戦紀絶唱《SIN》フォギア   作:星屑英雄

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青年の運命は決まった すべてはあの日に

こうなることは必然

足掻け、もがけ

運命に抗え 運命に喰いつくされる前に


四話 急変

 俺の名は、小日向Playmaker……Playmeasureかな(遊策並感) 。17歳転生者だ。……なんだよ、Playmeasureって。

 それにしても、遊戯王の主人公って遊だから、Playばっかだな。Playhorseとか PlayStarとか……

 なんだか、キュア~とかと同類に思えてきた。キュアキャッスル、キュアスター、キュアホース、キュアアロー……なんだ、違和感ないじゃん。

 

「ん? そう考えると、遊戯王はプリキュアだった? いや、この場合、プリキュアは遊戯王だった!? そうか、そういうことか、こんなことが……これで論文を書かないと!! やったぞ、これで俺はノーベル賞確定だ!!」

 

 こうしちゃいられない、帰って書かなきゃ(使命感)

 

「はい、すとーっぷ! お兄さん、ここに来た目的忘れてません?」

 

「知らん……こんな所に居てられるか!! 俺は帰らせてもらうぞ!! ヒデブッ!?」

 

 引き留める声を流し、家に帰ろうと振り返った瞬間に電柱に激突、俺の(顔面の)ライフで受ける。

 

 あいたたたた……。俺は電柱に強か打ち付けた顔を押さえそこにうずくまる。そんな俺の頭上から、響ちゃんの声が聞こえる。

 

「死亡フラグっぽいもの、立てちゃうからですよぅ……」

 

 そう言って、俺にハンカチを差し出してくれる。天使だわ、この子。

 それを受け取ると、響が俺の鼻を指さす。どうやら、俺の鼻から結構な量の血が出ているようだ。

 ティッシュもなくなってしまったので、ありがたくそれを使わしてもらう。

 

「すまにゃい……うあー、はにゃじがヤバイにゃ……」

 

 鼻血で上手く喋れないが感謝の言葉を伝えると、二コッと笑う響ちゃん。

 ……響ちゃんマジアークエンジェー。

 

 そして、それにしても、俺の言葉がキモイ。

 

 とりあえず、鼻血を押さえながら、何のためにここに来たのかを思い出す。

 

 すぐに思い出した。人気アーティスト、ツヴァイウィングのライブだ。

 

 昨日の夜、未来が俺の部屋に来て、頼まれたことに起因する。自分が響をツヴァイウィングのライブに誘ったのだが、自分が家庭の事情でいけなくなってしまった。当然、俺も家族なのでその中に入った訳だが、響が一人では心配だからと、自分の分のライブチケットを俺に渡してきたのだ。親にも話を通しているらしく、それならしかたないわね、と快諾してくれたらしい。

 

てな訳で、今は俺の憧れのアーティスト、ツヴァイウィングのライブ会場に来ていたのだ。

 

 ……俺何帰ろうとしてるの? 馬鹿なの? 死ぬの?

 

 遊戯王とプリキュアから見る世界の真理とその法則なんて、下らない事を考えてる場合じゃなかった。なんか、世界の真理を掴んだ気がしたが、そんなことはどうでもいい!!

 

「さあ、響ちゃん夢のステージへいざ行かん!! ……なんだ、お前ら、俺は(チケットナンバー)75だぞ!! HA☆NA☆SE!!」

 

「待って、お兄さん。チケット見せなきゃ入れないよ!! あと、7538315です!!」

 

 ガードマンのお兄さんにつかまりますた。

 みんなも、ライブではちゃんとティケッツを見せようね! お兄さんとの約束だ。

 

 売店でサイリウムを買い、指定の場所へ。

 

「あ~う~、なんだか緊張してきたよぉ……」

 

「ふ、始まる前からそんなんじゃ、持たないぜ?」

 

「……お兄さんは、とりあえず他の人の迷惑になるからその地鳴りのごとく振動する脚をどうにかしましょうよ」

 

くっ、俺が!! ビビってるっていうのかよ!! 止まれ、止まれ止まれぇぇぇ!!!

