Side一誠
『よもやここまで堕ちぶれていたとは…』
「なら仕方無い…」
公国を襲撃してきたドラゴネス島の若竜の軍勢を瑠璃が説得を試みたが奴等は全く聞き入れようとはせずに此方にその牙を向けてくるだけだった。
支配の響針によって力を上げられた影響もあるかもしれないが向かってくるのならもう容赦はしない。
「「いけえええー!」」
FGを使わない騎士団の演習がてら出陣させていた仲間達の尽力もあって暴走する竜達を駆逐していき襲撃を防いだ。
後はドラゴネス島にいる自称竜王打倒だ!
アコとリコールし後方にFG部隊を控えさせて島に突入した。
「ほう、一体何処の竜使いがやって来たのかな?」
島の中心に向かうと未だ暴走の止まらぬ若竜達の喚き声を上げ、龍人族の男がやって来た。
「竜王というのはアンタで間違い無いな?」
「ほう?もう噂がそこまで広まっているとは喜ばしい限り。
そうともこの俺が誇り高き竜王だ!」
「竜達を支配の響針で好き勝手に暴れさせておいて誇り高いとか失笑だわ…」
「何故それを!?…まあいいそういうお前達は何者だ?」
「俺達はブリュンヒルド公国双王さ!」
「!噂のドラゴンスレイヤー共か!
丁度良い此処で貴様等を八つ裂きにしてくれるわ!
殺れ!」
『…』
自称竜王が指を鳴らすと上空から白竜が舞い降りる。
まさか!?…
「おじいちゃん!?…」
アコが叫ぶ。
やはりか!…手駒とした彼をあえて生き残らせておいたようだ。
汚い奴め…だがこのまま奴の思惑通りにはさせない。
無言のまま向かってくる白竜に対し俺は触れて
「スリップ!」
『!?』
ダイレクトにスリップさせおとなしくさせる。
「白竜の爺さん、アンタの孫は俺と蒼帝…瑠璃が助けた!
だから…」
『!…』
そっと彼に耳打ちしアコの姿を映す。
すると白竜の爺さんは涙を堪えながら俺の提案通りに地に伏せられたフリをした。
「何!?この島一番の白の老竜だぞ!
ええい何をやっているかこの老いぼれが!」
「させるか!アポーツ!」
「な、何をする!?」
白竜の爺さんに下衆竜王が支配の響針を打ち込もうとしたので俺がアポーツで引き寄せて破壊する。
「アンタが操ろうとしていた竜は俺が助けたよ。
これがどういう意味を持つか分かるか?」
「何!?まさかその娘か!小癪な!…」
周囲の若竜もそれを見て怖気着いたのか喚き声を上げるだけだ。
『皆の者静まれい!』
「!」
復活した白竜の爺さんが怒号を上げると途端に若竜達は皆おとなしくなった。
「な!?老いぼれ貴様、この竜王に逆らうのか!?」
『元より貴様には怒りしか湧かぬ!
島の皆を狂わせ死に追いやり、儂の大切な息夫婦を残虐し孫娘を苦しませたその罪償う時!』
「くっ!?俺はこんな所で!…
真の竜王はこの俺だー!」
支配の響針を全て破壊されて抵抗手段が無い筈なのにまだ無駄な足掻きをする下衆竜王が取り出したのは血液らしき液体が入った瓶。
『それはまさか!?…』
「そうよ!この血は貴様から採取した竜の血。
竜人族の俺にこそこの力は相応しいのだ!」
竜達の驚きをよそにそう告げた下衆竜王は血液を飲み干す。
「ふははっはは!凄い力が漲る!これこそが千年以上生きた竜の血の力か!」
急激にパワーアップを果たし下衆竜王は雄叫びを上げながら此方に仕掛けてくる。
奴は飛んでいる為スリップは効かない。
アブゾーブで吸収するか?
そう思っていた矢先
『馬鹿な男よ…身の程を弁えぬ若造がそう簡単に古代竜や我に匹敵する白竜の力を扱える訳がなかろう』
「!?…な、ナンダ!?キュウニ!?…」
瑠璃がそう呟くとほんの少し力を振るおうとしただけで急激に奴の身体の力が抜けていった。
「ナ、ナラバソノハクリュウノムスメヲワガチカラノカテトシテヤ…」
「アブゾーブ!」
「ぐわらばべっ!?」
今度はアコを取り込もうと襲ってきたので俺は渾身のアブゾーブの拳を叩き込んでやった。
それにより元々よりも弱くなった状態で下衆竜王の姿に戻った。
「アガガ!?…」
奴はみっともなく泡を吹きながら気絶した。
ダ・カーポをかけてやる義理もないし奴はこのまま地獄を味わってもらうか。
暴走していた若竜達も白竜の爺さんと瑠璃の一喝でおとなしくなったしこれでドラゴネス島にも平和が戻るだろう。
『そうか、行ってしまうのか…』
「うん!パパやママはもう戻って来ないけれどおじいちゃんだけでも助かってホントによかった!
これからはアコに名前をくれたマスターの力になりたいの!」
『淋しくなるの…これも経験というものか…』
「時々帰ってくるから心配しなくても大丈夫だよ!」
『それもそうか…儂は死んだ者達の意志を背負いながらこの島で生きていく。
アコよお前も強くなるのだ!』
「うん!」
アコは正式に俺と契約を結びこのまま公国へと行きたいと言い出し俺達はそれを快く受け入れた。
あ、FGの出番無かったな…。