「ふむ…北の…廃墟…メガスライム討伐か…」
「す、スライム?!」
「「…」」
一角狼討伐依頼に成功した為俺達のギルドランクが黒から紫へとランクアップし受注可能な依頼が増えたので次に受注するのを模索していた。
スライムと聞き思わず俺はイケナイ事を考えてしまっていた。
仕方無いじゃないか健全な男子なんだから!
冬夜もそれを企んでいる事だろう。
一方、エルゼ達は無言のまま項垂れていた。
「な、なあこの依頼をさ…」
「「絶対に嫌!」」
「おおう…」
冬夜がスライム討伐受注を提案すると二人は即座に拒否した。
余程嫌らしいな…ちょっと残念だ…。
「何か変な事考えてない?」
「「う!?…」」
で、ですよねー…本当に残念だようう…(泣)
エルゼに俺達の考えが見透かされ俺達は口篭ってしまう。
「じゃ、じゃあこれはどうかな?」
「何々…『王都への手紙の配送。交通費支給で報酬は銀貨七枚』
うん結構割の良い依頼じゃない。
これにしましょう!」
「そうですね」
それを誤魔化すかの様に俺が別の依頼を提案し、彼女達は若干不審がりながらも賛成してくれた。
ちなみにその依頼人は先日会ったあの服屋のザナックさんだった。
「王都って此処からどれくらいかかるんだ?」
「んー、馬車で五日くらいかしら」
結構かかるな…自動車がある訳無いし此処からは長旅になるのか。
まあ、帰りは一度通った所なら何処へでも移動出来る「ゲート」の魔法を使えば一瞬で戻れるし体力作りといこうか。
「おお!依頼を受けてくれたのは君達だったか!
久し振りだね!」
「知り合いだったんですか」
「前にちょっとね」
依頼を受注する為に直接ファッションキングザナックに顔を出した。
依頼人と顔見知りだった事にエルゼ達は少々驚いていたが。
「フォッフォッフォ!早速だが依頼内容はこの手紙を王都に居るソードレック子爵へと届けて欲しいのだ。
私の名前を出せば分かる筈だ。
それから子爵からの返事も貰って来て欲しい」
「分かりました!」
ザナックさんから手紙と支給交通費をしっかり受け取り俺達はすぐに準備し、馬車をレンタルして王都へ向けて旅立った。
リフレットの街を出て、その次のノーランの街、またその次のアマネスクの街へと辿り着いた頃には丁度陽が暮れていた。
ひとまず今日はこの街の宿屋で宿泊しようと思っていたが…ふいにもう一つの案を思いついた。
が冬夜も思いついて先に提案したようだが他の二人に旅の醍醐味が台無しになると却下された。
まあ、そりゃそうか。
翌日
「拙者は九重 八重と申す者。
どうぞお見知りおきをお願いする」
「よ、よろしくな。
俺は兵藤一誠だ」
「うむ、よろしく頼む!」
冬夜達と別行動で街を観光後、合流したら侍風の美少女のイーシェン人同行者が増えていた。
どうやら不良に絡まれていた所を冬夜達が助けたが彼女が身銭を落としてしまった為動けなかったようだ。
そこで食事後、八重さんについて聞くと彼女は武者修行の旅をしているとの事。
ついでに彼女は父親の知り合いが王都に居るから会いに行くとの事で俺達と同行する事になった。
そこで何を思ったのか冬夜が八重さんから箸を買い取っていたが…「クリエイト」使えよ…。
八重さんが加わり再び馬車を進め、更に北へと向かうとベルファスト王国へと辿り着く。
その道中、固有魔法といわれている無属性魔法の勉強をしていた。
中でも俺達の目をひいたのは「アポーツ」という物体を手元に引き寄せる魔法だった。
冬夜が実験がてら八重さんの髪飾りを引き寄せて彼女があたふたしていた。
で…冬夜が「これなら下着とかも引き寄せられるのでは?!」と素晴らしい思いつき、だが今は余計な事を言ったのでエルゼ達に睨まれたのは言うまでもない。
はい隙あらばやろうと思っていてどうもすいませんでした!
