暴風雨の吹き荒れる海。
その上空で織斑千冬は戦っていた。その相手はIS『赤月』の力に溺れ、我を忘れ暴走した友人の妹。
ISを使用しての戦いは、パワーでも技術でも千冬が上回っている。それでも千冬は押されていた。
理由はただ一つ。無傷で救い出さなければならないというミッションがあったから。
彼女は、持久戦に持ち込むことで相手の消耗を待っていた。
作戦は上手く進んでいるようで、徐々にではあるが赤月の動きが鈍っていく。
目の前の相手に全力で当たる。千冬はいつの間にか……背後の警戒が手薄になっていた。
「グあッ?!」
不意打ち。
何者からか背中に攻撃を受ける。吹き飛ばされ、そして受け身を取る間もなく砂浜に叩きつけられた。
千冬は攻撃の飛んできた方角を見る。そこには無機質な全身装甲のISが浮いていた。
敵の姿を視認した。しかし立ち上がる間も与えられずに二機のISから集中砲火を浴びる。
〈ダメだ、エネルギーが……。〉
織斑千冬、絶体絶命のピンチ。
その時、赤い炎に包まれ颯爽と赤いISが飛来する。
それは飛んできた勢いを使い全身装甲のISを蹴り落とし、その反動を使って赤月も後ろ蹴りで蹴り飛ばした。
赤いISは、先に蹴飛ばした全身装甲のISに向かっていく。
千冬のすぐ近くの波打ち際へと赤月が墜落する。それはすぐに立ち上がり赤いISへ向かっていこうとしたが、織斑千冬は最後の力を振り絞って赤月にしがみつく。
パンチ、キック、投げ技。まだまだ荒削りな戦い方だが、半身を海につかりながらも圧倒的な身体能力で全身装甲のISを翻弄する赤いIS。
その姿に、千冬は負けてなるものかと奮い立った。
やがて劣勢と見たのだろう。全身装甲のISは距離を取ったかと思うと煙幕の中に隠れ、そして赤月に食らいついていた千冬に荷電粒子砲を撃つ。
モロに受けてしまった織斑千冬は、発生した衝撃に吹き飛ばされる。赤いISが全身装甲のISを追いかけて煙幕へと飛び込むが、そこに何者の姿もなかった。
ほとんど間を開けることなく、赤月も同様にして消えていった。
砂浜に倒れる千冬は、辛うじて自分の意思によりIS『暮桜』を解除する。
赤いISは、彼女から少し離れた場所で飛び上がると、両ひざを抱えて空中で回転を始め、ISを解除して波打ち際に着地した。
そこから現れたのは、少年であった。
彼は倒れて動かない織斑千冬へと駆け寄る。
「織斑さん大丈夫ですか、しっかりして下さい!」
彼は倒れていた千冬の頭を支えながら起こし、そして呼びかけた。
荒れ狂う波が、今にも二人をさらおうとする。
彼の呼びかけで千冬が目を開く。少年は千冬に肩を貸し、その場から離れた。
岩礁の陰に隠れ波と風を凌ぎつつ、レオは千冬の手当てを行った。
処置が済むと、千冬は苦痛に顔を歪めつつも立ち上がる。
「私を織斑千冬と知って助けてくれたのか?」
先に言葉を紡いだのは千冬の方だった。
「あなたは白騎士であり、日本のISの代表選手、操縦者の第一人者であることも知っています。」
「君は一体誰だ。」
前者の情報は、自身と友人以外に知るはずのないもの。千冬は正体不明の相手に警戒心を抱く。
「レオです。」
「レオ。」
「僕のふるさとは、あの
彼がとある方角の空を指さす。その箇所の空がスーッと暗くなり、一つの星が浮かび上がった。
「一カ月前まで、あの龍座にはもう一つの星が見えていました。この地球のように美しい自然に恵まれた、R77星です。ところが、正体不明のロボットにR77星は全滅させられてしまいました。父も、母も、そして兄妹も。それから僕は故郷にそっくりの星、地球で生きようと決心しました。地球は僕の第二の故郷です。
語り終えたとき、レオは哀しく、そして険しい顔をしていた。
