Side一誠
冬夜に半ば強引に裏世界の調査を任せてみてから早一ヶ月くらいが過ぎた。
彼はなんとか裏世界の一部と友好を結べたようだ。
そこで、今日も向こうの世界に行っていた冬夜から連絡が入る。
「邪神フレイズが彼方の世界にも現れただと?」
「ああ、これを見てくれ」
俺が冬夜を出迎えると、彼から裏世界の新聞らしき物を見せられる。
其処に書かれてあったのは間違い無く邪神フレイズの事だった。
しまった!…これでは完全に向こうの世界に此方の世界の都合を持ち込んでしまった事になる…。
「向こうの世界にこれ以上の迷惑をかけない為にもこっちで奴等と勝負をつけるしかない!」
「そうみたいだね…そういやエンデの奴、最近見ないけど…」
「ああ…」
エンデなら奴等を誘い込む方法をいくつも知っているだろう…だがロードメアでの戦い以降彼の姿を見た者は誰一人いなかった。
何か想定外の事態が起きているとでもいうのだろうか?…
Pi!
「!奴等だ!」
「出撃ぞ!」
不意にギルドから緊急連絡が入ってくる。
ようやく邪神フレイズがまたサンドラの領域であるパリン砂漠に出現したようだ。
即座に各迎撃部隊を編成させ出撃する。
砂漠の暑さ対策はバッチリとFGにも施してあるので善戦出来る筈だ。
「といっても俺達はあまり変わらないか…」
「で、デスヨネー…ってなんだアレ?」
「?」
「『どうしたの二人共?』」
「ちょいと野暮用ができた。引き続き継続を!」
「『あ、ちょっと!?…もう~!』」
群がってくる雑魚共を竜騎士で粗方狩り終えた所で俺と冬夜は機体から降りて生身で応戦を仕掛ける。
そこで冬夜がふとある物を見かけて戦闘が中断する。
手を止めた俺達を不思議に思ったエルゼに聞かれ、彼女達に問題無いと言った後、其処へ行く。
フレイズでも邪神でもない。
でも俺達の神気に反応しているカメレオンみたいな能力を持ったスライムらしき魔獣が其処には居た。
そのスライムは俺達に反応すると小刻みに震えている。
『その辺で勘弁してあげて下さい』
俺達がスライムに視線を奪われていると不意に別の声が聞こてきたかと思うとスライムの隣に褐色肌の女性が現れた。
「もしかして精霊か?」
『はい、私はこの砂漠に住んでいる砂の精霊で御座います。その者は我が眷属であります故…』
「ああ、そういう事か」
砂の精霊の眷属であるこのスライムが俺達の神気に畏怖をなしてただけか。
「悪かったな…でも今は貴方もこの場を離れた方が良いですよ?」
『存じております。
異界の者との戦い、どうか御武運を!』
俺達が謝罪すると砂の精霊はそう言っては姿を消した。
「『二人共ー!変異種が出現したわ!
何機かやられてしまったから早く援護に来てー!』」
「戻りますか!」
エルゼの悲鳴を聞いて俺達は戦場に再び舞い戻る。
「孔雀型か!…」
『私の真似事をされている様でとても不快です…主様思いっ切りやって下さい!』
「それじゃあ!…綴る!」
現れた邪神フレイズは孔雀型だった。
それを見た紅玉が不快感を示してきたので俺はサンダーボルトドラゴンを炎属性にアレンジしたフレイジングドラゴンをぶつける。
「『!更に巨大な空間振動を確認しまシタ!』」
「何ッ!もう一匹!?…」
バビロンからの通信に俺達は驚く。
直後に別の地点から空間の亀裂が発生し、そこからオウムガイ型、邪神ノーチラスフレイズが出現してきたのだ。
「一匹だけでも厄介だというのに!…」
「全機、緊急回避!」
孔雀、ノーチラス邪神フレイズがそれぞれ仕掛けてくる。
孔雀の水晶の翼から放たれるまるで拡散粒子砲の如くな羽根レーザーの嵐、ノーチラスの触手攻撃に対応し切れなかったFG数機が大破へと追い込まれてしまう。
「ならアレを使おう!」
「アレか!バビロン転送を!」
「『了解しまシタ!』」
このままでは非常に不味いと悟り、冬夜がバビロンに指示しある武装を転送させる。
半ばノリの勢いで俺達が製作した巨大魔砲「ブリューナク」だ。
「遠距離武器を持った機体は至急此方に集まってくれ!
それ以外はフォローを!
まずは孔雀型を叩くぞ!」
「『了解!』」
俺の号令を聞いて晶弾ガトリングを構えたグリムゲルデ、晶弾ライフル、スナイパーライフルを構えたフリムヴィーゲ、ロスヴァイセ、ブリュンヒルデ、マシンガンナックルを構えた今回が初出撃となったスゥのオルトリンデ・オーバーロード、フェザーペンシーラをガンランスモードに切り替えたピクトヴォーティヴァーが集合した。
「ブリューナクの撃ち出しと共に一斉に撃ち込め!
カウント3!…」
「『孔雀フレイズ、再び拡散レーザー反応!』」
俺のカウントダウンと同時に孔雀フレイズが再び拡散レーザーを撃とうとしてくる。
だが、もう遅い!
「2,1!発射ァー!!」
レーザーを撃たれる前にカウントダウンを終え孔雀型に向けて幾重ものの砲撃を撃ち込んだ。
それによって孔雀型は墜落し待機していた他の重騎士隊によって討伐された。
だがそこでまたしても予想外の事態が発生した。
「下級フレイズ共が…上位種を喰っている!?…」
残ったもう一匹のノーチラス邪神フレイズに向き直ると奴は下級フレイズに群がられ喰われていた。
「いや、ワザと喰わせて力を取り込んでるんだ!」
ブリューナクはまだ冷却中で撃てない上に斬弾はあまり無い。
その状況で更なる強化を施されるフレイズ…このままではこっちがジリ貧だ…。
そう思っていたその時だった。
「『喜び賜え冬夜、イッセー!君達の機体がようやく完成したから転送するぞ!』」
「え!?」
「なんとぉ!?( ゚Д゚)」
レジーナからの正にグッドタイミング的な連絡を受け俺達は見上げる。
空から舞い降りてくる自らの専用機を…。
次回は年明けからに!