動きに未だ気が付いていない様子だ。
大丈夫なのかこの町?
前任者の死で引き継いだ日がまだまだ浅いとはいえ管理がまるで雑過ぎじゃないか…。
「アコ達楽しんでいるかな…」
グレモリーのあまりの粗雑っぷりに呆れながらも俺は今日は出掛けているアコ達の事を考える。
どうやらSNSで気の合う友達と繋がって偶然同じ町に住んでいたようで会う約束をしていたようだ。
ただアコ一人ではなんかちょっと不安だったのでローナにも一緒に行ってくれるように頼んでおいた。
Sideローナ
「早く来ないかっなー」
「うりゅ…慌てない慌てない…くすぐったいー…」
「ニャー」
「わふっ!」
「な、なんて尊い光景なんだ…!」
アコちゃんがネット掲示板でアコちゃんがついこの間拾ってきて飼っているトラ猫さんのヤトを通じて友達になった子「ルト」さんと彼女の友達と会うというので魔王様についていくように言われたの私もその子との待ち合わせの中、猫さんに餌やりをしていた私達に何時の間にかよってきた他の野良猫さんや犬さんに群がられていた。
通りがけのお兄さんが何か呟いていたけど何だろ?
「野暮用で遅れて申し訳なかったっす!AKOさん!って何っすかこの羨ましい光景は!」
「ま、待って下さいミッテルト様ー、ってはうう!?可愛らしい猫さんやワンちゃんが一杯いますー!」
「ちょ、ちょっと…これ大丈夫なの?って貴方達は!…」
「あ!」
「へっ?レイ…じゃなかった祐麻はAKOさんとその子と顔見知りだったんっすか!?」
息を切らしながら可愛い黒いコスチュームを纏った金髪の少女がアコちゃんの名前を呼びながら此方に掛けてくる。
彼女の後ろからやって来た少女が彼女をミッテルトと呼んだのを聞いて彼女がルトであることを確信する。
でもその後、やって来たのは雰囲気は少し違ったけれど先日魔王様が助けた堕天使の子であるレイナーレちゃんだった。
向こうも私達に気付いたようで驚いていた。
その瞬間、私達は何かピリピリしたものを感じ取り周りの風景が変わっている事に気が付いた。
Sideレイナーレ
「え、ええ…ちょっとあってね…」
もう一体何を考えてるのよミッテルトは!
私は私の元部下だったドーナシークとカラワーナが結託して恐るべき計画を企てていると知ってその計画の要としてこの町に呼び出されたはぐれシスターであるアーシアを彼等の魔の手から守る為に唯一今も私の事を慕ってくれるミッテルトと共に逃げ出した。
だが一刻も早くこの町から出るべきなのにミッテルトは「ネットで出来た友達を裏切れないっす」なんて言い出してアーシアも彼女に感化されてしまい私も渋々繁華街へと連れ出された。
最もミッテルトが会う人物がよもや私を助けてくれた男の仲間の少女達だとは思わなかったけど。
「大丈夫っす。今日の事が終わったらグレモリーに情報を流して匿ってもらえたら良いっすかと…」
「それもそうね…」
確かに後日知ったがこの町はグレモリーが管理している町であるから匿ってもらえたらとは考えてはいる。
でも私達堕天使が今もこの町に居座れている時点で管理者は大丈夫なのかと不安もあったので安心出来なかった。
ふと気が付くと周囲にいた人間や動物達が一斉に倒れていた。
これは結界!…
「ほう…穢れた悪魔共の手を借りようとはな…」
「裏切り者には死をくれてやらないとねぇ!…」
しまった!ドーナシークとカラワーナ!こんなに早く見つかってしまうなんて…
「まあ、待て。レイナーレ、ミッテルト。我々にアーシアを渡してもらおうか。
さすれば…」
「嫌よ!それにまだ周りに無関係な人間達が居るのよ!」
「こんな事をアザゼル様達上層部が知ったら黙っている訳が無いっす!」
「フン、脆弱な人間などに価値など無い。
それに無能な上層部などに期待しても無駄だぞ」
「どういう意味よ?」
「何故なら上層部なら私とカラワーナが流した嘘の情報に今も踊らされている筈なのだからな!」
「なんですって!?…」
ドーナシークの発言に私達は驚愕するしかない。
もし彼の言葉が真実なら助けは期待出来ないという事になる。
「今は少々痛めつけるだけで良い…やれ!」
「はっ!」
「レイナーレ様!」
ドーナシークの命令でカラワーナが光の槍を投擲してくる。
