シリアスはありませんからね!!
俺は非常に緊張している。
俺が目を覚まして早2週間、リハビリも終わり、昨日学校に登校した。
そして、職員室に行き教師の皆さんに、翌日、つまり今日のことだが、緊急の全校集会をするように手配させてもらった。
そう、この学校の現状、ライブの生還者がいじめられるという現状を打破しなければならない。
どうやら、響にのみ矛先が向いているようだ。
それは未帰還者である俺の同級生であり、サッカー部の人気者ノズル君の彼女が最初の原因であるらしい。
彼女はどこかで響がライブ会場の息の頃だと知り、詰め寄ったらしい。なんで、あんたが生きていてノズル先輩が死んだんだ、と。
それに、今世間で色々な憶測が飛び交っていて、その中の悪評、今生き残っているものは自分だけ生き残ろうとして、誰を犠牲にした者たちだ、など言われているいることなども起因し、学校でのいじめにつながったらしい。
そして、いじめが深刻化している理由として、この学校で生き残ったのは響のみだと思い込まれていることが原因だと、事前の調査で分かっている。
未来は言っていないし、響が生き残ったことを軽々しく言う訳もない。響がライブ会場から生還したことを知っている人物もいるはずだ。
きっと、響がここまでいじめられるのはライブ会場にいて生き残った者は他にもいるはずなのに、その人たちの分のひんしゅくも響一人に集中しているためだろう。
ならば、どうすればいいのか?
全校集会その場で、俺は壇上に立ち一礼、そして、ゆっくりと話し始める。
「皆さん、おはようございます。突然ですが、皆さんにお話があります。久しぶりに出て来て何を言ってるんだと思う方もいるでしょうが、少々お付き合いください。実は三ヶ月前、ある事件に巻き込まれました。……お気づきの方もいるでしょう。そう、あのツヴァイウィングのライブ会場の事件の場に自分もいたのです」
そう簡単だ。そのベクトルを分散させればいい。自分から事件の被害者だと名乗り出て、怒りの矛先を俺にも向けさせる。つまりは、そういうことだ。
「その事件の際、怪我を負ってしまい、三か月も休むことになってしまいました……そして話はここからです。療養中に悲しいことを聞きました。ライブ会場の生存者が世間から冷遇され、更に死ね、税金泥棒とそしられ、いじめを受けているという噂です」
そこで一旦会話を区切り、周りの反応を見る。周りは困惑の雰囲気のようだ。
それを見て、スッと息を吸い、続ける。
「……この話を聞いた時、俺はとても悲しい気持ちになりました。……皆さんに問います」
俺はグッと拳を握って、全生徒に訴えかける。
「自分は、俺は死んだ方がよかったのでしょうか!! こうして復帰できたことを俺はとてもうれしく思っています。でも、俺は死んでいた方がよかったのでしょうか!?」
瞳に涙を潤ませ、続ける。
「お願いします。そんなことは言わないでください。俺はあの時、言いようのない恐怖を感じました。自身が死ぬかもしれない、そんな恐怖からやっとこの場に帰って来たんです。きっと、ほかの被害者たちも同じ気持ちです。だからどうか、この学校内だけでもいい。俺達を暖かく見守ってくれませんか? どうか、お願いします!!」
俺は全校生徒の前で、頭を下げる。
そうして、全校集会はお開きになった。
と、まあ、ここで俺がしたかったことが3つある。
1つ、自分が事件の被害者だということをアピールし、被害者が響だけじゃないということを認識させること
2つ、哀れな被害者を演じ、全校生徒の慈悲と同情を引き出すこと
3つ、全校生徒にやってほしいことをストレートに伝えることにより、この件に関する方向性を変えること
の3つだ。
しかし、まあ、この程度でいじめが無くなることはないだろうが、軽くはなるはずだ。
とりあえず、生徒会長が被害者ということであまりひどく言えないことがストッパーになるはずだし、周りの空気にあてられていじめをしているケースだってあるはずだ。今回の事で少し冷静にはなるだろう。
団結すべき時は団結するような校風に俺はしてきた。今までは、悪い風に団結していたが、方向性を変えてやるだけで変わるはずだと俺は信じている。
時は流れ、お昼休み。俺は、響の教室に来ていた。
そっと、中をのぞいてみるとそこでは、響が未来を含め6人くらいの女子たちと昼食をとっていた。
最近では見ていなかった笑顔で、だ。
まだ、嫌味を言ってくるような奴もいるようだが、周りの女子たちや他の人達が響を庇っているようだ。これなら、安心だろう。
俺は、安心して、そっとその教室を離れたのだった。
「ね、ねぇ? さっきの、あの教室の扉から見えたすごい目は何?」
「ああ、あれ生徒会長だよ。きっと、響が心配で来たんでしょうね」
「なるほどぉ、確かあの会長、未来と響の事となると必死だよねぇ」
「うん、うん、俺なんか小日向さんに話しかけただけで、すごい目で見られたぜ?」
「多分、今回の全校集会も響のためなんだろうなと思うわ」
「「「本当に仕方ねーな、あのシスコン会長」」」
その後、ハハハと言う笑い声が教室に響いたという。
小日向会長のシスコンを見守る会、という謎の会があり、その会が遊策の働きかけにより一致団結し動いた結果であり、遊策が思った一致団結とは、かなりかけ離れているということを遊策は知らない。
番外・立花洸編
響の父の立花洸です。
ええ、娘がライブ会場から命からがら帰って来た時には生きた心地がしなかったですよ。
無事だったときは、思わず、仕事場でも周りに話しすぎてしまったことは反省したいと思います。
それにしても、小日向さんの所の遊策君には感謝しないといけないなぁ。
彼のおかげで、娘が無事だったんだからですからね。
そうそう、響と言えば……
取引先の社長さんの娘さんが社会見学のため来ていたんですが、どうやら、ライブ会場の被害者で、危ないところを響が助けたんだそうで。
おかげで、取引はトントン拍子で話が進みまして。
僕? 今はそのプロジェクトの功績で課長に就任しましたよ。
たまに、休日に娘と料理することが僕の楽しみです。
~二課資料のインタビューから抜粋~
はい、いかがでしたでしょうか?
実質ギャグ回でしたね!!
ちなみに、噂を広めたのはノボル君です。……良く生き残ったな、ノボル君。
ノズル君とノボル君はこの小説内に出てます(ヒント・4話)。
出番はもうありませんが。
それではまた次回。
それにしても、主人公ゲスい事やってんなぁ……