Side一誠
「バズール貴様!一体何をした!?…」
「なにすぐに分かるさ」
反逆の首謀者バズール将軍は意に介さず魔法陣を展開している。
「『闇よ来たれ 我求むは悪魔の侯爵 デモンズロード』!」
バズールが呪文を唱え終え、彼の背後の壁一面が吹き飛んだかと思うと陣から巨大な魔獣が出現した。
『グルアー!」
「なっ!?…デモンズロードだと!?…」
「あ、あれ程の悪魔との契約を維持するには一体どれだけの代償が必要になるか…現界を維持する魔力だって何処から?…」
奴が召喚した悪魔にキャロさん達は驚きを隠せない。
確かに魔術師でない筈のバズールが召喚出来たのも可笑しな話だ。
「アンタまさか!…」
「フッ、察しが良いな。
そうさ大勢の生贄、そしてこの腕輪の力のおかげなのだよ!」
バズールは両腕に嵌めた二つの腕輪をこれみよがしに見せつけてくる。
「「!」」
それを見て俺と冬夜は思い出す。
シェスカと博士がバビロンの「蔵」に保管されていたいくつかのアーティファクトが事故により流出した可能性があると言っていた事を。
バズールは偶然それを拾い使っているようだった。
「成程な大体分かった。
アンタが右腕に嵌めている腕輪は俺達から魔力を強制的に接収する能力を持つ奴か?」
「よく分かったな」
通りで愚者の世界の許容量が超える筈だ。
「だったら!アポーツ!」
「む!貴様等まだ魔力があるのか!?だが無駄な事だ!」
「なっ!?…」
冬夜がアポーツで腕輪を引き寄せようとする。
バズールは少しだけ驚きを見せるが平然としていた。
「くっ!?あの悪魔の能力か!」
「ご名答!デモンズロードの能力は魔法無効化。
そしてそれは契約者である私にも反映されているのだよ!」
「ならコイツならばどうだ?!」
俺はSBD号をストレージから取り出し武装航行モードに切り替えて発進させバズールへと突撃した。
だが…
『グルアアー!』
「何!?…ぐわあ!」
バズールへの突撃攻撃は届かず不可視の壁に阻まれた。
その隙を狙われデモンズロードが振るった腕に俺は吹き飛ばされてしまった。
「「イッセー/様!?」」
「グッ!?…なんとか大丈夫だ」
なんとかダ・カーポを自身にかけ回復する。
「なんだその面妖な武具…いや乗り物か?しかし無駄なのだよ!
このもう一つの防壁の腕輪がある限り私には一切の物理攻撃も効かぬ!」
糞っ!ダブルの防御スキルかよ!
他人の事言えないけどそれなんてチート?
一体どうすれば良い?…状況を打開する為周囲をよく観察する。
む?…そうか!
奴が慢心している今なら!
「冬夜俺に良い考えがある!」
「…いいねそれ!」
俺は奴等の唯一の弱点に気付き冬夜と急いで話し合う。
そして俺は奴等の攪乱に動く。
「貴様等が何をしようと無駄な事!
まあどの道生贄として死んでもらう事に変わりはないのだ。
さっさと消えてもらおう!」
バズールが姫様達にその凶刃を向けようとしてくる。
「「ゲート発動!対象、レグルス皇帝、ルーシア姫、ラーシア姫、キャロさん。
転移先は俺達の屋敷!」」
「何!転移魔法だと!?」
そうはさせまいと俺達はゲートで姫様達を屋敷に緊急避難させた。
「冬夜今だ!」
「む!?だが無駄だといった筈だ!」
「それはどうかな?」
「何?」
冬夜はニヤリと笑いバズールにスリップ弾に切り替えたブリュンヒルドの銃口を向け奴の視線を逸らし銃口をすぐ下にずらして撃ち込む。
すると将軍は転び始める。
「うわ!?…な、何故私に無属性魔法の効力が!?…」
「誰が敵に種を教えるかよ!自分で考えな慢心の戦争狂野郎」
無様に転げ回るバズールに俺は言い放つ。
「「しょ、将軍!う、うわー!?」」
助けに入ろうとした奴の仲間も一斉に転げ始めた。
種を明かすと冬夜は俺の作戦通りに腕輪やデモンズロードの効力がある奴自身ではなく床を狙って撃ったのだ。
そのおかげで無限ループ地獄に物の見事に嵌まってくれた。
奴の腕輪で床の魔力を吸収されたりされれば止まるが今は思いつかないだろう。
「今は皇帝陛下の命が最優先なので退かせてもらうぜ。
だがアンタ達をこのままにしておく訳にはいかない!」
「そうだ!いずれバビロンの裁きが下るだろう!」
俺達は悪ノリしゲートを発動し皆の撤退準備を始める。
おっとそうだ。
「「ギャアアー!?」」
このまま撤退するのも癪だったので『ミラージュ』の魔法で虫の軍勢の幻影を未だ無限スリップ地獄に陥っているバズール達の頭上へと降らせた。
屋敷に戻った俺達はすぐに集合し皇帝陛下を治療、とりあえず事無きを得たのだった。