 

とまあ、さすがに迷惑になるので一旦止める。震え出しそうになるが、気合で押しとどめる。

 

 いやー、楽しみだなー、ライブ!!

 

 ……ん? ツヴァイウィングのライブ? 何か忘れているような……?

 ま、いっか、忘れるってことは重要なことじゃないだろ。

 

 お、ライブ……始まったァァァァァァ!!!

 

 ……この後、俺は後悔することになる。なんで忘れてたんだと。忘れていなければ防げたかもしれないのに、と。

 

 

 

 

「きゃあああああああ!!!! ノイズよぉぉぉぉ!?」

 

 クライマックスで会場全体のテンションが最高潮に達した時、それは突然現れた。特異災害―ノイズ、人間を殺すことに特化したそれがライブ会場に突然現れたのだ。

 

 会場は阿鼻叫喚の渦に巻き込まれ、一人一人また一人とノイズによって殺されていく。

 

 そうだ、響ちゃん、ツヴァイウィング、ライブ会場……この三つがそろったことの意味を俺は忘れていた。

 

 ノイズ襲撃事件だ。この世界の大きな転換点である大事件。この事件で響ちゃんの回りが大きく変わっていくのだ。

 

 時期が少し早い気がするが、所詮うろ覚えの記憶だ、誤差もあるだろう。しかし、俺はこれを最も警戒していたじゃないか!! どうして、どうして忘れていた!! 忘れてさえいなければ、もっとやりようがあったのに!!

 

 自分自身の愚かさに反吐が出る。硬く噛んだ口と握った拳から、血が流れる。

 

 自分を責めるのは後だ。俺はやるべきことをやらなければ!!

 

「響!!」

 

「は、はい!?」

 

「お前は係りの人の誘導に従って安全にここを離れろ」

 

「ぇ? お兄さんは?」

 

「俺は……ちょっくら、野暮用だ」

 

それだけ言うと、俺は走り出す。

 

「待って、お兄さ……」

 

 響が何か言っているが今は気にしている暇はない。確か、このライブ会場でのノイズ被害は最多の1万2千超だったはず。しかも、死因が避難時のドミノ倒しなどだ。

 

 ならば、それを止める。

 

 向かうは……ステージ!!

 

 

 

 ステージから見る景色は阿鼻叫喚の渦、この世の地獄を見るがごとしだ。いや、実際地獄(そう)なのだろう。

 人が出口を争い、殴り合う人々、若い男が女子供であろうが関係なく、わが身可愛さで押しのける。そうして倒れ伏した人々を襲うノイズ。

 

 しかし、ノイズは思ったよりも少ない。

 視線を移すと、そこには鎧を纏ったツヴァイウィングの二人がノイズを殲滅していた。あの鎧がシンフォギアというやつなのだろう。

 

 よし、この数なら……

 

 状況を即座に把握して、俺は落ちていたマイクを拾い上げる。さて、こっからが勝負どころだ。生徒会長の(カリスマ)、見せてやるぜ!!

 

 スウーと息を吸い、大声で叫ぶ。

 

『ぜーいん、落ち着けぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 

 ピタッと、出口を争っていた観客も、押し合いへし合いをしていた人も止まる。止まってくれる。

 

 よかった、なんとかなってくれた。

 

 ノイズが今の声で俺の方に向かってきたが好都合だ。これで観客が逃げやすくなる。

俺は、また争いが起こらないうちに、さっさと次の言葉を言う。

 

『いぃぃぃぃぃかァァァぁぁぁぁぁぁ!!!!! よぉぉおおく聞けぇぇぇぇ!!! ノイズは今、止まっている!!!! 焦らず進めぇぇぇ!! 急な動きに反応してノイズは襲ってきてる!! だから、ゆっくり、落ち着いて進めぇぇぇぇぇぇ!!! 係り員の人ぉぉぉぉぉぉ!!!!! 非常出口への案内をよろしくぅぅぅぅううう!!!!!!!! いいかぁぁぁぁぁぁぁぁぁァあああァァァァァ!!!! もう一度言う!!! 焦らず進めぇぇぇ!! 動きに反応してノイズは襲ってくる、ゆっくり、落ち着いて進めぇぇぇぇぇぇ!!! 安全に!!! 迅速に!! 喋らずぅ!!!! 押さずううううう!!!! 怪我人は肩を貸してやれ!!! 女子供を優先にィィィィィ!!!!!』

