Side一誠
レジーナ博士との再会、盛大な告白、思いがけず冬夜がバビロンの後継者となるなど色々とあって数日後。
「「ん?」」
冬夜といつもの様に街を歩いているとある光景を目にした。
「お客さんこんなの使えないよ」
「うーん可笑しいな…以前はコレで買物出来たんだけどなあ…どうにかならないかな?」
「無理なんですよ…」
それはクレープ屋の出店で何やら店主さんと揉めている銀髪の青年の姿があった。
「一体どうされたんですか?」
「お、これは一誠殿に冬夜殿。
いやねこの子が見た事無い出所不明の貨幣で支払いをしようとしてね」
「出所不明の貨幣?…ならばこうしましょう。
ここは俺達が立て替えましょうか」
「お、助かるよ毎度!」
青年の分も含みついでなのでクレープを注文し払った。
「すまない、本当に助かったよ感謝する」
「いいってことだ」
「それよりえっと…」
「僕はエンデ、よろしく」
「じゃあエンデ、君の持っている貨幣を見せてはくれないかい?」
「いいよ」
エンデと名乗った青年から先程の出所不明の貨幣を俺達は見せてもらう。
「この銀貨は!…」
「…ああ~、知ってるの一誠?」
俺はすぐに見覚えがある事に気が付いた。
俺の事情を知った冬夜は察する。
「間違い無い!これは五千年、正確には五千二百八十四年前に流通していたパルテノ銀貨だ!」
「へえ!…知っているんだ」
「ああ、ちょいと込み入った事情のおかげでね」
「ふうん…」
興味深そうにエンデは俺を覗き込んでくる。
さっきから思っていたが彼は一体何者なんだ?
パルテノ銀貨を持っている事といい、不思議な感じといい…考えていても仕方無いので俺達は彼にこれからの稼ぎ口を紹介、ギルドに向かった。
そのついででミスリルゴーレムの討伐クエを受注した後、エンデは何時の間にかいなくなっていた。
ま、近い内にまた再会するだろう。
早速ミスリルゴーレム討伐の為にメリシア山脈へと俺達は向かった。
~十分後~
「呆気無かったな」
「そ、そうだね…」
「アンタ達ねぇ…」
いくら超硬度を持つミスリルといえど俺のクリカラを纏ったハクリガで簡単に斬り裂けた事に拍子抜けする。
神気とか転生特典抜きにしてもこれには自分も苦笑いである。
「あ!あそこに何か倒れています!」
「なんだって!?」
ふと帰ろうとするとユフィナが何かに気が付いた。
そこを見ると
「猫と女の子が…」
黒猫と少女が酷い傷だらけの状態で山脈の入口に倒れていたのだ。
ン!?…この感じはもしや!…
「すぐに回復を…」
「待つんだユフィナ!この子達に光属性魔法は逆に毒だ!」
「どういう事ですか?!」
「事情は後だ!俺がやる!」
ユフィナがヒールでその子達を回復させようとしたので慌てて止める。
そしてダ・カーポで回復させ大急ぎで屋敷に連れ帰りベッドに寝かせた。
リーンとスゥ、それと博士やシェスカも呼ぶ。
「さあ、一体どういう訳なのか話してもらうわよ?」
「ああ、その前に俺と冬夜の事についても話す必要があるな」
「「?」」
「いい!?」
「『ほう?…助けた子達と関係があるのだね?』」
「ああ…」
「はあ…分かったよ」
ようやく一息つき俺は意を決してそう告げる。
「信じられない事だが俺と冬夜はそれぞれ別々の世界からこの世界に転生してきた存在なんだ」
「「!?」」
どの道この事を話せば自動的に冬夜の素性も察せられるので彼も潔く話した。
まあ彼については割と普通?なのですぐに終わるが俺の世界はこの世界同様に普通ではないのでそうもいかない。
「そうだったのですか…」
「黙っていてゴメンな…」
「まあアンタ達が規格外なのはもう慣れっこだし…それじゃあコレで私達に隠し事は無しって事ね?」
う!?…す、鋭いなエルゼは。
まだ神様達の事は秘密にしておいた方が良いか。
「それとあの子達の素性についてだ。
あの子達は俺が元居た世界で悪魔と呼ばれている種族だ」
「あ、悪魔ってあの!?」
「ああどうか誤解しないでほしい。
それにあの子達は普通の悪魔じゃない」
「『どういう事だい?』」
「恐らく転生悪魔だと思う」
俺は少女達を回復させた時に感じた違和感の事を皆に話す。
黒猫の元の種族は分からないが少女の方には間違い無く人間の気も感じた。
「!?」
「という事は元は普通の人間や動物だったという事ですか?!
だから光属性魔法で回復しようとしたのをお止めになられたのですね」
「ああその通りだ。
詳しい事情は本人達が目覚めたら聞いてみなければな…」
後で世界神様にも事態を把握している筈だから聞いてみないといけないな。