Side一誠
「いたぞ姫と近衛騎士だ!早く捕らえろ!殺しても構わん!」
「まだこんなに!…」
「クッ!?」
恐らく帝都から呼び戻された軍の残存勢力が一気に城に攻め込んできたようだ。
ショックボルトでは捌き切れない上マルチプルのタゲロックもこの数の前ではかける余裕が無い。
姫様達まで巻き込んでしまう恐れがある為あまり強い魔法も使えない。
こんな所でタイムロスしている余裕なんて無いんだが…そう思っていたその時
「<ブースト>!」
「<バブルボム>!」
「「せりゃああ!」」
「<アクセル>!どどおっせえい!」
「「ギャアアアー!?…」」
突如軍の奴等の士気が乱れ始めた。
これは!
「皆!…助かったぜ!」
「緊急事態だっていうから大急ぎで駆けつけてきたわよ!」
「無事みたいですねイッセー殿、冬夜殿それにレグルス殿下のお二人も。
それではこれよりベルファスト国王の命により我等ベルファスト騎士団もレグルス帝国に助太刀致します!」
「おお、これは心強い!感謝するぞ!」
伝令がしっかりと伝わりエルゼ達所か騎士団までもが召喚獣に持たせていたゲートミラーを使い救援に駆けつけてきてくれたようだ。
「急ぎましょう皇帝陛下達の下へ!」
「あ、ああ!」
皆に残存勢力の相手を任せ俺達は急いだ。
だが其処には
「お、お父様!?…」
「そ、そんな!?…」
部屋に入った途端、姫様達は泣き崩れ落ちた。
無理もない…数人の護衛騎士と共に滅多刺しにされ血塗れでベッドの下に横たわる変わり果てたレグルス皇帝陛下の姿があったから。
かろうじて息はあるようだが早く手当しなければ危険だ。
「む?…これはこれは姫殿下に騎士殿ではないですか」
痛みに苦しむ皇帝陛下の傍には軍人の男が立っていた。
「バズール将軍!この状況は一体どういう事なんだ!?説明してくれ!」
「…」
キャロさんがバズールと呼んだ男の反応を見て俺達は察した。
彼は姫様達が今此処に居る事自体に疑問を持っているような様子だったから。
「答えられないか?
そりゃそうだよな…だってアンタが今回のクーデターの首謀者なんだろ?」
「ええ!?」
「なんですって!?将軍貴様!よもや皇帝陛下を手にかけるとは気でも触れたのか!?」
「…」
「沈黙は肯定と見て良いんだな?」
俺がバズール将軍の企みを看破するとキャロさん達は驚き、奴は数秒沈黙を貫き通す。
そしてゆっくりと口を開いた。
「皇帝陛下は病に侵され最早そのお心をも病んでしまわれた…ベルファストやロードメアとの不可侵条約を破棄し攻め入るには絶好の機会だというのに躊躇われてしまっておられた。
皇太子殿はまだ若過ぎる故とても国を任せられん。
かつての陛下ならば迷いなど捨てていたものの!…」
「たったそれだけの理由で陛下を…いやそれだけじゃない…レグルス国民の命迄をも奪ったというのか!?」
「ああ、そうだ。
新たな帝国を築く為の糧としてな!」
「そんな!?…」
バズールの言葉を聞いて姫様達は落胆する。
「ぷっ、あははは!」
「い、イッセー様?…」
だが彼の話がちゃんちゃら可笑しく思わず笑いが零れる。
「オイオイオイ、冗談は程々にしろよな。
ベルファストに戦争を仕掛けるなんて言っているけど他にミスミド、リーフリースとの三国同盟を組んでいるんだぜ。
本気でたった二万規模のアンタ等で勝てるとでも思っているのか?
それと皇帝陛下の関してだけどきっとほとんどがアンタの下らない野心に満ちた妄言なんだろ?」
「なんだと?…貴様!」
今迄の話を聞く限り皇帝陛下は自ら進んで条約を破って戦争を仕掛ける様な玉ではないと判断出来、そうバズールに言い放つと奴は青筋を立てて怒号を上げる。
「その反応は図星とみていいね?」
「小者だなアンタ」
「グッ!?…だが我々が不可侵条約が結ばれてしまった二十年間只手をこまねいていただけだと思うか?」
「む!?」
「これは!ぐう!?…」
バズールは遂に開き直り両手を掲げる。
すると急に俺達の体が重くなっていったのだ。
コッソリと会話中に限定発動させていた「愚者の世界<アルカナ>」のカードが破けていた。
コイツでも抑え切れない程の術式、いや膨大な魔力量だと!?…