EPⅠ「彼は転生を果たし、出会いを紡ぐ」
Side一誠
「…此処は?…無事に転生を果たしたのか?」
再び目が覚めると目の前には草原が広がっていた。
「っとそうだ!」
神様に頼んだ特典、この世界でも使用可能にして貰い尚且つ現代魔法の使用も可能にしたスマホを取り出した所で。
「君が神様が言っていたもう一人の転生者なのか?」
「ン?…そうか!」
直後に第一目的であるもう一人の転生者、望月 冬夜と出会った。
お互いに自己紹介し合った後、彼のスマホでゴーグルマップを見ながらこの世界を探索し始め手初めに一番近い「リフレットの街」を目指し歩いていた。
「き、君達!その服を是非共売ってはくれないだろうか?!」
「「は、はあ?…」」
その道中で出会った服屋を営むおじさん、ザナックさんに詰め寄られそう言われた。
どうやら俺達が当たり前に着ている服はこの世界では珍しく見える素材なのらしいが…。
まあついでに街に送ってもらえた上に資金と代わりの衣服が手に入ったし良いか。
しかもなんかカッコイイしな!
そしてザナックさんに付近の宿屋「銀月」の場所を教えて貰い向かった。
~宿屋「銀月」~
「あの俺達、宿泊したいんですが」
「はいはい、一泊銅貨二枚だよ」
「「ヴェッ!?」」
銀月の主人のお姉さんにそう言われ俺達は驚く。
今の手持ち資金はそれぞれ金貨二十枚。
という事は日本円に換算するとかなりの年数で何もしなくても過ごせる事になるという。
冬夜がそう言っていた。
ちょっとインフレーション起こし過ぎなんじゃないか?
「どうかしました?」
「あ、いや…とりあえず二泊分お願いします」
「はいよ、金貨二枚からね。御釣りは銀貨九枚と銅貨六枚ね」
疑問に感じるしかないがとりあえず一ヵ月の先払い申請をした。
翌日
「ふう…」
「お、おはよう一誠!
これからどうするんだ?」
「とりあえずは図書館みたいな所がある筈だから其処に行って文字を勉強しねえと…」
「あはは…そういや不便だよなあ…そんじゃ行きますか」
目が覚め俺達は図書館に向かう。
その道中、俺達は運命の出会いを果たす事になる。
「ちょっと!どういう事よ!?」
「「ン?」」
路地裏から声が聞こえてきたので俺達は急いで其処に入った。
「約束が違うじゃない!依頼代価は相場通りの金貨一枚の筈よ!」
「だからさ~君達が持ってきた「水晶鹿の角」を確認したけどさ…こんなデカイ傷が付いているっていうのに原価で俺達に売りつけようってかい?」
「そんな!?…」
何やら二人の美少女が男達に依頼品の状態の事で揉めているようだった。
「ちょっと良いかな?」
「なんだあお前え?…俺達は今この娘達と…」
「その角、俺達に買い取らせて貰ってもいいかな?」
「もち金貨二枚で」
絡んでいた男を無視して俺と冬夜は少女達に話を持ち掛けた。
「「はい?…」」
「え?駄目だったかな?」
「い、いや突然だったから驚いただけよ…それより売買の事だけど良いわ!」
少女達は一瞬ポカンとしていたがすぐに了承してくれた。
「オイテメエ等ァ!よくも邪魔をしてくれたなあ!」
「!やっぱり単なる因縁をつけて何かよからぬ事でもしようとしていたか…」
「そうみたいだね」
「ならもう手加減なんてしなくていいな!オリャア!」
「はっ!」
「「ゲッ!?…」」
俺と冬夜はすぐさま男達を取り押さえにかかった。
神様能力凄ぇ!…
「野郎!」
「あ!?まだ取り巻きが!?…」
「うお!?危ないな!」
まだ残存していた取り巻きが冬夜に殴りかかろうとしたが察知していたので容易く回避される。
「冬夜時間を稼いでくれ!(ぶっつけ本番だけどやってやる!…)」
「分かった!」
「何をゴチャゴチャ言ってやがる!」
