「成程そうか。君達は王都のソードレック子爵に手紙を届けるギルドの依頼を受けて来ていたのだね」
「「はい」」
「礼を言わねばならぬな。
娘達を助けてくれてありがとう!
本当に感謝する」
「いえ!僕らは当然の事をしたまでですよ」
「俺達が運良く通りがかったからよかった様な事態でしたから…」
「はっは!そんなに謙遜する事はないぞ」
「「…」」
襲撃者の魔術師を撃退した後、助けた少女スゥにお礼を兼ねて彼女に招待された。
俺達は今目の前の人物、スゥの父親で王族でもあるアルフレッド・エルネス・オルトリンデ公爵様と対談していた。
ちなみに彼のお兄さんが国王を担っているみたいだ。
エルゼ達はとても緊張しているようだ。
かという自分達も少々緊張しているが。
「しかし手紙を貰った時は流石に生きた心地がしなかったぞスゥよ…」
「父上、童はこの通り大丈夫じゃ!」
「そうであったな…だがもし君達が依頼を受けなかったらスゥは誘拐されたかもしくは殺されてしまう所だったかもしれぬ…依頼した者にも感謝だな。
スゥよ着替えのついでにエレンに無事な顔を見せにいっておくれ」
「分かったのじゃ!」
公爵様はようやくホッと出来たのかスゥに告げ彼女は二階へと上がっていった。
「はい、そう伝えておきます。
それで公爵様、今回の事態に心当たりとかは無いのですか?」
ザナックさんに伝える事を約束し、俺達は本題に入る。
「無いといったら嘘になる…いやむしろあり過ぎるな…」
「…」
普通の貴族ならまだしも公爵様達は王族の一員だ。
むしろ不敬な輩に狙われない方が可笑しいか。
ちなみに捕縛した魔術師の男をO・H・A・N・A・S・H・Iしてやった所どうやら行きずりの上に金で雇われただけの様で詳しい事は分からず仕舞いだった。
「父上、お待たせ致しました」
スゥが薄桃の綺麗なドレスに着替えて降りて来た。
「スゥよ、エレンとは話せたかい?」
「はい、無用な心配をさせてはいかぬと思ったので襲われた件は黙っておきました」
「エレン?その人はもしかして…」
冬夜がふと問う。
「ああ、エレンは私の妻だよ。
すまないね娘の命の恩人にも関わらず姿を見せられず…妻は病気なのでな…」
「ご病気ですか…一体何の症状を抱えておられるのでしょうか?」
「ああ、五年前に発症してね…一命は取り留めたのだがその影響で目が見えなくなってしまったのだよ…」
「なんだって!?…」
「父上…」
辛そうに公爵様は顔を伏せる。
そんな様子の父親を見かねてかスゥが気遣いそっと手を重ねていた。
優しい子だな。
「あらゆる治癒魔法の使い手を探し出し、彼女に施したが後遺症には全くの意味を成さなかったのだ…」
「御爺様が生きておられればのう…」
残念そうに呟く。
「妻の父上、私の義父はあらゆる異常を取り除く事を可能にする特別な固有魔法の使い手であった。
今回スゥが自ら旅に出ていたのも義父の固有魔法を解明し習得出来ないかと考えたからだ」
「そうだったんですか…」
「御爺様の魔法なら母上の目はきっと治る筈なのじゃ!
例え解明出来なくとも使える者がおれば!…」
「「ヘッ?…それって…ああー!?」」
「「ン?」」
突然エルゼ達が俺と冬夜を見て声を荒げた。
「「あ!…」」
そうか!俺達ならばその魔法を使用出来る筈だ!
その固有魔法『リカバリー』の詳細を聞く。
だが俺はもっと効率の良い方法を思いつく。
「…冬夜、悪い!その役目今回は俺に譲ってくれないか?!」
「…分かった…でもどうしてなんだ?」
「俺にはそのリカバリーよりもずっと副次効果の良い固有魔法があるからだ!」
「ええ!?」
「り、リカバリーよりも効果の有る固有魔法だと!?…それは本当かね一誠殿!?」
「ええ、奥様は恐らく視力の他にも失ってしまった物が大きい事でしょう…例えば視えない事によってストレスが蓄積し引き起こされる肌荒れ等の二次症状などにも効く魔法があるんですよ」
「ふむ、確かにそれは言えているかもしれぬ…いくらメイド達が妻のケアに尽力してもいかんせん全てカバーは出来ぬかもしれんからな…良し!そうと決まれば妻の部屋へと案内しようではないか。レイム」
「は!畏まりました旦那様。では一誠殿その他の皆様は此方へ」
俺の話を信じてくれ公爵様はレイムさんに指示しエレンさんの部屋へと案内される。
「あ、貴方!…あら?お客様かしら?…」
レイムさんに案内された部屋に入るとスゥと良く似ている御婦人がベッドに腰掛けていた。
彼女がエレンさんだな。
物音で気が付いたのか杖を取り此方へ歩いてこようとする。
って待て待て!
「あ、今はまだ無理しないで下さい!
それと申し遅れました!初めまして、兵藤一誠と申します!」
「一誠さんというのですか?アルフレッド、この方は一体?」
「ああ、スゥが大変世話になった冒険者の御一行でな。
話を聞いてお前の症状を診て下さるそうだ」
「私の目をですか?…」
「母上、どうか少し楽にして下され!」
「そうですか?なら…」
公爵様達の話を聞きエレンさんは楽な姿勢になる。
「では一誠殿頼むぞ…」
「分かりました!…『幾重の原初の理を示す者 その力を今解放せん 復元する多重世界<デュアルダ・カーポフォルテシモ>』!」
俺の手からエレンさんに向かって眩い閃光が放たれる。
「イッセー、その魔法って…」
ああエルゼの想像通りだ。
本来ならば復元する世界は二十四時間以内限定で指定対象の時を巻き戻すマホウであるが俺はそれを更にアレンジし幾重にも重ねる事によってその限界を取り除いた上位互換のマホウである。
これならばリカバリーには出来ない二次症状の改善も見込める筈だ。
成功してくれよ!…
「…!見える…見えますわ!あなた!」
「本当か!?エレン!」
「ええ!それになんだかお肌もとても艶々で清々しい気分なの!」
「は、母上っ!…」
マホウの行使を終えるとしばらく宙を彷徨っていたエレンさんの目は開かれ、俺達を映したその瞬間、ほろりと涙を流しそう言った。
良かった!…どうやら成功してくれたようだ。
これには公爵様もスゥも大変喜びハグをし合っていた。
まさしく五年振りに幸せな家族の絆が戻ったのだ。
「よ、良かったわねー…ぐすっ…」
「ええ、本当に良かったです…」
「ほんとでござるよ~…」
「ちょ、ちょっと…」
「あの少し離れてくれないかな?…」
嬉しさのあまりか俺はエルゼ達に抱き着かれ、冬夜は八重に抱き着かれていた。
エルゼのまだまだ成長途中なおっぱいとリンゼのデカイおっぱいがああー~!
「「あ…///~」」
ハッと気が付いたのか三人共顔を真っ赤にしている。
「こ…この馬鹿ー!」
「ちょ、照れ隠しするなら他の方法で…ギャアアー!?理不尽だああー!」
エルゼが真っ先にガントレットを出して俺達を殴りつけてきた。
物凄く理不尽なんですが…まあ俺も二人のおっぱい堪能してたからどっちもどっちか。
「うう…」
「ああ…」
そしてすまない、この光景に俺達まで貰い泣きしてしまった様だ。
いつまでも抱き合う本当の家族の姿というものを目に焼き付けながらついそうなっていた。