Side一誠
「「ううむー~ん?…」」
「どうされたんですか?冬夜さんもイッセーさんも」
転生を果たした翌日、もう一人の転生者である冬夜と道中で出会ったエルセシカ姉妹と一緒にギルドへの冒険者登録を終えた直後、早速出されている依頼を受注してみようと思っていたのだが…
「いやさやっぱまだ所々読めなくてさ…」
「あ、そうでしたか…それなら私が読みますよ!」
「ああ頼む。悪いな何から何まで」
「いえいえ!」
元々俺は元の世界でもそんなに成績はよろしくなかった。
八割近くはアイツのせいだが…。
冬夜の方もやはり半日で覚え切るには無理があったようだ。
なので此処は無理せずにリンゼに頼んで読み取ってもらう事にした。
「ええっと…「東の森に出没する魔獣、一角狼を五匹以上の討伐」
そんなには強くない魔獣だから大丈夫かな?あ、報酬は銅貨十八枚ですね」
「じゃあ、それを受注しようか!」
比較的簡単である依頼だとリンゼが言うので早速受注し俺達は東の森へと向かう準備をしていたが…
「あ…僕達まだ武器を所持していない…」
「「え?…」」
「ああそうだったなそういえば。
あ、俺は一応魔法で精製出来るから問題無いぜ」
「「ええ!?」」
今更武器を持っていない事を思い出した冬夜は付近の武器屋「熊八」に立ち寄って冬夜は刀を購入しそのまま東の森へと向かった。
そして俺が自分で武器を造れるからと言ったら二人に驚かれた。
え?錬金術はあんまり浸透していないの?
~東の森~
「『炎よ来たれ 赤の飛礎 イグニスファイア』!」
「『ブースト』!いっけえ!」
「剣製コード解放!そこ!」
「はあっ!」
森に入ってすぐ目的のモンスターと遭遇し交戦する。
リンゼが炎の魔法で炎弾を生成し援護、エルゼが強化魔法でガントレットを強化し殴り飛ばしていく。
俺は剣製のコードを即座に組んで発動し斬りかかる。
まだ魔法の使い方を覚えていない為使えない冬夜は素人とは思えない程の刀撃を繰り出して斬っていく。
これも神様効果か。
予定より二倍の数のモンスターを討伐し依頼をひとまずは完了させギルドに帰還する途中ふと思った。
「こっちの魔法も早く覚えないとな…」
今使える現代魔法だけでは対処出来ない事態があるかもしれない…そう思った俺はエルゼ達に声をかける。
「エルゼ、リンゼ。二人の魔法を教えて貰えないか?
代わりにこっちも可能な限り教えるけど」
「良いですよ!」
「まあ、イッセーの使っている魔法にも興味があったしね」
「恩に着るぜ!」
彼女達の了承を得て早速俺達はご教授してもらう。
「あんた達凄いじゃない!」
「まさか全ての属性魔法を扱える適正があるなんて!…凄いです!」
「「ははは…」」
そういや神様効果があったんだったと俺達は苦笑いしていた。
ギルドへと帰還し達成報酬を受け取った後、宿に戻ると
「う~ん…どうしようかしら?」
「何も思いつかないわ…」
「どうかされたんですか?女将さん、それにその人は…」
銀月の女将さんが知らない女性と共に唸っていた。
「あら?貴方達戻ってたのね。
この子はアエル、街で「パレント」って喫茶店を営んでいるんだけど…」
「ああ、其処なら行きましたよ。
良い雰囲気の店だったよね」
「ああ」
俺達は息抜きに立ち寄った御店の事を思い出した。
その際、冬夜が試しに水魔法使って制御が上手くいかずテーブルを水浸しにしてしまった事には苦笑い。
「でね店で新しいメニューを考えている最中なんだけど…そうだわ貴方達にも何か良い案って無いかしら?
異国の人なら珍しいメニューを知っているんじゃない?」
「わ、私からもお願いします!」
新メニューの考案ねえ…元の世界では良く作ってたもんだ。
勿論あの馬鹿糞元兄貴には内緒でだ。
「ちなみにどの層の御客さん向けに?」
「えっとですね…女性向けの軽食やデザートとかで」
「ふむ…」
「女性が喜びそうなデザート…クレープとかアイスとかしか思い浮かばないなあ…」
「「クレープ?アイス?」」
「「ヘッ?」」
冬夜が定番中の定番メニューを言うと、女将さん達はナニソレ?と言った感じの表情をする。
これには流石に俺も冬夜も変な声が出てしまった。
もしかしなくてもこの世界じゃクレープやアイスは開発されていないのか!?
「作り方は分かりますか?」
「いや僕はそこまでは…」
「ああ、それなら俺が作れるぜ」
「「ホント!?」」
俺が作れると分かった瞬間、女性陣が食いついてくる。
「お、おう…どっちも特殊な調理器具が要るので用意して下さい」
「あ、はい」
良し、久々に腕が鳴るな!
材料は魔法と少しの買い出しで粗方調達出来たので俺は早速脳内で某異世界な食堂の街中シャンデリアな曲を流しながら取り掛かった。
~四十分後~
「良し完成だ!
さあ、どうぞ召し上がれ御嬢様方!」
完成させたバニラアイスとチョコクレープを彼女達に振舞う。
ちなみに冬夜は料理が苦手なのか少しだけ作業を手伝っただけだった。
「「…」」
エルゼと女将さんがチョコクレープを、リンゼとアエルさんがバニラアイスを一口頬張る。
「どうだったかな?」
「んー~!スッゴク美味しいわ!」
「とっても甘くてひんやりとした心地の良い味がします!」
「なんだいこれ!凄く美味いじゃないか!」
「コレは!…とても素晴らしい料理だと思いますよ!
御店に出すメニューには十分過ぎます!」
「それは良かった!」
「あ、そっちも頂戴!」
「良いわよ!」
お気に召した様ですっかりと夢中になった四人は今度は入れ替わり食べていた。
アエルさんに俺が書き記したレシピを渡すと彼女はとても嬉しそうに自分の店へと帰っていった。
「これは!…ちょっと悔しいな…」
その頃、余っていたデザートを食した冬夜は自分の知る想像以上のプロい味に、一誠に対し敗北感を覚えたという。
悲報、冬夜のスマホ活躍せず。
仕方無いよね料理スキル高い人が居たらそりゃあw