冬夜に時間稼ぎを任せ俺は即座にスマホに触れてコードを感知する。
どうやら普通の仕様とは少し違う様だ。
「!冬夜下がってくれ!(そこだ!)」
「OK!」
運良くそこらの道に漂っていた無数の0と1の羅列の固まりであるコードが視えた。
それをスマホに回収。
自身の体に流し込み即座にその構成を組み替える。
「コード解放!」
「なんだあ?…ゲッ!?……」
組み直したコードを解放し、時間差で金ダライを男の頭上に召喚する。
タライは見事にぶち当たり男は気絶した。
「ふう!…なんとか出来た様だな」
「「タ、タライ?!」」
俺がなんとか現代魔法の発動に成功したのに安堵しているとタライ召喚魔法を目にする事になった冬夜も含め少女達は驚いていた。
「それより冬夜お前さ…もしかしてコレ粉々に壊す気でいたんじゃないのか?」
「あ!?それは…」
「彼女達が酷い目に遭わされそうだったからというのは分かるがあんまり軽はずみな行動はNGだ。
物は大事にな。
これぐらいの傷だったら何処かに直せる所があるだろうしな」
「その…ごめん!」
「良いよこれから気を付けてくれるならな!
ほら彼女達にもさ」
「あ、ああ!…君達もゴメンな!」
「あ。いえそんな!…」
「そ、そもそもは私達も「ギルド」を介してない依頼を受注したのが悪かったのよ…だからこっちも通りがけの貴方達を巻き込んでごめんなさい!それと助けてくれてありがとうございます!」
先程少女達から買い取った角をしまいながら冬夜に問うと彼は己がしでかしそうになった事を思い出し謝罪する。
すると彼女達の方も巻き込んでしまったと謝罪と感謝の意を言ってきた。
「嫌々、君達が謝る必要性は無いよ。
俺達は巻き込まれた訳じゃなくて自分から首を突っ込んだまでだしな
俺は兵藤一誠、気軽にイッセーと呼んでくれ」
「たはは…僕は望月冬夜。
君達は双子なんだよね?」
「ええ、そうよ。
私はエルゼ・シルエスカよ。こっちは妹の…」
「り、リンゼ・シルエスカといいます!
よ、よろしくお願いします!」
二人は自己紹介してくる。
「エルゼにリンゼだね。
改めてよろしくな!」
「よろしく!」
「イッセーとトウヤはイーシェンの出身なの?」
「「…ああ」」
イーシェンとは元の世界の日本的な国であるらしい。
とりあえず俺達はそういう事にした。
「あの!…」
「ン?」
「さっきのイッセーさんが発動したのは一体?…」
リンゼが俺の使用した現代魔法について聞いてくる。
「ああ、アレは俺と冬夜にだけ使える固有魔法さ」
「えちょっと僕は…」
「(後でお前のスマホにも簡略なコードを組み込んでやるから安心しろ)」
「そ、そうか…」
冬夜が否定しそうになったので慌てて小声で彼にそう伝える。
といっても現代魔法は魔力のある人間であればコードが視えずとも術式コードをあらかじめ媒介にする物に組み込んでおけば誰にだって使用可能なのが良い所だ。
その時点で最早固有ではないが…
ただし俺がさっき使った召喚魔法はかなりの魔力を消費しまう為に出来る人は早々いない。
まあ同じ身体強化を施された冬夜なら問題は無いが。
「そうなんですか!」
「まあな…しかし図書館に向かう時間が今日はもう無いか…」
「あ…」
「図書館に行かれる予定だったんですか?」
「いやさ…恥ずかしながら俺達はまだこっちの文字の読み書きが出来なくてさ」
「そういう事でしたら私達がお教えしますよ!」
「「本当か?!」」
「ええ、お礼も兼ねるって事でついでにギルドへの登録にも同行するって事でどうかしら?」
「ああ、恩に着るぜ!」
「ありがとう!」
俺達はシルエスカ姉妹に手解きをして貰う事となり高速で必死になって読み書きを覚えるのだった。