 

 一旦、集団は止まった。そして、落ち着き冷静になったのか、ゆっくりと、しかし確かに、確実で着実に人数が減っていく。

 

 ……で。

 

「上手く言ったはいいけど……どうしよ?」

 

 辺り一面、ノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノズルノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノボルノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズノイズ……

 ノイズのゲシュタルト崩壊だ。

 

 大声を出した俺に狙いを定めたらしい。一斉に俺に向かってくる。

 

「う、うおおおおおおお!!!! し、死んでたまるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 向かってくるノイズを身を捻り、ステップを踏むように回避する。

 

「うおおおお!!! ステップステップ、1・2、1・2、クルリと回ってイナバウワー!! ハーイ! ハーイ! ハーイ! ハーイ! トーントーントーントーン……ハーイ! ハーイ! ハーイ! ハーイ! トーントーントーントーン……うお!? あぶねっ!?」

 

 ノイズをゴロゴロと地面を転がって何とか避ける。

 死ぬ、死ねる……俺がジェネシスとテニヌをやってなければ即死だった……

 

 ゴロゴロと回避をしている内にステージから転落してしまった。しかも、その時大変なモノを見てしまった。

 

 大変なもの、それは俺の連れである響がノイズに囲まれかけてるところだ。ヴァイウィングの、天羽奏さんがノイズから守ってくれているが一人ではギリギリだ。いつ、その均衡が崩れるかわからない。

 

 だったら、行かないと!! 未来とも約束したのだ。響を守ると!! 

 

 バンッと地面に掌底を繰り出し衝撃で跳ね起き、走る。

 それにしても、まだ残っていたのか、アイツッ!! っち、大方、自分と同じ境遇な人を助けていて逃げ遅れたのだろう。あいつはそういう奴だった。一人にした俺のミスだ。

 

 グングンと響に近づいているが、しかし、そうして大分近づいてきたところで致命的なものを見てしまう。

 

 そう、響を守っていてくれたツヴァイウィングの一人、天羽奏の武器である大きな槍が砕け散ったのだ。

 そして、その欠片の射線上に響がいる事も偶然にしても出来過ぎてやがる!!

 

「響ィィィィィィィィィ!!!!! 間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

 

 響がこちらに向いた気がした。

 そして……

 

 ズブッと肉に欠片が刺さる音が響き、赤い血が舞った。

 

「…ぁ」

 

 それは、俺には自分か響かわからない。しかし、一つ言えることは――――

 

「……まに、あっだ……ゴフッ!」

 

 ザックリと俺の背中に突き刺さる感覚を感じながら、庇い腕の中にいる響に怪我が無いかを確認し、無傷であることを認識する。

と、同時に吐血、俺の全身からスッと力が抜け、倒れこむ。

 

 不味いな、これ背中から心臓近くに届いている気がする。

 

「いや、いや、いやぁぁぁぁぁ!!! お兄さん、お兄さん!!! 死なないで!! もう、死なないでよぉぉぉぉぉ!!!」

 

「お、おい!! しっかりしろ、死ぬな!!」

 

 声が聞こえる、響と多分天羽奏さんだ。

 

「生きるのを諦めるなッ!!」

 

 そう声を聴いた。元より、死ぬつもりは毛頭無い。

 しっかりと、自分の意思を相手に示す。

 

「おれは、死ねない……いや、死なない、生きる……生きる、いき、る」

 