「ン?…あれは…」
「リザードマン!?なんでこんな所に…」
「分からん。だが今はそんな事より襲われている人達を助けなくちゃ!」
「承知!」
少し進んだ先で何処からともなく現れた魔獣、リザードマンの軍勢に俺達の遥か前を進行していた馬車を襲撃していた所を目撃し急いで救援に向かった。
「『摩擦よ無くなれ スリップ』!」
「コード:ソード解放!」
「『ブースト』!」
「『炎よ来たれ 渦巻く螺旋 ファイアストーム』!」
「「グアッ!?……」」
それぞれ魔法を行使してリザードマンを討伐していく。
「グアッー!」
「うわあああー!?」
そこに取りこぼしてしまったリザードマンが手負いの兵士を襲おうとしていた。
「不味い!『アポーツ』!」
「グアッ!?…」
「続けて、コイツを喰らいな!」
「グアップ!?…」
早速覚えたアポーツで奴の持っている剣を奪い取って混乱している所に即座に金ダライ召喚コードを発動し気絶させる。
「エルゼ頼む!」
「分かってるわ!『ブースト』!」
エルゼにトドメを任せ残りのリザードマンを駆逐した。
だが…
「何ッ!?…」
「グアー!」
又何処からともなくリザードマンが湧き出てきたのだ。
「これは召喚魔法です!このままじゃ術者を倒さない限り無限に出てきてしまいます!」
「なら…『コード:サーチング』!」
召喚魔法だと判明し俺は即座にコードを組み替えて周囲を探りリザードマンを召喚している魔法使いを探し出す。
「…其処だ!冬夜!
コード:ソード!」
「分かった!『コード:タライ召喚』!」
サーチングで術者を見つけ出した俺と冬夜は誘い出す為にその地点へ剣とタライを投擲する。
「ヒイイイ!?…」
「スリップ!」
「『雷精よ 紫電の一閃以て 討ち果たせ』!」
「うべっぶ!?……」
突如降ってきた二つの物体に驚いてまんまと出てきた所をスリップとふと思い出した某ロクでなしな魔術の『ショックボルト』で捕縛した。
が…
「…一体何人やられたんだ?…」
「う…護衛兵士が二人奴に殺られてしまった…」
「クソッ!?…」
リザードマンと術者を討伐したは良いが既に犠牲者が出てしまっていた事に俺達は後悔した。
もっと早く駆け付けていれば!…
「い、イッセーさん達のせいではないですよ…」
「分かっているけどさ…」
リンゼがそう言ってくれるが今更過ぎる後悔にやはりやるせない気持ちになってしまう。
そこに
「誰か!誰か…爺を助けてやってくれ!爺が、爺が…」
不意に襲われていた馬車から叫び声が聞こえ俺達が駆け付けた其処には胸に矢が刺さり苦しそうにしている御老人と泣いている少女が居た。
「回復魔法を…」
「ちょっと待って下さい!」
即座に回復魔法をかけようとした冬夜にリンゼが待ったをかける。
「矢が深く刺さり過ぎた弾みで体内に折れた部位があってこのまま治療したら残骸が残ったままになってしまいます!」
「え?…じゃ、じゃあどうすれば良いのよ!?」
「…」
リンゼの言う通り異物が残留したまま治療を施しても二の舞になってしまうだけだ。
…はっ!そうだ!この手があるんじゃないか!
「冬夜アレだ!」
「うん僕もそう思っていた所だ。『アポーツ』!」
冬夜に指示し彼のアポーツで体内に残留していた残骸が手元に移動した。
「そうか!体内の矢の残骸を引き寄せたのね!」
その通り!これでマトモな治療を施せる。
「『原初の理よ その力を我に示せ 復元する世界<ダ・カーポ>』!」
これまた俺は魔法からマホウへとアレンジした術を行使し御老人の傷を治した。
「んむ?!…」
「爺!よかった!…本当に良かったよおー~!…」
ダ・カーポで治療を施してしばらくすると御老人は目を覚ました。
少女は嬉し泣きをして喜んでいた。
「感謝するぞ旅の者、爺を…いや童達を助けてくれてありがとう!」
「どういたしまして!」
「僕達は偶然運良く通り掛けだったからね」
「そうで御座いましたか。
私はレイムと申します。
このお方スゥシイ・エルネア・オルトリンデ御嬢様に仕える執事で御座います」
「スゥシイじゃ!スゥと呼んでくれて構わん!」
少女スゥと彼女の執事レイムさんに感謝の意を告げられ俺達のそれぞれ自己紹介する。
「ン?確かオルトリンデ家って…」
「あわわ…お、王族の方じゃないですか!」
エルゼ達がスゥの事を聞いて固まっていた。
って王族!?
「嘘ォ!?…」
「マジかよ…」
てっきり良い貴族の御嬢様だと思っていたけど予想外の事で俺達もようやく驚いていた。