Sideローナ
「うぅ!?…はっ!…」
「あ!…良かった起きた!…」
私は昨日から魔王様が助けた黒い羽根を生やした堕天使?の女の子の介抱をしていた。
当の魔王様はすぐに出掛けていっちゃったけど…
「私は確か兵藤成也の始末の任務に充っていて…」
「成程ね…」
「どういう事ですの?」
ようやく目を覚ました堕天使の子から魔王様と似た顔の嫌な感じがする人の名前が出て私だけでなくエルゼちゃん達も嫌な顔をしている。
只一人魔王様からまだ事情を聞かされていなかったサフィアちゃんだけはついていけてないけど…。
あの嫌な人がこの子に酷い事をしたんだろう。
元兄弟だっていう魔王様が間違われてしまうと考えあえて身を引いたんだ。
「貴方達は?…」
「ええっと…私達は魔法使いかな」
「もし魔王様がいなかったら貴方きっともっと酷い事されてたと思う…」
「ま、魔王?…真逆貴方達悪魔の眷属じゃないわよね!?…」
「はいはい、話が拗れるからローナ貴方は少し黙ろうね?」
「むー…」
私の発言にばっと身を引く堕天使の子。
エルゼちゃんに注意されてちょっとむくれる。
「この子の発言は今はあんまり気にしないでくれる?彼をそう呼んでいるのは彼女だけだから。
私達の事だけどとある異国からこの国に移住して来ただけに過ぎないわ。
私達が慕う王と共にね」
「王族ですって?…」
エルゼちゃんが真実と虚偽を折り混ぜた説明に堕天使の子、レイナーレちゃんは少しばかり驚いている。
「それで…貴方これからどうする気なの?」
「帰らせて貰うわ…やるべき事があるし…貴方達の王に伝えてくれるかしら?
ありがとうって…」
「…必ず伝えるわ」
レイナーレちゃんは戻ると言って翼を広げ帰っていった彼女の背を見届けるのだった。
その頃、Side一誠
「はう!?うぅ…どうして何も無い所で転んでしまうのでしょうか?…」
「…」
糞兄貴に強姦されかけた堕天使の少女を助けた後すぐにはぐれ悪魔退治へと出ていた俺は帰り道でシスターらしき金髪の少女が盛大に転んだ場面に遭遇したので助け起こした。
「大丈夫か?」
「え?は、はい!助けて頂いてありがとう御座います!
あ、私はシスターのアーシア・アルジェントと申します」
「俺は一誠・ブリュンヒルドだ、よろしくな!」
「ブリュンヒルド?貴方も異国の方なのですか?」
「いや、三年程前まで外国暮らしだったんだけれどれっきとした日本人だ。
いわゆる帰国子女という奴」
「そうでしたか!」
「アルジェントは何をしにこの町に?」
「アーシアと呼んで下さって構いません。
えっと実は赴任先の教会を探していまして…」
「この町の教会を?…」
「はい」
俺はアーシアと名乗ったシスターの話を聞いて訝しむ。
この町の教会は存在しているにはしているがもうかなり以前から廃協会となって荒れ果ててしまっている。
昨日の堕天使の少女の件といいいよいよキナ臭さが確実な物になってきてるぞ。
「案内するのは良いけどさ…」
「?」
かといって結局断る訳にもいかずアーシアを教会へ案内する事に。
「ええ…」
教会へと着くとアーシアも流石にあまりの荒れっぷりに狼狽する。
そこに
「おお!これはこれはシスターアーシアではないですか!お待ちしておりましたよ!
いやはや実は私もこの教会に数日前に赴任してきたばかりなのですがこの荒れ果てようは予想していなかったものでまだ整備の方が行き届いていなくて申し訳無い」
「!…」
廃教会から数日前まではいなかった事を確認している中年のおっさん神父が出てきてアーシアに駆け寄ってくる。
間違い無い!…コイツが今回の堕天使を先導している主犯格だ。
俺はその神父に堕天使の気配を感じ取ったがあえて泳がす為に悟られないように振る舞う。
「い、いえ私だってイッセーさんに案内してもらわなかったら神父様のお手を煩わせていたかもしれないですので…」
「ほう、そうでしたか…」
堕天使神父はじっと俺の方を見てくるがどうやら気が付く事はなさそうだった。
だが俺の目は誤魔化せないぜ!