しかし千冬は敢えて厳しい口調で語りかける。
「ゲン。お前は愛する地球を、お前自身の手で守るんだ。」
「愛する地球を僕自身の手で?」
意味が分からずオウム返しする。
「IS学園へ入学するんだ。」
「だって織斑さん、あなたがいるじゃないですか。」
「私にはお前が必要だ、しかも。お前にも私が必要だ。」
「しかし、白騎士があるではありませんか。」
数々の戦いを潜り抜けてきた彼女が、何故自分のことを必要とするのか。レオはまだ分からない。
だから次に千冬の言った言葉を、すぐに信じることが出来なかった。
「白騎士も暮桜も、もういない。」
「何ですって?!」
「見るか?・・・はっ!」
千冬が待機状態のIS、暮桜をレオが見える位置に掲げる。それは光の粒子となって千冬の体に向かい始める、その瞬間だった。
突如として暮桜が火を噴く。千冬の手から離れたそれは、ひどく焼けただれていた。
その衝撃か、千冬がバランスを崩しよろめく。
「白騎士!千冬さん!大丈夫ですか?!」
慌てて駆け寄り、レオは彼女の体を支える。
「やってくれるな?……やってくれるな?」
「はい。」
レオの力強い返事を聞くと、千冬はよろよろと立ち上がり、西の方角を向いた。
レオもそれに倣って西を見る。
重く垂れ込めていた暗雲はいつの間にか消えてなくなり、赤く大きな太陽が沈みつつあった。
「あそこに沈む夕陽が私なら、明日の朝日は市賀レオ。お前だ。」
「やらせて下さい。」
レオはもう一度決意を固め、力強く返事をする。
千冬が手を差し出す。レオもそれに応じ二人は固い握手を交わす。
「ティエェア!」
と、千冬がその手を思いっきり振り上げた。
とてもけが人とは思えない力強さに、レオはたまらず投げ飛ばされる。
「何をするんですか?!」
何もしなければ後頭部を地面に打ち付けていただろう。レオは、バク転することで転倒を免れ、そのまま距離を取り驚いた顔でそういった。
「どんなときでも油断は禁物だ。分かったな。」
少し笑みを浮かべつつ、千冬はレオのもとへと歩み寄った。
かくして、二人の知的生命体が心を一つにして戦う事になった。
ふとウルトラマンレオとISって共通点が多くないか?そう思って書き出してみたら意外にも多かったので、ここに投げときます。
諸星弾と織斑千冬に共通点がある
・怪我をしてセブンになれない
→過去の戦いで搭乗機が損傷。凍結されている
・生身でウルトラマンの能力(念力)を使い怪獣と対峙する
→素手でISの武器を使い、互角に立ち回る
・レオの成長とともに特訓の厳しさが落ち着いていく
→一夏が成長するごとに叩かなくなる
レオと一夏に共通点がある
・格闘戦を主体に使う。滅多に撃たないけど、ビーム系も威力がある。
・生き別れの弟(妹)と再開する。
・逃げ出したくても周囲がそれを認めてくれない
・報われない
・ちょっとこじつけだけど、どちらも故郷がない
→マグマ星人に破壊
→篠ノ之束の誕生により閉鎖
・何度倒されようと立ち向かっていく
その他
・ウルトラセブンが来ていたら名前を借りそうな人がいる
・ウルトラ六兄弟と一学年の専用機持ち(女子)の人数が一緒で、登場順(ISに乗った順番)とそれぞれのキャラが大体一致する。
→ゾフィー=セシリア:単独戦では目立った戦果がない。サポート役の時はやたら活躍する
→マン=鈴:打撃系の攻撃が主体。基本技を極めていくタイプ
→セブン=ラウラ:打撃の力強さは随一。他人が手も足も出ない相手でも食らいついていく
→ジャック:シャルロット=軽快な技が多い。多彩な武器を巧みに操る。近接格闘もそれなりに強い
→エース=簪:射撃系の攻撃に長けている
→タロウ=箒:地の身体能力が高い。エネルギーが他とは並外れている