 まずい意識が混濁してきた……。

 しかし、意識があることに一先ず、ほっとしたのか奏さんは表情を緩め、そして、決意を秘めた表情でノイズを睥睨する。

 俺はかすれる視界の中で、その表情を見て、思う。

 ……このままでは死ぬ。

 俺が、ではない。この俺達のために戦ってくれているこの人が死ぬ。一瞬見えた彼女の瞳は死を覚悟した者の目だった。

 

 死、それだけは避けなければならない。

 

 ザッザッと、一歩一歩ノイズに、死に彼女が近づいているのが分かる。

 

 ……しかし、俺に出来る事はもう、ない。

 この怪我では、何もすることが……いや、一つだけだがある。

 俺はもう一度、脚に力を込める。

 

 多分、響が俺を泣きながら背負うように肩を貸してくれている。俺は朦朧としていた意識を気合でねじ伏せ、響に声をかける。

 

「響」

 

「お兄さん!? 大丈夫、今病院に!!」

 

「待っ、てくれ……あの人に、あの女の人に言っておかなければならない、ことがある」

 

 「でも」と言いよどむ響をまっすぐ見つめる。俺の視線を受け、仕方ないと言う風に奏さんに声をかける。

 

「奏さん!!」

 

「……なんだ!?」

 

 奏さんは振りむいて俺達に声をかけてくれる。

 俺は響の肩に捕まり立つ。背中からの出血があるが気にしている暇はない。

 

「奏、さん……貴方は、俺に、生きるのを諦めるなと、言い、ました。でも、そのあなたが死を、覚悟した、目をしている……あなたも、ゴッフッ!!」

 

「お、おい、無茶をするな!!」

 

 吐き出した血に構わず、いや、まさに血と一緒に吐き出すように続ける。

 

「あなたも!! 生きるのを諦めないでください!! 死ぬために歌うのではなく、生きるために!! ゴフッ」

 

 俺の意識は限界だ。

 俺に出来るのは言葉を伝えることだけ……

 これで、未来が変わってくれることを祈る……

 

「お、お兄さん!!」

 

 ダメ、だ。もう、意識が持たない。ガクッと膝が折れるのを感じる。響が引き寄せてくれるがもう駄目だ。響に全体重を預けてしまう。

 ゆっくりと、暗闇が俺を飲み込んでいく最後に聞こえたのはこんな会話だった。

 

「奏!! 彼は……酷い怪我だ……」

 

「翼……あたしはどうしたらいいんだろうな? 絶唱を使うつもりだった、でも、コイツがさ言うんだよ。生きるのを諦めるなって、コイツの方が死にそうだってのに……」

 

「そっか……なら、私が歌うよ。アームドギアがあれば……」

 

「いや、お前ももう限界近いだろう!?」

 

「でも、それしか方法は……」

 

「あたしも歌う。それでどうだ?」

 

「そんなことをしたら、奏は!!」

 

「もちろん死ぬつもりはない、二人ならって思っただけだ」

 

「……そっか、二人一緒なら、か。わかった、歌おう!! 私の天羽々斬が全部受け止める!!」

 

「ああ!! そうだ、そこのお前、ありがとうな。さあ、二人とも離れておけ。な~に、すぐにすべて終わるからよ!! いくぞ、翼!!」

 

「ああ!!」

 

 

「「Gatrandis babel ziggurat edenal――――

Emustolronzen fine el baral zizzl――――」」

 

 

 大きな衝撃音と爆音の中、俺の意識は闇に沈みこんだのだった。

 

 

 




所々にネタを挟むことにより、シリアスには入らないという言い逃れ。
大丈夫大丈夫、まだシリアスじゃない。

それでは次回!!

用語解説

ジェネシス
黄老師に教えてもらった。ある国では国をあげたスポーツらしい。

テニヌ
テニスに似た何か。ボールが自分のところに帰ってくるほど曲がったり、人が海を操ったり、飛翔したりは普通な競技。

カリスマA-
遊策が土壇場で疑似的に発動させたFate的なスキル。軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。これにより、集団をまとめた。土壇場で疑似的に発動するためマイナスだが、Aとは人として最高位のカリスマ性を持っているという事。しかし、土壇場でしか発動しないため、あってないようなスキル。


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