とっさにミッテルトが光の槍を投げ返しぶつけるが簡単に押されてかき消されてしまいカラワーナの放ってきた槍がミッテルトの右肩に突き刺さってしまう。
「ああああー!?…」
「「ミッテルト!/様キャア!?」」
「おっと手元が狂う所だった」
槍を刺されてもがき苦しむミッテルトの姿を目にして回復させようとするアーシアだったが今度はドーナシークが放った槍に阻まれてしまってミッテルトの傍に駆け寄る事が出来なかった。
「もう一度だけ言う。
戻って来るのだ」
「くっ!?…」
「レイナーレ様…」
ミッテルトが負傷させられ逃げ出す事も出来ずにいた私は歯がゆむしかなかった。
「『白銀の竜声風<ヴァイスドシルベリオ・ドラゴヴォイスストーム>』!ハァァー!♬」
「ギャアァァ!?……」
「「!?」」
「なんだと!?…」
突如吹いた風にカラワーナが吹き飛ばされてボロボロにされたのを見てドーナシークも私達も驚きを隠せなかった。
「ねえ、アコのお友達に酷い事したよね?…」
それをやったのが先程ミッテルトがAKOと呼んでいた白髪の少女だったのだから。
Sideアコ
「おじさん、アコのお友達やこの町の人達を傷付ける悪い人!だからボコボコにするよ!」
「な、何者だ!?人払いの結界を張っているんだぞ!どうやって!?…ぐわ!?…」
「あーもーうるさいよおじさん」
アコはルトちゃんとそのお友達、周囲の人達を傷付けようとした堕天使のおじさんに怒りを感じて彼に味方していたおばさん堕天使を咆哮で吹き飛ばして、片手だけ変化させた竜の手の爪でおじさんの顔を引っ掻いてやった。
ローナちゃんはというと突然倒れてしまった人やヤト達動物達の応急処置を行っている最中だ。
「ぐおおお!?…龍の手<トゥワイス・クリティカル>だと!?神器の反応などは無かった筈だ!…だがそんなありふれた弱小神器などには負ける訳にはいかんのだ!」
ドーナシークは大きな勘違いしていた。
アコの変化した手が最もありふれた神器の名も無き龍の破片の寄せ集めでしかない物だと侮っていた。
それはとんでもない間違いであるという事にすぐに気付かされる。
「無駄だよ!」
「なんだと!?…たかが龍の手如きにこれほどの力は無い筈!?…」
「うるさいよ!」
「なっ!?…ぶがあっー!?」
アコはおじさんが投げてきた光の槍を叩き落として白き翼を広げておじさんの目の前に飛んでいき踵落としを決める。
ドーナシークは叩き落され無様に地に伏せる。
「しょ、しょんな馬鹿な!?…だがその翼といい色といい…いやそんな筈は!…」
ドーナシークはアコの広げた翼を見てまた一つ壮大な勘違いをしていた。
彼も頭の中では分かっている筈なのだ。
果てに引き起った戦争の中でそのとんでない力で暴れていた伝説の二天龍の片割れである存在が封印された神滅具神器の一種に指定されてある「白龍皇の鎧<ディヴァイディング・ギア>」が二つ以上存在していることなどありえない筈だという事には…。
ならば目の前の少女は本当に何者なのだ?
結界をものともせずにもうすぐ上級ともならん中級堕天使である己が手も足も出せないというのはあまりにも可笑し過ぎる。
「もう終わりかな?…」
「くっ!…これで勝ったとは思わない事だ…」
「「えっ!?…」」
「ああ!?」
ドーナシークは悟った。
このまま目の前の少女と戦っていたらカラワーナのように次は自分があの様な目に遭うと。
ならば今はレイナーレ達を此方に強制的に呼び戻し儀式を達成する為の手筈に戻ればいい。
それからならばいくら目の前の少女でも対応出来ない筈だ。
突然の強制転移に驚くレイナーレとアーシアを人質に取りドーナシークはまんまと逃げげおおせた。
「あ、ルトちゃんは!?…」
「くうう!?…」
アコは突然の転移魔法に対応出来なくてルトちゃんの友達を人質に取られてしまっておじさん堕天使に逃げられてしまった。
ルトちゃんも怪我が酷く非常に不味い状況だという事はアコにも分かった。
「ローナちゃん、早くマスターに!」
「うん!…」
他の人達は応急処置を終えたローナちゃんに言ってマスターに緊急通信を入れた。
その後、駆け付けてきてくれたマスターの治療を受けてルトちゃんは一命を取り留めた。